68. 第1試合: 傷心試合2
だいぶ投稿ペースが落ちていること、申し訳ありませんm(__)m
だいぶ間が開きましたが第1試合の続きです。まだ終わりません。
森の中央付近は木の根が地面に張り巡らされ、岩を巻き込んで起伏が激しくなっている。
進行速度の落ちたイーグレットにメガネ隊長が舌打ちする。
小柄なイーグレットには、跨がなければならない根っこばかりだ。
「早くしろ」
「...クソメガネ.....」
ボソッと吐いた悪態はメガネ青年には届かなかった。
と、遠くで硬いものが規則正しく鳴っている。
「...なんだ?」
木の陰から窺ってみるが、明暗の激しい森の中では視認できない。
ひときわ大きく鳴ったと思うと、白っぽい何かが2人の目の前に着地した。
カカッ! と蹄靴を鳴らして岩の上に降りてきた羊人のミーツは、得物の短杖を抜き放ち、高らかに詠う。
「〈穿て光の矢!〉光の矢!」
ソプラノの流れるような一連の詠唱が、マフラーのように巻かれた長い髪の奥から紡がれる。
6本もの木漏れ日の矢が木陰に潜むメガネ隊長の額を、イーグレットのローブを切り裂いた。
「ガルドを倒してもらったお礼をさせてもらうわ」
ヒュンッ! と短杖を指揮者のように持ち直すと、光の粒が巻き散らかれる。
「そんな遅い攻撃が当たると思うのか! 〈鉱石よ、回り集いて放たれよ!〉岩の鏃!」
突き進むメガネ隊長の魔法は光粒の1つを風船のように割ると、急に赤く膨らんで割れてしまった。
次弾も同じように消えてしまう。
「なんだこれはっ!? 物凄く熱い!?」
魔法が届かないなら近接魔法をと距離を積めたが、光粒の予想外の熱気に足を止める。
「囲まれてるぞ。どーすんだ」
ふよふよとただ浮かんでいたように見えていた無数の光粒は、いつの間にか2人を囲い込んでいた。
「くそっ、お前も魔法で相殺しろ!」
が、
「そこで自爆してなさい」
ミーツが去り際に光粒を追加し、とうとう2人は見えなくなるほど光の粒に囚われてしまった。
メガネ隊長たちが手こずっている間にミーツはトスコロカリアの岩へと向かう。追いかけなくては とメガネ隊長を焦らせる。
『これは、ミデンチーム何をするつもりでしょうか! 一直線に敵チームの岩へ向かわず、その斜め手前の谷に向かいます!』
根と岩が絡み合って出来た横一線20メートルほどの地形の割れ目は、マジックワールドの空間拡張によって十メートルほどの谷間になっていた。
ミーツはほぼ垂直の急勾配を難なく降り、空から舞い降りた鷲人のガラシャと合流する。
「岩には 風刃鷹 を付けてきた。来る途中にも 風刃穴 を作ったから大丈夫だろう」
「さっすがガラシャ! こっちも足止め成功。あと3分は稼げる。今のうちに用意しましょ」
斜面での強さを盛大に利用して、足場になりそうな岩や根になにかしていく2人。
しばらくして、ガラシャが飛び立った。
ミーツは乱れたふわふわな髪を撫で付けながら、ミデン側の谷の手前に移動する。
「....ここで決める!」
メガネ隊長とイーグレットがやっとミーツの魔法を振り切ると、なにか影が木漏れ日を遮って旋回していた。
「ミデンの鳥人だ。俺たちを探しているのか?」
と、影は少し遠くに降りてきて、キョロキョロと辺りを見回し始めた。
木々の陰に隠れ、様子を窺っているイーグレットたちに気付かないで、木々を縫って一直線に何処かへ向かって行く。
「メガネ! 岩狙ってるぞあれ!」
「....!!」
木々の同じような風景のせいで方向感覚が狂わされていた。風魔法で把握したイーグレットにメガネ隊長が反応する。急いで追いかけるが飛行するガラシャには到底敵わない。射撃系のメガネ隊長の魔法がガラシャの翼を掠める。
「...やべっ!」
必死でガラシャの進行を止めようと撃ちだされる魔法の数に、回避しようと何度も方向を変えるガラシャ。翼の付け根に被弾して降り立ったのはあの地形の割れ目だ。
「おいかっけこは終わりだ。飛べないお前は岩へは行けまい」
追い込んだ と自負するメガネ隊長が、突き出した片手の魔法陣を銃口のように崖際のガラシャへ向ける。のけぞって魔法をよけたせいで背面から谷へ落ちるが、途中の斜面の岩のくぼみに足をかけて体勢を整える。ここは崖の上からは丁度ガラシャの姿が見えなくなる位置。そして、相手の位置はガラシャたちが固めておいた足場だ。
谷底につく前にガラシャの姿が消えたのを不審がったメガネ隊長が谷を覗き込んだとたん、
「〈切り裂け刃の風!〉風刃!」
弧を描いて、風の斬撃がメガネ隊長の頬をかすった。赤い滴が顎から滴る。
「あ?」
第二第三の攻撃こそ防がれたものの、キレたメガネ隊長がガラシャたちの思惑どうりに斜面に降りていく。
「おいメガネ?!」
イーグレットの引き止める声も聞かず、メガネ隊長は大振りの岩魔法をガラシャの潜む岩陰にぶつける。
「っ....!!」
粉々に砕かれた岩の瓦礫から現れたガラシャは、吹き飛ばされた勢いもあって谷底へと舞い降りる。
「翼は打撲させたはずだが....治癒魔法か」
すぐそばに一緒に潜んでいたミーツがガラシャの翼を治したのだ。ガラシャと共に谷底へ降りると、掬い上げるように両手から光粒を溢れさせた。
風に乗ってメガネ隊長たちに向かうが、拡散した光たちは軽々と避けられる。
「この場では羊、お前の攻撃は意味がない。が、俺は土魔法の使い手だぞ? 地面が剥き出しの場ほど適した場所は無い!」
メガネ隊長の周りに岩の破片が浮かび上がり、鋭い角がミーツたちへと照準される。
同時に、イーグレットもチャンスを逃すまいと風を纏う。
「それはどうかしら? なんにしろここであなたたちを倒す!」
ミーツが啖呵を切ったとたん、ふよふよと舞っていただけだった光粒が爆発する。そこはトスコロカリア側が足場にしていた岩の周囲。
「うあっ!?」「これはっ!」
岩を半分埋めるように固まっていた地面が掘り起こされ、足場だった岩もろとも谷底へ崩れていく。
巻き込まれる前に平らな根っこに跳び移る2人を、息つく間も無くガラシャのトラップが牙を剥く。鋭く周囲の空気を吸い込む風刃穴が、間一髪で避けたイーグレットのローブを引き千切った。
「この谷はもう私たちの舞台なの。大人しく狩られなさいね、トスコロカリアさん」
睨むメガネ隊長に怯むことなくミーツは再び光粒を飛ばして、挑発する。
「...生意気な羊が! 磨り潰す...!!!」
案の定挑発に乗っかったメガネ隊長とミーツの地上戦。
「俺はあのガキか。とっとと倒しちまうぞ」
「とっととって...俺は蒼空の司だ。 空中戦には自信がある」
飛行するガラシャと、鳥を従えるイーグレットの空中戦。
土と光、風と風の戦いが始まる.....
変なところがあれば遠慮なく行って下さい。
空き時間でちょこちょこ書いているのでズレてたりします....。




