三話 おてんば少女
「ちょっと待ってよ!」
さっと踵を返し、町に歩き出したが腕を掴まれた。
「さっきはありがとう!貴方怪我はない?よかったら少し私達と話をしない?」
「いくつも質問をするな。」
「お姫様〜。お待ちください!」
後ろから女の子を追いかけて来ていた護衛達がやっと追いついて来た。
「お姫様!無事ですか⁉︎盗賊は……何ですかこれは?」
「おい、せっかく逃げたのにこれじゃあ……何だこりゃ?」
「この人が全てやっつけてくれたのよ。」
「こんな子供がですか?俄かには信じられませんが。」
「そんな子供に盗賊を押し付けて行ったのは誰だったかな?」
俺がそう呟くと1人の護衛は落ち込み、もう1人の方は言い訳を言ってきた。
「あれは、仕方ないんだよ。お姫様を守るには仕方ない事だったんだ。」
「お姫様とはこいつのことか?どうでも良いが人に厄介ごとをなすりつけるのは感心しないな。」
そう言い、俺は腕を掴んでいる女の子を護衛達に返す。
「あの!お茶していかない?」
「お姫様。そんな暇はないですぜ。俺たちゃ直ぐにでも王都へ行かないと……」
「別にお茶する時間くらいいいでしょ!それに、貴方達はこの人に酷いことしたんだから御礼くらいするのは当たり前じゃないの?」
「うっ……。」
「じゃあ、決定ね!馬車の中に入って!」
俺は女の子に引っ張られながら馬車の中に入っていく。
チラッと後ろを見るとこちらを睨んでいる男とまだ落ち込んでいる男がいた。
俺は馬車の中で座っていると女の子が紅茶を出してきた。
「はいどうぞ。」
「ありがとう。」
そう言うが俺は口をつけない。
こういう時、毒が入れられている可能性があるので警戒していたのだが、女の子が同じ容器から出した紅茶を飲んだので俺も飲み始める。
「おいしい。」
「そう?良かった。」
俺は紅茶など飲んだ事がなかったが、おいしかった。
「名前をまだ名乗って無かったわね。私はマリー・ラネ……ラネイアよ。」
何故か自分の名前で詰まっていたが何か理由があるようなので聞かないでおく。
「俺の名はソラ・サトミだ。」
「ソラは何をしているの?」
何をしているかと言われても、まだこの世界の事を殆ど知らないので何もしていない。
だが、何か答えた方が良さそうなので、
「旅だな。今は近くのシフ村を目指している。」
「へ〜。そうなんだ。今まではどんな村に行ってきたの?」
嫌な事を聞いてきた。
俺はこの世界の事を知らないので村の名前など分かるわけがない。
「実は旅はついこないだ始めたばかりで、シフ村が初なんだ。シフ村には王都へ行くための準備をするためなんだがな。」
なんとか知っている単語だけでそれらしい事を言ってみる。
「そうなんだ。私達も王都へ向かう所なんだけど行くなら送るよ?」
「そこまでしてもらうのもな。」
「良いのよ!貴方には命を助けてもらったんだから。」
結局この子に押し切られて一緒に行くことになった。
途中から聞いていた護衛が反対するが護衛も押し切られ駄目だった。
俺はマリーと一通り話終わり一休みする。
話が終わる頃には夜になっていたので、野営の準備をしていた。
すると、落ち込んでいた護衛が話しかけてきた。
「私はラスタルと言うんだ。今日は本当にすまなかったね。子供を盾にして生き残ろうとするなんて大人として恥な行為だよ。」
「何を言ってるんだ。大人は子供を盾にしてこそ大人だろう。」
「え?」
「そんなことより一つ言っておきたい事がある。今日襲ってきた奴らはハイネと言う奴に命令されてきたと聞いた。」
「聞いたって誰から……」
「あの盗賊達に吐かせた。」
「君はとんでもないね。一体何処から来たんだね?」
「人の詮索は不用意にしない事をお勧めするぞ。」
そう言いながら俺は殺気を放つ。
「す、すまない。君にも君の理由があるもんな。」
「ああ、そっちのお嬢さんに理由があるようにな。」
「なんでその事を知って……」
「そのハイネと言う奴とは王都の酒場であったらしい。」
ラスタルの言葉に被せ気味で言う。
「あ、ああ。そうか……ハイネが……。」
「知っている人間なのか?」
「いや、知らないね。」
俺は最後の言葉が聞こえていたが、敢えて聞き返さなかった。
こいつらとは王都までの関係だからだ。
今までの経験からして問題に首を突っ込むことは得策ではない。
俺はラスタルとの話を終え、馬車の外で寝ることにした。
寝ると言っても警戒は怠らない。
馬車の外で寝るのも中の方が危険だと感じたからだ。
前の世界では誰も信用してはならなかった。
信用は隙を生む。
まだ、マリーでさえ俺を騙している可能性は否定できないのだ。
そのまま睡眠を取り、朝を迎える。
夜、敵対行動を取るようなことはしてこなかったが、こちらの様子を伺っている様だった。
向こうもこちらを信用していないのだろう。
俺たちは朝から馬車で走り、王都に向かう。
途中で魔物に出会ったが、問題なく対処した。
問題があると言えば、ゼクスと呼ばれる男が妙にこちらに警戒心剥き出しでいるのと、魔法の練習ができないことだろう。
俺の持っている魔法は全て固有魔法なので恐らく俺特有の魔法なのだろう。
それに、前の世界でもこっちの世界でも手の内を明かすことは良策ではないからだ。
向こうも隠し事をしている様だし、俺も隠していても問題はないだろう。
そんな順調な馬車での旅を続けていると、王都が見えてくる。
どうやら、シフ村は王都から近い村だった様だ。
俺は王都の入り口まで来ると、王都の門番がステータスプレートの提示を求めているところが見えた。
(まずい。俺の魔法は全て固有魔法だし、暗殺スキルがバレてしまうのは色々と厄介だ。)
そこで、マリー達とは別れることにした。
どうせ、王都に入った瞬間おさらばするつもりだったので問題はないだろう。
「じゃあ、ここでお別れにしよう。」
「え?一緒に入らないの?」
「ああ、俺は王都に入れば宿を探さないといけないからな。日ももうすぐ落ちるし、急いで探さないと。」
「なら、私の家に泊まって行きなさいよ。」
「な、姫様。それは駄目です!」
「そうだぜ、姫様。」
「なんで?ソラは命の恩人よ?御礼ともてなしくらいいいじゃない?」
「いや、それは……」
そうして、ゼクスが俺を睨んで来る。
「こいつは素性が知れませんそんな奴を家に入れてしまうのは……」
「もう、私が良いって言ってるからいいの!」
護衛達が押されていた。
そうこうしている間に俺達の順番がやって来る。
どうしようかと内心焦っていると、マリー達はステータスプレートの能力部分には何も書かれていなかった。
(ステータスプレートは隠蔽ができるのか?)
そう思い、俺も試す。
ステータスプレートを持ち、能力部分が消えるようにイメージする。
すると、能力部分が消えた。
それを門番に提示し、無事通り抜け、この世界で初めての街に入る。
「ソラ、行こう!」
マリーが腕にくっついてくる。
宿を探すと言ったが俺は金が無いのでスラムにでも行くつもりだったのだが、マリーが家に行こうと言ってくるので、仕方なく家に着いて行く事にした。
護衛達は少し嫌な顔をしたが、ラスタルは了承してくれた。
マリーの家に着いたがそこは豪邸だった。
マリーが言うにはこれでも小さい方なのだそうだが。
予想はしていたがマリーは金持ちの娘らしい。
マリーの家に着く頃には日も落ちて暗くなっていた。
王都が広い事がよくわかる。
俺はマリーの家に入った時に使用人達に物凄く軽蔑した目で見られたが孤児でもあり、有色人種でもあった俺はそんな瞳には慣れているので気にせず、案内された部屋に向かった。
それからしばらくしてマリーに夕食を一緒に食べないかと誘われた。
俺は誘いにのり、夕食を一緒に食べる事にした。
毒が入っているかと思ったがそんな事は無かったようだ。
俺は夕食後部屋に戻り、静かにしていた。
夜も深くなってきた時、部屋の前に数人が現れたのがわかった。
使用人達の目からして、夜なにかあるだろうと予測していたので、武装をして部屋にいる。
武装と言ってもナイフ一本だが。
そして、意を決したのか扉を開け部屋に入ってくるが、俺が眠っていない事に驚いているようだった。
「どういうことだ⁉︎何故起きている⁉︎」
「何故って、ああ、もしかして食事に睡眠薬でも混ぜていたか?」
「くそ!やるぞ!」
3人の顔を隠した人が部屋に入ってくる。
「ひとつ聞いておく。お前達の目的はなんだ?」
「は?」
「もし俺を殺そうとするなら容赦はしないが、拷問くらいなら受けてやるぞ?」
3人ともポカンとした顔をしている。
「何を驚いた顔をしているんだ。拷問をひとつ受けるだけで宿が手に入るんだ。こちらにとっても悪い話じゃない。」
「い、いいからやれ!こいつが何者かわからないから排除した方が良い!」
1人の男が言う。
「ちょっと待て。小僧言うじゃないか。大人の拷問を見せてやるよ。着いてきな。」
「お前は……。なるほど、お前の指図か。」
顔を現した男はゼクスだった。
マリー達の説明を入れさせてもらいます。
ステータスなどは後ほど。
マリー・ラネイア
年齢12歳。
年より少し子供っぽい印象。
青髪の少女。
胸は控えめだが無いわけではない。
ラスタル
年齢30前半程
基本的には良い人で、子供好き。
ただし、任務遂行のためにはそれを切り捨てる正確な判断もくださる優秀な人。
ゼクスの紹介は次の話で。




