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ロア・オブ・ライフ  作者: 爺々屋
南部国・ドバレア編
23/82

黒き飛竜

「……逃げろ、逃げろぉぉぉおおおおお!!」


 誰かの叫び声で、人々は一斉に悲鳴をあげながら空に浮かぶ飛竜から背を向けて走り出す。

 人々は蜘蛛の子を散らすように、とにかく翼竜が見えない場所に逃げて、隠れようとしている。

 目の前に転ぶ人がいようともそれを足蹴にし、歩みの遅い老人がいれば押しのけるような状況だ。


 阿鼻叫喚。


 中には勇敢にも大声を出して避難を促す者もいた。


「この近くに大工の工房がある!そこに逃げ」


 しかし、高い場所から大きな声を出していた青年の頭をギロチンのような爪が易々と貫き、頭の中身が無惨にもぶちまけられる。

 飛竜の動きは滑らかで、淀みなく人を殺戮していた。目についた人間を無作為に狙っているようだ。

 ……こいつは、まずい。


「ポルッ!ネーレぇ!……クソッ!」


 俺も大声を出してはみるが、悲鳴と飛竜の鳴き声で相殺され、俺自身の声すら聞こえない。

 逃げる人々の波を押しのけて逆行し、ポルとネーレが居た所になんとか辿り着く。


「ひっ……ぐ、うぇえ……怖いよぉ……お母さぁん、お父さぁん……」


 そこではポルとパルガの傍らでネーレが地べたに座りこみ泣きじゃくっていた。


「大丈夫、パルガ、ポル、居ル。帰ル」


 ネーレの細い腕を掴み、立たせてから背負う。


「ポル!ネーレ!家!行ク!急ぐ!」


 ポルの腕を掴み、宿の方面に走ろうとしたが強い抵抗があった。

 振り返ると、ポルは俺の腕を払い除けて宿の方向に指を差していた。


「奴等。撃退。可能。ネーレ。ソゴウ。パルガ。邪魔。早急。帰還。要求……了解?」


 とんでもないことを言ってるのをゆっくりと理解していき、それでも俺はポルの肩を掴んで引っ張る。


「ポル!帰ル!危険!」


 怒りと焦りで怒鳴り声で言うが、ポルは相変わらずの涼しい顔で受け流す。


「否。ネーレ。危険」


 ……確かにネーレがここに居るのは、危険だ。だけど魔法を使えるポルとは言え、置いていって良いわけが……!


 ポルを引きずってでも連れ帰るか、それともこの場を任せるか葛藤していると、ふと頭上に影が差す。

 はっと顔を上げると、紅の瞳を持つ飛竜と目が合った。


「ガァァァアアアアア!!」


 ピンクのな口内を見せつけながら、飛竜が首を伸ばして俺を目掛けてきた。

 くそ……!

 ……意識を「集中」させろ、どこに、どうやって、どのタイミングで逃げるのが良い?


 目の前に迫る飛竜に「集中」しろ……!

 間に合うか。


 飛竜の(あぎと)を避けようとしたその時、ポルが手をかざし、いつもよりも強い語調で何かを速く唱える。


()岩石(ロック)隆起(スウェル)


 すると何もない地面から石柱が飛び出し、飛竜の顔面に思い切り衝突する。それにより飛竜は勢いを失って止まった。


 ボロボロと石柱が崩れていく中で、ポルは飛竜の方を向いたまま再び指を向こうに差す。


「ソゴウ。急行。早急」


 飛竜を見ると、カウンターのように顔面に石柱が当たったはずなのにダメージは少ないようで、ポルを睨み唸り声を出していた。


「……ああ、分かっタ。ポル!苦労!駄目!帰ル!戻る!」


 無理せずに戻ってこいと伝えたく、なんとなく意味の似た単語で言ってパルガを連れて、ポルを置いて走り出した。




 □□■




「……単語。意味。不適」


 帰ったら指導、とポルは決意する。

 ポルは言った通りに宿屋の娘とパルガを連れていってくれた青年を横目で見送り、正面に浮かぶ飛竜に目を向けながら呑気にも別の思考に耽っていた。


 ……ソゴウは、不思議な奴。

 ネーレのような子どもですら感じることのできる魔力の波動を一切感じないにも関わらず、一度この巨大な竜を倒せるかどうか見極めていたようにも見えた。

 無謀なこと。だけど、ソゴウは『原魔の森』から抜け出してきたと言っていた。

 それすらもにわかには信じ難かったけど、本当にそうだったとしたら、倒すことは出来ずとも生き残ることくらいなら容易。

 ネーレは安心して任せられる。

 万が一ソゴウが役に立たずでも、パルガが居るから、大丈夫。


『うん……大丈夫な、はず』


 ポルは自分の故郷の言葉でそう呟くと、やっと飛竜に意識を向ける。

 土の属性で効果が薄かったということは雷属性が有効?

 と戦略を立てていて、違和感に気付いた。


 どうして、襲ってこない。


 先程襲ってきた飛竜はポルの上空で緩く旋回し、何もしてこないようだ。


 なんでさっきは襲ってきて、今度は来ないのだろう。私の魔法を警戒している……?


 いや、それはないとポルは否定する。

 本来飛竜種は知能が低く、凶暴なことが特徴であり、その上位互換として龍が存在する。

 龍は人間をも上回ると言われる知能を持ち、それどころか純粋な魔力や力は優に人間を超える。

 龍種ならば、飛竜の行動には意図がある。

 しかし、奴は飛竜種でしかない。知能が高い飛竜種も稀に存在するが、それは所謂希少種と呼ばれるもの。

 ドバレアに現れたこいつ等『黒翼竜(ブラックワイバーン)』は強力な飛竜種ではあるが、希少種ではない。


 誰か……飛竜種をこんなにも操れる魔物使い(テイマー)が居るのは……あり得ない。


 だったら……魔法。

 一時的な広範囲に働く、強力な合成魔法。

 だが複数の人間の発した魔力は感じられなかった。個人という線はない、と思う。


 だから、魔法具。

 だけどこの規模だと……古代魔法具を使っているかもしれない。


 暫く考えこんだが視界に黒い煙が立ち昇っているのが入り、思考をやめる。


「…………面倒」


 今は魔物具を使ったかどうかなどどうでもいい。

 それよりも、次々と集まってきた「黒翼竜(ブラックワイバーン)」をなんとかしないといけない。

 襲われないのなら好都合。

 こちらから仕掛けるのみ。


 ポルは体内の魔力が流動する感覚を確かめながら、飛竜に向かって手をかざし、独自で研究した特殊な省略呪文を呟く。


らい圧縮(プレス)……貫通(ピアース)


 ドバレアへの旅路の途中で盗賊に放った雷属性魔法よりも細く圧縮された雷光が、鋭く伸びて飛竜に直撃する。


「む……」


「グギィアアアァァア!!」


 だが激しい閃光を放った割には、雷光は飛竜の鱗を数枚焦がすだけに終わる。

 攻撃を受けた飛竜は大きく翼を羽ばたかせ、速度を上げて急降下してきた。


「……(こう)転移(テレポート)っ……」


 移動距離が短い転移の魔法で横の裏道に逃げる。

 今さっき自分が立っていた場所は、勢いそのままに来た飛竜の爪によって人一人落ちてしまえる穴が抉られていた。

 無表情のまま、僅かに乱れている呼吸を整える。

 体内で魔力を捏ね、質を高めてゆく。波動を感じとられてしまうかもしれないが、仕方ない。


 ……私がやらなきゃ。

 私にはこれ(魔法)しかない。これだけが私の価値。


 私が……やらなきゃ。




 ■□□




 俺は息を切らして、走り続ける。

 複雑な道の構造となっているドバレアは曲がり角が多く、また裏路地も多い。

 飛竜から死角となる場所を探しながら急いで移動する。

 汗が頬を伝う。血や火で焼かれる「もの」の臭いが酷く鼻をつく。

 町は混乱を極めていて、喰われてさえいない死体も散見されていた。

 それはいくら密林を生き延びた俺とは言え、堪えるものがあった。

 魔物の死体と人の形をした死体は全く違う。慣れていないから気持ちが悪い。

 ……慣れてたまるか。

 こんなもの、慣れたくもない。


 啜り泣いているネーレの呼吸を背中に感じながら、宿に急ぐ。

 驚いたことにパルガは道筋を覚えていたらしく、先に四足で走って先導してくれている。

 もう少しでフェインさんたちの宿屋に着くといったところで、槍を持った兵士が突然道を遮った。


「黒づくめぇ!おい、止まれ!」


「ああ!?なんだよ!じゃねぇ、えーっ……急グ!俺、ネーレ、家、戻る!」


 宿という単語を憶えていなかったので家と言ったが、ネーレがいることから察してくれるだろうと思った。


「うるさい、黙れぇ!ドバレアに黒翼竜が群れで来ることなんて殆ど無い!お前らが呼んだんだろ!あんなの、どうすればいいんだよ!」


 しかし兵士はひどく興奮していて、取り付く島もない。

 怪しい俺を犯人に仕立てあげたいのか、それとも混沌となっている町を見て混乱してしまっているのか。


「息、整えル。大丈夫、逃ゲる、する、落ち着ケ」


 たどたどしい人間語で兵士を諭してみるが、ふーっふーっと息を漏らし、槍を構えた状態から動こうとしない。


「……がぁあ」


 そこでパルガがのしのしと歩き始めたかと思うと、二足で立ち上がった。

 兵士の口から小さく悲鳴が出るも、小刻みに揺れる槍の穂先はパルガに向けたままでいた。

 それに対しパルガは、穂先を手で抑えてそのままジッと兵士を見つめているようだ。

 あの理性の篭った目で見られとやはり困惑してしまうようで、兵士はどうすればいいかわからない様子でいた。

 気持ちが大変わかるので、場違いにも苦笑しながらもう一度兵士に話しかけた。


「大丈夫、味方。ネーレ、家、帰る」


 背中の泣き疲れたらしいネーレを見せると、兵士は緊張を肩の解き、やっと槍の先を降ろしてくれた。

 だが今度は兵士は俯き、ぶつぶつと何かをぼやきだした。


「……なんで町がこんなことになってるんだ……どうすればいい……みんな、殺されちまう……」


 飛竜が来襲したことはかなりショックなことなのか。

 可哀想ではあったが、ネーレを宿に送ろうと立ち尽くす兵士の脇を通り過ぎようとした。


 その時。


「グラァァ………」


 パルガの声じゃない、上。


 建物の上から口の端から赤黒い舌を覗かせて、飛竜の瞳は俺たちを捉えていた。

 最後の最後で気を抜いてしまった。


「ちっ!パルガ!逃げるぞ!」


 自分の迂闊さに舌打ちして、走りだす。


「う、うわぁぁあ……!」


 兵士の声に振り返る。

 飛竜に気付いた兵士は腰を抜かしていた。

 震える兵士が手に握る槍の先が、虚しく飛竜を指していた。


 その後の光景を想像してしまう。ヤケクソに(かぶり)を振って前を向いて、走る。

 助けられない。

 また、人を。


 くそ……!


 自分だったら兵士を救えたと思うほど驕ってはいない。けど、人を見捨ててしまったことが辛く、歯痒い。

 だけど今はネーレを助けなくちゃいけないから。

 ……優先順位が、決まってしまっていたから。


 ズシンズシンと飛竜の足音が聞こえる。

 あの家の角を曲がれば宿屋が見える、そして、後ろはどうなっているだろう。

 兵士は、まだ生きているだろうか。


「くそッ…………」


 ネーレだ、ネーレを今は助けなくてはいけないから。

 振り返りたくない。

 人の死を目の前で見るのは、見てしまうのは、もう勘弁なんだ。


「がぁああ!」


 すると並走していたパルガが大声を出す。

 驚き、首を微かに上に傾けると大きな影が降ってきた。風圧で強制的に止められたようになる。

 地を揺らして俺たちの目の前に着地した飛竜が、道を塞いでいた。

 飛竜の大きさは五メートル程だろうか。密林でこの距離で会っていたら即死が確定する大きさ。


「はは……」


 だけど何故だか笑ってしまった。

 諦めて?いや、違うかな。

 怯えて声も出せなくなってるネーレを素早くパルガの背に乗せて、指でビシッと別の道を示す。


「……ネーレを宿屋に」


 パルガは動かない、対称に飛竜は今にも襲いかかってきそうだ。


「行けぇ!!」


 飛竜の顎が迫ってくるのと、ネーレを乗せたパルガが俺の示した道に向かって走り出したのはほぼ同時だった。


「うおおおおおおああああああ!!」


 飛竜を見ることもせず、全力で横に飛び、無様に転がる。

 転がる事が出来たということは、攻撃は避けれた。

 こうやって避けることが多いな、全く。

 直ぐに立ち上がり、飛竜に背を向けて駆け出す。

 元の道。兵士が居た道。

 そこにはまだ座りこんだまま、生きている兵士が居た。


「立ツ!逃げル!急グ!」


 構わずに服の襟首を掴み上げるが、兵士は放心した顔のままだ。

 これではまともな判断は出来ないか。

 俺は兵士の背中を思い切り蹴り、小道に兵士を転がせた。


「えーと、そこ、居ル!大丈夫!」


 兵士は呆然とこちらを見たが、のんびりしている暇はない。


「ギャオオオォォオオ!」


 横から脚で直接ドスドスと近付いてきた飛竜に向き直り、腹から息を吐き出してから「集中」する。


『肉体は飾りとなり、意識は世界に溶けて消える』


 パチリと燐光が煌めきだす中で、なんで飛竜が目の前に降りてきた時に笑ってしまったかわかった。

 兵士ではなくて、こいつは俺たちを狙ってきた。

 結果、兵士を救うことが出来るようになり、俺はこいつに立ち向かう名分が生じた。

 戦う理由ができたからだ。

 適当にあしらって、適当な時に逃げるとしよう。

 ……まぁ、正直言わせてもらうと、勝てる気がしない。


 だけど。


「お前が俺を食ってるなんて、想像出来ない!」


 腰からナイフと大蛇の牙を抜き、それらをそれぞれの手に、逆手に持って走り出す。

 もはや俺の視界には飛竜しか映っていない。飛竜もそうだろう。

 真っ直ぐに駆け、フェイント掛けてトンッ、と横に跳ぶ。

 道の脇に置かれた木箱に足を乗せ、続けて飛竜に向かって、跳ぶ。

 まるで軽業師みたいだ。「燐光」を発動させるとどう身体を動かせばいいのかがわかる。

 普段の俺ではなし得ない動き。でももう一々驚いたりしない。

 今はコレのお陰で、コイツに対抗出来るのだから。


「うらぁあああ!」


 ナイフと牙を逆手に持ち、飛竜の頭に叩きつけるようにして鱗を削る。

 僅かにだが飛竜の鱗と肉と血が宙を舞う。

 接近していた俺の動きに対応が遅れていた飛竜は喚きながら、頭を乱暴に降りはじめた。

 あの頑丈そうな頭が当たったらただでは済まないだろう。


 想像しろ、思い込め。


 ……俺は硬い。まるで「鋼鉄」のように、硬い!


 ぐっと全身を縮こませた直後に感じたこともない衝撃。

 飛ばされているのがわかる。それでも目を瞑り、俺の身体は「鋼鉄」だと、思い込み続ける。

 やがて壁にぶつかり、俺は地面に落ちた。そして思い込みを止めて、立ち上がる。


 ……無傷だ。

 痛みもない。


 身体を捻ったり、関節を動かしてみても違和感すらない。絶好調って感じだ。


 よし。


 頭を振るのを止めた飛竜と睨み合う。俺の集中は途切れていない。「燐光」が漂い、全身に力が巡る。


「……どうしたよ、トカゲ野郎。そんなもんかよ」


「グォォォオオオオオ!!」


 弾けるようにまたも口を大きく開けて、襲いかかってきた。

 心を無くせ、これはただの作業だ。

 万能感が精神を侵食していく。それでいい。俺は「何でも出来る」。


 よく、よく、動きを見ろ。

 軌道を悟れ。

 最小限の動きで翻弄しろ。


 倒れるように上体を深く傾けると、身体の僅か数センチ上を飛竜の頭部が通過していく。

 イメージは赤い甲殻を持った、あの蜂。

 すれ違い様、鱗を削った箇所に素早くナイフと牙の両方を刺し、直ぐに抜いて跳んで離れる。


「ギャオォォオォォォォオ!!」


 小さな餌でしかない人間が傷を付けたことに怒ったのだろうか、飛竜は傷口が血を流しながら高く舞い上がった。


 ……空から狙いをつけて一気に殺すつもりか?

 やってみろよ。

 この際、お前が魔法を使おうが構わない。

 これ以上、人を殺すんだったら。

 俺が立ち向かってやる。


「来い」


 飛竜は一度大きく翼をはためかせ、勢いをつけて急降下し、そのまま地面すれすれで滑空する。

 横に広がる翼は、脆い木造の家をバキバキと壊していく。

 俺との距離が限りなく近付いてきた。もう数秒で来るはずだ。

 ナイフと牙を上下に重ね、構える。

 そして、強く思い込む。


「俺は、飛竜の突撃を、避けられる」


 必要なのは、理想通りに動く強靭な脚力。

 不規則な動きに対応出来る身体。

 飛竜は風を切る音を立てて、一直線に突撃する飛竜に向かって、走った。


「う、ぉぉぉおおおお!!」


 飛竜とぶつかる直前。

 地面に身体が当たりそうな飛竜の、その更に下をスライディングで滑りこみ、避ける。

 飛竜が俺に触れることは無かった。


 避けられた。


「っ……ガハッ…!ぁぁ……!」


 だが、限界が来た。来てしまった。

 緊張の糸と集中が途切れてしまい「燐光」が明らかに薄れる。

 それと同時に、荒波のように疲れが押し寄せてきた。


 反動だ。


「はぁ……!く、はぁ……!くそ!もう、駄目かよ……!」


 苦しい。

 息を荒く吐きながら空を見上げると、やはり飛竜は俺を見続けていた。

 やばい。

 どうする、どうすればいい。

 意識も朦朧としてきた中、飛竜が直接向かってくるのが見えた。

 今度は足の爪で、殺そうとしているのか。


「ちくしょ……ぉ」


 言うことを聞かない脚にムチ打って、なんとか横の道に逃げるために動かそうとする。

 しかし、飛竜との距離は十メートルも無いところ縮まっていた。

 動け!足、動け!動け!


 ああ……

 あああ……!

 あああああああああ!


「くそ、死んでたまるかぁあああ!」


「いい叫び声だぁ!ボウズぅ!」


 重く固い物がぶつかったような、けたたましい音。

 俺は、突然に引っ張られて目指していた道に転がっていた。

 聞こえたのはフェインさんの声。しかし引っ張った主を見てみればパルガだった。

 視線を巡らし、フェインさんの姿を見つける。


 絶句した。


 巨体の飛竜による、空からの爪での攻撃。

 相当の破壊力があるはずのそれを、腕二本、剣一本で受け止めていたからだ。

 当のフェインさんは首をこちらに向けて、人の良さそうな

 笑顔になった。


「おう、お疲れさん。後は任せとけぇ」

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