二十九話 転移魔法
俺達は夕食を取り、ゆっくりする。
俺は庭に出て、粘土のような土を集め始める。
その作業はウォルも手伝ってくれた。
その際ウォルは泥だらけになってしまったので後で洗ってやらなければならない。
「これぐらいで充分か。」
「何を作ってるの?」
マリーが家から出てくる。
「風呂だ。」
「お風呂?この土で?」
「ああ。」
俺は魔法で地面に穴をあける。
そして、そこに粘土のような土を敷き詰めていく。
敷き詰め終わると、炎魔法を起動して、一気に粘土を焼いていく。
すると、粘土は固まり、即席の風呂が出来た。
「すごい!土でこんなことができるなんて!」
「この土は高温で焼けば固まる。水にも強い。」
早速水魔法で水を出し、炎魔法で温度を調節する。
指輪つけてみると、丁度いい温度だった。
別に、俺は風呂がなくても良いのだが、マリー達女の子にとっては問題かもしれないと思い、作ることにしたのだ。
「マリー、入って良いぞ。」
「ソラは?」
「俺は後でいい。」
「駄目よ!ソラ、泥だらけじゃない!そんな姿で家に上がっちゃ駄目だからね!」
「……分かった。先に頂くよ。」
「よろしい。」
俺は早速服を脱ぎ出す。
「ちょっ!ソラ!せめて私がいなくなってから脱いでよ!」
マリーが俺から目を逸らす。
チラッと見ようとしてはいるが。
「すまないな。」
俺は服を着なおす。
マリーに俺の体を見せるのは色んな意味で刺激が強すぎるだろう。
「じゃ、行くからね。」
「ああ。」
マリーが行った事を確認し、服を脱いで体を洗う。
体を洗った後は湯船に浸かる。
こうやって湯船にゆっくり浸かっていると、どうしてもアリアの事を思い出してしまう。
俺の雰囲気を感じ取ったのかウォルが寄ってくる。
「クゥゥーン。」
「お前も泥だらけだな。ほら。」
俺は水魔法を起動させ、ウォルに水を被せる。
俺は湯船から上がると体を洗う用の布を取り出し、ウォルの体を洗っていく。
ウォルの体は俺の体より大きく、洗いにくかったが、なんとか洗い終える。
「ウォル、お前なんか大きくなってないか?」
「ワン!」
「まだ小さい方らしいし、大きくもなるか。」
「ワンワン!」
ウォルは頷いているようだった。
本当に利口な犬だ。
かく言う俺もこの世界に来た時より身長が大きくなっている。
成長期というものだろうか?
微妙に歩幅がずれたりしてやりにくくて仕方ない。
俺はそれからもしばらく湯船に浸かって、風呂から出る。
そして、手早く体を拭き、家に戻る。
「あ、ソラ。お風呂上がったの?」
「ああ、俺が使った後なのは悪いが、良ければ入ってくれ。なんなら全て水を変えてもいい。」
「良いわよ別に。ほら、リアも一緒に入ろ?」
「分かった。」
テクテクと外に出ていく。
剥き出しの空間で裸になるのはどうなのかとも思うが、ここは森の中で基本的に人が訪れない。
たとえ訪れたとしてもウォルが反応して追い払うだろう。
そして夜になった。
いつも通り俺は迷宮に向かう。
家から向かうと迷宮までは近いので少し時間短縮ができるようになった。
迷宮に着くと奥に進んでいく。
今日は4階に挑戦する。
しかし、今まで苦戦しているはずの魔物がそこまで苦戦しているように感じられない。
単純な力は今までほど苦に感じず、俺の動き自体も速くなっている気がする。
さすがに気になったので俺はステータスプレートを見る。
名前 : ソラ・サトミ
レベル : 62
ジョブ : 時魔法師、暗殺者
MP : 3541
力 : 1074
敏捷 : 2170+50
知力 : 304
魔法力 : 3540
運 : 0
スキル
隠密LV9
暗殺LV12
耐毒LV5
耐痛LV9 ↑
獣使いLV1
固有スキル
読解
限界駆動
魔法
炎魔法LV6
白魔法LV6 ↑
水魔法LV4 ↑
雷魔法LV4 ↑
光魔法LV5 ↑
風魔法LV4 ↑
付与魔法LV3
転移魔法LV2 NEW!
固有魔法
銃魔法LV6 ↑
時空魔法LV4 ↑
なんかステータスが物凄い上がり方をしていた。
そういえばオーク戦以降ステータスプレートを見た覚えがないのでオーク達の経験値が一気に入った結果という事だろう。
そして、何より気になるのが転移魔法。
これは間違いなく、フロストと名乗る魔人から読み取った魔法だ。
固有魔法ではなく、普通の魔法ということはこれは誰でも覚えられるのだろう。
とりあえず帰りに唱えてみることにしてみる。
次に気になるのがやはり時空魔法だろう。
この魔法には助けられることが多いので今回も内容を把握しておきたい。
いつも通り色々試していく。
しかし、今回も前回と同様に何が変わったのかは分からなかった。
そして、銃魔法だ。
この魔法も色々試していく。
すると、銃魔法を同時に2発出せるようになっていた。
これで完全誘導弾の展開が早くなったり、単純に手数も増えるだろう。
他の魔法も試していく。
他の魔法はどれも威力と範囲が上がったようだ。
俺は魔法を試すために、モンスターを探す。
そして、サラマンダーの群れを見つけた。
ちょうど良いので4、5体ほどおびき出し、魔法を試す。
まずは銃魔法。
今回は『回転』を付与せずに撃ってみる。
今までは皮膚を貫くことが無かった銃弾はサラマンダーの皮膚を貫く。
さすがに、貫通する事はなかったが、ダメージを負わせる事はできた。
つまり、銃魔法単体での威力も上がっているようだ。
サラマンダーが火球の攻撃を仕掛けてくる。
そこで俺はふと不思議なことに気づく。
火球の前にもう一つ薄い火球が見えるのだ。
俺はその火球を見ながら避ける。
不思議に思ったのでサラマンダーがもう一度火球を撃つのを待つ。
そして放たれた火球にはやはりもう一つ火球が見える。
今度はその薄い火球に触れてみる。
しかし、それに熱は無く、触った感覚もなかった。
それからしばらく、薄い物の正体を探る。
注意深く観察すると火球だけで無く、サラマンダーにも出ている。
そして、サラマンダーはその薄い物の通りの動きをする。
間違いない。
これは、予知なのだ。
少しARIAと用途が被ってしまうが、この能力とARIAを合わせれば殆どの攻撃を先読みできるだろう。
それに、この能力は常に発動しているようだから、ARIAより短い未来しか見せてくれないが使い道は多いだろう。
そして、気になる事が一つある。
この能力がステータスプレートに載っていなかった事だ。
この能力は今ステータスプレートに載っているものの中の能力ということになる。
俺はサラマンダー達を始末し、少し考える。
そうして一つの考えに至った。
この予知能力は時空魔法のLVが上がったおかげで発現したという考えに。
本来魔法とはMPを消費して行われるものだ。
しかし、時空魔法は固有魔法であり、俺はこの世界のことをまだ詳しく知らない事も多いのでもしかしたら常時発動するタイプの魔法もあるのかもしれない。
分からないことを考えても仕方ないので、モンスター狩りを再開し、MPが1000を切る前に帰ることにする。
俺は早速、転移魔法を発動させる。
「『ゲート』。」
確かあの魔族はこんな風に口を動かしていた気がする。
MPが使われる感覚が身体中に巡ると同時に俺の前に白い門が現れる。
行き先の指定は俺たちの家だ。
そして、門に触れ、扉を開ける。
すると、扉を通った先にはウォルが寝ていた。
今日は留守番をさせていたのだが、俺に気づいていないようだ。
そんなことより、本当に転移できた。
発動には30秒と時間がかかったが、あの魔族のように逃げるために使うには練習が必要かもしれない。
しかし、往復2時間の迷宮まで行くのにこれを利用すれば、移動時間は省けるだろう。
ステータスプレートを見ると、ちょうどMP1000を使っていた。
これはなかなか便利なまほうを手に入れたようだ。
今回はステータス確認回となっております。
なかなかステータスって出すの難しいのでこういう回をちょくちょく作っておくとやりやすいです。
次回は少し話に進展がある話になると思います。




