新聞部員、付き合わされる
「おはようございまーす」
トリスタータ一家との雑談で大いに盛り上がったその日の深夜、全員が寝静まり静寂に包まれたその城の一階メインホールのど真ん中、そこに立つ一人の女性が声を潜めて言った。寝間着姿のその女性の手にはマイクが握られ、両目は期待と興奮で爛々と輝いていた。
「今日私は今、このフェルシェンシュラウトと呼ばれる古城の中に来ております。今日私はここで、皆様に大スクープを提供したいと思いまーす」
「何してるんですかリザリスさん」
そうして小声で囁くように言った女性の横で、彼女と同じ柄の寝間着を身につけた春美が眠そうに目をこすりながら咎めるように言った。その春美の声を聞き、マイクを持ったリザリスが彼女の方を見て答えた。
「何って、形式に沿っているだけよ」
「形式?」
「異世界の一つでやってた、寝起きドッキリって奴よ。春美ちゃん知らない?」
「ああ、寝起きドッキリですか。それは知ってますよ。でも今からやろうとしてるのって、ドッキリじゃないでしょう?」
もっと悪質な奴だ。同じ部屋で寝ていたリザリスに叩き起こされ、そこで既に彼女の「計画」を聞いていた春美は渋い表情を浮かべた。そしてウキウキと顔を輝かせるリザリスに対し、春美がそんな渋面のまま彼女に言った。
「ただの覗きじゃないですか。それもあの二人の」
「やあね。出来立てカップルの夜の一幕を観察しようってだけじゃないの」
「それを覗きって言うんです」
高雄とコロヌスが部屋で何をしているのか知りたいから協力してほしい。リザリスは起こされたばかりの春美にそう言ってのけた。そして意識が覚醒し、リザリスの計画の本性を知った春美は、その時点で全力でリザリスを制止しようとした。
しかしリザリスの決意は固かった。それは悪いことだと何度も春美が言ったが、彼女の心はびくりとも揺らがなかった。なんでここまでリザリスは覗きに執念を燃やしているんだ? 春美はその内そう疑問に思ったが、結局その真相を知ることもリザリスも止めることも出来ず、彼女に手を引かれるままここまでやってきたというわけである。
「熱々の二人が深夜、同じ部屋で、同じベッドで。これはもう何かが起きない方がおかしいわ。私は姉として、その非常事態の一部始終を記憶する義務があるのよ」
「他人のセックスを覗き見るなんて、ただの変態じゃないですか。それにそもそも、あの二人が今そういうことをしているかどうかもわからないし……」
「いいや、絶対しているわ。私にはわかるの。父上の話を聞いていたあの時、高雄ちゃんとコロヌスは明らかにそんな雰囲気にあった。これは確信よ」
思わず「セックス」という単語をあけすけもなく言い放ち、それに気づいた恥ずかしさで顔を真っ赤にした春美に対して、リザリスは恥も外聞もなくそう断言した。そしてリザリスは再度春美の手を取り、そして奥に見える階段まで一直線に進んだ。
「ほ、本当に行くんですか?」
「もちろんよ。さ、行くわよ春美ちゃん。特ダネが待っているわ!」
「私はゴシップ書きじゃないです!」
春美はリザリスの言い分を真っ向から否定したが、それでもリザリスは止まることなく、またリザリスが春美の手を離すこともなかった。春美は力ずくでリザリスの手を引き離そうとも思ったが、自分と同じくらいの細腕を持ったリザリスの膂力は彼女のそれを凌駕していた。
春美の努力は全て無駄に終わった。
「魔族が人間に力で適うわけ無いじゃなーい。大人しく連行されなさーい」
「嫌ー! 助けてー!」
そうして二人はそのまま、コロヌスと高雄が寝ている個室の前まで向かうことになったのだった。
人間側の意志は一切無視されたままであった。
それから数分後、二人は目当ての部屋まで何の障害も無く進むことが出来た。彼女達がやってきた廊下は嫌に広く、軽自動車をを横に三台並べてもまだ余裕があるほどの幅を備えていた。あまりにも広すぎたので、そこを二人で歩く春美は寂しさを覚える程であった。
そうして二人がその部屋のドアを視認した時、彼女達はそのドアの前で一人の人間が門番のように立ち尽くしていることに気づいた。
「げ」
その人影を見たリザリスは思わず顔をしかめた。その気配に気づいたのか、ドアの前に立つ人影が首を回して春美達の方へ視線を向け、そしてリザリスの姿を認めるや否や呆れた調子で言葉を放った。
「ああ、やっぱり来たんだ。ペトラムの言った通りだ」
その声はやや高く、変声期を迎える前の少年のような声だった。それを聞いた春美が人影に注目すると、そこには声のイメージにぴったりな小柄な少年が立っていた。
そしてその少年は一度春美を見てから再びリザリスに注視し、件のハスキーボイスで彼女に忠告した。
「駄目ですよ、リザリス姉様。人の部屋に勝手に入るなんて御法度です。ましてや、恋人同士が仲良く愛を確かめ合っている所に乱入するなど、言語道断です」
「相変わらず堅いわねえ。いいじゃないちょっとくらい。減るものでもあるまいし」
「駄目なものは駄目です」
リザリスの要求に対して、その少年は一歩も退かなかった。それを受けたリザリスは「困った子ねえ」と頬に手を添え、春美は状況が飲み込めず混乱していた。
「あの、こちらはどなたなんですか?」
「あ? ああ、そう言えばまだ言ってなかったわね。ちょうどいいから紹介するわ」
そしてその春美の問いかけに対し、リザリスが少年の方を見ながらそれに答える。
「彼はハドラム。ペトラムの中にいる、もう一つの存在よ」
「初めまして、秋ヶ瀬春美さん。僕はハドラムと申します。あなたのことはペトラムから聞いております。どうかよろしくお願いします」
リザリスに紹介されたハドラムが頭を下げる。春美もつられて「こちらこそよろしくお願いします」と頭を下げた後、すぐさま頭を上げてリザリスに問いかけた。
「二重人格ってことですか?」
「あら、察しがいいわね。正確には違うけど、まあ似たようなものかしら」
「一つの体を二つの魂が共有していると言うべきでしょうか。僕とペトラムは全くの別人なんです」
だから表に出てくる人格次第で体つきも変わるんですよ。そう答えるハドラムの体は確かに「ペトラム」の時に比べてがっしりとしており、胸の膨らみも無かった。見るからに少年のそれである。
「ペトラム共々、どうかよろしくお願いしますね」
「う、うん。こちらこそ、よろしくね」
それを聞いた春美は確かに驚いたが、しかし目に見えて狼狽したりはしなかった。あからさまに疑念を抱いたりもしなかった。
これまでこの世界に散々驚かされてきた彼女の中では、既にこの世界に対する免疫が出来上がっていた。おかげでこの程度の事象ならば「ああ、そういうことなんだ」と無条件で受け入れてしまえる程に、彼女はこの世界に慣れきってしまっていたのだった。
「それで、リザリス姉様はここに何の用で来られたのですか?」
そんなハドラムがリザリスを見据え、目を細めて詰問するような調子で問いかけた。春美は肩を震わせたが、リザリスは反対に豊満な胸を張り、自慢するかのように堂々と答えた。
「セックスの見学よ」
春美は頭痛を覚えて眉間を指で摘んだ。ああ、これは駄目だ。
「まさかそこまでおおっぴらに言うとは思いませんでしたよ」
そしてハドラムの方も唖然としていた。そんな末弟を前にして、リザリスはメロンを直接入れたかのように豊かな胸を張ったまま、なおも自信満々に言った。
「そう言うわけだから、ハドラム? そこをどいてくれないかしら?」
「そ、それは出来ません」
しかしハドラムはすぐに気を取り直し、そのリザリスの問いかけに真っ向から答えた。それを聞いたリザリスは「へえ?」とどこか面白そうに片眉を吊り上げ、その長姉を見ながらハドラムが言った。
「僕の役目は、お二人の夜を邪魔する者を排除する事です。コロヌス姉様と高雄義兄様は今、とても大事な事をなさっているのです。例えリザリス姉様であろうと、ここを通すわけにはいきません」
そしてハドラムがそう言った瞬間、彼の寝間着両袖の下から一対のナイフが飛び出してきた。ハドラムはそれをそれぞれの手で掴み、逆手に持ち替えてリザリスに対して構えを取った。
「え、え? どういうことですか?」
「疾風の双子が、私達を敵として認識したってことね」
いきなりのことに戸惑う春美にリザリスが答える。それを聞いた春美は身を震わせ、その春美を庇うように前に立ちながらリザリスが言った。
「あの子、ハドラムもペトラムも、実は魔力を全く持っていないの。だから魔法は使えないんだけど、代わりに身体能力がとても高いのよ。それで魔法も使わずに身一つで戦場を駆け回る彼らについたあだ名が、疾風と言うわけ」
「疾風、ですか」
「ええそうよ。コロヌスの獄炎みたいなものね。それとついでに、彼と彼女はあんな感じで、いつも全身に武器を仕込んでいるの。いつでも戦えるようにね」
「寝てる時もですか?」
「お風呂に入っている時も、食事をしている時もよ。二十四時間武装していると言ってもいいわ」
怯えながら問いかける春美にそう答えた後、リザリスは一度余裕そうに笑みを浮かべてから再び口を開いた。
「でも、私には敵わないけどね」
直後、リザリスの体が僅かに宙に浮いた。足が地面から離れ、全身を緑色のオーラが包み込み、額の中心が縦に裂けて三つ目の目玉が姿を現した。
「うわ、なんか光ってる」
「深緑の魔女。リザリス姉様の二つ名です」
「植物使いってこと?」
そのリザリスの様子を見た春美が驚いた声を出し、ハドラムがそれに淡々と答える。リザリスの額から三つ目の目が出てきたり、彼女の体が緑色に光って浮き上がったことなどについては、春美はもはや言及しなかった。
「どこまでも察しの良い子ね。春美ちゃん、その感性は大事にしてね」
そして即座に自分の能力を看破されたリザリスは、春美の方を向いて優しげに微笑んだ。春美は内心「漫画の知識がここで役立つとは」と思いながら素直に頷き、そしてリザリスは再度ハドラムの方を見て冷ややかに言った。
「疾風も深緑の前には無力。ハドラム、それとペトラム。それはあなた達が一番よくわかってることでしょう?」
右の袖の下から植物の蔦が何本も這い出し、じゃれつくように右手に絡みつく。そのくすぐったい感触を味わいながらリザリスは三つの眼でハドラムを見据え、今度は口調を勝ち誇ったようなものに変えて言ってのけた。
「だからそこをどきなさい。私は姉として、あの二人の営みを見守る義務があるの」
「ご冗談を。あなたのそれはただの職権濫用でしょう?」
対してハドラムは額から冷や汗を流し、それでも構えは解かず、一歩も退かないと言わんばかりに言い返す。リザリスはため息をつき、「あなた、一度痛い目を見ないとわからないようね?」と言った。
「痛い目を見ないとわからないのはリザリス姉様の方でしょう?」
「末弟がそういう口の利き方していいのかしらあ? コロヌスにも勝てないあなたが私に勝てると? 良い度胸をしているわねえ」
二人の間で険悪な空気が流れ始める。春美は嫌な予感がした。そしてそれを確かめるために二人に声をかけた。
「ちょっと、まずいですよ。姉弟なのに殺し合いなんて」
「大丈夫、ちょっとしたスキンシップよ。命の取り合いをする訳じゃないわ」
「いつものことです。ご安心を」
「安心しろって……」
無理な相談だった。こんな一触即発な状況で何をどう安心しろというのか。
そんな目に見えて不安そうな表情を浮かべる春美に向けて、ハドラムが再度声をかけた。
「それに、今回は別に勝とうとも思っていませんから、ただ二人で、姉様の足止めをすればいいだけなんですからね」
「二人?」
「私のことです」
それを聞いたリザリスが眉をひそめる。リザリスと春美の背後から新たな声が聞こえてきたのはその直後だった。
「ハドラム様、加勢いたします」
「あなた……!」
肩越しに後ろを見たリザリスが息をのむ。そこには漆黒のドレスを身に纏い、両手にドレスと同じくらい真っ黒に染まった剣を携えるアイビーの姿があった。背中からは蝙蝠のような翼を生やし、頭からはねじれた一対の角を生やしていた。
完全に臨戦態勢に入っていた。
「凄い。本当にサキュバスなんだ」
それを見た春美は狼狽えることなく、再確認するように驚いた。彼女の正体については件の歓談の際についでといった感じで予め教えられていた、春美はそれを前にして過剰に反応することは無かった。
その春美に対してアイビーは一つ微笑んだ後、すぐに顔を引き締めて彼女に伝えた。
「春美様、少し離れていてください。少々派手な戦いになると思われますので」
春美は即座にそれに従った。アイビーの後ろにまで距離を離し、しかしその場から逃げ出すことはせずにそこで足を止め、踵を返して三人の様子を見守った。
ハドラムがドアから離れ、リザリスと相対する
。アイビーもまた歩を進め、背後からリザリスに近づいていく。
「お二人の邪魔はさせません」
「どうかお覚悟を」
リザリスは動揺しなかった。ハドラムの方を向いたまま不敵に笑い、そして左手を軽く天井に向けた。
「たった二人で止められると? 嘗められたものね」
次の瞬間、床を突き破ってハドラムとアイビーの足下から何本もの植物の木の枝が伸びてきた。
「しまった!」
「もう蒔いていたのか!?」
猛烈なスピードで生長し、自ら意志を持つかのようにのたうち回るその太く長い枝の群れは瞬く間に二人を絡め取り、その身動きを完全に封じ込めた。二人とも武器は持ったままだったが、手首にも巻き付かれていたために動かすことはままならなかった。
「何が……!?」
そしてそれを見て驚く春美の周囲を取り囲むように、それと同様の枝が床をぶち抜いて一斉に出現した。しかしそれらは春美を直接拘束することはなく、彼女を囲むように互いに絡み合い、やがて一個の檻となって春美をその中に捕らえたのだった。
「え、ちょっと、何これ?」
「安心して。ただのバリアみたいなものだから」
そうして出来た木製の格子を両手で握って動揺する春美に、リザリスが優しく言ってのける。それからリザリスは蔦の絡まった右手を軽く捻り、その直後、春美を捕らえた檻は真下から伸びてきた木の幹によって天井付近まで持ち上げられた。
「うひゃああっ!?」
「特等席、という奴よ」
突然の浮遊感に襲われて悲鳴をあげる春美に対し、リザリスがそれを見上げて微笑む。春美は思わずリザリスを見返したが、その時彼女の目には、リザリスの体に何十何百本もの木枝が一斉に巻き付いていくのが見えた。
「あれは……?」
堅さを持ちながら蛇のように曲がりくねるそれは隙間無くリザリスを包み、さらにその上からまた新たな枝が体を覆う。足の先から顔の天辺まで、枝の群れはそうして幾重にも折り重なり、やがてリザリスは薄茶色の全身鎧に覆われた厳めしい存在へとその姿を変えた。
「さて、始めようかしら?」
木の鎧を身に纏ったリザリスが二人に言い放つ。そんな体を動かす度にギシギシと重々しい音を立てるリザリスに対して、二人は共に何も言い返さずに、自身を縛り上げる枝から解放されようと必死にもがいていた。
しかし二人はその内動くことを止め、同時にリザリスを睨みつけた。
「降参かしら?」
「まさか」
リザリスの言葉にアイビーが笑って答える。そして次の瞬間、アイビーは全身から黒い衝撃波を放ち、ハドラムは力任せに枝を引き千切って、その拘束から脱出した。
「まだまだこれからです」
片膝立ちで着地したハドラムがナイフを構え直して言い放つ。その顔は「やる気」で満ちていた。
リザリスはそれを見てため息をついた。そして「若いっていいわねえ」と漏らした後、右手をハドラムに向けて軽く手招きしながら言った。
「まあいいわ。二人まとめて面倒を見てあげる。かかって来なさい」
その言葉を皮切りに、アイビーとハドラムが同時に飛びかかる。
瞬きする間に距離が詰まる。
悪魔と疾風が腕を振り上げる。剣とナイフが眩しく煌めき、一斉にリザリスめがけて振り下ろされる。
「シィィッ!」
「覚悟ッ!」
リザリスは微動だにしないまま、纏った鎧がそれに反応する。
「甘い、甘い」
鎧の中から四本の枝が外に突き出される。四つの刃がそれぞれの枝と衝突する。枝と刃が鍔迫り合いを起こし、三人の顔が肉薄する。
「その程度かしら?」
木拵えの兜を被ったリザリスが挑発するように言ってのける。眼前でハドラムが鼻で笑い、その兜の奥の瞳を見返しながらそれに答える。
「まだまだ!」
両者が同時に飛び退き、距離を離す。直後、彼らのいた場所に頭上から先端の尖った丸太が落ちてきた。人一人押し潰すのに十分なサイズを持った、巨大な丸太だった。そうして標的に当たり損なった丸太はそのまま地面に落下し、派手な音を立てて床に深々と突き刺さった。
春美が驚いて天井を見ると、既に天井は蔦で覆われていた。そしてその蔦の海の中から件の物と同じ形をした丸太が「にょきり」と顔を出し、そのままハドラムとアイビーの頭めがけて自由落下していった。
「そうら! そら!」
「なんの、この程度!」
「これくらいで遅れは取りませんよ!」
上機嫌な調子で、リザリスが天井から次々と丸太を落としていく。ハドラムとアイビーも負けじとそれを避け続け、共に反撃の機会を伺う。
今は牽制に留まっているが、いずれ勝負は動く。次はいったいどちらから仕掛けてくるのか。春美はその様子を固唾を飲んで見守っていた。しかしハドラムが再びリザリスに切りかかったところで、春美は不意にあることを思い出した。
「そう言えば、なんで皆戦ってるんだろう」
枝と刃が再度ぶつかり、刃物が堅いものに深く食い込むような鈍い音が響く。ハドラムが舌打ちし、リザリスが余裕そうに笑みを浮かべる。それを見た春美は、すぐにこの戦いが始まった理由を思い出した。
「覗きだ」
他人の性行為云々で彼らはここまで熱くなれるのか。下で行われている死闘を見ながらその理由を思い出した春美は、呆れると同時に感心した。そんな理由で命を懸ける彼らを凄いとさえ思った。
「厄介な鎧ですね、まったく!」
「私の特別製だもの。そう簡単に破れると思わないことね」
これ、いつ終わるんだろう。向こうの「本番」が終わるまでに片づくんだろうか。春美は同時にそんなことを思いながら、それでも目の前で行われる激闘に意識を傾けた。こうなった理由を思い出して若干呆れてはいたが、興奮していたのもまた事実だった。
何せ目の前では、ハリウッド顔負けのド迫力なアクションが繰り広げられていたのだ。覗き云々は横に置いておくとして、これを楽しまない手は無かった。
「ハドラム様、まずはあの鎧を剥がしましょう。直接ダメージを与えて破壊するのです!」
「はい!」
「いいわ、その調子よ。さあ、私をもっと楽しませなさい!」
異世界に来て良かった。春美は心からそう思っていた。