34. 準備
話はあまり進んでいません・・・・m(--)m
試験も無事に終わり、久しぶりにオリジナに帰って来た。リサたちとは、飛行瘡魚を降りてすぐに別れた。迎えが来ていたそうだ。
懐かしく感じてしまう道のりを進むと、見えてきた集落。
「あっ、ユイナおねーちゃん! お帰り!」
「シーア、ただいま」
駆け寄ってきたシーアをそのままぎゅうっとハグ。
「料理足りた?」
「うん! ピッチリだった!」
手を繋いで丘を登りきり、集落に入る。
集落のみんなが迎えてくれて、自然と笑みがでた。
シーアの家に通い始めてから、この集落の人たちと知り合いになった。マーサさんなんて、料理の物々交換をするくらいだ。
その集落の人たちに沢山お祝いされて、しっぽがゆったりと忙しなく揺れる。どうやら、しっぽは気持ちに正直らしい。
.......照れてるのバレるじゃん。
シーアの家でみんなとは別れた。そしていざ敷居を跨ごうとしたとき、
もっふんっ!!!
「きゅううぅ~んっ!」
突き飛ばされっ.......ない。突進してきたムーンのもふもふな毛に埋まってる。
「きゅうっ! きゅうう!」
真っ白な視界に、さらに真っ白な塊が現れた。
ずぼっと顔を抜くと、ルーンが飛び付いてくる。
「むきゅうっ~」
むす~っ と不満げなルーンの上目遣い。か、かわいい! スマホがあったら今すぐ写真撮りたい! いや、やっぱり現物でいい!
久しぶりのもふもふズを抱え込んで(ムーンにはユイナが抱き付いているように見える)、そのままぎゅ~っ!!
ふわぁ、やっぱりもふもふは天使、天国だよ~っ!
「やっぱり猫なんかじゃ物足りないよ.......」
「にゃあっ!?『にゃーだってふわふわにゃよ!?』」
「「きゅううん~」」
抱き付いた私に、さらにムーンのふわふわしっぽが巻かれる。
「あっ、ズルい私も!」
えいっ! と飛び込んできたシーアもまとめて一塊になってはしゃぐ私たちを、リアーナさんが微笑ましそうに眺めていた。
◆
久しぶりにシーアと任務をこなして、ついでに魔物の丸焼きも作った昼下がり。
マルピチャに相談して、一応シーアに〈人間界〉の果てにいきたいと伝えた。〈境界〉は人々には知られていないから、説明しにくかったけど。
「ユイナお姉ちゃんがいくなら、私も行きたい!」
「いや、流石に危ないって。リアーナさんも心配すると思う」
「でも.......」
ポンポンっとルーンがを慰めるように小さな手でシーアを撫でる。
「きゅうん」
「にゃあ」
その横で、マルピチャも意見する。
「ほら、二人とも危ないから来ないほうが良いって言ってる。ちょっと行ってくるだけだから、ね」
本当にちょっといってくるだけだし。もし魔王になっても今までどおり暮らすだけだよ。
「ほら、帰ろ」
引っ付くシーアをムーンが剥がしてその背に乗せると、てくてく歩きだした。
結局、リアーナさんとも話し合って、シーアは連れて行かないことになった。やっぱり、リアーナさんにはシーアの助けが必要だし、危ないことはさせたくないとシーアを引きとめた。
と、言うわけで、しばらくまた会えなくてさみしいけど、私とるとムーンは数日のうちに〈境界〉に行くことにした。それまではシーアと一緒だ。
大通りの店を巡り歩く。
飛行瘡魚のような特殊な移動方法でもない限り、旅は危険だし大変だ。だから、今日は準備のためにシーアとルーンとお店巡りだ。
沢山の人々が行き交って緊張するが、シーアに連れられて露店をまわる。腕の中に抱き締めたルーンの感触で気を紛らす。
やっぱり人ヤダ.......。
深々と被った星猫ローブのフードと、長い裾が無かったら道で倒れてたよ.......。精神的ストレスで。
げんなりする私を、シーアが引っ張って巡った。
「おっ、いらっしゃい」
声がかかった方を向くとパン屋のおじさんだった。
マナリアと初日に広場で待ち合わせをしているときに出会った移動販売パン屋さんの本店前にいたらしい。いつもは夕方か早朝の人がいないときに来るから、フードをしていて気付かなかった。
「ユイナちゃん、一人前の冒険者になったってね。おめでとう。いつも贔屓にしてもらってるし、お祝いってことでいつもの、無料でいいよ。ユイナちゃんの好きな白パン一個おまけで」
「本当!?」
マジで!? やったー!
この店のパン美味しいんだよ。なんか、パンを食べてるって感じがして! 日本の食パンって ふ○わり とかあるじゃん? ああいう噛んだときにぺちゃっとするのじゃなくて、フランスパンの固さの前みたいな感じで、麦の味がしっかりしててここの黄パンはお気に入りの1つだ。
でも、米粉の白パンも美味しくて、毎回ストレージからストックのを出すときに迷うんだよね。
ホクホク顔で受け取ってストレージに仕舞う。出来立てをそのまま保存出来て、本当にストレージって良い。
「またいつでもおいで」
「ありがとう、また来る!」
パン屋のおじさんに手を振って別れると、少し気分が良くなって次の店に向かった。
やっぱり、知ってる人に会えるのは安心出来るのか、さっきよりも落ち着いて大通りを巡れた。おかげで、朝や夕方では置いていなかった果物や料理が買えたし。
シーアに手伝ってもらって、旅に必要な各種道具を揃え終わったのは、夕暮れの空に夜の青さが迫ってきたころだった。
◆
「きゅうん?」
もふもふムーンの胴にベルトをとりつけると、ムーンが「なに?」と振り返る。
「一応、私が落ちないようにつけるんだよ。きつくない?」
「きゅう」
ムーンが大丈夫そうだから、ベルトはこれでいいかな。あとは・・・・
「荷物は?」
ムーンの背からひょこっと現れたシーア。いつの間に潜り込んでたんだか。
「荷物は全部ストレージに入れたし、水もかなり用意したし、オッケーかな」
「そうなの・・・・」
残念そうにシーアはうつむく。なんかごめん、もう少し考えて返せばよかったかな。
「明日いくの?」
「うん。思ったよりはやく準備出来たからね」
あ、あとでイラさんに遠くに行ってくるって言っておかないと。
「シーア、いるなら来てちょうだい」
微かに声がする。この声は・・・・
「シーア、リアーナさんが呼んでる。来てって」
「うん!」
シーアが走り去った先には、シーアの家。
今日はもう帰ろうか。すっかり暗くなってもうシーアは眠いだろうし。
リアーナさんの寝るベッドから見えるところで今日は帰ると手を振ると、聡いリアーナさんも手を振り返してくれた。
「じゃあ帰ろうか」
「きゅう」「きゅっ!」
丘陵地帯をムーンは軽い足取りで駆け降りていく。
明日は早く起きようかな。
「ルーン、また目覚ましお願いね?」
「きゅううん」
少し呆れたように笑いながら、ルーンは了解だと頷いた。
こちらの都合で、これから更新が非常に遅くなります。申し訳ありません。
でもつづくのでこれからもよろしくおねがいします!




