21. 顔合わせ
大晦日ですね!
あと1日で2018年が終わっちゃいますね。
まぁ、でも 引ケット は続くので、問題ないですね。
おそらく今年最後の投稿です。↓どうぞ!
昼間のギルドは冒険者たちで混みあっていた。そ人混みの中をすり抜け、ギルド奥の部屋のひとつに駆け込む。
猫 猫って煩いんだもん。
「待ってましたよユイナさん」
イラさんが席を立って出迎えてくれた。その奥に、例の3人の姿。
イラさんに促されて、3人の正面の椅子に座る。凄く見られてるんですけど.......!
3人の内、真ん中に座っている女の子が、特に。
勢いよく乗り出して、手を掴まれる。
「あなたがユイナさん? 私は パーティー〔花ノ木〕のリーダーのリサ! それと、こっちがジンで、こっちがシンね。二人は双子なんだよ、そっくりでしょ? じゃあ宜しくね!」
金髪カールの女の子はこのパーティーのリーダーだったらしい、フレンドリーな感じだし、これなら馴染めるかも?
リサさんの両隣は双子の青年。見た目は全く同じで、装備も一緒。唯一違うところは眼の色か。ジンの方が緑で、シンの方が青だ。
3人とも、人の良さそうな感じで、すぐにタメ口で話し掛けている。その間にも、リサさんは私の手を掴んでいる。
地球にいたときの感じが残っているから、私は未だに人と馴れ合えない。だから、手を握られることは私の中で、一線を越えた行為だ。
でも、リサさんは嫌な感じがしない。異世界に来て、マナリアみたいな人に会ったからかな、引っ張ってくれる人は嫌じゃない。
「ソロのユイナです。此方こそ宜しく」
改めて私が差し出した手を、リサさんは躊躇なく握った。
その様子を、イラミシアは嬉しそうに眺めていた。
◆
挨拶が一段落ついたところで、イラさんが本題にはいった。
それは、謂わずもがな今回の遠征合宿のことだ。
「今回の合宿兼試験は、緊張感を持って行ってもらうために〈人間界〉の端の街、アスランド にて行います。アスランドはその位置状、魔素溜まりが起きやすい街で、皆さんにはギルドの管轄する魔素溜まりに近いところで1週間過ごしてもらいます」
「アスランドって、〈魔界〉のすぐ近くじゃないの?! 新人冒険者が立ち入ってはいけないエリアのはずです!」
ガタンッと立ち上がったリサさん。アスランドってところはそんなに危険なのか、猛反対だ。双子は顔を見合わせてなにやら話している。
「「どうして新人の俺たちがそんな前線に行くんですか?」」
双子だけに、声も姿勢も質問も一緒.......!
そんな3人とは反対に、良く分かっていない私。
「皆さんが行くのは、ギルドの持つ訓練用の狩場の1つです。ギルドが管理して結界を張ってあるところなので、〈魔界〉の魔物が現れることはありません。皆さんが戦う可能性があるのは、魔素溜まりに住む下位魔物です。普段皆さんが狩っている魔物よりも少し強いCランク以上の魔物も居ますが、パーティーでの皆さんが負ける相手ではないと思います。
注意することと言えば、敷地内からでないこと。
1週間、そこで過ごすことが試験です。試験中は、ギルド職員が隠れて皆さんをチェックしています。命にかかわることがあれば、助けに来てくれるので、安心して過ごしてください」
命にかかわることが想定されてるの.......? そこってかなりレベルの高いエリアなんだ。
「.......他の冒険者もそこにいるんですか?」
私とパーティー〔花ノ木〕はCランク越えてるけど、もっと低いランクの新人冒険者には危なすぎるんじゃ?
只でさえ魔物が湧く魔素溜まりのあるところなんだし。
「いえ、今回オリジナからは皆さんだけです。アスランドの試験場は特に将来有望な新人冒険者に使われるところで、オリジナの他の冒険者さんは皆、オリジナ街にある試験場で行っています。他の街のギルドから、参加するパーティーもあるとは思いますが、現地でわかりますよ」
「将来有望.......」
「「俺たちスゲェ!」」
花ノ木の3人が目を輝かせて乗り気になっていく。 この人たちって、結構単純なのかな?
「出発は明日の早朝4時の鐘、それまでにオリジナの東門に来ていてください。ギルドの方で 飛行瘡魚を用意しましたので、到着は夕方前になると思います。私は同行しませんが、見送りに行きますよ」
イラさんが続けた説明に、良くわからない言葉が混じってないか?
「イラさん、飛行瘡魚ってなに?」
「「それ、俺たちも聞こうと思ってたんだー!」」
「新人冒険者には知る機会がないのでわからないと思いますが、
飛行瘡魚とは簡単に言えば乗ることの出来る魔物です。魚のカサゴを大きくしたような姿で、水の中ではなく空中を泳ぐ大人しい性格の下位魔物なのですが、見た目の美しさとその気性に、ギルド創設者から昔から可愛がられて従魔化されたという魔物なんですよ。だから、噛み砕かれることも、消化されることもありませんので、安心して飲まれてくださいね」
えっ? えっ?
なんか最後変じゃなかった? えっ、どういうこと?!
私の聞き間違いかな、安心してって言われたけど何に安心していいのかな?
花ノ木の3人も混乱しているのか、イラさんが話は終わったとばかりに笑顔で部屋から出ていくのを止める人はいなかった。
◆
久しぶりに一人で眠りについた。
地球では一人が普通だったけど、異世界に来てからはムーンとルーンがいた。 この半年のうちに、それが当たり前になって、こうして元に戻るとどこか落ち着かない。
ムーンとルーン、とくにムーンの大きくてふわふわな毛にくるまっていたことは無意識に、安心感を抱いていたのかもしれない。ムーンたちは良い相棒だ。でもそれとは別に、ムーンには安心できるなにかがある。さりげなく、優しくしっぽで包んでくれたりと、私の心を読んだみたいに。今も、多分そうしてくれるのだと思う。
地球では、私は一人っ子で、家族は両親だけだった。そして、その両親は私の気持ちなんて耳にも入れないで物事を押し進める。そんな両親の家を、学校をサボってまで逃げ出した私は、何を求めていたのか。
うるさい両親のいないところ。
好きなことに打ち込めるところ。
私を縛るものがいないところ。
そのしがらみを無効にしてくれるところ。
その ところ っていうのは、この異世界のことだ。 両親もしがらみもなく、憧れてダイブし続けた仮想現実の世界。
これだけ揃っていて、私の心はどうして、地球の事に囚われて、地球の事を未だに引きずっているんだろ。
猫神様は、偶然とはいえ、私の願いを叶えてくれた。
もう、これで過去に囚われることはないはずなのに、なんで?
枕を引き寄せて抱く。いつも抱いて寝ているルーンが恋しい。
掛け布団を更に引っ張りあげる。ムーンのもふもふなしっぽにくるまりたい。
もふもふな2匹が、すり寄ってきてくるのが、どれだけ嬉しかったか。
でも、ここにあるのは枕と布団だけ。
あ、分かったかもしれない。
環境だけじゃ、駄目なんだって。
異世界は良い。私の望むもの、こと、全部が、探せば見つかるだろう。まだ知らないことだらけだ。
異世界は、宝探しをするトレジャーハンターが、苦悩の末に見つけたたくさんの財宝が詰め込まれた宝物庫。
ハンターは大発見に歓喜するが、宝物庫の物全てが価値のあるものではない。
奥が見えないほど大きい宝物庫を埋め尽くす宝物の中、ハンターにとって価値のあるものを探し出すのに、ハンター1人でそれは見つかるだろうか。
1日、1週間、1ヶ月、1年、どれ程の月日を掛ければ見つけられるのか。
ハンターの持つ技術、力は超一流。
だが、その量も、質も、姿もわからない何かを、ハンターの及ぶ力全てで探し当てられるのだろうか。この無限のような宝物の海の中で。
目に見えるもの全てがお宝なのに、それは宝物の海の接するビーチの1つに過ぎない。そのビーチの砂粒の中に、あるいは押し寄せる波の何処かに、欲する宝物はあるのか。
宝物を求めて船を出す、うねる波の中、ハンターは1人で宝物を探しながら船を漕げるだろうか。
もし可能でも、危険が途切れることなく迫る黄金の海で、ハンターは何日1人で平気でいられるのだろうか。
そう、ハンターには誰かといることが必要なんだ。
この広い異世界には、私の、シーアの、マナリアの、イラさんの、すべての夢が詰まってる。
でも、それは1人では見つけられないし、楽しめない。
それを見つけて叶えられるのは、誰かが一緒にいてくれるからなんだ。
私には、そんなひとが必要みたいだ。
1人は平気だと思ってたけど、やっぱりそうじゃなかった。
わたしはたぶん、この異世界に、信頼できるひとを探しに来たんだ。
明日から2019年ですね!
平成がついに終わります!
年号って突然変わってきましたけど、終わりが分かるっていうのはなんか次の年号への期待感がありますね。
じゃあ、よいお年を!




