13.任務の日々
マナリアが出ません。後半、ルーンsideになりました。
任務の話です、どうぞ!
オリジナにきてもう半年、だいぶ異世界の暮らしにも慣れてきた。
初めて依頼を受けて任務をした日から、ちょくちょくマナリアが宿におしかけて来ては、「討伐数で勝負よ!」とかなんとか言い訳をつけて一緒に依頼を受けたりした。
今日は久しぶりに1人でギルドにやってきた。マナリアは護衛の依頼が指名で来たらしく、2ヶ月ほど帰ってこないそうだ。
めんどくさいのがいないから、今日はある程度高いランクの討伐の任務を受けて、ムーンたちを楽しませてあげよう。
ギルドに入ると、私以外いないであろう猫耳に注目が集まるから、すぐに応接間に入ってイラミシアさんを呼んでもらう。
イラミシアさん、通称イラさんは、1ヶ月前くらいから私の専属サポーターになってくれた。仕事は出来るし、親切だし、何より兎はかわいい。ホント、イラさんが付いてくれて良かった。
さて、イラさんも来たことだし、今日の任務を考えよう。
私はランクがこの前上がってランクD+になった。少し良い一般冒険者ってところだ。
私がランクDの依頼を受けると、すぐに終わってムーン達のすることがないし、やりごたえがないから、ちょっと強いランクCの任務を普段受けている。まぁ、大差ないけど。
ランクCの任務だと、討伐対象がランクDよりも見た目が強そうになるから、採取部位以外の皮や牙、角、肉が少し高く売れるらしい。
私は解体が出来ないからストレージに溜まってムーン達のご飯用になってるけど。
「ユイナさんでも出来る依頼は、皮や臓器、肉以外の部位の採取ですもんね。何枚か融通してもらいましたよ」
「ありがとイラさん。助かるよ」
イラさんはファイルから何枚か依頼を取り出して、机に並べていく。
「ムーンたちも楽しめる依頼だと.......このBランクの地蛙5体討伐ですかね。大きいのでムーンも組み合いが出来るでしょうし、採取部位はないので丸ごと引き取りをしますから。
多く倒しても、肉質がいいのでそれなりの値で買って貰えますよ」
カエルか~、良いとは思うけど.......。多分調子のってたくさん倒しちゃうよね。
そしたらそのあと一ヶ月くらいお昼のBBQがカエル肉になっちゃう。
解体は出来ないしな.......。
あ、そうだ。
「ギルドで解体ってして貰えるの?」
「お金を払ってもらうことになりますが、ギルド直属の解体場に頼むことは出来ますよ。追加料金で運搬も可能ですけど、ユイナさんはストレージがあるので要らないですね。
解体料なんですが、魔物の大きさや重量で料金がきまるので、カエルは.......」
「大きいもんね」
「はい.......」
地蛙は体長3m。筋肉質で重量200㎏を越える。
Bランクの魔物にしては頭数が多い魔物で、特殊な魔力攻撃をしないから冒険者達によく狩られる魔物だ。
皮もすぐに剥げるため、すぐに儲けられると冒険者達に人気な討伐クエストだ。
カエル肉はポピュラーな食材で、よく食べられる。もちろん流通量も多い。だから、解体して貰ったら、肉をすべて売っても、売値-解体料=利益どころか、0、酷かったら赤字になる。
「誰か、解体職の者と契約できれば、安く済むんですけどね.......。ギルドで誰かあたりましょうか?」
「うん、お願いします」
「はい!ユイナさんの倒した魔物は状態が良いので直ぐに候補をあげられると思います。数名、候補が出たらまたお伝えしますね!」
これで上手く契約が出来れば更に儲かる。そして、ある程度自由に過ごせるお金が貯まったら好きなことに暫く時間を費やせるっ!
「では、カエルは解体契約が出来てからという事で保留にしますね。
処理が簡単な魔物は.......あ、これですね。角蛇10体討伐、Bランククエストです。
角が採取部位なので切れば出来ますよ。皮もなかなかの値で売れますよ。頭を落として引っ張ると直ぐに剥けるので、ユイナさんでも解体出来ますよ。大きさもあるのでムーンの相手にもなります」
「.......良いかも。じゃあイラさん、それお願い」
「はい!」
ホント、イラさんがサポーターになってくれて良かった。凄くやりやすい。
「頑張ってください!締め付けられそうになったら跳んで回避ですよ!」
「大丈夫だよ。行ってきます。」
お姉ちゃんみたいだね、イラさんって。
さて、頑張ろ。
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オリジナの西にある密林、ここに角蛇がいるそうだ。
ムーン達は動きにくそうだけど、ここにある湿地帯に住んでいるらしいから問題なし。
「きゅうっ!」
ルーンが小さな前足で指した先は、あ、目的の湿地みたいだ。
「見つけたらどんどん狩っていいからね」
「「きゅーっ!!」」
ムーンはともかくルーンはちっちゃいから飲まれちゃわないかな?角蛇って大きいみたいだし。ちょっと心配。
「きゅるぅ」
ムーンと二人でやるから大丈夫だそう。仲良しだね~。
さて、私もやろうかな。
角蛇は尖った角がある以外、普通の蛇とたいして変わりはない。
角に 魔力攻撃:麻痺 を発動させて、当てるだけで対象を失神させられる攻撃することと、長い牙で執拗に噛みつく習性、飛距離の長い催涙の吐息がBランクの理由だ。
目眩ましをして、さらに麻痺させ、トドメの牙で仕留める。そんな角蛇の肉質はちょっとした贅沢品だそう。
調理方法は今のところ丸焼きしかないけど、解体処理が出来るようになったら、いろいろ作ってみようかな。
「キシャアアァッ!!」
! ムーンたちが早速見つけたみたい。
ちょっと観戦しよ。
大きな水溜まりが幾つもあってぬかるんだ湿地帯。葦が生い茂っているところもあって歩きにくいフィールド。
滑るように素早く動き回る大蛇を追うルーン。
ムーンと一緒に倒すつもりだったが、ルーンはムーンに、1ぴきだけ自分に倒させてほしいとお願いをしていた。
「きゅうっ!」
張り出した木々の僅かな枝先を伝って追っていたが足場がもうない。角蛇が水の深い沼に追い込まれたからだ。
このままでは逃がしてしまう。ムーンのところまで追い立てないと!
ルーンは一声可愛らしく(当の本人は勇ましく吠えたつもりだ)鳴くと、魔力を操作して風をおこす。
ルーンとムーンは雲獣だ。字面が表す通り、雲の特性を有する獣。
大空に生まれた小さなわた雲が、成長し、生まれた大空をも覆い尽くすような入道雲になる。そして、hpaを増した一握りの雲のみ、台風の力を持つ 竜 になれる。
ルーンはまだ、生まれたばかりのわた雲だ。でも、いつかは自分も入道雲のような大人の雲獣になりたい。
ルーンは風を体に纏わせ、枝から浮かび上がる。
大昔、ただの雲だった祖先は空高く浮かぶ天界から漏れでた力に影響され、魔力を得て地上に降り立った。
それが、幻獣:雲獣だ。
のほほんとしてはいるがれっきとした雲本来の水、風の力を持つ幻獣。
その魔力操作の精度は全ての魔力を有する生物のなかで群を抜いている。特に、兄のムーン。
憧れで、目標で、家族で、大切で、大好きな。
いつかはそんなムーンみたいになる!
体に纏わせた風を加速させ、舞い上がり、ターゲットの角蛇を捕捉。
足留めをお願いしているムーンのところに追い立てて確実に仕留めるべく、ルーンは水弾を放った。
読んでくれてありがとうございました!(*´ω`*)
次も任務です。
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