二十六話 豚人の帝王
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「なかなかやりますね。そろそろ、私も動かないとまずいですかね。」
そう言って明らかに他のオーク達とは違う巨体を持つオークの肩に乗る青白い肌をした男は飛翔する。
男は背中から翼をだし、空に舞い上がる。
「さあ、行け!忌まわしき人間どもを殲滅してこい!"オークロード"よ!」
その言葉を聞いたオークロードはその巨体をゆっくりと動かしながら人々の守る街へ向かった。
ーーーーー ソラ ーーーーー
俺たちが戦いを開始してから3日が過ぎ、援軍も今日を越せば、着く予定だった。
しかし、最終日という事もあり、冒険者の疲労もあるだろう。
事実、俺とウォルは今までずっと眠らずに戦い続けていて、疲労が見える。
オーク達の力ではウォルの皮膚を突き破る事など出来ないが、ウォルを足止めして、門を攻撃しに行くことはできる。
ウォルはそのオークの面倒も見なければならないので、圧倒的な力の差があったとしても、色々と疲労が募るのだ。
俺たちのところに来たオークは3分の1ほどに数を減らしている。
あと1日くらいなら持つだろう。
そうして、無心にオークを殺していると、
「ソラーーー!」
聞こえるはずのないマリーの声が聞こえる。
俺は幻聴かもしれないと一度無視して殺し続ける。
「ソラーーー!ソラーーー!」
さすがにこう何度も聞こえるとそちらを振り返らずにはいられない。
門の方を振り返ると、マリーが門から出て来て、俺を呼んでいた。
「ウォル!すまない。時間を稼いでくれ!」
俺はウォルに指示を出し、俺の守っていた場所まで守らせる。
しかし、さすがに疲労状態のウォルにそこまでさせたくはないので、俺は完全誘導弾を展開して、ウォルの援護をしながらマリーのもとに行く。
「何だ?マリー。」
「大変なの!東門にでっかいオークが出て来たの!そのオークが強くて、休んでる冒険者も総動員してるんだけど、歯が立たなくて。」
「……わかった。すぐに行くから耐えてくれと伝えてくれ。」
「でも、すぐって……。」
「大丈夫だ。終わらせてくる。」
俺はそう言ってマリーを門の内へ戻してから戦場に戻る。
「出し惜しみは無しだ。ウォル、一気にやる。」
「ワン!」
俺は深く集中する。
「ARIA、俺の脳の心配はしなくていいから、"この戦場にいる全ての者"の動きを予測してくれ。」
俺の脳に多大な負荷が掛かる。
俺の感情は深い闇の中に沈み、敵を殺す意思だけが大きくなる。
鼻から何か流れている感覚があるが、気にならない。
俺は完全誘導弾を展開しつつ、オーク達の群れに突っ込む。
そして、複数のオークが斬りかかってくるのを強引に突破しながら、オークの首を切り、時には銃魔法で頭を撃ち抜きながら、前へ進む。
そのまま前に進み、オーク達の群れの真ん中まで辿り着くと、両手を大きく広げて、意識を集中させる。
そして、指先から銃魔法を乱射する。
いわゆる「マシンガン」をイメージしながら乱射する。
銃魔法に撃たれたオークは複数の穴がほぼ同時に空きながら、倒れていく。
俺はそのまま体を回転させ、あらかた蹂躙していく。
しかし、これはMPの消費が大きいので、MPが1000を切る前にやめる。
今ので大体、半分くらい数が減って、のこり1500体と言ったところだろうか。
「ウォル!咆哮の準備をしろ!」
俺はオークの群れの真ん中から走り出しながら言う。
ウォルが息を吸い込み、咆哮の体勢に入る。
俺はウォルの前にオーク達を誘導するように動き、ウォルに合図を出す。
「ウォル、今だ!やれ!」
「ガァァァァァァ!」
そして、俺はウォルの背中にのり、ウォルの咆哮に時空魔法を掛け、加速させる。
ウォルの咆哮は今まで以上の威力を発しながら、オーク達を貫通し、凍らせていく。
今ので600体ほどはやっただろう。
「ウォル、すまないが後は頼んだ。俺はあっちの大きい奴をやってくる。」
東門を指して言うと
「ワン!」
ウォルが返事をした。
ウォルの実力ならのこりのオーク達くらいどうにかなるだろう。
俺は門の内側に入り、東門に向かう。
「あ!ソラ!」
マリーが駆け寄ってくる。
「ソラ、血が……。」
「そんな事より、状況は?」
「それは私が説明しますね。」
いつの間にかミーシャさんが隣にいた。
「今はなんとか冒険者達を総動員して、オークロードと思しきモンスターを抑えています。」
「オークロード?」
「オークの王のことです。今回の原因だと思われています。オークロードはBクラスのモンスターで、Bクラスの中でもかなり上位にいるモンスターです。」
「今から行きます。」
「わかりました。オークロードは今も東門にいると思います。こ武運を。」
「ありがとうございます。行ってくるよ。マリー。」
「無理しないでね。」
「無理はする。死なない程度には。」
俺は東門を開け、外に出て、叫ぶ。
「オークロードと戦ってるやつは一旦下がって、オークの相手をしろ!俺がオークロードの相手をする!」
「お!坊主!」
俺に気づいた冒険者達が、オークロードから退いていく。
そんな中、1人の冒険者が近づいてくる。
「でもよ、坊主1人で大丈夫なのか?見た所、怪我やら疲労も多そうだけどよ。」
「大丈夫だ。むしろ、他がいると殺しかねない。」
「そ、そうか。よし、わかった。」
そう言って、冒険者達は退いていく。
俺は目立つオークロードのもとに行く。
近づいてみると明らかに身長2mは超えているであろう巨体だ。
ブヨブヨした見た目で、かなり肉がついている。
俺はとりあえず挨拶がわりにオークロードに銃魔法を撃つ。
オークロードは見かけによらず、素早い動きで、攻撃を避ける。
「グワァァァァ!」
オークロードが大きく叫んだかと思うと、刀身1mはあろうかと言う大きな肉切り包丁のような武器を振り下ろしてくる。
俺はそれを横っ飛びで避ける。
オークロードの武器が地面に当たると同時にドォーン!という音がして、地面が大きく凹む。
どうやら周りに空いている凹凸はこいつが作ったもののようだ。
俺は完全誘導弾を出して、オークロードを攻撃してみる。
オークロードは周りのオークの死体を掴み、完全誘導弾に的確に投げつける。
本能的に危険と判断したようだ。
こうなると、接近戦に持ち込んでちまちまやるしかないので、俺は近づく。
すると、ARIAが危険信号を発してくる。
俺はその予測通りに姿勢を低く保つ。
すると、俺の頭のすぐ上をオークロードの武器が通る。
かなり素早い攻撃なので、当たればタダでは済まないだろう。
しかし、オークロードの攻撃をかわした事により、オークロードの懐がガラ空きになる。
俺は懐に向けて走り出す。
オークロードはもう一方の手に持っている盾で俺を押しつぶそうとしてくる。
俺は縦に向かって銃魔法を乱射し、縦に穴を開け、その穴からオークロードの腹に飛び込み、ナイフで突き刺す。
しかし、オークロードの腹肉は柔らかく刃が刺さらない。
俺はそのまま銃魔法を試す。
銃魔法はオークロードの腹肉を貫通し、血が噴き出す。
俺はオークロードから距離を取り、先ほどの傷を確認する。
オークロードの腹からは血は出ていなかった。
オークロードの肉が傷口を塞いだようだ。
なんとも面倒な相手だ。
なので、少し新しい戦い方を使う事にした。
オークロードに駆け出すと同時に『アクセル』をかける。
『アクセル』と名付けた魔法は自分に時空魔法を掛け、加速する魔法で、秒間1000のMPを持って行くので、長期戦には向かない。
だから、MP消費を抑えるため、最初の一歩の時だけにかけ、初速を加速させる。
これだけでもかなりの速度が出せ、オークロードの速度を上回る。
俺はオークロードに近づくときに銃魔法を使い、オークロードの皮膚に穴を開ける。
そして、オークロードに接触するときに、その穴にナイフを差し込み、そのまま皮膚を切り裂いていく。
そのままの勢いで通り抜け、振り返ってもう一度やる。
これを二、三度繰り返す。
すると、オークロードの胸の近くの皮膚から血が噴き出す。
先ほどとは違い、傷口は塞がらない。
塞がるほどの小さな傷ではないからだ。
俺はトドメを刺すために、もう一度同じ手順を踏む。
「グルァァァァ!」
しかし、三度も同じ攻撃を見せられれば、オークでも対応できるのか俺の進行方向に武器を振ってくる。
この加速は直線でしか意味が無い。
途中で曲がろうものなら減速してしまうからだ。
俺はARIAの予測を受け、左手を前に出す。
オークロードの武器は俺に直撃する軌道にある。
なので、俺は左手でそれを受ける。
左手がグシャグシャという音を立てながら砕けていく。
俺は左手にのこる感覚を頼りに体をオークロードの上に乗せ、オークロードの腕を蹴り、傷口の塞がらない腕に飛びつく。
そして、ナイフを突き刺し、傷口を抉る。
そうして広げた穴に右手を突っ込んで銃魔法を放つ。
今回は時空魔法で強化されているので威力は高い。
ドッパァーンという音とともにオークロードの背中から大量の血が噴き出す。
どうやら完全に貫通したようだ。
そして、心臓も貫いている。
オークロードは後方に倒れていく。
そんなオークロードの胸を蹴り、俺は地面に着地する。
着地と同時に少しふらっとするが、なんとか持ちこたえる。
そして、オークロードが倒れると同時に後ろから歓声が上がる。
「うおおおお!あの坊主やりやがった!」
「俺たちも最後まで頑張らないとな!」
そうしてその場の士気が上がる。
しかし、そんな中、上空から何かが降ってくる。
俺はその予測を受け、その場を少し離れる。
「あなた、よくもやってくれましたね。私の計画が台無しですよ。」
そこに現れたのは青白い肌をした悪魔のような翼が生えた人だった。
今回で終わるかもと思っていたのですが、意外とオークロード戦が盛り上がっちゃいました。
次回で、一応の終結に行ければいいと思うのですが……。
作者の都合により、次回から不定期更新に戻ります。
理由は後々話すかもしれません。




