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三十四話 狂気と買い物

俺たちは今日もいつも通りギルドに来ていた。

俺はマリー達をいつもの席に座らせ、昨晩取って来た素材を売るためにミーシャさんのカウンターに並んでいた。

珍しく、ミーシャさんの列に見慣れぬ人間が立っていた。

人数は2人。

なにやらもめているようだ。


「なんで俺たちがFランクなんだよ!」

「適性を判断したためですよ。」

「適正だとぉ?姉ちゃんの偏見で決めたんじゃねえだろうな?」


ミーシャさんは周りに好かれているので、周りの冒険者達の視線がピリピリしだした。

どうやら彼らはこの街に来たばかりの新参者らしく、ギルドランクが不満なようだ。


「いいだろ、姉ちゃん。ギルドランク上げてくれよ。」

「いえ、規則ですので。」


ミーシャさんもこういう輩には慣れているのか、素っ気ない態度だ。


「まあまあ、いいだろ?これから活躍すればランクは上がるんだから。」


もう1人の男が絡んでいた男を止める。


「と言ってもだな。ギルドランクは入れる迷宮にーー」


そうして、男は後ろを振り返る。

当然俺が視界に入る。


「おい、坊主。」

「……。」


無視しておく。

こういう奴らは関わらない方が良い。

俺は無視して、男達を避け、ミーシャさんの前に立った。


「おい、呼んだんだよ!」


男が俺の肩を掴んでくる。

しかし、俺は振り返ることなく、ミーシャさんに素材を渡す。


「あの……ソラさん。先程から呼ばれてますけど、お相手なさらないで良いんですか?」

「ええ。面倒くさいだけなので。それより、ダイヤウルフの毛皮です。」

「あ、はい。たしかに承りました。」

「ダイヤウルフだと……?」


俺の肩を掴んでいる男が言った。


「おい!姉ちゃん!こいつのランクは幾つだ!」

「個人情報ですので教えられませんよ。」

「いいから教えろ!」


ミーシャさんがどうしましょう?といった顔でこちらを見てくる。


「別にランクだけなら言ってもいいですよ。」

「Cランクです。」

「このガキがCランクだと……。」


男は驚いているようだった。


「おいおい、やっぱり姉ちゃんの偏見で決めてるんじゃねえか?こんなガキがCランクだと?なら、俺たちはSランクだな!」


その大きな声に周りの冒険者はクスクスと笑っているようだった。

ちらほらと「あいつソラにちょっかいかけてるよ」と聞こえる。


「ちょっと!うるさいわよ。静かにして!」


マリーがこの騒ぎを聞いてやって来てしまった。


「なんだ?またガキかよ。ガキは黙ってろよ。」


男はマリーをぞんざいに扱う。

すると、その行動に周りの冒険者は、「マリーちゃんになんて態度だ!」とまたもやヒソヒソ話していた。


「ソラ、どういうこと?」

「しらん。なんかこいつらが勝手に関わってきた。」

「はぁ、もしかしていつも通り無視したの?」

「ああ、面倒臭いからな。」

「ウチのソラがすみません。ですけど、貴方も冒険者なんですからあまりしつこく絡まないでください。」


マリーは頭を下げる。

こうする事が一番手っ取り早いのだ。

俺もマリーに習い頭を下げる。

元王族のマリーはこういう礼儀作法は俺よりもはるかにちゃんとしている。

だから、俺はこういう時基本的にマリーに任せている。


「ああ?今更謝っても遅いんだよ!」


男は俺を1発殴る。

頭を殴られたが、そこまでの威力は無く、痛みも感じなかった。

しかし、俺が殴られたのを見て、マリーが黙ってはいなかった。


「ソラが何したっていうの!貴方達いい加減にしなさいよ!」

「あ?なんだ?このガキどもが。調子に乗ってんじゃねえよ!」


その男はマリーに暴力をあげようとした。

俺はその時に頭の中のスイッチを入れ替える。

俺は男が拳を振り上げ、マリーに向かって殴ろうとした瞬間、その拳を掴み、同時に反対の手で男の首を締めていた。


「あがっ!」


そんな男の声が聞こえ、俺は男を掴んだまま、上にあげ、足を浮かせる。

男は俺の腕を首から剥がそうと、俺の片手を振りほどき、両手で首を掴む手を剥がそうとする。

俺はそのまま、男を後頭部から地面に叩きつける。

マリーに暴力を振るおうとしたのだ。

もう少し痛みが必要だろう。

俺は地面に叩きつけられ、痛がっている男に跨り、右手で思いっきり顔面を殴る。

男の鼻骨が折れ、鼻血が吹き出す。


「ぐぁぁぁ!」


俺は左手で白魔法を発動させ、男の傷を癒やす。

そしてまた殴り、傷つける。

こうすれば、男は死ぬ事なく、痛みを負い続ける。


「ひっ!ひぃ!もう……ぐへっ!……やめて……ぐぁ!」

「ソ、ソラ!もういいから!ストップ!ストップ!」


流石にマリーが止めに来た。

マリーのストップが入ったので俺は男からどき、邪魔だったので、まだ寝転がっている男をギルドの壁の隅にまで蹴り飛ばした。

その行為にギルド内は静かであった。

そしてまたヒソヒソと「ソラを怒らせたらやばい」と聞こえだした。

俺はミーシャさんの元まで行き、


「部位の買取をお願いします。」


と何事も無かったかの様に話しかけた。


「ソラさん?やりすぎではないんですか?」

「大丈夫ですよ。怪我はあの通りしてませんし、恐怖と痛みだけを植え付けたので、後遺症も残りません。」

「いえ、そういう事ではなく」

「ああいう血の気が多い輩はあのくらいが丁度いいと思いますよ。」

「そ、そうなんですか。」


男と一緒にいた仲間達は恐怖でまだ動けない男を引きずってギルドを出て行った。

その後も少しギルド内は騒然としていたが、いつも通り俺たちは迷宮に出かけた。



迷宮からの帰り道、俺はマリーと2人で帰っていた。

リアは最近重力魔法の練習にはまっているようで、早めに帰る。

エルミアも夕飯の支度をするために早めに帰っている。

だから、久しぶりにマリーと2人きりな気がする。


「2人きりだね。」


マリーがどこが緊張した様子で話しかけてくる。


「そうだな。」


会話が途切れる。


「マリー、少し寄り道していいか?」

「うん。いいけど、何か買うの?」

「ああ、服が破けてしまったから代えを一つな。」


俺は2着しか服を持っていないため、1着破れてしまうと、着る服が無くなるのだ。

この世界では、服は高い。

新品になると、金貨を出す羽目になる。

中古であっても、貴族が着ていたような物は高い。

マリーは、迷宮用の服と私服とで服を分けているようだが、俺には元々私服という習慣がなかったために迷宮用の服だけしかない。


「マリー、服を何着か選んでくれないか?俺はそういうセンスが無いからな。」

「うん。わかった。」


マリーが服を選び始める。

服を選んでいる時のマリーはとても楽しそうで、ニコニコしながら、俺に服を押し当ててみたりして、服を選んでいる。

マリーが服を選び始めてから1時間ほどが経ち、やっと選び終わり、俺はマリーの選んだ中から2着だけ買った。


「ソラ、お金はあるんだから、もっと買ってもいいんじゃ無いの?」

「あまりあってもな。俺はそもそも恵まれた環境に産まれてないから、物が少ない方が安心するんだよ。」


そんな話をしながら、街を歩いていく。

商店街なので、人通りも多く、店も多い。

色々なものを見渡しながら歩くマリーを見ていると、マリーの視点が止まった。

装飾品を扱っている店のようだ。

俺はマリーの手を引き、その店の前にまでいく。


「え⁉︎ソラ⁉︎」


急に手を掴んだ事に驚いたのか、マリーは少し大きめの声を出していた。


「マリーの目がここを見ていたからな。何か欲しいものがあったのかと思ったんだ。」

「え、ああ、まあ、このネックレス可愛らしいなと思って。」


マリーは元は王族だ。

たとえ虐げられていたとしてもある程度の貴族の嗜みはしなければならなかったのだろう。

そのためこういう装飾品においても、目がきくし、リアやエルミアなんかよりもオシャレである。


「これを一つくれ。」


俺はマリーが指差したネックレスを買う。


「ソラ?」

「貰ってくれ。俺からのマリーへのプレゼントだ。」

「で、でも……。」

「いいから。」


俺はそう言ってマリーの手にネックレスを握りこませる。


「さっき服を選んでくれたお礼だ。それに、前からマリーにはプレゼントしたいと思ってた。」

「ありがとう。大切にするね。」


マリーは満面の笑みになる。


「それに……俺にはこれくらいしかマリーにあげられるものがないからな。」

「え?何か言った?」

「いや、何でもない。」


俺たちはそのまま帰っていた。

しかし、ふと視線に気づき、振り返る。

だが、人混みの中での視線なので犯人を特定するには至らなかった。


「どうかした?」


マリーが心配そうな顔をしてくる。


「なんでもない。」


視線の数は3つだった。

オーク戦の一件から誰かに付けられているような感覚に陥ることが多くある。

もしかしたら、誰かが見張りについているのかもしれない。

警戒はしておくべきだろう。

そう感じ、家に帰るとすぐにウォルに警戒するよう伝え、家の周りの罠も強化しておいた。

今回は前半はソラの狂気、後半はマリーとの交遊を書いています。

ソラの壊れている部分を書きたかったので書きました。

マリーとの会話は色々書いてるうちに思いついたので入れて見ました。

普段見せない一面を見せれて良かったと思ってます。

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