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56. Bランク集会

まだ始まりません。

丘陵地帯を抜け、街に入ると 「きたぞ、神速だ!」 と誰かが叫んだのを皮切りに街の人たちが押し寄せた。とたんに、決勝の称賛の声が溢れる。


「きゅう!?」


囲まれて立ち止まるムーンのふわふわの毛をおばちゃんたちが寄って集って触り始める。悪気はないし、珍しがっているだけだと解っているムーンは少し嫌がりながらも大した抵抗は出来なかった。


「ふわふわねぇ、羽毛布団よりこの毛皮使いたいわ」


「そうねぇ。どお、ちょっとくれない?」


「あらいいわね! 私にも!」


「ぎゅうっ!? きゅーっ!!」


嫌だよ!? ムーンの毛1本も渡さないよ!?

びくぅっ! と全身の毛を逆立てるムーン。そこら辺の魔物や〈魔界〉の魔人たちより、街のおばちゃんたちの方が天敵みたいだ。ルーンなんてムーンの中に隠れちゃってもう何処にいるか分かんないし。


「あら、ユイナちゃんもいい毛並みね。触っていい?」


「いや、それはちょっと....」


垂れ下がっていたしっぽを急いで引き寄せる。触らせたら、今すぐ襟巻きなんかにされちゃうかもってくらい怖い食い付きようだ。シーアは男たちに絡まれてるし、好意なのはわかるんだけど抜けさせてもらおう。


「ムーン、お願いね!」


「きゅうっ!」


その言葉だけで理解したムーン。次の瞬間には助走も無しに、9メートルほどもある身体が宙に跳んだ。


「「「おわぁ!?」」」 「「「あらま!」」」


大きな体のわりに凄く軽いムーンは、軒並み続く屋根の上にふわっと着地した。そのまま、聞き付けた街の人たちに見送られてギルドまで駆けていった。

私から積極的に話しかけたこともないのに、いつの間にか街の人たちにも随分と馴染まれていたみたいだ。そういえば、知り合いも結構増えてきたしね。


「きゅっ!」


すたっ とムーンが門の前に降り立った。


「ありがとね。今人いっぱいいる時間帯だけどムーンも入る?」


ぐっすり寝坊したからもうすぐ昼だ。


「きゅ....きゅううん」


外で待ってるらしい。フルフルと頭をふるムーン。


「じゃあ..そうだね...。これ、解体場にいってディーンさんに渡してくれる? ついでに早いけどお昼食べてきな」


ストレージから、大きな袋をムーンに渡す。野外調理用にまとめてある肉塊詰め合わせセットだ。簡単なメモを添えておく。


「きゅ! きゅうん!」


「ルーンも行くの? じゃあご馳走してもらっておいで。食べたらまたこっちに来てくれる?」


「「きゅう!」」


いいお返事。こっちもイラさんに参加の説明とか聞かなきゃいけなかったし、ちょうどいい。

早速2匹は意気揚々と解体場へ向かっていった。


「じゃシーア、行こっか」


「うんっ」


広いギルドの中は、昼時なせいか人でごった返していた。大抵の冒険者がギルドの食堂を使うため、昼の食堂はちょっと物々しい。

シーアの手をとって人の隙間をぬっていく。ここでも昨日の決勝の賛辞やパーティーへの誘いを受けた。まぁ、マナリアやリサがいるから断るけど、こうやって声をかけられるのは嬉しい。

受付でイラさんを呼び出してもらうよう言うと、少したって奥からピョコピョコとウサギ耳を揺らしながら現れた。事務仕事をしていたのか、大量の書類を抱えて来る。


「これ、先に片付けてくるので応接室で待っててくださいっ!?」


急いで行こうとしてバランスを崩したイラさん。取り落としそうになりながら慌ただしく階段を登っていった。


「き、気を付けてね....」


遅かったか。盛大につんのめった。



待っている間にボードから採取クエストを何枚か抜き取って対象とともに提出。植物系とかなら結構ストレージにストックがある。少しズルい気もするけど、持ち物でクエストクリアする冒険者はざらにいる。

そのお金で早速食堂でレモネードを2つ購入。こっそりストレージから氷を落として、シーアに渡す。


「おいしい..!」


人口密度が高くて暑いしね。

段々冷たくなってきたレモネードを啜りながら応接室で待つことちょっと。くたくたになってイラさんが帰って来た。風魔法で冷風を部屋中に送る。魔道具の風は涼しくないしね。


「ユイナさん、またなんかしました?」


「涼しいでしょ」


「はぁ....」


ため息をつきながら、テーブルに書類を並べていく。


「これがBランク集会参加希望書です。参加脱退に費用はかかりません。これに書いてもらうのは集団行動による自己責任の承諾です。指示された行動で怪我をしても、対応出来なかった本人の失態だと言うことです。冒険者が細かなルールなどを作るので、ギルドが言うのはこのくらいですね」


ま、大丈夫でしょ。サインと魔力印をする。


「報酬はどうなるの?」


「基本的には、群れなら討伐数。大型、高ランク単体なら活躍度ですね。それに応じて金銭かそれに値する魔物素材を選んで受け取れます」


「お肉かな....」


「ユイナさんならそうすると思いました。でも、毒持ちも討伐したりするので、その時はお金を受け取ることも出来ますからね」


覚えておいて下さいと念押し。


「それで従魔の事なんですが、戦闘への参加は可能です。でも、冒険者さんたちが手柄を求めて集会に来ているので、1匹で強力なムーンは極力、取り逃しを主に討伐してほしいとのことです」


まぁそのへんは大丈夫かな。人が回りにいるとムーンも動きづらいし、自由に駆け回れるならムーンも嫌とは言わないはずだ。


「あの、イラミシアさん。私はお姉ちゃんと一緒にいてもいいんですか?」


解体士として着いていくシーアの最もな質問だ。


「シーアちゃんも参加するからには自己責任って感じなので、大丈夫ですよ。ユイナさんやムーンから離れちゃだめだよ?」



「はいっ!」


安心したのか、眼をキラキラさせるシーア。


「集会はすぐそこに見える集会所で1時からです。じゃあユイナさん、頑張って!」


「うん」「行ってきます!」


イラさんに見送られてギルドを発つ。時間までもうちょっと、ちょうど良い。


「「きゅうう!」」


ほんのり鶏ガラスープは香りがムーンたちからする。お腹も満たされたようだし、準備万端だ。

冒険者たちがいっぱい、集会所ってあれかな?


「ここってBランク集会所であってます?」


入り口のすぐそばにいた牛人族(ブル)の人が、「あ?」と振り向く。2メートル超えしているだろう巨体が見下ろしてくる。

怖っ。


「そうだぜ。お嬢ちゃん神速だろ? やっと参加かよ」


普通、冒険者は冒険者になったら集会に参加するようになるものらしい。

ムーンたちには外で待ってもらって、人混みからやっとセインを見つけた。


「おっ、ユイナちゃん来たな。じゃあほら、行くってよ」


時間になったら出発するらしい。ぞろぞろと集団が動き出す。


「きゅっ!」


ムーンはすでにルーンとシーアを乗せてスタンバイしていた。集団の後ろに着きながらゆっくりと歩むムーンに飛び乗る。

セインと駄弁りながら街の門を抜けて、途中で冒険者たちは馬や従魔に乗り、森に入っていく。

前方が少し開けている。その手前の木々の中で集団は止まった。それぞれ馬に目隠しを掛ける。

この先に目標がいるらしい。リーダーっぽいゴツい人が指示を出し始める。


「討伐対象はAランク、樹木蜥蜴(トレントリザード)! 枝針に注意してかかれ!」


誰がどの位置で討伐するかを発表していくリーダー。

群れが集まっている中央は、ランクB+が、その外側をランクB、さらに外縁をランクB-が担当するらしい。私とムーンたちは特例で外縁担当に振り分けられた。


「以上! おっし、行くぞ野郎共ッ!!!」


「「「「「オオオオッ!!!」」」」」



読んでくれてありがとうございます!

8月初頭に次話投稿予定ですp(^-^)q

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