51. 魔法大会予選 4
久しぶりの投稿となりました。遅れてすいませんm(__)m
準決勝、ユイナの試合です
12/8 誤字訂正しました
うっすらと雲がかかった晴天に、高らかに開幕が宣言されたアインシュバルト魔法大会オリジナ予選2日目。
観客の数は初日より多く、大広場を眺める建物には、人々が少しでも観戦しようと身を乗り出すほど。場所取りに騒ぐ人々に運悪く落とされてしまった白猫をキャッチすると、安心したのか猫はスルリと屋根に降り立った。
って、寄り道してる暇ないし!
猫靴の爪を軽く出して屋根瓦を駆ける。猫ジャンプの足場に使った煙突の端で羽休めしていた鳩が驚いて飛び上がったのを皮切りに、周りの鳥たちも慌てて飛び立つ。心の中で誤って、今は早く会場に行かないとっ....!
建物がなくなるとそこはもう人混み。地面なんて見えない。
高さを無くしたジャンプで距離を伸ばしていた猫ジャンプを、高さも兼ねて跳躍。パルテノン神殿の柱みたいな柱の上を跳び伝って、最後の着地地点は勿論っ......っと。
時計塔だ。
下では今日の第1試合、光属性のおじさんとマナリアだ。
おじさんも凄かったけど、やっぱり、炎を自在に操るマナリアは天才だとわかるほど差が出てる。無詠唱の炎で攻めるマナリアに、おじさんの詠唱光の矢は圧倒的に不利。速さこそおじさんに利があっても、その速度の差は無詠唱魔法使いには無い。しかも、その相手がマナリアなら尚更。
徐々に脂汗が浮かんでいくおじさん。勝負の結果が出るのは近い。
「やっぱりここだった!」
息を切らしながら現れたのはリサ。またドレス?
「「やっぱりそこかよ!」」
この揃いに揃った声....下から見上げているのは双子だ。視界から消えたかと思うと、数秒後、なんかゾンビみたいになって現れた。階段ダッシュ速くね!? ってか怖いよ?!
「なんっ、で..逃げる..んだよ....っ! ったく」
「マジで..やめっ....俺ら殺..されちまう..って!」
息を切らして壁にもたれ掛かる双子。こっちも昨日と同じ正装だ。どったの?
〔花ノ木〕全員が正装って、なんかスッゴい違和感....。
「いいじゃないの。ここ見やすいのよ」
「「足すくんでるのに?」」
「そんなことないし!」
やっぱり高所恐怖症か、無理しない方が良いって。
「で、双子はどうしたの?」
ドレス着たリサを正装して迎えに来たとか、なんか催し物でもあったのかな? だって、観戦に来るのにそんな格好しないでしょ?
こんな所にまでスーツ着てると言えば、あっちの特別席の貴族とか上層部の人たち.....って、あれ?
「もしかしてリサって貴族だったりする?」
「「あーえっとな....」」
あれ? なにその反応? えっ、まさかの?
歓声が一際大きくなって、審判のコールが響く。勝者はマナリア。これでマナリアは決勝進出だ。
第2試合は結界構築までの1時間。お昼、軽食だったし、なにか食べるか。
出店も昨日よりかなり多く出店しているみたい。と、ちょうど目に入ったのは...
「....ワッフル?!」
あの独特の網目状の生地を次々と売りさばいている、ワッフルの出店だった。
まさか、異世界にワッフルが存在していたなんて....! 食べてみたいっ、異世界ワッフル!
見たところ、その残りはあまりない。対して客はその倍近く。
時計塔を跳び出して、来たときと同じように柱を足場に跳ぶ。そしてなんとか、列も作らずにワッフルを買い求めに集まっている客の中に乱入。残りは6個!
前列の客たちがワッフルを勝ち取り、残りは2つ。人が動いたのを見逃さず、隙間と言う隙間を潜って前列へ。店員さんにお金を渡すために腕を伸ばす。気付いた店員も、ワッフルを差し出してくれた。
...取った!
と、思った刹那、横入りしてきた太い腕が、見た目に反して俊敏にワッフルを店員からもぎ取り、硬貨をカウンターに叩き付けた。一本の腕がそれを1秒足らずでやってのける。そして反対の腕も、時をほぼ同じくして最後のワッフルを勝ち取った。
「....んなぁっ!?」
はあっ!? 誰だよっ今の!?
人混みから意気揚々とワッフルの紙袋を掴んで抜け出したおっさん。アイツか....! ワッフルって顔じゃないだろ!?
そのおっさんが向かった先には、見覚えのある真っ青青年。めっちゃ嬉しそうに受け取ってる。
「サンキューおやじ! 俺の好み分かってんな!」
「バーロォ、お前は甘いものならなんでも食うだろうが」
あいつ対戦相手じゃん!! しかも、そのがたいで甘党....! 見えない....。
見ている方も幸せを感じるかのような青年のようすに、満更でもなさそうなおっさん。
.................恨むわ。
ワッフルの恨み、すぐに晴らすから!
心の中で宣戦布告したユイナだった
◆
「第2試合、開始っ!」
バッチを付け、結界に入ると、すぐさま試合の火蓋はきられた。
「キュートな女の子でも手加減しないぜ!」
青いやつ改め、ワッフル野郎が水弾を乱射して先制攻撃! とでも思ってたか、軌道をカーブさせた風球に後ろから突き飛ばされた。
「ぐあはっ! ...だが効かないな!」
顔面から地面を擦ったやつが何を言ってるんだか。
水球乱れ撃ちがかなりの威力で何10発と放たれ、フィールドを覆う結界にぶつかって水煙をあげる。かなりの実力者みたいだ。だけど、それは一発たりとも私を掠りもされない。ワッフル、恨んでるから。
高速強力な魔法を猫耳と眼が、魔力感知の第六感が、あっさりと全て最低限の動きで避けることを可能にする。
避けられているどころか、さらに間合いを詰められていることに焦ったワッフル野郎。片手で攻撃をしながら、もう一方で地面を沼に変えてみせた。ワッと歓声が湧くが、ユイナたちには聞こえることはない。
思ったより深い沼に、フィールド全面が変化した。唯一乾いているのは、ワッフル野郎の足元のみ。
近寄れないなら遠距離で! 風刃で狙うが、沼が不自然に隆起して行く手を阻んだ。見ると、ワッフル野郎がなにやら両手に魔方陣を展開させている。色は青。水魔法だ。
「容赦はしねぇぜ! 水操作!」
「!」
これは....昨日の一戦と同じ感じだ。地面に染み込ませた自分の魔法の水で、フィールドを自分のものにした。昨日と違うのは、水量を増やして沼にすることで、物理に働いたこと。防御もながら攻撃も可能になったわけだ。
その土砂が盛り上がることで、底の見えない沼が点々とつくられる。
「うわっ!?」
ヌメッとした何かが足にまとわりつく感覚。驚いて見ると泥が這い上がって来ていた。
うげっ...! きもちわるっ!
魔力を放出して振り払うと、泥は土となって落ちていった。私の聖属性の魔力が、魔法を無効化したみたいだ。便利だな、聖魔力。
「いくぜ猫ちゃん!」
ワッフル泥野郎が両手を振るうと、沼から2本の水柱が立ち上がった。そのままそれが此方を凪ぎ払いに来る!
左右から挟むようにして振られる巨大な泥の腕。その質量に触れただけで腕がもげそうだ。迫り来る泥の掌を風刃×2で切り落とす。腕を横に切られたために、形を保てなくなった泥の腕が崩れ、水を撥ね飛ばし元に戻る。....大したことないな。切れるし、もろい。
風を纏い、空中を駆けてワッフル泥野郎との間合いを詰めると、流石に焦ったのか焦燥に顔を歪ませ....なかった。
その顔に表れたのは、笑み。
猫耳が後方から迫る1つの音を察知する。が、空中で加速したばかりの身体は急には止まれない。焦ったのはこちらだった。
目前の相手の片手には、水球の上位互換、水弾。もう片手は体を陰にして魔方陣を
展開させていた。
あっと思ったときには、もう、遅い。
迫り来る水の高速弾、後ろから襲いかかる凶悪な掌。
この体勢で、回避は不可能。
心の底から込み上げてくる何かに、身体に震えた。
続きは次回で!
投稿日は未定です。流石に1ヶ月は空かないと思います(^-^;




