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三十一話 新たな仲間

「エルミア・カレンです。」


このダークエルフの少女の名はエルミアというようだ。


「ソラ、ご飯できたよ!」


食事場の方からマリーが声をかけてくる。

この子も大分落ち着いたようだし、飯を食わせに行ってもいいだろう。


「降りるぞ。」

「え?」

「飯を食べる。腹減ってるだろう?」


俺がエルミアに聞いたその時、エルミアの腹からグゥゥと音がした。

エルミアはその音に顔を赤らめた。


「これは違うんです!別にお腹が空いていたわけじゃなくて!」

「いいから行くぞ。冷めてから食べても美味しくない。」

「……わかりました。」


俺達2人は下の階に降り、食卓に着く。

俺はエルミアとは反対側の席に座り、マリーはその隣、リアとエルミアはその向こう側の席に座った。

俺が黙々と食べていると、マリーが話し出す。


「えーっと、名前を聞いてもいいかな?」

「エルミアです。」

「エルミアさんね。歳は?」

「歳は?」

「14です。」

「14ってことは私達より歳上なのね。だったら敬語の方が良いですか?」

「いえ、私は買ってもらった身ですから、今まで通りでいいです。それより、私達っていうのはこちらの方ですか?」


エルミアはリアの方を向く。


「いえ、その子はリアって言って、私達の中で一番歳上です。」

「え⁉︎こんなに小さいのにですか?」

「その反応は失礼。私はれっきとした15歳。もう成人してる。」

「本当にですか?」


エルミアはリアの胸やら背丈やらを見ながら、マリーに尋ねる。


「本当よ。」

「その反応にはデジャヴを感じる。」

「エルミアはどうして奴隷になっていたの?」

「それはーー」


それからエルミアの事情を聞いた。

元々はダークエルフの里に住んでいたのだが、ある日、里が魔物に襲撃されたらしいのだ。

本来ならダークエルフという種族は戦闘能力が高いので、魔物ごときでやられるはずがないのだが、魔物達はなぜか隊列のようなものを組んでおり、武装も良いものをしていたらしい。

さらには、魔人族がいたという目撃情報もあったらしい。

最初の頃は苦戦しなかったのだが、毎日のように続く襲撃に戦士達は弱り、遂には里への侵入を許してしまい、里の戦えないもの達は散り散りに逃げた。

そして、エルミアは逃げる途中に奴隷商人達に見つかってしまった。

エルミアもダークエルフなので、戦闘能力が無いわけではないが、多勢に無勢で捕まってしまい、その時に首に傷をつけられたそうだ。

そして、その傷のせいで売れ残り、あの様だったらしい。


「そう、だったんだ。色々苦労したんだね。」

「泣かす話。」


2人とも涙ぐんでいた。


「それにしても珍しい。ソラが他人に関わるなんて。」


黙々と食事をしている俺の方を見てリアが言う。


「え?どういうことですか?」

「ソラはね、あんまり人と関わりたがらないのよ。私とリアも初めて会った時はほとんど話さなかったの。」

「そう。私なんか話しかけても無視された。」

「でも、私には話しかけてくれましたよ?」

「だから珍しいの。ねえ、ソラ、何でエルミアを助けようと思ったの?」


俺は食事の手を止め、飲み込んでから言う。


「俺と似ていたからだ。」

「似ていた?」

「こいつの目が昔の俺の目と似ていた。だから、情けで助けてやろうと思った。」

「そうなんだ。」


俺は飯を食い終わったので、自分の部屋に移動した。

それからもマリーとリアによるエルミアへの質問は続いたようだった。

俺はそれからしばらく、ポーションを作っていた。

最近は、ポーション作りにはまっている。

ポーションは色々な効果が付与できて、なかなかバリエーションが豊富だ。

今は効果を高める練習をしている。

もっと精度が高まってきたら、売って収入を得るのもアリだろう。

そして、いつもの時間になったので、準備をして、外に出る。

すると、エルミアが外にいた。


「眠れないのか?」


俺が後ろから話しかけると、エルミアはビクッとして、こちらを振り返った。


「……はい。どうしても奴隷の頃を思い出してしまって。」

「そういう時は先のことを考えるんだ。」

「先の事?」

「お前は俺に似てるって言っただろ?」

「はい。」

「お前はあの頃の俺に似てる。あの頃の俺は何も考えることができなかった。だが、ある日、ある人が俺に言ったんだ。過去ではなく、先を見ろと。」


俺は今の俺を形作ったあの人を思い返しながら言う。

あの人は俺を殺しの道に引きずり込んだ。

俺は別にその事に後悔はしていない。

むしろ、あの人には感謝している。

ずっと停滞していた俺を前に進めてくれたから。

それが例え、滅びの道だったとしても。


「先の事を考えていれば、少なくとも過去のことなんて気にはならない。それに、明日からはそんなことが考えられないほど働かせてやる。だから、今日は休んだほうがいい。」

「……わかりました。」


そう言って、エルミアは家の中に入っていった。

俺はそれを確認すると、転移魔法を発動させる。

ウォルが駆け寄ってくるが、


「ウォル、今日は留守番だ。来客が来るだろうから、準備しててくれ。俺もすぐ戻る。」


そうして、俺はいつもの迷宮に入った。




迷宮に入ってからしばらくすると、俺は転移魔法を再び使い、自宅前に戻る。

ウォルが尻尾を振りながら駆け寄って来る。


「ウォル、まだ誰もここに来ていないか?」

「ワンワン!」

「気配はあるか?」

「ワン!」


ウォルは頷く。

つまり、近くまでは来ているようだ。

なら、客人の出迎えに行ってこよう。





俺は『暗套』を使い、気配を探りながら、街への道を戻っていく。

すると、5人ほどの傭兵を見つけた。

『暗套』を解除し、正面から近づく。


「止まれ!誰だ貴様!」

「お前たちの標的だ。」

「何?」

「お前たちはこの先の家を狙いに来たんだろ?つまりは、俺の家を狙いに来たって事だ。そして、依頼主はあの店主っところだな。」

「ならば貴様がソラという子供か。ならばその命貰い受ける!」


男達が剣を抜く。


「俺は今からお前達の依頼主を殺しに行かなきゃならないんだ。さっさと死んでくれると助かるな。」

「ほざけ!」


1人が切りかかってくる。

俺は剣を抜かずに、男の顔を掴んで、地面に叩きつける。

魔物相手ではないので、これだけでも頭蓋の割れる音がする。


「くっ!ここは私達2人で食い止める。だからお前達は奥の家にいる奴らを人質にとってこい!」

「わかりました!」


そう言って奥に2人走っていく。


「止めなくていいのか?」

「奥にはウォルがいる。だから、俺はお前達を殺せばいい。」


男達は同時に切りかかってくる。

俺は一方の剣を避ける。

しかし、男は素早く俺の背後に回り、挟み撃ちにして来た。


「死ね!」


後ろの男が剣を振り下ろしてくる。

殺気が丸出しなのでどの位置に振り下ろしてくるのかが見え見えだ。

俺は手に炎魔法を纏い、後ろの男の攻撃をかわしながら、前の男に手を突き出す。

前の男は咄嗟に剣で防御したが、俺の手は剣を叩き折り、男の胸に穴を開けた。

同時に傷口が焼ける。

この手に魔法を纏わせる技はまあまあ使えるようだ。

実験は終了したのでさっさと始末する事にした。

こいつが魔法も使えるのならまだ実感する事はあったのだが、使えないようなのでこいつの生きる意味はなくなった。


「くそ!くそ!くそ!俺はこんな所で死なないんだよ!」


男は大きく振りかぶる。

一対一の状況で大ぶりの技を出すなんてまるで素人だ、俺は大きく後ろに下がりながら、銃魔法で男の額を貫く。

3人の死体を処理してから、街に向かう。

そろそろウォルは遊び終えている頃だろうか。

転移魔法を起動し、今日訪れたエルミアを買った店に転移する。

店の奥に進むと店主を見つけた。


「ひぃ!何でお前がここに!」

「お前が俺の家に傭兵を送り込んだからだ。」

「くそ!あいつら失敗しやがって!」


俺は指を店主に向ける。


「ひぃ!い、いいのか?俺は商人達の中では偉い方なんだ!俺を殺せば、商人達に目をつけられるぞ!」

「今、俺がここでお前を殺しても外に漏れる心配はない。ここまでにいたお前の店の店員も用心棒もすべて殺した。ここにはお前1人しかいない。それに、マリーの命を狙うものは全て殺す。たとえ、それが世界の人間全てであっだとしてもだ。」

「や、やめーー」


ピチュン!という音と共に男は事切れた。

その後、俺は全ての奴隷を殺し、店を燃やした。

これで、死体も証拠も残らないだろう。

そもそも奴隷商人などはいつ死んでもわからない命なのだ。

別に、1人くらい居なくなっても問題はないだろう。

俺は誰にも見られる事なく家路に着いた。

更新遅くなってしまいすみません。

今回は色々と詰め込んだ話になっております。

これからエルミアとの話が続きます。

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