二十五話 戦いの幕開け
次の日の朝、俺たちは配置についていた。
今、俺がいる場所は北門で、もっとも敵が現れるだろう確率が高い場所だ。
作戦通りマリー達は中にいるし、他の冒険者もこの門にはいない。
今ここにいるのは俺とウォルだけだった。
かなり待ち続けたが、朝にはオーク達はこなかった。
そして、昼食を取りながら監視を続けていると、遠くの方で点が見える。
そして、それはだんだんと大きくなりながら数が増えていく。
「間違いないな。ウォル。」
「ワン!アォォォーーーン!」
ウォルが遠吠えをする。
これが敵がきた合図だ。
「ウォル、すまないがここから4日は休みなしだ。しっかりやってくれよ。」
「ワン!」
そして、俺は精神を研ぎ澄まし、ARIAを呼び覚ます。
意識が鋭くなり、敵を把握する。
とりあえず今は門に向かう敵に絞る。
あの数全てを対象にしてしまうと俺の頭がパンクしてしまうからだ。
ARIAが完全に起動したのを確認して、近づいてきているオークに向かって銃魔法を発動する。
まずは狙撃。
スナイパーライフルの要領で近づいてくるオーク達を1匹ずつ丁寧かつ迅速に対処する。
10発ほど撃ったところでオーク達が散会し始める。
俺の銃魔法を見て、固まっているのは危ないと判断したのだろう。
そして、別れていったグループには他の門に行くグループもあるようだ。
そのグループは放っておいて、こちらの門に向かってくるオーク達に狙いを定める。
そして、スナイプで20体ほど狩った後、俺はナイフを引き抜く。
「ウォル!行け!」
ウォルに指示をだし、殲滅を開始する。
ウォルはオークに向かって走り出し、咆哮をする。
ウォルの咆哮を受けたオーク達は細切れになったり、凍ったりと色々な形で死んで行く。
俺はそれを見て、安心しつつ、オーク達に突っ込む。
オークの振るってくる剣を間一髪でかわしながら、首筋にナイフを当て、首を搔き切る。
一度に相手するのは10体ほどのオークといったところだろうか。
俺が相手し損ねたオークはウォルが援護してくれるので、やりやすい。
オークも相手が子供だと思って舐めていたのか、1匹目はすんなり殺せた。
しかし、俺がオークを殺せるとわかると舐めるという考えは捨てたようだ。
ゴブリンとはこの辺が違うようで、オークは殺されながらも別の個体が別の方法で攻撃を仕掛けてくる。
俺はMPを温存しつつ、オークを切り捨てて行く。
(これはだいぶきついな。)
そう思っていた矢先に、オークの攻撃が背中くるのを予測する。
俺はそれを無理やり躱すが、頬をギリギリ切ってしまう。
その数を気にすることなく、切りつけてきたオークの腕を持ち、自分に引き寄せてから顎を貫く。
本当に厳しい相手になりそうだ。
ーーーーー マリー ーーーーー
戦いが開始してから早1日が経ち、街の中に負傷者がどんどんと運ばれてきていた。
現在街の中では、戦えないもの達が負傷者を看病している。
私もその一員だ。
「痛え、痛え。」
「どこが痛いんですか?」
「腕が……。」
「ちょっと見せてください。」
その人の腕を見る。
先ほどまで剣が刺さっていたかのような穴が空いている。
「この者に癒しを、ヒール。」
私は白魔法を起動して、その人の腕に当てる。
すると、じわじわと傷口が塞がり、やがて傷口が塞がる。
「ありがとな、綺麗な嬢ちゃん。」
「ええ、任されてますから。」
そうしている合間にも次々と負傷者が流れ込んでくる。
「リア!この人お願い!」
「ん。わかった。」
リアに人を重傷者を任せて、私は軽傷者を手当てする。
リアの方が白魔法のLVが高いからだ。
そうやって負傷者の治療をしていると丁度交代の時間で、前線に出ていた者が帰ってきた。
私はその人達に駆け寄り、状況を聞く。
「戦況はどうなってるんですか?」
「ん?ああ、あの坊主のところの嬢ちゃんか。戦況か。今は一応なんとかなっているな。ただ、心配なのは思ったより、冒険者達の疲労度が高いことだ。それに……。」
「それに?」
「あの坊主は1人で戦ってるんだが、あの坊主のところが一番オークが多いんだよ。あの坊主が崩れちまったら、終わりだからな。頑張って貰わねえと。」
「ソラ……。」
「まあ、心配すんのはわかるけどよ。多分大丈夫だよ。あの坊主は俺たちよりはるかに強いだろうからな。」
「……そうですね。引き留めてしまってすみませんでした。」
「あの坊主には頑張ってもらってるからな。これくらいはいいんだよ。」
「はい、ありがとうございました。」
そう言うとその人は寝床に去っていった。
「ガァァァァァァ!」
ウォルの咆哮が北門の方から聞こえる。
この声が聞こえている間はまだまだ大丈夫だと自分の心を奮い立たせて、私は負傷者の治療に戻った。
ーーーーー ソラ ーーーーー
戦いが開始してから2日が経っただろうか、さすがにすこし疲労を感じてきた。
それに、ナイフを握る手がすこしずつ握力がなくなっているのがわかる。
「ウォル!すこし時間を稼いでくれ!」
「ワン!」
俺はウォルに向かって叫ぶとウォルはオークを八つ裂きにしながら、吠える。
なかなか頼りになる犬だ。
俺は返り血で血まみれのポケットから、ある袋をだす。
黒く、硬いその玉は俺が作った劇薬だ。
俺はそれを口に入れ、飲み込む。
そして、少ししてから胃が燃えるように熱くなる。
疲れなど忘れるようなその感覚で、再び戦いを開始する。
ARIAも起動しているので、体には負荷が大きいのだが、そんな事は言ってられないのであるものは全て使う。
今回使った劇薬は俺が使っていたブースタードラッグと同じような作用だ。
しかし、向こうの世界よりも技術は進展していないし、俺のような生半可な知識しか持っていないようなものが作ったので、 当然、人体への影響は大きい。
それでも使わずに死ぬよりはマシなはずだ。
どんな副作用が起きるかは知らないが、とりあえず今を生き抜くことが重要だと考えた。
体は軽く、オークの動きも遅く見える。
オークが振り上げたのを見てから懐に入り、ナイフを心臓に突きあてる。
そして、ナイフを引き抜くのと同時に死体を蹴り、そのオークの死体の後方にいたオーク達を吹き飛ばす。
そして、俺は2本目のナイフを抜く。
このナイフはドーリに頼んでいたサラマンダーのナイフだ。
耐久力は微妙だが威力はある。
前方のオークにナイフを突き刺し、そのナイフを引き抜きながら、サラマンダーのナイフで、横のオークごと後ろのオークを両断する。
サラマンダーのナイフは切れ味が良く、肉の焦げた良い匂いがする。
そういえば、オークは豚の血筋が入っているため、良い匂いがするのかもしれない。
そんな事を思いながらオークをひたすらに殺していく。
オークもだいぶ減ってきて、俺のところに来ているオークは半分くらいに減って来ているだろうか。
そして、俺は少なくなったオークの合間から見る。
明らかに他のオークとは違う大きさのオークとその肩に乗っている青白い肌をした人型の何かがいることを。
しかし、そんな事を気にしている余裕はなく、ARIAがその思考を掻き消す。
オークは俺に向かってその巨体で突進してくる。
俺はそのオークの股下に潜り込み、太ももを切り転ばせる。
すると、他のオークがすぐさまその場に入って来て、そいつを踏み殺す。
仲間のことなど考えていないようだ。
俺はその場から下がり、ウォルの方に走る。
「ウォル!咆哮を準備しろ!」
「グルルルルル。ガァァァァァァ!」
俺が過ぎ去ったのと同時に俺の後ろに向かって咆哮をする。
すると、俺を追ってきていたオーク達はあらかたやっつけられたようだ。
しかし、その間に門の方に向かっていくやつもいたので、完全誘導弾で消滅させる。
MP消費が激しいので完全誘導弾は温存していたんだが、少しずつ使っていったほうがいいかもしれない。
そうして、戦略を変えながら3日が過ぎた。
今回はオーク戦になっております。
こういう複数体の戦闘を書くのって難しいですね。
次回でオーク戦終了かもしれません。
次回は月曜から木曜です。




