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55. 予選後の朝

タイトル通りです


7/22 少し追記しました。

ベッドからのそのそ這い起きると、窓越しにムーンの姿はなかった。すでに起きて、表でシーアから朝食を貰っているのか。

部屋のクッションに座っているマルピチャがピクッと耳を揺らしてゴロゴロと甘えてくる。ふわふわの黒毛を撫でれば、気持ち良さそうに無を細めるマルピチャ。釣られたように、クッションに抱き着いて寝こけていたルーンが眼を覚ます。


「ユイにゃ、ずっとぐっすりだったのにゃ。起きたら繋いでくれって言われてるにゃ」


「白虎たちに?」


「そうにゃ。寝起きで悪いにゃけど、魔力借りるのにゃ」


「普通の空間接続魔法はマルピチャ一人で出来るんじゃなかったっけ?」


転移が無理って言ってなかったかな?


「ユイにゃがあまりにも起きにゃいから、さっきも話したのにゃ。朝に2回は流石にキツいのにゃ」


「なるほどね」


ぽふっとマルピチャの背に手をのせて魔力を送っていく。合わせてマルピチャも空間接続を始めた。

少しして、ぐにゃりと目の前の空間が楕円状に歪む。見えてきたのは懐かしい白亜の樹だ。

すぐにひょこっと顔を出したのは朱雀だ。空間を覗いてすぐにパアッと明るくなった。


「ユイナ様っ! わぁっ久しぶりっ..ですっ!」


「うん。元気にしてた?」


「う、はいっ! ユイナ様のくれた服、みんな喜んでる..ますよ!」


「それはよかった」


〈境界〉から帰って来て、シーアの家に居候させてもらうことになった後、マルピチャに聞いてみたら、ここはもう私の家みたいなものだから〈境界〉との空間接続(リンク)が出来ると告げられた。なら早速と、大量に様々な衣服を買いまくってマルピチャに転送させたのだ。

美男美女揃いなのに、麻服とか絶対あり得ない! ってことで送ったそれらが気に入ってもらえたのなら嬉しい。

幻獣たちはたくさんいるからと、まずは1人1着にしてもらったのだが、朱雀が選んだのは黄色のワンピースだったみたいだ。

可愛らしくくるっとターンしてみせる。


「どう? 似合ってる..ますか?」


紅い髪によく映えてる。いいんじゃないかな?


「うん。ね、朱雀、様とか敬語は要らないからもっと砕けていいよ」


その方が気楽だもん。


「うんっ! ありがとユイナ!」


天真爛漫な朱雀には、敬語はやはり辛かったみたいだ。その方が自然でいいよ。

後ろへ手招きする朱雀。現れたのは朱雀より少し背の低い少年。翡翠色の所々ツンツン跳ねた髪に、後ろでくねる甲蛇。玄武だ。彼も麻服ではなく、送った服を着ている。って、なんで袖が裂けてるの?!


「ユイナじゃんお久~! 魔法の大会だっけ? オツカレ!」


「うん。玄武、袖どうしたの?」


「あー、なんか着た時に腕が通らなくてキツくて、無理やり入れたらこうなった」


よく見れば、玄武の黒いインナーはピチピチだ。そして服の上からでも判る細マッチョな身体つき。

こいつ、結構筋肉あるからな...。もうランニングシャツとかじゃないと着れないか.....?

それに、ツンツンボサボサな髪の毛が眼にかかって邪魔そうだ。....バンダナとか買ってあげるかな?

しょっちゅう振り払ってちゃあ嫌気がするよね。


「白虎と青龍は? 今外回りなの?」


ランヴァルシアの襲撃以来、毎日〈魔界〉との境界線を見回ることにしたのだ。パトロールには幻獣だけじゃなく、たまに守護獣も加わらせて魔国へ警戒させるのが目的だ。


「白虎はな。青龍はシスの町に行ってる」


「町へ? シャガール町長になにか用でもあったの?」


あの小さな町に青龍が行くってことは、なにか重要な事でも起きたのかな?

心配する私と反対に、朱雀と特に玄武は笑っている。


「青龍ったら、この前すーつっていう黒い服一式を来てシスに行ったのよ。そしたら、町のおばさんたちに気に入られちゃってたまに呼び出されてるの」


可笑しそうに朱雀が口を隠す。


「....そか」


キリッとイケメンの青龍青年なら、女性陣、今回の場合おばさんたちに目をつけられるのは必然か。

生真面目な青龍のことだし、おばさんたちに囲まれれば断れないだろう。

混乱しながらもそつなくオーダーをこなす青龍の姿が目に見える。


「あっ、ユイナ様! ユイナ様じゃないですか!」


魔法の歪みに気付いたらしい甲高い声音のツバメの幻獣が叫ぶと、辺りにいた幻獣たちも集まってきた。口々に挨拶や出来事を誇らしげに語ってくれる。


「人型にももう違和感とかないんすよ! どうすか!?」


「どおどお? お花で冠作ってみたんです!」


「ユイナ様が言ってたこっぷとやらを作ってみました! 人型の指は便利ですね!」


「草笛お聴きになります? 子供たちには大人気なんですよ?」


などなど。


「あ、予選の結果聞きました。2位でしたよね、お疲れっす」


虎耳をピクピクさせる幻獣の青年。

そう。昨日の決勝で私は2位だった。ちなみにマナリアは3位。

マナリアの身体強化魔法熱暴走(スタンピート)は、急激に運動能力を飛躍させるが、身体への負担がかなりあったらしい。体組織の過剰破損により、バッジの自動回復が行使されて1番に戦線離脱した。

そのすぐ後、長時間戦闘に体力が持たず、行動不能で私がアウト。

死神狐は最後まで膝をつかなかった。

私にスタミナが無いことは分かりきっていたけど、粘った末に負けるとやっぱり悔しい。


「本戦は団体戦に決まったそうにゃ。大会中にリベンジは出来にゃいにゃね」


本選は来週から3日間だそうだ。つまりあと5日。

地域ごと3対3でトーナメント式らしい。ちなみにシード権は王都イスカンダリアと、開催地であるアインシュバルトだそうだ。魔法学校がある都市はやっぱり強いらしい。


「ま、そのうちしてみようと思ってるよ」


今回は魔法のみっていう制限もあったし、全部開放して戦ってみたい。


「なら今度は勝ちますね!」「ユイナ様強いもん!」


まぁ、やってみないとわからないけどね。もちろん勝ちたい。


「んでも、そいつすっげえ怪しい感じなんでしょう?」


「そうそう、キツネ被ってるんだっけ? 変なの~」


「そいつ、魔人じゃないですよね!?」


顔近い...。あーほら、朱雀が押し出されちゃった。


「いや、魔人ぽくなかったし、大丈夫なんじゃない?」


たぶん。


「「「それスゴく心配になる....!!」」」


ツッコミされた。


駄弁っているうちに、 白虎が戻ってきたらしい。玄武の隣にぴょこっと現れた。


「ユイナ様!」


「 白虎おつかれ。え、なになんか可愛いんだけど!?」


「っ~~!!」


白虎が着ていた服、ピンクのTシャツだった。

ふんわりした白髪と合わさって、ピンク色がよく栄えてる。本人もちょっと恥ずかしいみたいだ。なんか似合いそうなの勝手あげないとな。


「今度また服買うから、もちょっと待ってて」


「「「「おおーっ!」」」」


「はいぃ...」


ぜひそうしてくれと、涙目線の白虎。


「来週、アインシュバルトに行くしね。なんか良さそうなの見繕ってくるから」


「「「「「やった!」」」」」


「ユイナぁ~、もちょっと動きやすいのが良いんだけど、そうゆーの無い?」


「私は別の色のわんぴーすが良い! 色はユイナに任せるね」


「この色以外でお願いします....」


目に見えてはしゃぐ幻獣たち。オーダーをつけてきたのは順に玄武、朱雀、 白虎だ。


「うん。わかった」


ちゃんと選んで買ってこよ。


近況報告は特に異常無し。ランヴァルシアも動きは無いらしい。あそこのお子様魔王はナーヴァギルだっけ? 青龍が弄くりまくったのが効いてるのか、最近はずっと偵察すら寄越してこないらしい。まぁ、一応こっちからの観察は続行。〈人間界〉からは犬が1匹迷い込んだくらいだそうだ。


「じゃあ、また」


「「「「「「はいっ!」」」」」」


空間が揺らいで元に戻った。長時間集中していたからか、マルピチャがぐでっと寝転がる。


「にゃー、うにゃ」


なんだそれ? って、寝てるし。


「きゅー」


ルーンがくいくい袖を引っ張る。くきゅう~とお腹の音。


「まだ朝ごはんまだだったね。行こっか」


「きゅう」


部屋から出ると家にいたのはリアーナさんだけだった。外からシーアとムーンの声がするから、ムーンのブラッシングでもしてるのかな?


「おはよユイナちゃん、ご飯、パンでいいかしら?」


ベッドで縫い物をしていたらしいリアーナさんにルーンがじゃれつく。リアーナさんに撫でられるの好きだもんね。

テーブルのパンを噛っているとシーアが戻ってきた。


「おはよシーア。ブラッシング大変だったでしょ? ありがとね」


「ううん。ムーンの毛すきやすいから大変じゃないよ。ムーンに喜んで貰えるのは嬉しいし、私も楽しいから」


そういって、次はルーンの毛をとかしていく。


「きゅうぅ~」


ルーンもご機嫌みたいだ。


「ユイナちゃん、今日はどこかいくの?」


「うん。セインに、今日Bランク集会でランクAの中位魔物(コモン)の群れの討伐やるって言ってたから、参加させてもらうことにしたの」


「そう。シーアは連れてくの?」


「うーん、シーア次第かな? ムーンたちも連れて行くし、危険はないけど」


マルピチャは寝てるし、起こさないでおこう。


「私行く。狩ったら絶対ムーンたち食べたがるよ?」


「そうだね」


ルーンもすいてもらいながらパンを食べ終わったみたいだし、そろそろいくか!


「いってらっしゃい二人とも、ルーンたちも。毎日言ってるけど、ムチャだけはしないでね」


「「分かってるって!」」


「「きゅう!」」


シーアとルーンがムーンのしっぽで背中に乗せられる。


「じゃあムーン、街まで!」


私が飛び乗ると、ムーンが軽快に駆け出した。




「きゅうっ!」

魔法大会が長かったので、閑話みたいな感じに続きます。

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