23. 試験当日 2
前の続きです。
屋外試験は次の話になりました。
あと、キャラが一気に増えます!
次はと席から立ち上がった2人の青年。
どちらも髪が長めで、濃い金髪はワックスですべて後ろに流している。
もう1人は銀髪で、こっちは後ろですべて纏めている。
「私はゼストレス。王都イスカンダリアの貴族出身です。お見知りおきを」
「私はマルゲータだ。以後宜しく頼む」
あー、わかった。不快な理由。
なんか、あのゼストレスってやつ、リサとかラフトアとか、私とか、女子にウインクしまくってるからだ。
「「うわっ、キモっ!」」
双子、いつでも揃ってる。
貴族って、どのファンタジー界でもうざいやつはいるから、あいつらもその類いなんだね。
関わらないようにしないと。多分、ろくなこと無い。
「ユイナさん、不用意に近付かないようにしよ? なんか怖いもん」
「もちろん」
リサも同意見らしい。
ってか、あの貴族ズ、どっちもレイピアじゃん!それでどうやって支援無しで戦うのさ?
次に立ち上がったのはこれも2人パーティー。
獣人かな? なんか小さい?
「「ミデンから来ましたっ! パーティーランクC-の〔双葉〕のチコとラタですっ!宜しくお願いします!」」
何の獣人かと思ったら、鼠人族だ。
だから小柄なんだね。
武器は.......ちょっとわからない。
次に紹介しに立ったのは3人パーティー。
「マハラから来たパーティーランクCの〔三の太刀〕よ。リーダーは私、ツカサ。宜しく」
「ヒナミです!よろしく!」
「スズノです。よろしくどうぞ」
あれ? なんか名前が日本っぽい?
それに3人とも黒髪 黒目だ。装備も、和服みたいな?
極め付きはパーティーの名前の通りなのか、全員が太刀。つまり、日本刀だ。
マハラって、日本人が住んでるのかな?
後で機会があったら聞いてみよ。
「「俺たちのばんだな!」」
「ほら、立とう?」
嬉々として立ち上がった双子。 リサも続いて、私も立ち上がる。
周りの視線が、痛い。
「オリジナから来ました。パーティーランクCの〔花ノ木〕です。リーダーは私で、リサと言います。よろしくお願いします」
「「俺は.......、おい! 俺が話してるだろうが!」」
こんな時にも揃う双子。
「ジンから言いなさいよ!」
リサに叱られると、ギャラリーが笑っている。
まぁ、この3人の漫才は面白い。
双子が紹介し終わると、私の番だ。
喋ろうと口を開いたその時、ギャラリーから手が上がった。
「どうした」
ディオさんに指されて立ち上がったのは、あの貴族。確か、マルゲータとかって言うやつ。
「1つ質問をするが.......」
えっ? なに?
「何故、魔人がここにいる?」
ザワッ!!!
ギャラリーの数人が反応した。
えっ、魔人? なにそれ?
「おい、どういうことだ」
「魔人ってなんだ!」
立ち上がって噛みついたのは 〔竜牙〕の低身長剣士 ミシェールと、〔双葉〕の鼠人族ラタ。
そんな2人を、いわゆる哀れに思うって感じの眼でみたマルゲータは、演技じみた動作(本人的には、カッコつけていると思われる)で私を指す。
私?
「彼女は、魔人ですよ」
静まり返る広間。
決まった! みたいにドヤ顔の貴族サマ。
「.......は?」
なにそれ? どうゆうこと?
「その決定的証拠は、あの人には在り得ない耳としっぽです。魔人とは、〈魔界〉に住む人に似た見た目の魔物のことなんですよ。一般庶民にはまず耳に入らない情報ですので、皆さんは幸運ですよ?
魔人には知能があるので、人のふりをして暮らしていたのでしょう、が、庶民とは違って私は魔人のことを知っている!
ここが貴様の死に場所だ! 魔人!」
偉そうにツラツラ喋り終わったら、今度は人に向かって剣先を向けるとか、アホなんじゃないの!?
意外と速い突きをかわす。
後ろに跳んで間を開けたのを、私が本性を晒されてビビったとでも思ったのか、また偉そうに喋りだした。
「私の剣捌きに恐れをなしたようです。王都イスカンダリア2級貴族の私は、物心着く前より剣術を習ってきたのです! このような魔人1匹、皆様の前で見事討伐してくれましょう!」
へぇ、剣習ってたの?
じゃあなんで脇が開いてるのかな? 隙が在りすぎて困っちゃうじゃん。 まぁ、反撃はしないけど。
〔竜牙〕の カイン? とか、〔三の太刀〕のツカサ、スズノとかギルド職員さんとかはそれがわかっているのか、苦笑いだ。
そんな周囲の様子に気付かない貴族サマが、変にカッコつけた足運びで接近、からの突きを放ってくる。
「魔人は抵抗も出来ないようですよ! 私が仕留めてあげましょう!」
壁際まで後退すると、勝ち誇ったようにレイピアを振りかぶる。
と、
パキンッ!
レイピアの刃が根元から折れて、床に落ちた。
「は?」
呆然とする貴族サマ。
あんな手入れも中途半端なお飾りみたいな剣じゃねぇ.......。
「殺られるわけ無いじゃん。 それに、私は魔人じゃないし」
自分でもよくわかってないけど、私は猫耳族だ。一応人間なはず!
あ、でも猫耳としっぽの影響か、八重歯とかスッゴい尖ってるんだよね。ホントに人間って言えるのか?
「ば、バカな! あのレイピアは我が家に伝わる伝説の.......!!!」
「超脆い剣」
爪1本でスパッと切れました。
あまりの呆気なさに、ギャラリーの数人がクスクスと隠れて笑ってるよ。
この声は.......〔竜牙〕のミシェールとカイン、〔三の太刀〕のスズノか。
スズノのやつ、無表情が崩れてるし。
「貴様.......! 我が家の宝剣を!!! 吊るし首にして曝してやる!」
嗤われてキレた貴族サマが、殴ろうと拳を握る。が、その腕はもう1人の貴族サマのゼストレスによって止められた。
「ゼストレス! 何故邪魔をするっ!」
金髪貴族サマは、ブツブツとなにやら唱え始めた。
なに?
「っていうか、ギルドの方は止めに入らないの? まさか、ディオさんまで私が魔人? だと思ってるわけ?」
これから試験ってのに、なんでこんな馬鹿げた事を止めないんだ?
「説明を終えた時点で試験は始まっている。だから私たちは介入しない。冒険者どうしのいざこざは各自で解決することだ。あと、5分後に各パーティーごと転移させる。それまでにここを元に戻せよ」
ディオさんたちはそういって広間から出ていってしまった。
あー、あの貴族サマ、机とか乗っちゃって泥着けちゃってんじゃん! 片付け任されてるんだからまた乗るなよ!
「ふん、今は見逃してやろう。 だがこの期間中、見張られていることを知っておくんだな!」
ニヤニヤする貴族サマの後ろで、金髪貴族サマがよく分からない光の玉を持っていた。
なんだあれ? なんか貴族ズがやけにニヤニヤしてるんだけど。
「せいぜい苦しむんだな!」
よく分からないけど、光の玉を押し付けられた。 そして消えた。
なんだったんだ?
体調に変化はない。
なにやら満足げに貴族ズが広間から去っていった。
って、おい!
お前らが荒らしたんだろうが!!
ほかのパーティーたちは律儀に机を起こしたりしてくれている。
「ユイナさんっ! 大丈夫だった?!」
「「ウザかったなー!」」
〔花ノ木〕の3人は、あんな嘘を聞いて、私の事を不審に思わないのかな?
魔人じゃないけど。
「ユイナさん、いやユイナちゃんからは魔物みたいな魔力を感じないもん!」
「「確かに」」
ほかのパーティーの人たちも、それで区別していたらしい。
全員が貴族ズの嘘を信じていなかった。ちょっと安心。
念のために感覚を研ぎ澄まして脳波や、微妙な感情の揺らぎを感じ取ってみたが、周りに便乗してるだけ っていう人はいなかった。
「あのバカ貴族は放っておきましょ」
「絡まれたら逃げなよ?」
「「近付いてきたら俺が守ってあげるぜ!」」
「頼ってよね、貴族は狡猾なんだから」
〔竜牙〕 に〔双葉〕 に〔三の太刀〕の人たち。〔花ノ木〕も
「皆ありがとう」
ちょっと嬉しくて涙が浮かんだ。
試験終わったら、皆になにかお礼しないとね。
「あ、あと20秒しかないっ!? 皆、早くここ片付けないと!」
〔双葉〕のチコちゃんが、あわあわと作業を再開しだすと、周りも慌てて椅子を起こしだした。
「このテーブルクロスの泥どうする!? 洗う時間ねぇぞ!?」
あのバカ貴族っ! とカインが吼えた。
あれなら.......
「.......浄化」
前にシーアにかけた魔法。
白銀の光の粒が広間中に溢れて、消えると、
「おおっ!? 泥が消えてる!」
「なんか装備が磨いた後みたいなんだけど!?」
泥処か、部屋中のもの全部を綺麗にしたらしい。
「ユイナちゃんって凄いんだね!」
「「魔法スゲー!」」
そんな事をしているうちに、それぞれパーティーごとに色が違う魔法陣が足下に展開した。
「時間だな。頑張れよ」
「そっちこそ」
「みんなクリアしましょうね!」
「頑張ろ!」
「落ちるなよ」
「「当たり前だ!」」
魔法陣が光りだした。いよいよだね。
「じゃあまた」
そう言った瞬間、魔法陣がよりいっそう光って視界を埋め尽くした。
次はサバイバル擬きですよ!
これからも宜しくお願いします!




