3.冒険開始っ!
3話目です!よろしくお願いしますっ!
鬱蒼とした森の中、その少し開けたところにいる私にウルフが迫ってくる。
灰色の狼は跳躍し、私に大口を開けて飛びかかってきた。
「っ.......!」
体を捻り、横っ飛びして間一髪、避ける。
ウルフが着地して私を睨む。あっぶな......。
が、森の膝に届きそうなくらい高い下生えに足をとられて倒れてしまった。うわ。
私は ころっ っと転がってダメージを受け流すと、すぐに立ち上がって間合いを取る。
猫の手グローブを構え、ウルフが襲ってくるタイミングをはかる。
数秒の沈黙。
焦れたウルフは大きく唸り、再び飛びかかってきた。
僅かに片足を踏み出し、体を捻って猫の手グローブでウルフの鼻面と首を押し、着地地点への軌道を外へ向ける。そして、すれ違い様に勢いそのまま回し蹴りで鳩尾に足を食い込ませ吹っ飛ばすっ!
猫足を伝って足先に、肋骨を掻い潜って内臓にダメージが行ったことがわかる。
「ギャンッ!」
鳴き声、犬か!
思ったより飛んだウルフは森の木に激突して倒れた。
殺ったかな?
じっと観察するが、ウルフは動かない。
こういう時、AR表示が出てくれると嬉しいんだけどな.......。
じっと見る、が、動かない。
倒せたみたいだ。
蹴っただけだけど、心臓を狙って入れた蹴りだからかなりダメージがあっただろう。昔、格闘系のゲームしていて良かったよ。
ゆっくり近寄って、木の枝でつついてみるが反応無し。良かった。
さて、これどうしよう?
倒したは良いけど、ゲームみたいにエフェクトを飛び散らせて消えるでもないし、アイテムに置き換わるわけでもない。
まんまのウルフの死体がある。
私としては、さっさと移動して街に行きたいところだけれど......。
.......放っとく?
でも、死体ってもう動物の餌でしょ?で、過去のゲーム経験から考えて、放置はまずい。
理由?それは、
1、餌になった死体には他のモンスターが寄ってきます。
2、アンデッド(ゾンビ化)して襲ってくる可能性があります。
だからだよ。
じゃあ、埋めるは?ってのも、同じ事だから無理。
まず、私がやりたくない。疲れるし、ダルい。
焼いて証拠隠滅っ!
っていっても、火なんてどう熾すの?サバイバル術で二泊三日ってテレビでやってたりするけど、私、サバイバルなんてゲームでしかしたこと無いよ。それも、始めから焚き火があったイージーモードのやつ。
初めに畑と釣竿と家さえ作っちゃえば楽園だったよ。
う~ん、ってことで物理的に無理だ.......。
あ、
異世界ファンタジーと言えば、魔法!だよね!?
だったら魔法でぱっとやっちゃえば良いじゃない。
ゲームで何回も唱えたコマンドを言ってみる。
「ファイヤ。」
変化なし。
意思が弱かったかな?
「ファイヤ!」
変化なし。
あれー?違うの?
「ファイヤっ!」
変化なしっ!
んー?コマンド違ったかな?じゃあ、
「火よ。」
起きない.......。ダメだったみたいだね。
これはアレか?長ッたらしい呪文を淡々と詠唱するヤツなのかな?
あの詠唱してるとソロだと厳しいところもあったから嫌いなんだよね。ゲームによってはその間動けないとかもあったし。隠れるところがないとヤバかった.......。それでもたまに足とかハンマーとかでミンチになったけど。
んー、結局わかったのは、私は今、魔法が使えないってことね。
ってことで、焼くのも無理か.......。
放置すると敵が増えるかもだし、焼こうにも焼けないし、持って移動なんて論外だし.......まず持てないでしょ。
ひょいっ
あら、持てた。
まぁ、目立つし、敵来るし、持てても持たないよ。死骸なんてずっと持ちたくないし!
んー、こういう時にはアレが欲しいね。転生&転移キャラの味方、アイテムボックス!
死体が残るヤツとか、アイテムがばっちいゲームじゃあ、アイテムボックスって必須アイテムだよ。
だからアイテムボックスに閉まったりっていうことをしたいんだけど......。
あるのかな?
一応、猫神様が私を転送させたんだし、何かしら特典があっても良いはず。異世界転生とか転移系のラノベなら、自分のステータスが見れるんだから。これも同じようなものだもん。つか、この程度が無かったらあの猫神がバカなんだよね。
まぁ、愚痴はこの辺にして、ステータスオープン!
パッ
でるじゃん。とりあえず猫神はバカじゃなかったみたいね。
えーっと?
名:ユイナ
〉能力
固有能力
・異世界語理解
・ストレージ
ゲームとは違って、HPとかはわからないみたい。でも、スキルがわかって良かった。
スキルに異世界語理解があって良かったよ。異世界来たのに言葉が通じないなんて、生活無理だし。
あとは、アイテムボックスじゃなくて、収納魔法はストレージみたいだ。
早速、思考操作でストレージを選択、ウルフは光の粒子に代わって、輪郭のみを残して消えていく。ステータスを表示しなくても、考えるだけで使えるみたい。
自然な感じの動きや光が美しい。異世界いいね。
さて、邪魔っ気だったウルフの死体も片付いたから、本格的に冒険開始!
目標、森の中から脱出!それと、街に行くっ!
こんなところで暮らすなんて柄じゃない。
ストレージを見てみたら、ユーザー登録のときに選択した長剣が入っていた。出して腰の紐に提げる。
武器を持っていなかったから襲われたのかも......!くそう、舐めやがってぇ、って感じの気持ちだ。
「いくか、異世界冒険!」
んー、留まっていても仕方ない!早くこんなところ出てくぞー!おー!
私は一人、盛り上がりながら深い森の中へと足を踏み込んだ。
読んでいただきありがとうございました(*^▽^*)
これからもよろしくお願いいたしますっ!