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6.相棒たち

ムーンに乗って森を走り抜けること数十分。視界がぱっと開け、私たちは草原に出た。

ムーンから降りて辺りを見回す。街、どこ?


「きゅう。」


ムーンが片耳を前方へ倒す。


「あっちに街があるってこと?」


「きゅうっ。」


そうみたい。異世界の街かぁ、どんなのかな?

ゲームじゃあ、旧ヨーロッパみたいな石造りの建物とかだった。

ここからでは街は見えないからわからない。


「きゅるるっ。」


ルーンが小さな手で、私の星猫ローブを引っ張っていた。


「ルーン、どうしたの?」


ルーンは目をうるうるさせて私を見上げている。

チラッとムーンを見ると、こちらも何故か気まずそうにしている。どうしたのかな?

ムーンはルーンときゅるきゅる鳴いて何か話している。

きゅるるっとルーンは鳴くと、私の裾を引っ張って歩きだした。

なになに?

小さなルーンが、くいくいと引っ張るから、遅くて逆に着いていきにくい。しかも、ローブの裾を引っ張られているから、歩幅が狭くてまるでバレエをしているみたいにしか歩けない。

歩きにくい状態を更に悪化させるのは、私のはいている猫足の靴だ。

可愛らしい猫足だけど、爪が出ていて、硬い上に鋭いため、刺さりそうで恐い。

ムーンは知ってか知らずか、おろおろしながら横をついてくる。

ほんと、どうしたのかな?何て言うか、挙動不審?


森を抜けて、草原に出て、街の方向もわかった。ムーンたちは森の動物だろうから、名残惜しいけどここでお別れだろう。

足元のルーンに、かがんで 「連れてきてくれてありがとね。」と言うと、ルーンは首をふるふると振った。心なしか目が潤んでいる。


「ルーン?」


ルーンは更に強く私のローブの裾を握る。かわいい.......。

ムーンが私の前に来て、お座りし、短い前足を振ってなにか伝えたそうにきゅうきゅうと鳴き始めた。

その愛らしい様子に、口元が緩む。


「ムーンもどうしたの?森に帰らないの?」


ルーンとムーンは私を送ったら森に帰ると思ってたけど、もしかして街まで送ってくれるつもりなのかな?


「ムーン、街の大体の場所はわかったし、もう一人で大丈夫だよ?」


ムーンとルーンはいやいやと首を振る。

そんなに私って心配されるほど方向音痴だったかな?ちょっと悲しい?


「きゅうう.......っ!」


ルーンが私の足にくっついて離れない。猫足の爪、刺さらないよね?


「ルーン、お別れしたくないってこと?」


幼いルーンに、口調が柔らかくなる。なんか、幼稚園の先生にでもなった気分.......。

ルーンはコクコクと頷く。ムーンもそうだと頷く。

ってことは、着いていきたいってことかな?


「私、人間の街にいくんだよ?」


ルーンたちは猟師に追われるほどレアな動物だ。そんな彼らが人間のいる街に行くなんて.......危なすぎるよ。

まぁ、私も別れたくないから、ルーンたちにもしなんか来たら酷い目に遭わせるけど。


ルーンもムーンも分かっているのか、真剣な顔で頷く。

これは.......揺るがなそうだね。


「うん、分かった!一緒にいこう。ムーン、ルーン、私と一緒に来てくれる?」


「「きゅうっ!」」


2匹は目を輝かせて嬉しそうに鳴いた。

もふもふと旅、出来る!


「ありがとね、ムーン、ルーン!」


「「きゅうう~っ!」」


パタパタと身体くらいあるしっぽを振る2匹と私の、異世界旅が始まった。



◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




ムーンに乗って草原を抜けること2日間、色々なことがあった。

ウルフの群れに遭遇したり、初めてゴブリンと戦ったり、角があるウサギを捕まえたりした。

ムーンと私が主に戦ったけど、ルーンも魔法みたいなので援護してくれた。

ムーンは鋭い爪を魔法(?)で長く伸ばして斬殺し、私は長剣で脊椎を切って倒し、ルーンは赤々とした魔力弾と言うらしい魔力の塊を飛ばして戦った。

ムーンは言わずもがなだけど、強い2匹がいてくれて頼もしい。

なんていうか、ムーンはパワーファイターって感じで、ルーンはメイジみたいな感じかな?

ムーン、魔法も使ってるけど。印象がね。


初日、ムーンに乗って移動中に、ルーンに魔法弾のやり方を聞いてみると、可愛らしく教えてくれた。

ルーンは小石を持って、前にオーバーで投げたあと、なにも持たないで同じ動作をした。その間、両手には赤い光が灯っていて、振り下ろすと小石位の大きさの赤い魔法弾が飛び出した。

ようは、石を投げるように形、飛ばし方を イメージ して、魔力を放つらしい。

やり方は分かった。でも魔力がわからない。力をいれても魔力の光は出なかった。

休憩中にムーンが毛の中から、白い筋が入った黒い石を出してくれた。どう使うのか分からなくて、?を浮かべていると、ルーンが「きゅっ。」っと鳴いて、近くの石にぶつけて割った。

割っちゃって良いのかと思ったけど、そうするものだったらしい。

石は大きく破片を飛び散らせて砕け、光を反射してキラキラと輝く破片は落ちてくる途中でふわりと宙に浮いた。

小さなプラネタリウムのドームに入ったようで、唖然としていると、ルーンが再び魔力弾を放った。

すると、ルーンの周りの破片が強く光り、流れるように動いて手先に光が集中し、魔力弾が放たれたときに同時に光も遠ざかった。

魔力に反応して光る石だったのかな?

あれは、私に魔力の流れを見せてくれたらしい。こんなイメージってことみたいで、旅の間、何回か私も魔力弾が撃てるようになった。

イメージがちゃんと出来れば、魔法が出来るってことみたい。

いいことを教わった。

お陰で、 魔力弾 のスキルを獲得できた。


夜はムーンにくるまって寝た。

最初、どうやって寝るか悩んだけど、ルーンがムーンに飛び込んだのを見て思い付いた。

ムーンの毛にくるまって寝たら、絶対に気持ちいいって。

実際、リアルのどんな高級ホテルよりも気持ちよかった。ルーンもいい抱き枕だ。お陰でぐっすり寝れた。

もう、ムーンたちと離れるなんてムリ。やっぱり、愛すべきはもふもふだ。もふもふに悪いやつはいないよ。


って感じでもふもふに埋まりながら移動してきたわけですよ。

で、今、街の前に着いたところなわけ。

異世界といえばって感じの、ヨーロッパの感じの城壁に、大きな城。石造りの街で、theファンタジーだ。

いいね、この感じ。ゲームの世界もこんなのだったから、親しみやすい。


門に行くと、兵士さんたちが出て来て、案の定、ムーンたちのことを聞いてきた。


「こいつらは、雲獣だろう?お前の従魔か?」


「違うよ。彼らは仲間.......いや、相棒だよ。」


「「!」」


ムーンたちは相棒と言われて嬉しそうに反応した。

そう、大事な相棒だよ。

安心するように柔らかく笑いかけると、緊張していたムーンたちも、体の力を抜いてくれた。


「??」


そのやりとりに兵士さんたちは不思議そうにしていたが、 通交許可証をとるために受付に案内してくれた。


受付にいくと、お姉さんがいて、此方もまた困惑しながら銅貨3枚で、私とルーンとムーンの通交許可証を発行してくれた。

一緒に身分証明書も作ってもらった。

お姉さんがじろじろと見ている。なに?


「あの、興味本意なんですが、ユイナさんの頭の上のそれは?」


あぁ、お姉さんの困惑している原因はこれか。

猫耳の女の子とか、異世界なんだから普通にいると思うんだけど。この辺にはいないのかな?

試しに、私みたいな人がいないのか聞いてみる。


「耳としっぽがある人間(ヒューマン)ですか?獣人や鳥人、竜人はいますが、ユイナさんのような種族は知りませんね。ユイナさんは何族なんですか?」


どうやらいないみたいだ。

何族って、私、人間だよ.......。何故か耳としっぽが生えてるけど。

でも、人間って言っても信じてくれないよね。どうしよっかな。

まぁ、ファンタジーなら、


「.......猫耳族(ケットシー)、ですかね。」


猫耳族(ケットシー).......ですか。了解しました。かわいい種族ですね!」


私、新しい種族をつくっちゃったよ。



ムーンとルーンも、魔力を登録したり、私との 絆 を魔力の波動の同調を見たりして、通交許可証と、身分証明書を得た。

雲獣は魔物(モンスター)ではなく聖獣という神聖で普通、害の無い動物だそうだけど、街の人が怖がるから、従魔登録をするように言われた。

絆は魔物の餌付け(テイム)が完全に出来ると生まれる一方的な支配のための繋がりだそうだけど、私のは異例だったみたい。

従魔登録は、普通は絆を書面に移し、ほどけやすい繋がりを固定化するものらしいけど、私たちの間の絆は支配じゃないから、登録してもムーンたちを従魔化しないらしい。強いて言うなら、登録は仲良しの証明だ。

相棒って認められたようで、〔雲獣2匹との絆が深まりました〕と通知が来た。

ムーンたちも嬉しそうだ。


通交許可証と身分証明書が完成し、私たちはオリジナ市に入った。


さぁ、異世界life、ここからがスタートだ!!!








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