二十三話 指揮官委任
今日も俺たちは迷宮に来ている。
前回は18階層で止まったので、今日は19階層まで行く予定だそうだ。
俺はいつも通り2人の後ろに待機する。
ウォルはかなり離れたところで昼寝をしている。
俺たちの居場所を見失っても匂いで追跡すれば良いので、近づく必要はないのだろう。
「リア!あっちのゴーストお願い!」
「うん。」
リアがゴーストに向けて雷魔法を放つ。
着弾と同時に雷が大きく爆発する。
どうやら新魔法の練習をしているようだ。
「まだまだMPの無駄が多い。」
自分で分析して魔法の研究もしているようだ。
努力しているようなので少し魔法を教えてやることにする。
「相手を倒す最低限の威力をイメージして、撃て。」
「イメージ?」
俺は再び自分の魔法の練習に戻る。
「イメージ……イメージ……こんな感じかな?」
リアが魔法を放つ。
ゴーストに着弾するが、少し威力が弱く、ゴーストが消滅するにまでは至らない。
そのままゴーストがリアに向けて突進してくる。
リアは魔法を撃った後で、もう一度魔法を使うのは間に合いそうにないので俺も新魔法を試してみることにする。
指をゴーストに向けて、銃魔法を放つ。
イメージは弾が分散する拡散弾のようなものだ。
銃魔法を撃ってからほんの少ししてからゴーストが弾け飛ぶのと同時に、地面に無数の穴が空く。
どうやら成功したようだ。
失敗だったのは銃魔法に属性魔法を付与しなかったため、色が付いていなかったのでどんな風に弾が変化したのか見られなかったことだ。
俺はいつもの定位置に戻り、新魔法を試す。
今度はちゃんと色付けして。
今回は雷魔法で色付けしたため、黄色になっている。
そして、撃ってみると1発の大きめの弾丸が少し遅めの速度で飛んでいき、対象の目の前で破裂してさらに小さい弾を飛ばす。
その小さな弾にはさらに小さい弾が入っており、この弾が基本的には敵に当たる。
弾が小さいため、威力は小さいようだが、人間相手に使うなら目を潰すくらいの用途はありそうだ。
雷魔法を付与したため広範囲のスタンガンのようになり、広い範囲で光る。
雷魔法を付与することで相手を無力化できるかもしれない。
ただ、威力を間違えば、無力化どころじゃなく、脳を焼き殺すこともあるかもしれない。
ステータスプレートを見ると1発のMP消費は100と、かなり大きめだ。
MP消費が大きいので使いどころが難しい魔法のようだ。
これから色々試していけば、使い道も増えてくるだろう。
そんな事を考えていると前の方のマリーから声が聞こえて来た。
「やった!着いた!」
どうやら19階層に向かう階段に着いたようだ。
帰るまでは残り1時間といったところだろうか。
「マリー、あと1時間だ。19階層の雰囲気を味わって帰ろう。」
「わかったわ。それじゃ、リア行きましょ。」
「うん。」
リアも心なしか嬉しそうだ。
それもそうだろう。
18階層から19階層に着くまで二週間ほどかかっているのだ。
19階層は今までに出て来た敵が全て出てくる。
ゴブリンもいればダークウルフもいるし、もちろんボーンナイトとかもいる。
そういった全てのモンスターが連携して冒険者を襲うのだ。
実力のない冒険者がここに来れば1分ももたないだろう。
マリーとリアはそこを苦戦しながら一時間戦い続け、帰ることにした。
「19階層クリアするのは骨が折れそうだわ。」
「あの敵の量は異常。」
「ソラはどうやってあの量をクリアしたの?」
「正面突破。」
「……。」
なぜか微妙な空気になったが、そんな事はどうでもいいので帰り道を歩くことに専念する。
そうすると、ウォルが俺に近づいてくる。
そして、俺の足の周りをくるくると回り出す。
いつもの事なので放っておくと、途中でピタリと動きが止まる。
そして、ある方向を向いて、
「ガルルルル。」
と唸っている。
「あっちに何かあるのか?」
「ワン!」
何かがその方向から来ているようだが俺は何の気配も感じられないので、動物の勘と言ったやつかもしれない。
街に着くといつものようにギルドに入る。
しかし、ギルド内はいつもの様子ではなかった。
受付嬢達は忙しそうに動いているし、冒険者達の中には絶望したような顔をしているものもいた。
いまいち状況がつかめないので、ミーシャさんのもとに行く。
「この騒ぎどうしたんですか?ミーシャさん。」
「あ!ソラさん!大変なんです!オークが、オークが!」
「落ち着いてください。オークがどうしたんですか?」
ミーシャさんが俺の肩を持って、取り乱していたのでとりあえず落ち着かせる。
「すみません。取り乱して。この王都にオークの群れが近づいてきているんです。」
「オークの群れですか?オークは迷宮のモンスターでしたよね?」
「はい。Dランクの迷宮の門が破られていたという報告が入ったんです。そして、オークの群れを見たという者もいました。」
「数は?」
「3万ほどです。ソラさん!どうにかなりませんか?」
「こちらの戦力は?」
「Cランク以上の冒険者は昨日の王様の他国訪問で出払っていて、駆け出しの人も含めてDランク以下の冒険者が1000人です。」
「厳しいですね。援軍は?」
「ギルドで申請しましたが、5日ほどかかるそうです。」
「オークの群れはいつ頃ここに着く予定ですか?」
「あと1日です。」
「最後の質問なんですが、逃げるのと戦うならどちらにしますか?」
「逃げるとしてもこの都市全ての人が逃げる場所などありません。それに、戦うとしても、この戦力で勝てるとは……。」
「逃げるのは逃げれる者です。逃げれない者を置いて行くという覚悟がある者だけが逃げます。戦うなら戦う者が死ぬのを覚悟してもらいます。どちらを選んでも死者は出ますが、どちらを選びますか?」
「私は……私は……。」
ミーシャさんが答えに詰まる。
俺は微笑みながら言う。
「少し意地悪でしたね。これはミーシャさんが決める問題ではありません。ギルド長を呼んでもらえますか?」
「あ、はい。わかりました。」
ミーシャさんが奥に走って行く。
俺はその間にマリーとリアに事情を説明しに行く。
「なるほどね。オークが3万も……。」
「この戦力では正直無理だと思う。」
「だが、逃げることも犠牲は免れない。」
そうして話していると奥からギルド長が出てくる。
その事でギルド内がさらに騒がしくなるが、ギルド長は気にする事なく、俺の方に近づいてくる。
「やあ、ソラくん。久しぶりだね。」
「お久しぶりです。1つ質問してもいいですか?」
「何かな?」
「逃げと戦いどちらを選びますか?」
「……。ソラ君はどう思う?」
「俺は……戦う方を選びます。」
「何故そう思うのか聞いてもいいかい?」
「単純ですよ。俺はそれしか知らないからです。俺に逃げることなんて許されていません。だから、俺は戦う方を選びます。」
「ソラ君、君は……。いや、今はいいな。ソラ君頼みたいことがある。」
「何ですか?」
「オーク討伐の指揮をとってくれないか?」
「犠牲が出るのを覚悟して戦うんですか?」
「ああ。」
「俺たちが守りきれず、全滅する可能性もありますよ?」
「それでも、全員が生き残れる確率もあるだろう?」
「……。では、なぜ俺なんです?ベテランの冒険者もいるでしょうに。」
「ここでは君が一番強いからだよ。ジョナサンとの戦いの結果こそ明らかになっていないが、明らかに君は異常だ。群を抜いて強い。だから、冒険者内で喧嘩が起こっても鎮静できるだろう?」
「……わかりました。勝手にやらせてもらいます。」
「ああ、頼むよ。私は援軍の申請をやらせてもらう。」
そう言って、ギルド長は去って行く。
俺はマリーとリアの方を見る。
「ソラのすきにしたらいいと思うわ。私はソラが正しいって信じてるから。私はソラに従うわ。」
「私も。」
そうして冒険者の指揮を任された俺はとりあえず作戦を考えることにした。
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ブクマありがとうございます!
文章も拙く、読みづらいこともあるかもしれませんが、これからもよろしくお願いします。
次回は月曜から木曜です。




