三十話 ダークエルフ
今日も変わらず同じように3人で迷宮に潜っていた帰り道。
俺は商店街のある奴隷商店の前に新たな奴隷が売られているのを発見する。
彼女の肌は黒く、髪は銀髪のロングだ。
その奴隷はまだ子供のようだ。
といっても俺よりは年上で、大体15〜16歳といったところだろう。
奴隷商店の客は珍しそうにそれを見るが、買う気はないらしく、誰も買って行こうとする素振りは無い。
当の奴隷本人もどこか憔悴したような諦めたような目をしていた。
あの感じの目は俺が拾われる前の目と似ている。
同情はしない。
彼女にも俺と同じように新たな道ができるかもしれない。
俺はたとえそれが最悪の道であっても、拾われて良かったとは思ったし、それが唯一の救いでもあった。
だから、同じ道を行った者として彼女にもそんな人が現れて欲しいと思う。
「ソラ?どうしたの?そんなところで立ち止まって。」
「なんでも無い。さっさとギルドに行って素材を売って帰ろう。」
「うん。」
次の日もその奴隷は売れていなかった。
今日は店主も店前に出て、客引きをしている。
店主が言うにはあの少女はダークエルフという種族で珍しいそうだ。
ダークエルフと知って、興味を惹かれる金持ち達も店に寄ったが、結局は買って行かなかった。
さらに二日後、彼女は未だに売れていなかった。
珍しい種族なのにここまで売れないというのは何かしらの理由があるのだろう。
大体は予想がついている。
俺が遠くから眺めていると、希望の光が目から消えている彼女と目が合った気がした。
俺は視線を切り、その場を立ち去った。
彼女が店頭に出されてから1週間が経過した。
彼女の体は痩せ細っていた。
なかなか売れない店主の怒りから飯でも抜かれているのだろう。
ああなればますます売れないだろうに。
今日も彼女と目が合う。
ここ最近というもの、彼女と頻繁に目が合っている気がする。
今日は無言で見つめ返して見る。
といっても遠くからなので本当にこちらを向いているのかはわからないが。
彼女はなんの反応も示さず、こちらを見ているだけだった。
しかし、俺はその目からまだ生気が消えていないのが分かった。
俺は仕方ないので彼女を助ける事にした。
ただし、彼女が俺と同じ道を行くことは許さない。
だから、試す事にした。
俺は彼女の前に歩いて行く。
そして、彼女の檻の前でしゃがみこみ、視線を合わせる。
「喋れるか?」
「あ……う。」
どうやらまともに喋られないらしい。
予想通りこれが原因で売れていないのだろう。
「俺がお前を買ってやる。」
「う……う。」
彼女が驚いたような顔をする。
おおかたこのような子供が自分を買える財力などないと思っているのだろう。
「だが、その前に1つ質問しておきたい。お前は人として生きたいのか?それとも道具として生きたいのか?人なら頷け。道具なら首を振れ。」
「……。」
彼女は少し考え込んだ。
普通の人間ならここで道具の方を選ぶかもしれない。
奴隷を買う人間など、労働力か性処理道具としてしか使わないからだ。
道具といえば確実に買ってもらえると思うだろう。
ましてや、人間として生きたいなどという奴隷は必要とされない。
だが、彼女は首を縦に振った。
「ふっ。いいだろう。お前を買ってやる。」
俺は少しほくそ笑み、彼女に言った。
彼女はちゃんと人間でいたいようだ。
もし彼女が道具でいたいと言ったなら俺は彼女を買わなかっただろう。
俺は店の中に入る。
すると、店主が近くに寄って来た。
「ご用はなんでしょうか?」
「あのダークエルフを買いたい。」
俺は入り口の方を指差す。
「はい。分かりました。白金貨1枚になります。」
「冗談を言うな。あいつの価値は金貨10枚にも満たない。」
「お客様、恐れ入りますが、ダークエルフの希少価値はとても高いのです。ですからーー」
「あの奴隷は喋られないほどの傷がある。」
「……どうしてそれを?」
「どうしてそれほどの価値がある奴隷を店頭で売るんだ?お前の店は見たところ高い奴隷ほど中で売るようになっている。なのに彼女は外で売られている。つまり彼女は訳ありだ。そして、彼女は1週間前からあそこにいるのに売れていない。ダークエルフなのに、だ。つまり、彼女に何かしらの問題がある。そして、先ほど彼女に語りかけて分かった。彼女は喋れない。だから売れずにずっと残っているんだ。」
「そ、そこまで分かって。」
「そして、もう1つ言いたいことがある。子供だからといって舐めない方がいい。お前ごとき俺は殺せる。」
俺は完全誘導弾を2つ展開する。
そして、威力を抑えて作った1つを店主の前で爆発させる。
「これを使えば、店ごとお前を殺すことだって可能だ。それに……。」
俺は指を何もない壁に向かって向け、銃魔法で撃ち抜く。
壁からは血が垂れて来ていた。
「お、悲鳴は噛み殺したかなかなかだな。」
「な、なぜ⁉︎」
「護衛くらい誰でも予想くらいする。そこの護衛の奴も次、剣に触れたら殺すぞ。」
俺は店主の方を向き、言い放つ。
「金貨10枚だ。」
「わ、分かりました。」
俺は金貨10枚を払い、檻の鍵を受け取って店から出る。
檻の鍵を開け、扉を開く。
「出ろ。」
彼女は檻の中から出てくる。
俺は彼女を連れて、家に帰る。
途中で色々聞きたそうだったが、喋られないのでソワソワしていた。
「あら、ソラおかえり。その子は?」
「奴隷だ。買ってきた。」
「奴隷を?なんでまた。」
「掃除や洗濯をさせたい。」
マリーは俺の表情から何かを読み取ったようで、
「分かったわ。それで?私は何をすればいいの?」
「まずは、この子に風呂を使わせてくれ。」
「分かったわ。ほら、行きましょ。」
マリーがダークエルフの少女の手を引いて行く。
少女は庭先に眠るウォルに怯えながら風呂場に行った。
「ウォル。」
「ワン!」
俺が呼ぶとウォルが駆け寄ってくる。
「あまり怖がらせるなよ。」
「クゥゥ〜〜ン。」
ウォルは少ししょんぼりとしていた。
少女が風呂に入り終えるのを待ち、俺はマリーに料理を作るように指示する。
「料理を作っておいてくれ。」
「分かったわ。リア、あなたも手伝って。」
「了解。」
「お前はこっちだ。」
俺は少女に向かって言い、俺の部屋に連れて入る。
俺の部屋はベッド以外にほとんど何もない。
「そこに寝て服を脱げ。」
「!」
少女は驚いていた。
その顔からは恐怖の色が見て取れる。
「別にお前の想像しているような事はしない。傷を治すだけだ。」
少女は警戒しながら服を脱ぐ。
少女の体には首から胸元にかけて大きな傷があった。
おそらくこれが声が出ない原因だろう。
傷口からして剣で切られたような跡だ。
「触るぞ。」
「っ!」
俺は少女の傷口に触れる。
少し痛がるような様子を見せたが、素直に応じてくれたようだ。
触って見て大体わかった。
声帯あたりまで傷が届いている。
治療を間違えれば、死に至っていただろう。
俺はその傷口に触れ、1つ1つ大事に細胞を繋がらせる感覚で白魔法を使い、治す。
ついでに他の傷も治しておく。
「ほら、終わったぞ。声は出るか?」
「あ、あ!声が出る!」
彼女の声は高く、綺麗な声だった。
今まで表情は暗かったのだが、こうして見てみるとかなり可愛らしい顔をしている。
「あの!ありがとうございます!」
「ああ、俺はソラ。ソラ・サトミだ。お前は?」
「私はエルミア。エルミア・カレンです。」
俺たちのパーティに1人仲間が加わった。
しばらくぶりです。
最近はなかなか執筆の時間が取れてないです。
これからも更新ペースは遅くなると思いますので申し訳ないです。
今回から新キャラ、エルミアの登場です。
彼女はダークエルフです。
やっぱりこういう話には奴隷もいるかなと思ったので出てきたキャラです。
マリーやリアとはまた違った性格なので、これから書いていくのが楽しみです。




