14.任務の日々2
任務2 です!
そろそろ人物が増えていきます!まだ予定ですが。
湿地の周りに生えた枯れた木々のなかで一際高い木の枝元に跳び移る。
ここなら、2匹がやろうとしてることも見えるよね。
「あ、ルーンが攻撃するのね」
沼地から上手く角蛇を追い立てた先には木々が密集し、蔦で逃げ道がない上に、ムーンもいる。
「キシャァァ!!」
逃げられないとわかって、遂に反撃に出る角蛇、その麻痺吐息を水の膜で無力化するルーン。連続して、水弾で鎌首を弾き返す。
「きゅうっ!!」
ルーンの片手から魔力弾が放たれ、角蛇の頭に当たり、頭部を少し弾け飛ばす。
ルーンの魔力弾で鱗が飛んだだけって、なかなか硬いみたいだ。
「シュゥゥ.......」
角蛇は少し怯んだのか、とぐろを巻く。そこに魔力弾がさらに当たった。
何発もの魔力弾が頭部の片側の鱗から皮膚をむき出しにし、防御力が下がったところを鋭く研ぎ澄まされた水の刃が切り裂いて、角蛇は倒れた。
「きゅうううっ!!!」
人間で言うところの やったー!!! ってところかな。可愛く雄叫びをあげるルーン。
「やっぱり凄いね、しかも大きいよ、こいつ」
「きゅうんっ!」
撫で撫で 「んきゅう~っ」 可愛い.......。
「きゅうん」
ムーンがちょっとつまらなそうにしている。
「ムーンもちゃんとガードしてたよ、今度はムーンが捕まえたいね」
「きゅう!」
ムーンはすっくと立ち上がると、角蛇を探して歩きだす。疲れたルーンは、ムーンのふわふわ毛の中に飛び込んでいった。
「きゅうぉんっ!」
期待してて! だそうだ。ムーンのアルトな声が響く。
角蛇は忘れずにストレージに収納、これで劣化しない。
さてと、私もやろうかな。角蛇が調子が上がったムーンたちに怯えて逃げちゃわないうちに。
ジャンプを繰り返して沼地を踏まないように木と木を足場に角蛇を探す。
あ、いた。
茂みにとぐろを巻く角蛇、動かないけどどうしたのかな?
まあ、生きているみたいだし、狩ってみるかな。
シュッ!
軽い空気の音の後に、角蛇の後頭部の頚椎が切り裂かれる。
「これで1匹」
ストレージに収納した後には、葉っぱでできた巣と、そこに残る10個ほどの鶏卵の1.5倍位の大きさの白い卵たち。角蛇の卵だろう。
.......食べられるかな?
卵は高級食品らしく、流通すらしていないレア物。ここに来て一度だけ売られていたことがあったけど、Sサイズの鶏卵で銀貨2枚は高すぎる。
鶏を飼育出来ないってことが一番の問題だろう。野生の鶏の卵を取ってこないといけないらしくて、他の食材も含め、異世界の食料確保は難しい。
角蛇の卵、見た目は大きい鶏の卵だ。硬いし、そうとしか思えない。
試しに食べてみるかな.......?
火はおこせるし、フライパンも一応買ってストレージのなかだ。
ぅぅ.......食べる?うーん、危なかったら大変だしな.......。
悩みに悩んで、よし、食べてみよ。
火を通せば大抵の物は大丈夫になるし。
・
・・・
・・・・・
「.......持って帰ろ」
結論、普通に鶏卵の感じ。これは良い、ホント、良い。
料理をするとき、これがあればあれこれ作れるし、体調に異常はないし、私に利益しかない!
ストレージに入れておけば孵化とかしないから、保存可能だ。よし、ここの卵、あったら全部取ろ。
ギルド? 討伐対象は角蛇であって卵はどうしようが私の勝手だよ。
魔物も減るし、卵はあって困らないし、一石二鳥、いや三鳥だよ!
他にもあるかな?あったら取るぞー!
探せ、求めろ、卵はこの地に隠されている!!
みたいな?
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昼過ぎ、オリジナ周辺の草原の小高い丘でいつもの昼食をとっている。
いつもの昼食とは、つまりは丸焼きである。
「今日はお疲れ様、大猟だったね!」
「「きゅう~っ!!」」
ストレージから取り出した鉄の正方形の板、表面に魔法陣が彫られた 魔道具:魔力コンロ だ。
魔力を流すことで量と質に応じた炎が現れる優れもの。
普通、上に鍋を置いて料理するのが一般だが、私が魔物を解体出来ないため、魔力コンロに焚き火のように炎を上げさせ、魔物を丸焼きして食べるという超ワイルドな昼食になっている。
皮と内臓と頭とかをムーンの風魔法:空気の手で掻き出して最後に私が燃やして処分し、残った肉片を鉄の串で刺して焼いて食べる。
これと毎朝買うパンを一緒に食べるのがもう半年弱だ。
毎回違う魔物の肉のを食べるから飽きはしない。
最初は仕方なくやってて胸焼けしたけど、もう慣れた。
そして、こんな食事をしているせいか犬歯が延びてきた。そして、猫装備が体に馴染んできて 【最適変化】 のコントロールも出来るようになっている。
前は手足にあった猫グローブと猫シューズも、それぞれグローブはアクセサリーにして手首に、シューズは白いファー付きのショートブーツに 変化 させてある。どちらも、もとの色を受け継いで黒だ。
星猫コートも、春先から夏に近づいてきたから薄手にしてある。
流石に、春物は夏だと暑いからね。
もふもふムーンたちの方が暑そうに見えるけど、自前の特性でいつも一定の温度らしい。
「ムーン、焼けたよ」
今日の昼食は言うまでもなく角蛇だ。見た目は淡白な感じだけど、味はどうかな?
「むきゅうぅ.......」
パクりと胴体の3分の1を食べ、もぐもぐ咀嚼。数秒後、
「どう?」
「きゅううぅっっ!!!」
いくらでもいける~!!! だそうだ。言葉通り、頭を落としても3メートルの巨体だった角蛇の丸焼きがあっという間に無くなっていく。
「ぎゅうっ?!きゅーきゅーっ!」
その異常なペースに驚いたルーンも負けじとしっぽに囓りついた。
落ち着いて食べなよ。焼けばまだまだあるんだし。
私もっと、.......美味しい、食べやすい!少し脂のあるササミみたい。
今日の収穫は、角蛇が38匹、角蛇の卵が約300、たまたまいた地蜥蜴(体長10メートル、Aランクの魔物)が1匹。
余った角蛇はお昼に食べるし、卵は渡す気はない。
地蜥蜴どうしよう?
食べてみたい。けど、この鱗高そうだから売りたい。
とすると、ほぼ引き裂いて解体してくれるムーンには任せられない.......。
あ、解体専門の所にいってみたらどうだろう。大きいしかなり高くつくだろうけど、肉以外は要らないし、赤字にはならないんじゃないかな?
ついでに、専属解体士を頼めれば良いんだけど。
「食べ終わった?」
「「きゅう!!」」
丸々1匹を焼いたはずの角蛇の丸焼きは綺麗に無くなって、ムーンたちは満足そうだ。
「夕飯はまた新しいのだからね。ギルドに行くには早すぎるから寄り道しよう」
「「きゅー」」
解体士がいてくれれば、私も肉で料理が出来るし、素材を得られるから助かる。
職場を見て、イラさんに希望を伝えてみよ。
読んでくれてありがとうございます!
次回、かその次、解体士が仲間入りです!




