六話 ARIA
ARIAシステム。
それは機械で制御された別の人間の脳を三分の一自分の脳と入れ替える形で入れることで、自分の殺意以外の思念を無理矢理消させ、敵を殺すための最善の行動をとらせるシステム。
俺は彼女が目覚めると同時に自分の心が暗く沈んでいくのを感じる。
そうして、完全に自分の心が消えたのを確認してから扉を開く。
当然、今まで扉を叩いていた敵の姿が確認される。
俺は敵が動く前に、自分のナイフを敵に投げつける。
すると、予備動作なしに投げられたナイフが敵の一人の頭に突き刺さる。
目の前にいるのはあと2人。
俺はそのまま敵に突っ込み、敵の頭に突き刺さっていたナイフを抜き取りながら銃魔法で攻撃をする。
突然、もう一人の頭から血が吹き出したのを見て、もう一人の敵が動揺する。
ARIAはその一瞬を逃さず、そのまま胸にナイフを突き刺し、傷口を抉るようにナイフを捻る。
敵は生き絶えたようだ。
「凄いなソラ。ん?ソラ?」
「対象を確認。排除開始。」
俺はそのまま廊下に出て、走って行く。
出し惜しみせず銃魔法と時空魔法を併用し、敵を蹂躙していく。
敵は5人。
俺は一人の頭部を銃魔法で貫きつつ、集団に近づいて行く。
俺の行動に気づいた男達が戦闘態勢に入ろうとするが、もう遅い。
完全に戦闘態勢に入った時には既に二人の喉が切られていた。
「この、化け物がぁぁ! 荒ぶる炎よ……」
「やめろ!室内で火属性の魔法をーー」
止めていた男の顔にナイフが刺さる。
「隊長!くそ、化け物め!これでもくらえ!ファイヤーボール!」
詠唱を終えた男が数個の魔法を撃ってくる。
俺は数個の火の玉を避け、そのままの勢いで男に近づく。
男は至近距離での火の玉を避けられると思っていなかったのか、驚きで固まっている。
俺はその隙を逃さず、男の胸にナイフを刺す。
しかし、火の玉を避けたのは失敗だったようだ。
火の玉の火が家に燃え移ってしまった。
ARIAは人を殺すためのシステムなので、周りの状況を気にしない。
そんな考えすらもARIAは殺意に変えていく。
そして、俺は次の標的を見つけると近づいていった。
ーーーーーゼクスーーーーー
ソラが行ってしまった。
3人を瞬殺した後のソラの目は異常だった。
今まで話していた人間と本当に同一人物なのかと思うほどだ。
ソラの目には感情が一切感じられなかった。
感じられたのは純粋な殺意。
どうすれば12歳であそこまでの目ができるようになるのだろうか。
いや、あの目をできるようになったのではなく、あの目をしなければ死んでいた環境にいたのだろう。
俺が拷問をした時に見たあの体といい、ソラは多分尋常ではないくらいの苦痛を受けてきている。
それに拷問時の反応からその苦痛に慣れてしまっている。
俺が冒険者だった頃、暴力を受けていた奴隷を見たがあそこまで酷い者はいなかった。
俺がそんな事を考えていると、ソラが向かった方とは逆の方の廊下から足音がする。
俺は急いでドアを閉め、鍵をかけたが、既にドアはボロボロだったようで長くは持たなかった。
俺はラスタルと目を合わせると一緒に奴らに襲いかかる。
「ここが死に際かもな。」
俺は男を一人斬りながらラスタルに話しかける。
「ああ、そうだな。だが、ソラが戻ってくるまでは俺たちで姫様を守らなければならん。まだ死ぬなよ。」
「もちろんだ。お前こそ死ぬなよ。」
俺とラスタルは冒険者の頃からの仲間だった。
最初は馬が合わず、お互いを毛嫌いしていたのだが、今では戦友だ。
俺があいつほど心を許している奴はいない。
思えばもう10年も奴といる。
「ぐっ……。」
俺の手にナイフが刺さる。
ラスタルの方を見ると、ラスタルの盾を着けた手にもナイフが刺さっていた。
俺は根性でもう一人斬り、敵を押し返す。
姫様は俺とラスタルの後ろに隠れているため怪我はしていないようだが、俺達が怪我をしている様子を見て出て来ようとしている。
俺は姫様に向かって、
「大丈夫ですぜ。こんくらいの怪我どうって事ないですぜ。」
そうやって笑って話す。
実のところは相当きつい。
こいつらナイフに毒を塗っているのだ。
気を抜けば意識を刈り取られそうな感覚に耐えながら、必死に姫様に近づかせないように死守する。
ソラがくるまで後どれくらいだろう?
ソラが戦っている姿はほとんど見ていないが、彼は俺とラスタルとで挑んでも瞬殺される程の凄腕だろう。
そんな彼が本気になっているのだ。
きっとすぐに来てくれる。
だから、俺たちはそれまで姫様を守っていればいい。
だが、そんな気持ちとは裏腹に意識が薄くなっていく。
「ラ、ラス……タル。まだ、生きてるか?」
「当たり……前だろ。」
俺にはわかる。
ラスタルも限界だ。
だんだんと呼吸が途絶えて行っている。
そして、俺たちの胸に同時にナイフが刺さる。
「ぐふっ。」
倒れながら俺は一人の少年が扉の位置に立っているのを見つける。
「姫様を……任せたぞ。」
俺はそう言って意識を失った。
ーーーーーソラーーーーー
俺はあの部屋以外の全ての敵を殺し終わり、急いで部屋に戻る。
俺が部屋に戻った時、ちょうどゼクスとラスタルの胸にナイフが刺さる瞬間だった。
倒れていく二人を見ながら、俺は怒りの感情すらARIAで殺意に変える。
そして、倒れる際にラスタルが言っていた言葉を聞き、
「了解した。」
俺はそれを任務と認識する。
そして、倒れた二人を心配するようにマリーが飛び出してくる。
敵の男達は二人に泣きつくマリーに向けて剣を振りかぶる。
男達の人数は9人。
ゼクス達はよくこの人数に耐えていた。
俺は手加減なしで銃魔法を撃ちまくる。
銃魔法を100発程連射したところでMPが切れる。
残りの人数は3人。
残った男達は一瞬にして死んだ自分の仲間達を見て、恐怖し、俺のMPが切れた事を悟り安堵した。
しかし、俺はMP切れを起こした体で男達に向かって走っていく。
俺はMP切れの痛みや眠気さえARIAに吸わせる。
そうして、完全な殺しの道具と化し、敵を殺していく。
一人目は首を切り落とす事で、二人目は攻撃してきたところを避け、相手の攻撃してきた勢いを使って自分のナイフを腹部に抉りこむ。
三人目は恐怖で動けないところを確実に何度も刺すことで殺す。
いつの日か父にやったように何度も何度も。
そうして、男達を殺した俺はゼクスとラスタルの死体に泣きついているマリーを抱える。
そろそろこの部屋にも火の手が回ってくるはずなのだ。
「離してソラ!まだ二人が!」
「二人は死んだんだ。もう休ませてやれ。」
「私のせいで!私のせいで二人が死んじゃったの!」
「違う!あいつらは自分の守りたいものの為に死んだんだ。お前のせいじゃない!」
「でもでも……。」
「いいか、よく聞け。あの二人は安らかな顔をして死んでいる。本当に自分の役目を全うした人間の顔だ。本当に死にたくなかった人間はもっと悲惨な顔をする。彼らは自分のしたいことで死ねたんだ。それを否定することは彼らを否定することに繋がる。それは死者を冒涜する行為だ。わかるな?」
「うん。わかったよソラ。私もう泣かない。」
「良い子だ。じゃあ、俺に捕まってくれ。」
「え?どうするの?階段で下まで降りるんじゃないの?」
「階段はもう無理だ。火が回っている。窓から飛び降りる。」
「え⁉︎ここは二階だよ⁉︎」
俺は無視して彼女を抱える。
いわゆるお姫様抱っこと言う奴になったんだが、何故か彼女が静かになったので、そのまま窓から飛び降りる。
ただし、庭の木に自分の体を打ちつけながらマリーの体に傷がつかないように降りたのでだいぶ怪我をした。
俺はマリーを降ろす。
マリーはしばらくの間惚けていたが、俺の傷に気づき、白魔法をかけてくる。
「マリー、白魔法を使えたのか?」
「ええ、LV3までだけどね。」
「俺は冒険者を続ける。マリーはどうする?」
「私も冒険者になるわ。ソラ色々教えてくれる?」
「それは良いが、貴族の知り合いの元に行っても良いんだぞ?」
「良いの。私はソラと一緒に暮らしたいの。」
「そうか。だったら良いよ。」
俺たちは宿を取り、俺はマリーを寝かせる。
ここからは俺の仕事だ。
夜、城に忍び込む。
『暗套』があるため侵入は容易かった。
まずハイネと言う男を探す。
なんとそいつはこの国の姫の教育係だった。
取り敢えず、奴の部屋に食事を持っていく。
「おや?今日は小さい配膳係なのですな。」
「はい。現在食堂で料理を学ばせてもらっている者です。これからお見知り置きを」
「小さいのに偉いね。」
俺はそう言って部屋を出ていく。
奴に渡した料理には俺が森から持ってきた致死性の高い毒が入っている。
明日の朝彼は原因不明の病で見つかっているだろう。
次に、王妃を殺す。
しかし、さすがに王妃の部屋の前には護衛が二人ついていた。
俺は『暗套』を使い、二人とも気絶させる。
そして、姿を現し、堂々と扉を開ける。
「誰よ。こんな遅い時間に門番は何しているのかしら。って子供?」
俺は指を彼女に向ける。
「坊やここにどうやって入ったの?それに何してーー」
ピチュン!そんな音がして、彼女の足に穴が空く。
「え?きゃぁぁぁ!」
俺は再び放つ。
すると、次は彼女の腹部に穴が空く。
「ちょっと待って、話を聞いーー」
ピチュン!ピチュン!俺は2発撃ち込み彼女が絶命したのを確認してからその場を去る。
これでもうマリーが狙われることはないだろう。
もし狙われたとしても、今回と同じように始末すれば良いだけだ。
俺は仕事を終え、宿に帰った。
今回は死人が多かったです。
次の話は閑話を挟んでからにしようと思います。
次の更新は木曜から金曜くらいになると思います。




