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45. 物事が進展し始めた

これからいろいろ突っ込んでいこうと思います。

よろしくです!

ノックの後に返ってきた声はメイドさんのものだった。遠慮がちに開かれた扉の向こうには、大きなベッド。あれ、見たことないけどキングサイズとかってやつかな?


「具合はどう?」


「奥様、あまりよろしくありません。今日は特にお辛い様子で....」


病気なのかな?

足元をクレアがくぐり抜けて、ベッドに駆け寄った。慌ててメイドさんが止めようとするも、器用に避けて行ってしまった。


「クレア...!」


続いてベッドの側に行って ハッ とした。

ベッドに横たわる少年、歳は私よりも少し下、中学生くらいか。その顔はうっすら赤く熱を持っていて、投げ出された片足に包帯が幾重にも巻かれていた。


「....ライオスは、この前の実戦授業でBランクの魔物に足を切られてしまったのです。治癒魔法術師はこの街には居ないので薬と聖水でなんとか...」


辛いのだろう。タミアさんの声が段々震えて嗚咽が混じる。


「ライオス様は勇者に憧れて剣技を磨いておられました。優秀で将来を期待されていたのです。今は、こちらの剥製をご覧になって、自分もこんな戦いをしたいと。旦那様もそれを解ってあなた様に頼んだのでしょう」


ずっと看病してきたメイドさんが、氷嚢を取り替えながらこぼした。

そっか、それであんなに...。


ちょうど包帯の取り替えをするようだ。癒着していたのか、パリパリと角が剥がれて包帯が取り払われる。傷は縦に一直線、痛々しい。

タミアさんがマレーとクレアの眼を鬱ぎながら悔しそうに俯く。

器に小瓶の中の液体が注がれ、新しい包帯に浸透していく。あれが聖水なのか、魔物を退けるだけでなく傷を癒す効果があるらしい。

少しでも傷が早く治るように、治癒魔法(ヒール)回復魔法(リカバリー)でもかけておくかな。

包帯が再び巻かれ、メイドさんとタミアさんが祈るようにライオスの手を握り締めた。真似をするようにマレーとクレアも手を繋ぐ。


「本当はライオスからユイナさんにお礼を言うための場でしたのに、こんな状態ですいませんね」


そっと退室すると、タミアさんが深々と頭を下げた。


「そんなことしないでよ。お安いご用だから」


ありがとう と、タミアさん。

あ、そうだ。


「ライオスくんに、治ったら闘う現場を見せてあげる って伝えて」


「! きっと喜びます」


少し曇っていたタミアさんの眼に、ほんの少しの光がさしたような気がした。



遊び足りない様子のクレアとマレーの遊び相手をしていれば、幼いクレアはいつの間にか寝息を立てていた。タミアさんとお世話になったメイドさんたちに今日のお礼を言って帰る。

領主さんは見送りに来てはくれなかったけど、帰り際に2階の執務室から手を降ってくれるのが見えた。

ライオスくん、早く治るといいけどな.....。





帰ったら青い顔のシーアとリアーナさんに なにもしなかったよね? ってすっごい迫られたのは何でだろう?











王都イスカンダリアにて


華やかな街の一角、暗い路地裏で、マントを深々と被る怪しい人影が1人。暗闇に現れる幽霊(ゴースト)下位魔物(レッサー)を片手で掴まえるたび、口元へ運んでいく。

吸い込むように食べ終えたマントの男のもう片方の手には、全く不釣り合いな絵柄のキャンディ。

おもむろに上を見上げた先には、どんよりと曇る空が広がっている。その雲にすら届きそうな大きな王宮の上空に、妖しくも美しい光の帯が悠然とたなびいていた。

王都の誰もが唖然として見上げ足を止めるなか、王宮を守る衛兵たちは、慌てふためいて走り回っている。恫喝する声も混ざり、隊長はいまだかつてないほどの兵が王宮の周り、中に配置されていく。

王宮がパニックに陥るなか、ギルドが調査に冒険者を大募集したが、結局得るものはなかった。ただひとつ、空に浮かぶ光の帯の中に、不思議な影が浮いていたことを除いて。



光は徐々に消え、ほくそ笑む男の傍らに、いつの間にか小さな人影が。


「次はアインシュバルトだ。メル、いいな」


低く唸るような男の声に答えたのは、子供の小さな声だった。


「....楽しませてくれるなら」


差し出された物を奪うように取ったメルと呼ばれた人影の様子に、満足げに男はニヤつき、マントを翻して路地の奥へと消えていった。

残された影はキャンディを頬張ると、なにかあるわけでもなく表の道を歩く人々をぼうっと見つめていた。











所変わってオリジナ、ギルドの食堂にて


「えっ、マナリアってばコロッセオに行きたいの? 」


ええっ!? っとリサ。

口に運びかけていたサラダが、皿にフォークごと戻っていく。


「再来週、魔法の大会があるのよ! 魔法使いなら何度だって行きたい大イベントなんだから!」


コロッセオ? ってギリシャのあれ?


「ねぇ、そのコロッセオって?」


異世界にも、危険な格闘技があるのかな? あ、でもVRゲームにもプレイヤー同士のOne on One とかあったし、あっても変じゃないか。むしろ、こっちの方がありそうだ。


「えっ、ユイナちゃん知らないの!? すっごい有名なんだよ!」


リサとマナリアが興奮ぎみに教えてくれたのを要約すると、


コロッセオとは、オリジナの近くの街で、軍事国家みたいに扱われている 軍の街アインシュバルト という街の大きな競技場のこと。

そして再来週開かれる魔法大会は、各街ごとに3人の選手が参加し、トーナメントで優勝すれば大金ゲットの大チャンス。

街代表3人に入るためには、ギルド、領主、どちらかの推薦があること、そしてその推薦された中でトーナメントを行い、上位3人が選ばれるという。

その予選トーナメントは明後日から、街の大広場で行われるらしい。


「で、私ははギルドから推薦されて、予選参加するってことよ!」


ふふん とドヤ顔で高らかにマナリア。

なるほど、だからさっきから顔が煩かったのか。


「リサはどうなの?」


「私はダメ。予選でも本当にすごい人たちばかりだもん」


だからムリムリ。と、リサ。


「ところでさ、ユイナちゃんはどうなの? ユイナちゃんならギルドマスターも出すでしょ」


「いや、なにも」


「「えっ!?」それ本当?!」


ガタンっと、立ち上がったマナリアの椅子が倒れる。

そんな驚くことなの!? 私、面倒事はあんまりしたくないんだけど!?

受付の方から見知ったウサギ耳がピョコピョコやって来た。

考えたくもないけどこれはまさか...!


「あっ、いた! ユイナさんっ! お知らせがあるんですよ!」


イラさんがファイルからプリントを取り出し、渡されたそれは...!


アインシュバルト魔法大会推薦状


「やっぱり! ユイナちゃんも頑張ってね!」


「そうだと思ったわ。ユイナ、トーナメントで当たっても手加減なんてしないわよ!」


うわ、フラグ成立...嫌だなんて考えなきゃよかった。


「ユイナさんには、ギルドと領主様、両方から推薦が来ました。頑張って下さいね!」


「マジで...?」


「はい、本当ですよ! 予選でも勝ったら賞金が出るので、短期間に大儲けするチャンスです!」


それは嬉しいけどダルい...。

リサは羨ましがっているし、マナリアはやる気満々みたいだ。


「あ、ギルドマスター」


イラさんの向く方を見れば、いつもながらムキムキの黄犬人族(レトリーバー)のエルさんが。


「俺とディオとイラミシア、さらには前に行った試験場のアスランドのギルド職員からの推薦に加えて、領主からの推薦だ。二人とも、期待しているからな。」


最後に眼がマナリアと私を往復して、それだけ言ってエルさんは去っていった。

更に燃えるマナリアに、激励するイラさん。絶対観に行くから! とリサまで。


これもう、やるしかないか。












読んでくれてありがとうございました!

魔法大会の相手の案があれば、教えて下さい!


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