Pちゃん
「うおおおおおおお!!!」
HN「Pちゃん」はスマートフォンに引っ付きそうなくらい顔を近付けて叫んだ。
「当たった・・・当たってる?・・・ほんとだよな?」
そう言って何度も画面を確認する。
「やった!やった!そうだ!みんなに知らせよう!」
慣れた手付きで瞬く間にSNSに当選報告を上げる。
ここは彼の部屋、様々な物が散乱し、とても汚い。ゴミや雑誌等、如何にもな雰囲気である。
如何にもは如何にもである。かく言う彼は現在無職でほぼ引きこもりと呼べる程度に外出もしていない。半年前に仕事を辞めてから溜まり溜まったストレスを吐き出すようにゲームに明け暮れる日々である。
以前食べ物をまともに取らず、寝ないでゲームをしていた時に予兆無しの突然に意識を失い、運良く大事には至らなかったがそれ以来最低限の人間的生活、食べることと寝ることと動くことを毎日行うようになった。なのでほぼ引きこもりなのである。
「で、えーと?適性検査?はっ?」
案内を読むと適性検査からチュートリアルまでの事が書いてあった。
適性検査、インステッドオブウォーの配信開始以前に基礎学力テストや心理テストのようなものを行うようだ。その結果を素に陸海空のどの軍に入るか、どの職種になるか等が全て決まるという、ゲームとは自由を与えてくれるものという考えをぶち壊してくれる設定だ。
例えば頭のキレる者は最初から管理職に配置される。一番優秀であればスタートした時点で幕僚長になっているのだ。他にもパイロットや艦長、レンジャー隊員だって適性次第なのだ。
ただこれはあくまで適性であって与えられた職種以外の事をしても構わない。構わないのだが経験値の取得率が違う。
例えば戦車の操縦士が小銃の射撃訓練を行っても歩兵職種が行った場合より得る経験値が少ない、つまりレベルが上がりにくいということだ。
こういった奇抜なシステムを採用しているので配信される前からクソゲーと呼ばれるのも納得出来る。
チュートリアルについては配信開始までの間、オフラインでゲーム空間での移動の練習が出来るという。
ただしそこで経験値やアイテムを得ることは出来ない、いわばただのバグ探しにあたる。死ねば二度とプレイ出来ないという縛りがあるのでプレイヤーにとっては突然死なない為に必要な練習場ともいえる。
「なんだか難しそうだな。特にやりたい職種っていうのもないけど面白い職種になれるように適性検査を真面目に受けないとな。パイロットとかになれたら面白そうだな。」
Pちゃんは案内に書かれたURLから適性検査を始めた。