44. 領主の御誘い
ユイナが領主邸に行きます。
私一人の感性だと表現が違ったり乏しかったりするので感想や意見お願いします。
あの再会から、私は事あるごとに(なんとなく来る日が多い)リサたちやマナリアに引っ張りだこになっている。もちろん、それ事態はかつての私にはあり得なかったことで嬉しいんだけど、こう毎日朝から押し掛けられて騒がれるのはちょっと...。
ここは私の家じゃなくてあくまでシーアの家なんだから、ちょっとは遠慮してほしい......って言ったら、「「ユイナ(ちゃん)がすぐ来てくれればいいじゃない!」」と、私が怒られた。
今日も今日とて双子と共闘、リサとマナリアと三つ巴の魔法連発合戦などなど、体がいくつあっても足りなそう。つか、もう筋肉痛ヤバい。私は長時間戦うってのは嫌いなんだよね。極力最低限の動きで確実に決着を着けたい感じ。
シーアはシーアで私が誰かといるのを喜んでくれてるみたいだ。ちょっと一人で突っ走りすぎてたのかな。
「きゅうん」「きゅ~」
ムーンたちは別として考えると、だよ。
やっぱり、動物だけに入り浸ってると変に人に見られるのかな?
ベランダを開けて、ムーンに埋もれる。そんなこと、このもふもふの前には関係無い。
「お姉ちゃん、伝書鳩来てるよ」
「ふぇ?」
おっと、寝ちゃうとこだった。
伝書鳩ってことは結構急用なのかな? 誰からだろう。
窓の縁で クルッポー と白鳩が鳴いている。見たとこ結構な家の鳩みたい。脚から慎重に手紙を外し、見てみると見慣れない蝋印が押されていた。これ、どこの家紋?
「あら、それ領主様の家紋ね。ユイナちゃん、なにかあるの?」
「...領主さん?」
開いてみると、綺麗な字で短く『今宵の晩餐に参上出来るようならば、領主邸を訪れること』とあった。
「これ、断るのはどうすれば?」
知らない人と夕飯とか、嫌に決まってるじゃん。何考えてるの領主さんは。
「正気なの? 領主様のご招待を断るなんてそんな恐ろしいこと」
手紙を読んだリアーナさんは青い顔で震えていた。領主さんってそんな怖いの?
「この街の最高権力者よ。嫌でも行ったほうがいいわ」
断ったら何されるかわかったものじゃないわと、倒れそうになっている。シーアが宥めてリアーナさんを寝かした。
「つか、これから行けってこと?」
「そう、なるね」
シーアも不安そうに見上げてくる。
どうも領主さんって怖い人みたい。それじゃあ、断るなんて無理だよね....。
「しょーがないなぁ...行くかな」
はぁ
ムーンたちは待機。なにかあったら困るもん。
「お姉ちゃん、帰ってきてね?」
「うん。なにかあっても必ずなんとかして帰ってくるから」
テーブルマナーがダメで投獄ってことはないよね...? まぁ、もしそうなっても脱獄するけど。
「なんとかって、やり過ぎちゃダメだよ?」
「わかってるよ」
器物損害くらいで済ませるよ。大丈夫、襲ってこない限り人には手は出さないからさ。
「じゃあいってくるね」
とりあえずスマイルで行こうか。何があるかなんて、今グチグチ考えていても仕方がないしね。シーアが心配しないように笑っておこう。
「う、うん。行ってらっしゃい」
なんかシーアまで青い顔してたのはなんでだろ?
(お姉ちゃん、怒って邸宅を全損とかしてこないよね...?)
◆
豪華な鉄門を警備係に案内されて抜けると、なかなか広い庭園の先に豪華な屋敷が見えてきた。入口の重たい門が開かれると、うわっ凄いシャンデリア。壁で光ってるのは全部発光の魔法道具?! 領主さん、どれだけ金持ちなの?!
「冒険者のユイナさんですね。お待ちしていました、此方です」
入口のメイドさんに案内されて屋敷を進むと、執務室?
「旦那様、ユイナさんがいらっしゃいました」
ノックの後に扉はすぐに開いた。この人が領主さんか。イメージ通り太ってる。
突き出たお腹を揺らしながら現れたおじさん。見た感じ怖そうじゃないな...。
「どうぞ入って」
「あ、はい。失礼します」
いかにも執務室って感じ。デスクの上、すごい量の紙...。やっぱり偉い人は忙しいみたいだね。ちょっと散乱してる。
「こっちだ。座ってくれ」
ソファーじゃん。懐かしい!
領主さんも、重さでめり込みながら正面のソファーに腰かけた。
領主さんはボロゼーノさんと言うらしい。
「例を言おう。君が持ってくる魔物はどれも状態が素晴らしく良い標本が出来た。息子も大いに喜んでな、是非とも君に会いたいと言っていたのだよ」
「へぇ」
この領主さんの息子さんだと、やっぱり太ってるのかな?
「これは個人的な君への報酬だ。これからも君に頼むとしよう」
ゴトリとテーブルに置かれたのは、綺麗な刺繍の施された大きめな巾着袋。しかもパンパン。
うわっ、銀貨180枚はあるでしょこれ。
「受け取ってくれ」
これ、マジでいいの? 窺うようにそろっと領主さんをみると、なんか笑われた。勧められてるし、貰おっか。
「ありがとう。では行こうか」
領主さんが立ち上がる反動でギシッっとソファーのバネが軋む。あ、なんか奥の方で嫌な音した...。
またしても豪華な廊下を進んで、食事の間に直々に案内された。映画とか漫画の世界でみた長いテーブルに、料理がすでに並んでいた。
領主さんがテーブルに着いたあと、私もメイドさんに座らされた。正面には3人分の椅子。
少し経って、女の人と男の子と幼い女の子がやって来た。男の子が私を興味津々に見てくる。
「遅くなってすみません。ボロゼーノの妻のタミアと言います。こっちは息子のマレー、娘のクレアです」
「マレーです」「くれあです。4才!」
「冒険者のユイナ。こんばんは」
「あい!」
クレアは元気いっぱいな女の子って感じ。マレーのほうは小学生くらいかな、おとなしい感じがするけど、この子が魔物の標本の子なのかな?
「ねぇお母様、後でライオス兄さんにも会わせてあげようよ」
「そうね。きっと喜ぶわ」
ライオス兄さん? お兄さんがいるのか。
「ではいただこうか」
「「はぁーい!」」「いただきます」
お兄さんがこの場にいないのは気になるけど、今は料理をいただこうか。
アクアプァッアみたいなのに、青物の多いサラダ、カットされてるのはフランスパンっぽい感じ。
皿や盛り付けは別として、なんか普通の料理だな。こんな豪華な家だから、もっと豪華なの食べてると思ってたよ。...これ、味付けの塩は植塩かな?ちょっと苦味がある。
「不思議に思ったかね? オリジナの領主ともあろう私たちの食卓が、庶民と大差ないことを」
あ、顔に出てたかな...。
「少し驚いたかな。想像と違かったから」
「そうだろう。庶民の立場にあわせているのだよ。私たちだけが豪勢な暮らしをしてしまっては申し訳ないからな」
魚の切り身をパクりと口にいれる領主さん。余計なことだけど、見た目に反してあんまり食べてないみたいだけど、足りるのかな? 質だけじゃなく量まで減らすとか、心掛けは凄い決断したね。
4方向からの質問に簡単な受け答えをしながら料理を味わって食べ終えた。ちゃんと周りのペースに合わせたから、あとは頑張ってもぐもぐしているクレアを待つだけだ。追加で注がれたお茶で口直し。おっ、残さず食べ終わったみたいだ。
「お母様、早速兄さんのところへ連れていってもいい?」
「くれあもゆいなと大きいにいにのとこ行く!」
「はいはい、あまり騒ぐんじゃありませんよ?」
「はい。お父様、ユイナさんを連れていってもいいですか?」
なんか、こっち放って勝手に話が進んでる。
突然、クレアが椅子から降りて視界から消えたと思ったら、痛ったぁ?!しっぽに痛みが....!
振り向くと、イタズラが成功してニンマリしているクレア。ちょおっ、引っ張るなぁ!
「あっ!? クレアやめな!」「クレアやめなさい!」
幼児相手にどうすればいいのかとオドオドしていたら、マレーが駆けつけて放してくれた。痛かったぁ.....。
「ごめんなさい、大丈夫でしたか!?」
「うん。ありがと、平気」
ちょっとヒリヒリするけどね。
「にいに! 猫ちゃんのしっぽ!」
あー、ゆらゆらしてたから本物か確かめたくなっちゃったのか。これは私も悪かったね。
「クレアちゃん、私のこのしっぽも耳も本物だから引っ張ったら痛いんだ。さわるなら痛くしないでね?」
出来ればあんまり弄らないでね。
「ほら、クレアも謝んな。クレアだってぐいって腕とか引っ張られちゃ痛いでしょ?」
「....うん。ごめんゆいな」
マレーくん、さすがお兄ちゃん! 理解できたのか、しょんぼりするクレア。
「分かればいいよ」
もしルーンがこの場にいたら、どうなってたか...。これでクレアも手加減を覚えてくれたかな。
心配してくれたタミアさんに大丈夫だからと断って、ライオスくんのところへ向かう。タミアさんに案内されて進むうち、クレアが私とマレーの手を繋いでご機嫌に歩き出した。ずいぶんとなつかれたみたいだ。
廊下の奥の部屋、ここにライオスくんがいるみたいだ。
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