22. 試験当日!
ちょっと投稿が遅くなりました。
では、どうぞ!
早朝、朝が早いわけでもない、むしろ昼まででも寝ているユイナは、案の定寝坊した。
「やばっ.......! ルーンたちいないから目覚ましがなかったじゃん!」
日々、抱き枕のルーンに起こされて来たから、一人で起きるなんていつぶりだろう?
宿の勘定を済ませ、道なりに進むのは遠いからと、屋根伝いに跳びまわって、鐘が鳴る僅か数秒前に、東門に到着した。
「遅いですよユイナさん!」
早速イラさんに怒られちゃった。
「おはよ、今何処から来たの?! 分からなかった!」
駆け寄ってきたリサさんとそっくり双子、パーティー 花ノ木 の正式メンバーたち。今回は、このパーティーに一時的に参加させてもらって1週間、野営する試験をする。
「今、街壁走ってなかった?」 「そうそう」
まぁ、確かに壁走ってきたけど、良くやってるし。
「ユイナさんは面倒くさがりですもんね。どうせ、道を行くなら直線距離で上から行こうとでも思ったんでしょう?」
「流石、イラさん良くわかってる」
おしゃべりしていたうちに、例の移動手段 飛行瘡魚 とやらが来たみたいだ。
じゃらじゃらという鎖の音と、2人歩いてくる足音。
飛行瘡魚って名前の通り、飛んでるのかな、カサゴのほうは足音がしない。
まぁ、魚に足があっても困るけど.......。
門の外、現れたのは.......犬? とライオン?
ちなみにどちらも獣人だ。
「ギルドマスター.......?!」
イラさんが驚いている。
それに気が付いて、犬.......ゴールデンレトリーバーの獣人が片手を挙げた。
あの人がオリジナのギルドマスターなんだ。へぇ~。
筋肉ムキムキなギルマスさんと獅子人族さんは、それぞれ2つずつ鎖を握って来た。
そして、現れたのは、カラフルな色の巨大なカサゴ×4。
これが.......。
「「おおーっ!」」
好奇心旺盛な双子がまずカサゴに興奮ぎみに寄っていく。
カサゴの目の前に行くと、薄いサーモンピンクの髪色の双子の1人が、喰われた。
「シンっ!?」
カサゴの口から、脚だけが出ている。バタバタしてるけど、カサゴは気にもしてないみたいだ。
ってゆうか、喰われたよ?!
「こんのぉ、シンを離しやがれ!」
双子のもう1人、ジンが引っ張るも、カサゴは ばくんっ といきなり大口を開けてジンまで飲み込んだ。
その様子をうろうろしながら見ていたリサが、絶句する。
「この飛行瘡魚たちは訓練を受けているので、このように人が前に来ると飲み込むんですよ」
それ訓練してんの?!
獅子人族の筋肉マッチョが、2人を飲み込んだカサゴの胸ヒレの下を足で押すと、カサゴが2人を吐き出した。
「「た、助かったぁ.......」」
地面に這いつくばる様子も一緒とは、流石双子か。
「さ、魚に飲み込まれて移動するんですか.......?」
やっと再起動したリサが、またも硬直している。 ギシギシと音がたってそうなくらい、ゆっくりとギルマスを見た。
そして、残念ながら、ギルマスは肯定した。
「こいつらは、飛行速度が速いし、体内に入ることで意識を同調させることが出来るから、慣れれば自分の意思で行動させられる」
そんな事も出来るのか。
見くびってたけど、結構凄いカサゴなんだね。
獅子人族の人が、黄色がメインのカサゴの鎖をとった。
「イラミシア、そろそろ時間だ」
「はい」
促されてイラさんが、獅子人族の人を指す。
「先行してくれるディオさんの後に、カサゴが勝手に付いていくので、皆さんは2人づつカサゴに入ってください。では、残り3びきの中から好きなのを選んで下さいね!」
えーっと、2人乗りってことは私はリサとだよね。
「じゃあ宜しく」
「うん.......、ちょっと私怖いかも」
まぁ、魚の体内に口から入るってことは、胃の中で消化されかけるってことだしね。
辺りを見回すと、双子は緑色のカサゴにしたらしい。 さっき飲み込まれたやつにまた飲まれにいったみたいだ。
とすると、残りは2匹。
オレンジの落ち着きのない跳ねてるやつと、青色の尾びれをパタパタさせてるやつ。
.......青色の方が安全そうかな?
早速、近づくと大きなギョロ目がこっちを見た。
「ヒィッ.......!」
リサが私の後ろに隠れる。
君が無意識に掴んでるの、私のしっぽなんですけど?
青色カサゴが、ビョンッ とジャンプして、目の前に来た。
更にしっぽを掴む力が強くなる。
痛い.......。
しんがりを務めるギルド職員も、位置について、
「じゃあ飲まれちゃって下さーい!」
イラさんが楽しそうに手を挙げると同時に、カサゴが私たちを飲み込んだ。
◆
眼下に広がる青々とした草原の中に、たまにオリジナのように街壁で街を覆った街が見える。
時折、雲を飛び越して、視界が白くぼんやり霞む。
そんな上空からの景色を眺めている私だか、大きな問題を抱えている。いや、正確には抱えさせられている。
カサゴとはすぐに同調が完了し、カサゴの身体を透して景色を堪能出来ているし、息も、何かしらの効果か普通に出来ている。
足下のふにゃふにゃした感触も、慣れればクッションと大差はないし、カサゴとは何も問題はない。カサゴとは。
問題なのは、リサの方にある。
リサは、カサゴに飲み込まれる前から私のしっぽを握り締めていたが、景色が見えるようになってから更に強くしっぽを握っている。
カサゴの身体がほとんど透明に見えて、ガラス越しに景色を観ているようになっているのだが、そのせいで、自分が上空に浮いているようにも見える。地球でいう、スカイツリーとかにある 足元に床がない!? っていうガラス張りの床な感じ。それが360°。
異世界で初めて見た海まで見える物凄い絶景のパノラマだが、感動よりもしっぽが痛い。
原因のリサはぎゅっと固く眼を瞑って、私のしっぽを両手で握り締めて震えているのだ。つまり、リサは高所恐怖症だ。
ギチギチ言ってるんだけど.......、しっぽが。
プチプチとも言ってるんだけど?! 毛、抜けてるって!
後ろを振り返ると、固く丸まったリサ。
『もうすぐ着く、寝ているなら起きろ』
この声はディオさんだ。カサゴに無線機能まであるのか。
「つ、着くの?」
「もうちょっとだって」
だから放して.......!
だが、その願いは虚しく消え失せた。 カサゴが高度を下げていく。もちろん、浮遊感がして、ビビったリサがついに私のしっぽから毛の束を引きちぎった。
わざとじゃないのはわかってるけど.......痛いって。
5分も経たずに地面に降りたカサゴたち。
これ、どうやって降りるの? 足下に草が風に揺られているけど、カサゴ越しにって訳だから歩くなんてムリ。
それでも、忘れているのかリサが立ち上がろうとする。
ぶにょっ
「キャッ.......?!」
当たり前だけど、ここ、カサゴの胃の中だから。
『説明を忘れていた。どこでも良いから強く胃壁を押せ』
あ、ディオさんから無線だ。
ということは、吐き出されるしかないってことか。
吐くのはしたことあるし、ぐぇぇっ ってなるのも分かるけど、まさか吐き出される側になる日がくるとは。
異世界ファンタジーにも無い展開というかなんというか.......。
まぁ、とりあえず蹴るか。
適当に蹴り飛ばす。
無事、二人とも吐き出されました。
そして到着した試験場。
広すぎて一部しか見えなかったけど、柵で覆われた中は草原や森、川などがあるみたいだ。
場所だけなら、整備されてないキャンプ場?
ちょっと立派な建物に入るとき、なにか膜に入ったかのような感覚があった。
結界かなにかかな?
広間に通されて、昨日イラさんから受けたような注意事項を聞く。
私たち以外に、パーティーは4つ。
同じフィールドで過ごすという事で、自己紹介をすることになった。
「トスコロカリアの 〔竜牙〕だ。パーティーランクはB-。
リーダーは俺、カインだ。」
気の強そうな長身の金髪ロング。後ろで髪を纏めている。
見た感じ、武器は槍かな?
「メンバーのミシェールです」
小柄な紫髪の剣士。
「ラフトアですっ!よ、宜しくお願いします!」
魔法メインなのか長杖を持って震えてる。緊張に弱そうな緑色ショートヘアー。
このパーティーは全員、お揃いの装備服みたいだ。それぞれ細部が髪色と一緒みたい。
次は.......、
席を立つ2人の冒険者。
その1人が振り返った瞬間、目が合った。
そして全身に走る寒気。
なんかあいつ、嫌な感じだ.......。
遂に敵風キャラが出ます!
うまくゴタゴタをつくっていきたい.......!




