十七話 新迷宮
今日はお礼参りを終わらせて、マリーと買い物をしたりして終わった。
俺はいつも通り、夜に宿から出て行くと、いつもとは別の方向に歩き出す。
今日は別の迷宮に行くつもりなのだ。
何せ今の迷宮はクリアしてしまい、正直に言って弱すぎるのだ。
なので、今日は少しレベルの高めの迷宮に行く事にする。
普通ならセオリー通り、Eランクの迷宮に行くべきなのだが、今回はCランクの迷宮に挑む事にする。
現在の俺の実力ならDランクくらいなら十分勝てるだろうが、Cランクは難しいだろう。
だからこそ、Cランクの迷宮に入る意味があるのだ。
俺は早速街から少し離れたCランクの迷宮に向かう。
全力で走って1時間くらいの距離にあり、ここに来るだけでもかなり鍛えられそうだ。
普通、このくらいのランクの迷宮に挑む冒険者達は泊まりがけで来るらしいのだが、あいにく俺は昼はマリーと迷宮攻略しなければならないので、毎日この長い道を往復する事になるだろう。
今は睡眠時間が1日3時間程だが、もう少し削る事になるかもしれない。
入り口についてみると、門番がいた。
門番は基本モンスターが迷宮から出てこないか見張る役なので、話しかけてこないのだが、俺が子供のために心配して話しかけられて俺がDランクであるとバレるのは面倒臭い。
俺は『暗套』を発動させ姿を消す。
そして、素早く扉に近づいていき、扉を開ける。
門番は眠たいのか扉が開く音に気づいていない。
俺は気づかれないように中に入り、扉をそっと閉める。
「ここがCランクの迷宮か。」
見た目はあまりEランクの迷宮と変わりはしない。
ただ作りが複雑になっているようで、入り口に入ったばかりなのにもう別れ道がある。
今回はレベル上げが目的なので、気にせず進む事にする。
しばらく進んでいるとこの迷宮で初めてのモンスターと会う。
熊のような大きな体に4本の腕、そして、赤い体毛。
レッドグリズリーという奴らしい。
狼やアンデットくらいしかでないEランクの迷宮とは難易度が桁違いで違うようだ。
レッドグリズリーは俺に気づき、ゆっくりとした動きでノシノシと近づいて来る。
俺は取り敢えず警戒して、一定の距離を保つ。
今のところ俺の五感には他のモンスターの気配はない。
つまりこいつと一対一という事だ。
俺は覚悟を決め、指をレッドグリズリーに向ける。
まず手始めに銃魔法をレッドグリズリーに撃つ。
威力はピストル程、
レッドグリズリーに命中するが、貫通するまでには至らない。
「ピストルじゃ威力が弱いか。」
貫通しなかったとはいえ、傷はつけられたレッドグリズリーは怒りを露わにし、その大きな腕の一本を振って来る。
俺は敢えて避けようとせず、ナイフで受け止める事にした。
レッドグリズリーの腕が俺のナイフに直撃する。
レッドグリズリーの腕には損傷はないようだった。
借り物のナイフでは歯が立たない程体毛が固いようだ。
対して、俺の腕にかかった衝撃は結構なもので、腕が折れることは無かったものの、手が痺れている。
こいつは接近戦は危険なようだ。
「だったら完全誘導弾ならどうだ?」
俺は完全誘導弾を3つ展開し、空中に2つを待機させ、1つだけ放つ。
完全誘導弾の色は白、つまり、最も熱力が高い。
レッドグリズリーは以前のダークウルフのように避け、また同じように完全誘導弾が追尾して、命中する。
その瞬間、大きな火炎球が現れるような形で爆発し、レッドグリズリーは跡形もなく消滅した。
完全誘導弾はかなりの威力のようだ。
ただし、MPを50程持っていくので無駄撃ちはできない。
俺は次の獲物を探し出す。
すると、次に現れたのはオーガだった。
肌が赤く、牙と角が生えている。
オーガとはゴブリンの上位種で、ゴブリンの2つ上の種である。
ちなみに1つ上の種はオークだ。
俺は同じように銃魔法を撃ってみる。
銃魔法はオーガの体を貫通した。
どうやらオーガの肌は思ったより柔らかいようだ。
「グァァァァ!」
オーガにも痛みはあるらしく、叫ぶ。
そして、俺を見つけ、傷口を抑えながら走って来る。
俺が指を向けるとオーガは手に持っていた盾で射線を防御するようにしてきた。
種が進化したことで知力も上がったようだ。
俺はナイフで応対する事にする。
オーガは走る勢いそのままで剣を振り下ろして来る。
俺はその剣をナイフで受け流し、オーガの腕を沿うように首に向けてナイフを突き刺す。
ザシュッ!という音がしてナイフが首に突き刺さる。
俺はそのままナイフを抜こうとする。
しかし、オーガは首の筋肉に力を入れ、俺のナイフを押さえつける。
どうやら俺を道連れにするつもりのようだ。
俺はナイフを捻り、オーガに完全にトドメを刺す。
オーガの知力は中々高いようだ。
こんなものがゴロゴロいるとすると厄介だ。
俺はオーガから素材を剥ぎ取りアイテムポーチにしまってから、再びモンスターを探す。
すると、白い毛並みの狼に出会う。
後で聞いたところダイヤウルフという狼らしい。
ボスになる才能があるものだけが銀色の毛並みで生まれてくる動物で、他の者は基本白い毛並みらしい。
銀色の毛並みのボスはランクAにも分類され、この迷宮で出れば災害並みの不運だそうだ。
俺はダイヤウルフに向かい銃魔法で攻撃を仕掛ける。
しかし、銃魔法はダイヤウルフの表面を這うように流れていき、後ろの壁に流される。
ダイヤウルフの体毛は相当固いようだ。
俺は少し思いついた事を試す。
銃魔法に炎を纏わせたりすることができるなら氷を纏わせて足止めに使ったりもできるのではないかと。
俺は銃魔法に水魔法を纏わせる。
すると、銃魔法は白い靄のようなものをだしている。
弾丸自体は透明だが、周りの白い靄が銃弾の位置を知らせている。
俺はそれをダイヤウルフの足元に向けて射出する。
見事にダイヤウルフの足に命中し、急激に氷が生まれ、ダイヤウルフの足を地面に固定する。
ガルルルルとダイヤウルフは俺を威嚇する。
俺はゆっくりとダイヤウルフに近づいていき、ダイヤウルフの頭の後ろに指をあて、銃魔法を放つ。
しかし、銃魔法は貫通しない。
どうやら本格的に威力不足のようだ。
俺は銃魔法を時空魔法で強化し、ライフル程度の威力に底上げする。
そして、ダイヤウルフの頭に撃ち込むと、キャインと鳴いてダイヤウルフが絶命した。
時空魔法で強化すれば銃魔法でも、なんとかなるようだ。
俺はダイヤウルフの素材を剥ぎ取って、それから数十分程狩ってから休憩を入れ、帰る事にする。
休憩を入れたのは素材の確認と、MPの回復を待っていたからだ。
冒険者狩りとの戦いで咄嗟にARIAが使った自分に時空魔法をかけるという物を試してみたかったのだ。
俺は帰り道で試すことにする。
迷宮から出て、しばらく進んだ後、誰も周りにいない事を確認してから、目を瞑り、イメージをする。
イメージは時計が高速で回転していくイメージだ。
そして、イメージが完成した後目を開け、魔法を発動する。
MPを大量に消費した感覚が訪れる。
俺はそれを認識した瞬間体を動かす。
目の前の木に向かって走り出す。
すると、一瞬のうちについた。
ただし、時空魔法は1秒ほどしか持たなかった。
そして、MP切れの疲労感が押し寄せてくる。
どうやら秒間1000のMPを持っていく魔法のようだ。
これだけ聞くと使えないように聞こえるがとんでもない切り札だと思う。
1秒間相手が認識する前に動けるのだ。
使い方によっては化けると思う。
ただしその後魔法が使えなくなるので決定力不足に陥ることもあるだろうが。
俺は帰り道の暇つぶしにステータスプレートを見る。
名前 : ソラ・サトミ
レベル : 39
ジョブ : 時魔法師、暗殺者
MP : 1127
力 : 372
敏捷 : 690+50
知力 : 127
魔法力 : 1174
運 : 0
スキル
隠密LV9
暗殺LV12
耐毒LV5
耐痛LV8
固有スキル
読解
限界駆動 NEW!
魔法
炎魔法LV6 ↑
白魔法LV4
水魔法LV2
雷魔法LV2
光魔法LV2
風魔法LV2
付与魔法LV3
固有魔法
銃魔法LV5
時空魔法LV3
何故か新しいスキルが出ていた。
限界駆動。
名前からして何か危ない気がするが、多分無理ができるという事だと思う。
詳細は分からないがこの前の戦いのように体に無理を強いることができるようになるのだろう。
そして、炎魔法のLVが上がっている。
これは間違いなく冒険者狩りの魔法使いの魔法を読解したせいだろう。
読解のスキルのおかげでLV上げをしなくて済むので助かる。
というか今日1日でかなりレベルが上がっている。
やはり高ランクの迷宮に行くことは効果があるようだ。
俺は上がったステータスやスキルを確認しながら街に帰ってきた。
そして、いつも通り朝の5時にギルドに行く。
いつも通りミーシャさんの受付に行く。
「あ、ソラさん。おはようございます。素材ですね?」
「はい。お願いします。」
俺はアイテムポーチから素材を出していく。
「……あの、ソラさん?」
「なんですか?」
「これ、ダイヤウルフに見えるんですけど。」
「それ、ダイヤウルフって言うんですか。」
「これはレッドグリズリー、これはオーガ……。ソラさん。」
「なんでしょう?」
「こ、これはどう言うことですか?」
「今日はCランクの迷宮に行ってきました。」
「はぁ。やっぱりですか。危ないですよ?」
「それは分かっています。そこで死んだらそれまでだと思ってますから。」
「死なないでくださいね?」
「まだ死ねませんよ。鑑定お願いします。」
俺は残りの素材も出して、言う。
「あの……ソラさん?もしかしてですけど、これ今日だけでやったんですか?」
「そうですね。」
「またですか。ソラさんは本当、凄い人です。」
そう言って、ミーシャさんは奥に引っ込んでいった。
俺は合計で100体程しか狩っていないのだが、何を驚くことがあったのか不思議に思っていた。
しばらくして、ミーシャさんが奥から帰ってきていつも通り鑑定結果を言う。
「白金貨1枚と金貨10枚です。」
「そんなになんですか?」
「はい。特にダイヤウルフの毛皮は高級品なので人気なんですよ。」
俺は金を受け取る。
「あまり、この事を話さない方が良いと思います。ソラさんなら大丈夫だと思いますけど誰かに絡まれたら面倒だと思いますので。」
「忠告ありがとうございます。じゃ、今日はこれで。」
「はい、また夕方に。」
俺はそうして、宿に帰り、就寝した。
今回は新迷宮です。
マリー達の出番はありませんでしたね。
次回は月曜から木曜です。




