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37. 〈境界〉の魔王 の儀

遂にユイナの魔王の儀式です!


マルピチャに案内され、ムーンたちと転移魔法でやって来たのは小さな泉となんか大きな蒼い岩が高くそびえる町の広場だった。

なんで幻獣の住む〈境界〉に人の町が?

不思議に思いながらも、マルピチャの後をついていく。


「ここは?」


「この町の長の家にゃ」


ログハウスという表現がぴったりな家だ。長ってこともあるのか、他の家よりかは大きい。


何の前触れもなく扉が開き、現れたのは老人。


「おぉ、マルピチャ。そちらが候補さんかな?」


「そうにゃ」


「あっ、どうもユイナです」


ペコリと自然に社交辞令発動。反射だったね。


「そうですか、ユイナさんと言うのですか。可愛らしい」


ん、よく言われる。特にオリジナの大通りの店のおばちゃんとか。


「私は〈境界〉の町シスの長、シャガールと申します。良しなに」


シスっていう町らしい。

色々聞きたいことがあるけど、マルピチャが早速切り出した。


「早速にゃけど、〈境界〉の魔王の試練を受けたいのにゃ」


シャガールさんは落ち着いた様子で微笑む。


「はい、わかってました。こちらです」


〈境界〉の町の長なだけあって、なんか凄そうな人だな....。


シャガールさんについていくと、あ、さっきの広場。


「では、早速測りましょう。ユイナさんの器を」


泉で手を清め、シャガールさんは蒼い岩に触れ、何か唱え始める。すると、魔力が泉と岩を覆い、泉と蒼い岩を渡す石橋の上にいた私たちは中に閉じ込められた。

その間も、シャガールさんは何か唱え続け、言い切った瞬間、蒼い岩がサファイヤの様に透き通り、輝く。


『〈境界〉の魔王とならんとする者、我に手を当てよ』


んお!? なんか声がする!?


「さぁ、ユイナさん、聖蒼岩に手を」


促されるままに、聖蒼岩に触れる。

すると、岩は更に光を放ち、天にも届いていそうなくらい高く光の柱が立った。

とたんに、辺りの空気がざわめく。

魔素が荒ぶり、次の瞬間には泉は消え、白い平らな世界が岩を中心に広がっていく。


『神に示せ、そなたの力を』


蒼い炎が対角線上に4つはぜたかと思うと、現れたのは四守護獣。


「ユイナさん、ついに...」


朱雀、涙声になってる....。


「「「せーの」」」


「「「「我らと戦い、勝ってみせよ! 新たなる〈境界〉の魔王としての力を示せ!」」」」


四頭の守護獣が、咆哮すると、回りに青い円が現れた。

この中で戦えってことか。

つか、今、せーのって言った?


『皆に示せ、そなたの健闘を』


ラインの外側に炎が燃え上がり、現れたのは〈境界〉の幻獣たち。

あ、町の人たちもいる。


『見せよ、力を』


その言葉を口火に、四守護獣が牙を剥いた。

背後から青龍の雹嵐(アイスストーム)が放たれ、バカみたいに広い範囲に尖った雹を含んだ爆風が迫る。

そして、正面からは白虎の稲光雨(ライジングレイン)が、絶え間無く打ち降ろされる。

すっご、四守護獣ってだけあって威力半端ないんですけど!

防御結界(シールド)でも流石に不安だから、ここは魔法無効空間(アンチマジックエリア)&防御結界(シールド)

魔力効果が消え、稲光雨(ライジングレイン)は消失したものの、雹嵐(アイスストーム)で押し出された空気は物理的に残り、防御結界(シールド)でやり過ごす。

しかし、次の瞬間、防御結界(シールド)に物凄い衝撃がかかり、思わず魔力を更に込める。振り返ってみれば蛇?!

私を飲めるんじゃないかってくらい大きな顋が、最小限サイズの防御結界(シールド)を噛み砕こうとしていた。

蛇を伝って行けば、玄武か!

本体の玄武が、咆哮し、白い地面から尖った岩が隆起し、更に防御結界(シールド)に圧を掛ける。


「ピィーッ!」


鋭い鳴き声と共に突っ込んできた朱雀は、全身紅い炎で覆われていた。

なんかあれヤバそう。


防御結界(シールド)の一部を突起の様に伸ばし、柔軟性を持たせて朱雀を叩き落とす。


「ピギャッ! いったぃ」


ちょっと可哀想。

でも、これって本気でやらなきゃいけないやつだよね。


「グルオオオッ!!」


青龍が吼えると、その振動で空気までも裂けたように空間が歪むのを感じる。

空間魔法か!

魔法無効化(アンチマジック)を試みるも、私が理解出来ない魔法現象はやっぱり打ち消せない。

とりあえず歪みのある場所から待避。随分とライン近くまで押し出されちゃった....。

すかさず玄武が甲蛇で攻める。そこに朱雀の炎連弾(ファイヤラッシュ)と白虎の咆哮(ボイスカノン)が加わる。

避けれるけど段々押されていく。

やば、ライン越えちゃうじゃん。

とりあえず魔法無効空間(アンチマジックエリア)で朱雀のは無視できる。

玄武と白虎と新たに加わった氷槍(アイスランス)は青龍か、3匹は学習したみたいで物理攻撃に切り替えてる。

青龍のはさっきの魔力生成物じゃなく、水蒸気を集めた本物の氷だ。凄い怖いんだけど。

私としては攻撃したくないし、全員を場外に出して勝ちたい。

あ、吹き飛ばすか。

あー、でも朱雀以外デカいしな、風魔法じゃ動かないか。

....うーん。

........うーん。

............あ、じゃああれにしよ。


防御結界(シールド)!」


フィールドはラインを直径に半円状のドーム。つまり空にも限界がある。なら、そこまで防御結界(シールド)で押し出して勝てばいい!


急速に拡がっていく防御結界(シールド)に攻撃も防がれて押されていく4匹。

こちらも薄くなるほど防御力が減る防御結界(シールド)の防御力を下げないように、魔力を大量に流していく。流石にちょっと辛い。

とうとう押し出せたかと思った瞬間、結界が砕かれた。


バリンッ!!!


「龍の牙は全てを砕く!! ナメるな!」


「マジか」


青龍が物凄いオーラを放って一気に距離を詰める。

防御結界(シールド)が破られるのは想像もしてなかった。でも、これでよかったかも。

今、3匹はラインギリギリ、青龍は()()にいるから。


空気膨張(エアバルーン)!」


水魔法と火魔法で大規模な水蒸気爆発を起こし、更に風魔法で加速させる。

イメージ通りの爆風に、ライン際にいた3匹が場外アウト。青龍は空中姿勢を崩し、空気抵抗が増してライン方向に流される。

転がってラインを越えると思ったが、爪を食い込ませて耐えた。

凄いな。でも、ここで決めさせてもらうから!


空気膨張(エアバルーン)が青龍の手前で爆発し、辺りの幻獣たちから歓声が起こった。


「勝った....」


青いラインが消え、幻獣たちがわっと駆け寄ってくる。


『神に願え、そなたの意思を』


『皆に誓え、そなたの意思を』


幻獣たちが、白亜の樹の時とは大違いに晴れた表情で、期待に、希望に満ちた眼で私を見る。


ここが正念場だ。


神様は、〈境界〉の魔王の願いを1つ叶え、その願いから更なる進化をもたらすらしい。

ここで願うことは、1つだけ。でもその前に、皆の希望を聞きたい。

ざわめく幻獣たちを向く。あ、ムーンたちもいるじゃん。


「私は、ユイナ。決めたよ、〈境界〉の魔王になるって」


四守護獣が、やっと肩の力を少し弛めた。幻獣たちからも、更に歓声が起こる。


「私は皆を助けたい。だから〈魔界〉の兵と皆と共に戦うことを誓う。でもその前に!」


歓声がピタリと止み、なに? と全員の注目が集まる。


「このまま戦えば、この前の二の舞に成りかねないよ?」


ギクッとした様子の白虎と朱雀。この2匹は特に信じたくなかったんだろう。白亜の樹でも、戦えるって言ってたし。

ざわつく幻獣たち。気まずそうに白虎が顔を伏せる。


「じゃあなんで、過去1番強いって言われたこの前の時に負けそうになったのか。理由は、まぁ敵の数が多かったこともあるけど、1番は別にある。なんだと思う?」


「「「「?」」」」


「俺らが守護獣様たちに頼ってばっかだったから?」


「私たちが脚を引っ張ってしまったのよ....」


その他沢山の幻獣から発せられたのも、大体同じ内容だ。


「それも含めて、どうしてだと思う?」


更にハテナを浮かべる幻獣たち。


「魔人は、人の形だよね、二足歩行。皆は四足歩行でしょ?」


「それが何か?」


キョトンとする幻獣たち。


「脚は何に使うもの?」


「移動ですけど....」


「じゃあ皆が物理攻撃するとき、何を使う?」


「牙と爪ですけど....?」


「魔人は?」


へ? と、幻獣たち。


「手じゃない? 場合によっては牙もあるかも」


ハッとする幻獣。

もうちょっとかな?


「魔人は人型をしている。つまり、物理攻撃の場合、両手で器用に沢山のことが出来る。皆なら、押さえつけたり爪で裂いたりするだろうけど、魔人はそれも含めて、締め付けたり、指で細かく狙える。それも両手で」


「「「「!」」」」


「皆は四足歩行なこともあって、前肢で攻撃しようとすれば他3本は立つのに使ってる。例え、前肢2本を使おうとしても、後脚で立つなんて、まずあり得ないよね。急所のお腹を曝すことになる。でも、魔人は二足歩行。皆よりも圧倒的に攻撃出来る手数が多い」


「そうか!」


「あ! 確かに!」


思い当たる節がやっぱりあるらしい。


「魔法だって、同じ。皆がいくら強くても、やっぱり数が多いほうが有利なんだよ」


「でも、それなら我々に勝ち目はもう....」


「人になれって言われて出来るものじゃないよ」


「もうおしまいね....」


沈んでいく空気に、ちょっと呆れる。

なんでわならないかなぁ?


「ここは何の場所?」


「〈境界〉の魔王を決める儀式の場ですが?」


「そう。で、私はその儀式中。魔王になるとき、神様はお願いを1つ聞いてくれるんだっけ?」


「「「「?!」」」」」


ね? と聖蒼岩を見れば、


『しかり』


と肯定した。 じゃあ出来るね。


「まさか....?!」


「そう、そのまさか」


ざわつく幻獣たち。


「皆に聞く、人の形になってみない? 理論上、これで魔人とも渡り合えるはず」


「「「「!!!」」」」


「私がサポートするし、頼もしい四守護獣もいる。でもそれじゃ今までと変わらない。それじゃいつか、本当に〈境界〉は無くなっちゃう。ならさ、思いきって変わってみない? 案外良い方向にいくかもしれないよ?」


長い沈黙の末、幻獣たちは顔を見合わせて頷いた。


「「「「はい! お願いします!」」」」


皆、覚悟を決めたようだ。


「人の形に慣れなきゃいけないよ? 一晩で出来る?」


「我らの身体能力なら、なんとかして見せます!」


「絶対!」


「出来るんだね?」


「「「「はい!」」」」


皆の意思は決まった。

じゃあ、私も覚悟を決めないとね。


「神様に願うよ、これを期に、〈境界〉の全幻獣たちに、人の形という第2形態を持たせて!」


聖蒼岩が一際強く輝き、光の柱が白い空間を突き破り、雲の先まで延びていく。そして、何かに当たったかのように放射状に無数に別れ、弛く弧を描きながら、集まった全員に降り注いだ。






次回、〈境界〉の魔王ユイナの誕生です!

今後ともよろしくです!

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