26. 野外試験2
お久しぶりです。
投稿が遅れぎみになってしまってすいません。
今回は〈境界〉が出てきます。
試験2日目、その日はそれ以上依頼はクリア出来なかった。
夕暮れ、1日目で学んだのか、4人でてきぱきと簡易キャンプをつくる。
とはいっても、私はやり方を知らないから、結界を張るだけだけれど。
キャンプをつくり終わり、昨日のように枝を拾って集めること一時間、このくらいあれば一晩もつかな?
とりあえず、こんなものと言うことで早速お料理タイム。
今回のシェフは.......あ、また私なんだ。
「「「俺ら(私たち)が作るより断然美味しいから」」」
この試験中、夕食の料理番は私に一任だそう。まぁ、いいけど。
朝は起きれないしね。このくらいしなきゃ。
という訳で、早速作ったのは、いもパンと昨日と同じように出汁をとったスープ。
いもパンとは、小麦粉と卵の代わりに、芋のねばねば感をつかって代用して作ったパンケーキのことだ。パンケーキと言いながら、甘味料無し!
少し、昼間の移動中に取れたベリーを練り込んであるだけ!残りのベリーは、ちょっと煮詰めてノンシュガージャムに。
スープといもパンonジャムverじゃ、組み合わせがワケわからないけど、とりあえずおいしく頂きました!
私は本物のパンケーキを知ってるけど、知らない3人にはいもパンonジャムverは 大好評だった。
交代で眠りに付く夜。
やっぱり襲ってきたをことごとく全て叩き落としてストレージに入れる。食材が自らやって来てくれるから、夜の見張り番は悪くないね。
むしろ、ちょっと楽しい?
3日目、昨日のように起こされて起床。
だんだん慣れきた簡易キャンプの片付けをして、黒大蝙蝠の丸焼きをさっさと食べて出発。
「今日は斑山羊と岩蜥蜴をを狩ろうよ!」
と、リサの提案で、苔岩熊のいた岩山とは別の岩山を登ってみようとのことだ。
見える範囲にいくつかあるなか、双子が選んだのは1番高くてトゲトゲした荒々しい感じの赤い岩山だ。
岩山に近づいていくと共に、なぜか身体の中が変な感じがしてきたが、体調に問題はない。なんなんだろ?
「「うおっ!.......でっけぇ!」」
見上げるほど高い剣山って感じの岩山に到着した。白い岩に赤岩が混じって、血に濡れた包丁の切っ先みたいな岩山.......。
変な感じもあってなんだか不吉な感じがする。
「「俺一番乗りっ!」」
1番と言いながら、同時に足をかけた双子。
「「俺が先だっ!真似すんなよ!」」
「またやってるわ......」
言うまでもなく、ケンカが始まるけど、姿も仕草も言葉も声も同じじゃお笑いみたい。
ギャーギャーと騒ぐ双子の頭を叩いて、リサが、
「じゃ、登りましょ! 先行はあんたたちだからね!」
と、とっとと岩山に追い立てて登り始める。
流石、リーダーなだけあるね。
遅れないように付いて赤岩を登っていく。
足を岩に掛けたとたん、変な感じがさらに大きくなった。本当になんなんだろ?
一番下の岩壁を登りきり、着々と坂道を歩き始めたユイナを観ている青みががった黒猫の存在に、まだ誰も気づかない。
◆
その頃〈境界〉の守護獣たちは1つ、賭けをしていた。賭けとは言っても、遊戯で気まぐれに行っているのではなく、〈境界〉の命運が懸かっているといっても過言ではない。
今日、〈境界〉の地上ほぼ中央にある 白亜の樹 にて、四守護獣が観察猫マルピチャより新たに報告された内容を討論していた。
今のところわかっているのは、その者が猫の力を持っていることと、その魔力は聖属性を持ち、マルピチャが見たところでは魔力の扱いも上手く、結界や支援魔法が得意と見れること。そして、〈境界〉の幻獣を惑わすほどの魔力隠蔽はされておらず、魔人である可能性は無いこと。だが、かといって純粋な人間でもないこと。
その他、その者は今、〈境界〉に近いところに来ていて、あと4日滞在すること。
白亜の樹内部、巨体の四頭が全員入ってもまだ広い中の空間にて、話し合いがされている。
「これはチャンスだ! 〈境界〉付近に今来ているなら、1度接触して話ができるだろう!」
次の〈境界〉の魔王候補が〈境界〉のすぐ近くまできているなら、1度でも話を持ちかけるべきだと白虎。
1人突っ走りそうな白虎に玄武の尾である甲蛇が絡み付く。
「慌てるな白虎、まだ決まってない」
「.......悪い」
「確かに接触してみるのもいい案だけど、危険すぎないか? その者がいる場所は結界と監視によって護られてるって言っていたよな? それじゃあ俺たちは入り込めないぞ」
「我々がいくら空間魔法に長けているとはいえ、見たこともない土地では空間接続魔法は出来ない。ここはマルピチャか直接行ける朱雀の配下に頼むのはどうだ?」
奥の暗闇から現れた青龍が言う。
落ち着いて、ようやく甲蛇から解放された白虎は、少し気落ちして伏せになった。
「空間に精通する青龍がそういうなら、〈境界〉から干渉は出来ないか.......」
そんな白虎のようすを見て、紅く燃える朱雀が、
「そこは.......マルピチャたちと私たち鳥が接触すればいいじゃない! その人が猫の亜種なら、私たちの言葉も通じるはずよ!」
「同時に、朱雀と白虎がそれぞれの観察獣に意識同調すれば対話は出来るんじゃないか?」
玄武の言葉に、青龍以外の他の2頭がハッとする。
「も、もちろん意識同調に観察獣たちが耐えられれば出来るかもってだけだからね?」
突飛で危険な行為をすることが決まりそうで慌てて付け加えるが、朱雀と白虎はやる気のようだ。
「マルピチャ、どうなんだ? 出来るか?」
「短時間なら可能だにゃ!」
空間接続魔法の先からマルピチャがピンっと尾を立てる。
なら、と白虎が接近の指示を出そうとしたとき、マルピチャが慌てたようにわたわたと肉球をふる。
「待ってにゃ! 緊急事態にゃぁ!」
「「どうした(の)?!」」
マルピチャが自身の視界情報を白亜の樹の空間と空間接続する。
見えてきたのは、赤い岩山。そしてそこに登っていく4人。
「魔力感知したらヤバかったにゃ! 見てにゃ!」
マルピチャが魔力感知魔法を発動したらしい。一瞬、風景が白んだ。
再度現れた風景には、赤い岩山の上層部を隠すほどの魔素が渦巻いていた。
「この感じは.......中級魔物以上か! おそらく上位魔物だ!」
えっ!? と、朱雀。
「そんな強力な魔物が〈人間界〉に!?」
「珍しいな」
上位魔物というと、〈人間界〉ではSSランク以上の国防レベル。
そんな魔物が.......。
「ちょうど良いのではないか? 〈境界〉の魔王たるもの、あのくらい倒せなくてどうする。〈魔界〉にはあのレベルがざらに居るのだ」
「まぁ、確かに.......」
「そうだけど、次期〈境界〉魔王になにかあったら、私たちは再建の希望を失うのよ!? 次、いつ現れるかもわからないのに」
朱雀がバサッと大きく羽ばたき、叫ぶ。
それぞれの親である〈境界〉の四大要である前四獣がいなくなったときに、〈境界〉の消滅を、死を覚悟したほど追い詰められているこの状況。一刻も早く〈境界〉の魔王を立てたい。
「だか、弱い魔王では〈境界〉はまた危機に陥る」
「じゃあ見捨てるっていうの!?」
「いや、そうではない。候補者があの上位魔物を倒せたら、我々は接触を図り、〈境界〉の現状を伝えよう」
「駄目ならまた振り出しってことか」
「だか確かに、それなら力量も見れるな」
「それに、不味くなったら隠れている連中が逃がすだろう。死ぬことはない。大丈夫なはずだ」
「まぁ、そうね.......」
4頭の意見は一致し、〈境界〉の未来はこの闘いに懸けられた。
現地にいるマルピチャは、ユイナの闘いをしっかりと主たちに見届けさせるため、密かに移動を開始した。
次回にご期待って感じに終わりました!




