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四話 悲しみの傷痕

今回は長めです。

俺はゼクスについていった。

この屋敷の地下には拷問部屋があるらしい。

道中ゼクスに聞いてみると、貴族の家には何処でもあるらしい。

そして、俺は拷問部屋に入り、鎖で両手を繋がれる。

この世界の拷問は両手を鎖に繋ぎ痛ぶるタイプのようだ。

前の世界では、一本ずつ指を折っていくとか、爪の間に針を入れていくとか痛みを重視したものだったが、こちらの世界では技術力が低いらしく、拘束具も鎖しかないようだ。


「さあ、見せてやるよ。大人の拷問って奴をな。」


ゼクスが笑いながら言う。

どうやら、こういうのが好きなようだ。

俺はまず鞭で叩かれる。顔を敢えて狙わず背中や腕といった部位を狙っているようだ。

この世界に来た時から、着ていた服が破れるのが少し悲しかったが、他は何も感じない。

普通は苦痛で顔を歪めるところだろうが、こんなのは優しいので顔を歪めるどころか痛みすら感じない。


「おい、質問しなくていいのか?」


ゼクスが楽しみ過ぎて何も聞いてこなかったので、流石に聞き返す。


「ああ、そうだったな。お前は誰だ?」

「ソラだ。ソラ・サトミ。歳は12歳だ。」

「一体誰に言われてお姫様に近づいた?」

「誰に言われても何も俺はただ通りすがっただけだ。」


本当のことなので誤魔化さずに言う。


「嘘をつけ!ならなぜお姫様に問題があることを知っていた?」

「俺はお前と話をしたか?」

「ラスタルから聞いたんだ。」

「そんなの見ればわかるだろう?」

「どういう意味だ?」

「馬車に女の子と護衛二人がいる状況なんてお前達があの子を攫ったか女の子がお偉いさんかしかないだろう。」

「それでなぜお姫様に問題があると分かるんだ。」

「お前達は盗賊に襲われていた。金目の物を持っている商人の馬車でもないのにだ。普通なら商人の方を狙った方が金になる。なら、お前達に問題があるんだろう。」

「なるほどな。じゃあ、次の質問だ。お前はどうやってあの数の盗賊を殺した?」


俺は一瞬考える。

別に固有魔法のことを言っても構わないが、こういう奴らは利用したがるかもしれない。

さらには、固有魔法やスキルを持っているものがこの国でどんな立場にあるかわからない以上素直に言って仕舞えば、最悪魔女狩りのような事にもなりかねない。


「お?だんまりか。ま、それはそれで良いんだけどよ。まだ、時間はあるし。鞭はそろそろ飽きたから棍棒にするか。」


そう言って、ゼクスは棍棒に持ち替え、今まで狙ってこなかった顔を殴る。

ドガッ!

そんな音がするが俺は気にしない。

ひたすら顔や腹を殴られ続ける。


「しかし、お前、苦痛の声すらあげないな。本当に子供か?」

「なんだ、この程度か?このくらいならいくらだって受けてやるぞ。」

「ちっ!舐めやがって。おい!あれ持ってこい!」


後ろで静かに拷問を見ていた二人を呼び、あるものを持ってこさせる。

それは熱した鉄の塊だった。


「どうだ? 流石にこれならお前も怖いんじゃないのか? おい!こいつの服を脱がせろ。」


後ろの二人に指示を出す。

後ろの二人は途中から可哀想にと哀れみの視線を送ってきていたが、ゼクスの方が立場は上なのか大人しく従っていた。


「ごめんな。」


俺の服を脱がそうとしている男が言う。

そうして、俺の服が脱がされた後、三人が絶句する。

俺の体には焼きを入れるスペースなど無いほど火傷の痕や刃物を刺された痕、暴行の痕が残っていたためだ。


「お前、これ誰にやられたんだ?」


ゼクスが聞いてくる。


「誰って、俺の所有者全員にだよ。当たり前だろ?」

「これが……当たり前だと?」


後ろの一人が俺の体を見て泣いている。


(人の体を見て泣くなんて、失礼な奴だな。)


そう思っていると、ゼクスが手の拘束具を外してきた。


「どうした?焼きを入れないのか?」

「何処に入れる場所があるってんだよ。気が変わった。お前はここにいて良いさ。」

「何だ?俺をここに居させたくないんじゃないのか?」

「実を言うとなお姫様は命狙われるような立場でな不安分子は排除しときたかったんだよ。」

「俺は不安分子じゃないとでも?随分お人好しだな。」

「流石の俺もあんなのを見せられて同情しない程人じゃないわけじゃねえよ。」


思っていたほど悪い人間じゃなかったようだ。


「これからよろしくな。」


そう言い、俺は部屋に戻った。

次の日の朝俺を起こしに来たマリーが俺の顔を見て驚いていた。

何せ昨日にはなかった傷があったのだ。

だいぶ痣や血を目立たないようにしていたのだがマリーにバレてしまったようだ。

痣のことを色々聞かれたがこけたと言っておいた。

苦しい言い訳だったが、俺がそうしか言わないのでマリーも渋々納得したようだ。

俺が朝食を食わず外に出て行こうとするとマリーが慌てて止める。


「ちょっと!何処行くの?」

「迷宮だが?」

「迷宮って。朝食くらい食べて行きなさいよ。」

「そう言うなら。」


そうして朝食の席に着くと、昨日まで蔑みの目で見ていた使用人達の目が哀れみに変わっていた。

きっと昨日、ゼクスから伝わったんだろう。

俺からすれば全て当然のことなので哀れまれるのは嫌だったが、蔑みの目よりは良かったので、指摘しなかった。

朝食を摂り、今度こそ迷宮に行く。

この世界には迷宮と呼ばれる場所がいくつもあるらしい。

しかし、迷宮には冒険者ギルドに登録しなければ入らないので、取り敢えず迷宮の付近の魔物を狩り、その素材をギルドで売って金にしてからギルド登録をしようと思う。

ギルド登録には登録料がいるので、一文無しの俺は登録料を稼ぐ必要があるのだ。

昨日ボロボロになった服だけはゼクスが何とかしてくれたが、これ以上を頼むことはしない。

そして、銃魔法と時空魔法の練習も兼ねて迷宮の近くで魔物を狩り続ける。

この辺りはゴブリンという人型の魔物が多く出るようだ。

俺はひたすら狩り続ける。

流石に討伐したゴブリンを全て持って帰ることはできないので、爪を取ってかえる。

この爪は何かの薬になっているらしく、そこそこの値段で売れるそうだ。

と言っても銅貨3枚ほどだが。

この世界の貨幣は銅貨、銀貨、金貨、白金貨の四貨幣らしく、銅貨3枚ほどで安い宿なら止めてくれる。

銅貨100枚で銀貨になり、銀貨100枚で金貨になると言った風に貨幣価値が上がり、白金貨は一枚で一生暮らせる程だそうだ。

ゴブリンを50体ほど倒したところで休憩を挟む。

そろそろMP切れだからだ。

暇つぶしにステータスを見る。


名前 : ソラ・サトミ


レベル : 15


MP : 278/15

力 : 75

敏捷 : 237

知力 : 60

魔法力 : 124

運 : 0


スキル

隠密LV9↑

暗殺LV12

耐毒LV5

耐痛LV8


固有スキル

読解 NEW!


魔法

炎魔法LV1 NEW!


固有魔法

銃魔法LV4↑

時空魔法LV2



なんか色々増えていた。

俺は炎魔法を教えてもらった覚えなど無いのだがもしかしたらこの固有スキルの読解には見た魔法を習得させる効果があるのかもしれない。

俺は早速炎のイメージをしてみる。

すると指先から火の玉が出た。

しかし、あまりに小さくタバコに火をつけるくらいの用途しかないようだ。

この世界にはタバコは無いが。

銃魔法も試してみると一発の消費MPが3から2になっていた。

これで機関銃のような使い方をしても百発ほど撃てるようになったがまだ全然足りないのでMPは上げなければなるまい。

しかし、ステータスやスキルによって上がり方が違うのは才能の様なものなのか上がりにくいものがあるのかもしれない。

そうして、休憩を終えた俺は、再びゴブリン達を狩る。

夕方になる頃にはゴブリンの死骸が200近くまでになっていた。

何も知らないものが見れば悪魔が通った後の様なものだろう。

俺は街に帰り、冒険者ギルドにむかう。

ギルドのカウンターを見て人の良さそうなカウンター嬢の列に並ぶ。

ついに俺の番が来る。


「あの、ギルドの登録をしたいのですが。」


そう言った瞬間、ギルド内にまた新人がやってきたと騒ぎ始める。


「はい、わかりました。それでは私、ミーシャがギルドの説明をさせてもらいますね。」

「あ、その前に素材の買取をお願いします。」

「え?はい。」


そうして、今日狩ってきたゴブリンの爪の入っている袋を渡す。

すると、それを見た周りがまた違う騒ぎかたをする。


「あの、一つお聞きしてもよろしいでしょうか?」

「?どうぞ。」

「これ、お一人でやられたのですか?」

「はい、そうですが。」


すると、周りからはやべぇ奴がきたと口々に言う。


「何かおかしいのでしょうか?」

「いや、ゴブリン自体は弱い魔物なのですが数が数ですので。」

「あ、そうですか。少なかったですか?」

「いえ!逆ですよ!」

「そんなに狩った感じはなかったんですが。まあ、よろしくお願いします。」

「はい。」


しばらく待っているとミーシャさんが奥から出てくる。


「えーっと、ゴブリンの爪213個なので、銀貨6枚と銅貨39枚になります。」

「ありがとうございます。それではこのお金でギルド登録して貰っても良いですか?」

「は、はい。ではギルドの説明に入らせてもらいます。ギルド登録することによって得られるものはご存知ですか?」

「迷宮に入る権利ですか?」

「他にもあります。まず、ジョブに就くことができます。それに、素材買取時の優遇や情報の購入、ギルドランクがBにまでなると銀行が使えるようになります。」

「ジョブとはなんですか?それと、ギルドランクとは?」

「知らないんですか?」


(しまった。)


「いえ、私の故郷は田舎でして、ジョブやギルドの知識が入ってこなかったんですよ。」

「そうですか。ジョブとは自らの役割なんかのことですね。他の人とパーティを組むときに言ったり、ジョブ毎にステータスに補正がかかります。ギルドランクは受けていただいたクエストに応じて上がる称号の様なものですね。ギルドランクは下から、F、E、D、C、B、A、特例でSランクにがあります。

誰でも最初はFランクからですね。


「なるほど、わかりました。」

「はい。ではステータスプレートをお見せください。」

「ステータスの欄は見せなくても良いですか?」

「もちろんですよ。」


ステータスを隠蔽してからステータスプレートを渡す。

数分後、奥に入っていたミーシャさんが戻ってくる。


「はい、終わりました。ソラさん。これからよろしくお願いしますね。それと、これからソラさんが受付をなさる時はできるだけ私にきてくださるとありがたいです。」

「何故ですか?」

「ソラさんはこれから凄い人になると思うので、そうなった時に私がソラさんの担当だったんだって威張りたいんですよ。」


嫌な感じをさせない可愛らしい笑顔でミーシャさんが言う。

後ろで何人かの冒険者が悶えていたが、気にしないことにした。

そして、受付が終わり、家に帰ろうとすると俺の前に大男が立ち塞がった。


「おい、お前。」


無視する。


「おいって言っとるだろうが!」

「……何だ?」

「わしと勝負せい!」


周囲からあいつ終わったな、可哀想にジョナサンさんに目つけられるなんて、と言う声が聞こえてくる。


「断る。」


そう言って逃げることに決めた。

前回も言った通り、ゼクスの説明を入れさせてもらいます。


ゼクス

30代前半程。

マリーのために周囲を警戒する役である。

ラスタルは子供に弱いので悪意を持っている子供を撃退するのもこの人の役目である。

意外とさっぱりした性格で警戒を解いた相手とは仲良くできる。

ラスタルとはマリーに仕える以前の知り合い。

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