33. 試験終了(裏話)
裏話です。
次から新章はいります!
「全初心者冒険者パーティー、合格です! おめでとうっ!」
ギルド職員の高らかな声に、広間に歓喜をあげる庶民ども。
この程度ではしゃぐなど誠に下町の暮らしの下品な奴らだ。と、ゼストレスは嗤う。
「受かった全員、全パーティーが任務もいくつもこなしています! 評価点は高く、今までの試験でトップ10に入る成績でした! 本当におめでとうございますっ!」
ワァァァァ!!!
ギルド職員の言葉に、更に騒ぐ庶民ども。
歓声と拍手のなか、バカな奴らだとゼストレスは嘲笑っていた。
「こんなことで諸手を上げて喜ぶとは、受かって当然だというのに」
「頭の中身が心配になりますよ」
と、マルゲータが鼻で嗤った。
「そうだな、綿でも詰まっていなければいいがな」
「いえいえゼストレス殿、本当に綿かもしれませんよ? 庶民はパンにジャムも塗れない貧相な暮らしぶりだそうですから、頭から中の綿が出てくると売って暮らしているのでしょう。ほら、髪を売る と言うではありませんか。きっと綿ぐらいでなければ儲からず、頭の中身は綿に進化したのでしょう」
つい、マルゲータの言葉に笑いが込み上げて嗤ってしまった。
おっと、第2貴族は紳士なのだから庶民どものようにしてはならないな。
ゼストレスは薄笑い(なめきったような)を浮かべる。
「はいはい、落ち着いてくださいね! では初心者冒険者改め一般冒険者たちは、上に部屋を用意してあります。出発は明日の朝ですから、遅れないように下に降りてきて下さいね!」
やっとギルド職員がバカどもを窘め、部屋に案内を始めた。
私たちは疲れているのだから、さっさと部屋に通してくれれば良いのだ。
全く、こんな外で1週間などという試験は有り得ん。父上に、1番誉れ高い試験を薦めてもらったらこんな野宿をさせられるとは!
テントなど初めて寝たぞ!? しかも、風呂は桶風呂、料理長は連れてこられず使用人の簡素な料理、魔物は強力で奴隷が倒れたのだぞ?!
こんなふざけた試験、あるものか!
しかも、振る舞われる料理も使用人の料理にも劣る味!
さらには先程からギルド職員どもは私たちを無視して庶民どもを部屋に案内しているだと!?
「おい、貴様ら私たちの部屋は何処だ」
貴族を差し置いて庶民の案内など、有り得ん!
「はい? あなたたちの部屋はありませんよ?」
「「はあっ?!」」
ギルド職員の顔に腹が立ってくる。なんだその目は!
「私たちは受かったのだ! なぜ部屋に案内しない!」
「はい!?」
ギルド職員は首をかしげる。
「あなたたちは受かってませんよ? 言いましたよね、全初心者冒険者パーティーが受かりましたって」
「そうだ! 私たちは受かっているではないか!」
「いえ、受かってませんよ。あなたたちは貴族冒険者ですよね、初心者の」
「「なっ!?」」
「ですので、これから馬車でお帰りになってもらいます。お疲れさまでした」
「なんっ、だと?!」
こいつ.......、私たちを侮辱するか.......!
「ふざけるな! 私たちはあんな辛い日々を過ごしたのだ! なぜ不合格なんだ!?」
「この試験を受ける前に、おあなた方の父様には、試験は貴族冒険者も一般人冒険者も平等だとお伝えしてあります。お父様はしっかりしたお方でしたので、お二方にも説明がなされている筈です。ちゃんとお父様の話を聞かなかったのではないですか?」
「.......!」
「ちょうど馬車が着いたようです。ご案内しますね」
「.......!」
「.......くそっ!」
二人はその後、無事に王都に帰っていった。ただ、
(こんなことになったのも、あの魔人のせいだ!)
ゼストレスは強くここにはいないユイナに八つ当たりし、怨みをもったようだった。
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女子の大部屋では恋話がさらにヒートアップし、小声ながらもハイテンションな声がベッド越しに話される。
特に、リサとツカサ、そして話題のラフトアだ。チコも聴いていて、時折相づちをいれている。
さて、私には1つ重大なミッションがある。
それは、ヒナミに日本のことを聞いてみること。正確には、ヒナミたち〔三の太刀〕の出身地マハラのことを聞いてみたい。
今も、the浴衣なヒナミたちは明らかに日本文化を知っている。もしかしたら、私以外に日本人が昔、マハラにいたのかもしれない。
そっとカーテンを開けると、ヒナミは積極的に話に入ってはいないものの、恋話に参加しているみたいだ。
今話しかけるべきか.......。
いや、今話を変えちゃうのも.......。
ちょっと待って、再びカーテンを少し開けて隣を覗く。
あ、やっぱりムリ.......、もうちょっと待っていよう。
再度試みるも、失敗。
そんなことをしているうちに、やっと恋話が終了した。
声がしなくなったのを耳で確かめ、いざ!
寝てました。
起こすのはどうかと思うし、でも聞いてみたいし.......。
今度はそれに困って、結局ヒナミに聞けなかったのだった。
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