五話 勝負と襲撃
「ええい、またんか!」
60くらいの爺さんが俺の前に立ちはだかった。
「どけ、邪魔だ。」
俺が睨みながら言うと
「わしと勝負せい!」
「聞こえなかったのか?俺はどけと言ったんだ。」
割と本気で殺気をだす。
すると、周りで見ていた冒険者達は怯えていた。
しかし、目の前の爺さんはそれを受けても平気なようで
「ハハハ。なかなか良い殺気をだすな。ますます興味が湧いた。わしと勝負せい!」
この爺さんは勝負の事しか頭にないようだ。
俺は無視して横を通り過ぎようとすると、爺さんは俺の首根っこを掴み、俺を持ち上げる。
「はなせ。」
そう言って爺さんの手を殴るが、爺さんはビクともしない。
相当鍛えているようだ。
仕方ないので勝負をしてやる事にした。
「勝負をしてやるから離せ。」
「おお、そうかそうか。」
爺さんが素直に離す。
「その代わり条件がある。観客は無しにしろ。」
「そのくらいは構わんよ。おい!お前達!わしは今から闘技場に行くがついてきたら命はないと思えよ。」
爺さんが殺気を放ちながら言う。
周りの冒険者は首がちぎれんばかりの勢いで頷く。
爺さんはミーシャさんの前まで行くと、
「おい、闘技場を貸し切りにしろ。」
ミーシャさんは突然話しかけられ驚いていたが、すぐに裏に行くとギルド長に許可を取ってきたらしく、そのまま案内してくれることとなった。
そして、俺は爺さんと共に闘技場にきた。
「お主はいつも使っとる剣で構わんよ。わしは木刀で行かせてもらう。」
「なめているのか?」
「わしは剣でやると殺してしまうからのう。」
俺は気持ちを切り替え、集中する。
「爺さん、ひとつ聞いておく。俺はお前を殺す気でやれば良いのか?」
「お前さんは真剣を持つんじゃからそういうことじゃ。」
「了解した。」
俺は再び集中し、俺を引き取ったあの男の声を頭の中で聞く。
そして、殺意を充分に持ち、爺さんへとゆっくり歩いて近づく。
爺さんの間合いに入る一歩前で止まり、倒れるように加速する。
爺さんは剣を振ってくるが、俺はその剣をナイフで受け止めたはずだった。
確かに受け止めたのだが、爺さんの剣は予想以上に重く、吹き飛ばされてしまった。
どうやら、この爺さんは口だけじゃなく、相当な手練れのようだ。
俺は時空魔法を自分にかける。
時空魔法は他から見れば何も変わらないので、バレてはいないだろう。
(次は殺す気で行く。)
そう思い、集中のレベルを一つあげる。
俺は再び爺さんの間合いまで歩いて近づき、間合いに入ると同時に加速する。
「またそれか!それはもう飽きた!」
そう言って、爺さんは剣を凄まじい速度で振ってくる。
俺は早まった体内時間により、それを認識し、体を捻ることで躱す。
そして、自分の手に握っていたナイフを爺さんの顔に向けて投げる。
爺さんは予想通り顔の前に剣を置き、ナイフを防ぐ。
爺さんは顔から剣をどけた時、驚愕した。
「な、奴はどこに行った⁉︎」
そう、目の前にいるはずのソラが消えていたのだ。
俺は爺さんが顔を剣で守り、俺が見えなくなった一瞬で『暗套』を発動させ、爺さんの前から消えた。
そのまま爺さんの後ろに回り込み、首筋にナイフをたてる。
ズシュッ!と音がすると爺さんの首にナイフが刺さるが、爺さんの筋肉は硬すぎて皮膚を少し削ったほどだった。
流石に武器が効かないのでは話にならないので、距離を取り、姿を現す。
「おお、そんな所に!しかも、このわしに傷をつけるなどこの20年は現れなかったわい。」
「爺さん、体どうなったんだ?ナイフが刺さらなかったぞ?」
「フハハハハハ。わしの体は鍛えに鍛えられておるからのう。それでもう終わりか?」
「いいや。これからだ。」
俺は人差し指を爺さんに向ける。
「何の真似じゃ?」
そして、爺さんに銃魔法を撃つ。
威力はピストル程。
「ハッタリのつもりならーー」
ピチュン!そんな音がして、爺さんの右肩に穴が開く。
「な⁉︎お主、それだけ武術が使えて魔法も使えるのか?」
俺は構わず爺さんの左肩、両足に銃魔法を放つ。
左肩は剣で守られたが両足は守りきれなかったようで、穴が空いていた。
「ぐっ……。その魔法は見たことがないわい。何も見えないのに穴が空く魔法など聞いたことすらないわい。」
「負けを認めるか?」
「ああ、まさかこのわしがこんな子供に負かされるとはな。」
「勝負で良かったな。俺のいた世界ではこんな子供はごまんといたぞ。」
「ほう、面白いことを言いよる。」
「じゃあ、俺は帰る。その怪我は自分で治せ。」
「少し待ってくれんか?」
「なんだ?」
「名前をまだ聞いておらんかったのでな。わしの名はジョナサン。ジョナサン・アルマンじゃ。お主の名は?」
「ソラ。ソラ・サトミだ。」
「ソラか。確かに覚えたぞ。」
「できれば関わらないでくれよ。」
「何故じゃ?」
「あんた面倒そうだから。」
俺はそう言い、家に帰る。
帰り際、つれないのうと言う声が聞こえた。
俺は家に帰り、すぐに寝た。
流石に手練れのジョナサンと闘った後だったのだ、結構疲れた。
マリーが俺を夕飯に誘ってくれたが、断った。
しかし、その眠りはある輩によって邪魔された。
夜、この家の中に侵入者が入ってきたためだ。
ざっと数えて30人はいるだろう。
しかし、俺には敵意は無さそうなので放っておいたが遂に俺の部屋まで来たようだ。
家の使用人はだいぶ殺されているらしく、家への侵入を許していた。
俺の部屋に入って来たのはまだ一人なので俺は寝たふりをしながら、そいつが近づいてくるのを待つ。
そして、そいつが俺のベッドの側まで剣を振り上げた瞬間、俺は起き上がり、男が腰につけていたナイフを引き抜き、胸を刺す。
ちょうど心臓に刺さったようでそのまま男は動かなくなった。
こいつらが俺に攻撃したことによってこいつらは俺の明確な敵に変わる。
俺は取り敢えずマリーの部屋に行くことを決めた。
マリーの部屋に行く途中で二人程殺し、マリーの部屋の前に着く。
ドアは閉められているので、ノックをする。
「誰?」
「俺だ。」
「ソラ?」
「ダメです!姫様!」
そんな声が聞こえたが扉は開かれた。
俺は部屋の中に入り、鍵を閉める。
部屋にはマリーとラスタルとゼクスがいて、どうやら籠城しているようだった。
「ソラ!血が!」
「これは違う返り血だ。ほら、どこも怪我していないだろう?」
「お前、大丈夫だったのか?」
ゼクスが聞いてくる。
「ああ、ここにくるまでに二人程あったが殺しておいた。まだ、ここにくるまでには時間があるだろう。」
「……そうか。」
「それより、何故こんな事になっている? 流石に巻き込まれたんだから聞かせてもらうぞ。」
「ああ、実はな……」
ゼクスが話したのはマリーがこの国の国王の妾の子である事、マリーの存在を国では隠していた事、それが国王夫人にばれ命を狙われている事だった。
「そうか。お前達も大変だな。」
「ああ。」
労いの言葉をゼクスにかけると扉がドンッ!と大きな音を立てた。
どうやら敵がここまで辿り着いたようだ。
「敵さんのようだな。」
ゼクスはラスタルと視線を合わせると、
「俺とラスタルが囮をやる。すまないが、お姫様を守ってやってくれないか?」
「断る。俺は今はお前達に手を貸してやる気はない。」
「おいおい。ひどいな。ま、仕方ないか。お前だって命かかってるんだし、自分を守るので精一杯か。」
「ああ、俺は殺す事で精一杯になるからお前達を守ることはできないだろうな。」
「ん?」
「俺は今から扉の外に出て、この屋敷にいるやつらを全て片付けてくる。」
「はあ⁉︎何言ってるか分かってんのか⁉︎屋敷には30人以上いるんだぞ⁉︎」
「そうだ。だから、その数を相手にしながらお前達を守ることはできない。俺が出て行っても少なくともお前達二人は死ぬだろうな。」
俺はラスタルとゼクスを指差す。
「だったらーー」
「だが、お前達が出て行けば、俺以外が死ぬ。」
「な!」
「はっきり言っておくがお前達では実力不足だ。ただの無駄死にをするだけだ。」
「ぐっ。」
初めて会った時の盗賊のことを思い出したのか押し黙る。
「安心しろ。俺は30人くらいではどうしようもない化け物だ。死にはしない。」
俺は立って、歩いて行こうとすると、マリーが俺の裾を掴んでくる。
「行っちゃダメ!」
「大丈夫だ。」
安心させるようにマリーの頭を撫でる。
「俺は死なない。」
「でも、一人じゃ……」
「大丈夫だって。それに、俺は一人じゃない。」
「一人じゃない?」
マリーが涙を流しながら聞いてくる。
「ああ、俺には彼女が付いているからな。」
俺はそう言い、扉の前に立つ。
そして、集中し、敵を認識する。
(俺の敵はこの館の中にいるマリー達以外の人間。)
ちゃんと敵を認識してから、言う。
「さあ、殺そう。アリア。」
そう言うと、それに呼応されるかのように彼女が俺の頭の中で目を覚ます。
今回は少し戦闘シーンが多いですね。
次回は日曜から火曜のいつかに投稿しようと思います。




