第3話
この話も前編・後編に分けてあります。
中途半端なところで終わりますがご了承ください。
次の夕方、俺は家で昨日のことを考えていた。今日は学校は休みだ。
昨日はあのニュースのおかげで寝るのがかなり遅くなってしまった。なので3時間ほど前……午後4時ぐらいに起きてしまった。
あのニュースに出てきた〝吉川亮〟は顔写真も、年齢も、何もかもが俺の知っている吉川と一致していた。
つまり俺の知っている、たった今合ってきたあの〝吉川亮〟が殺されたのだ。
ニュースキャスターが言うには胸に大きな空洞ができ、臓器破損・出血多量で即死。
どうやってそんな事をしたのかは不明………。
………信じたくなかった。偶然だと信じたかった。
そこまで親密な仲でもなかった。
だけど知り合いが殺されるというのは気持ちのいいものではない。
……あり得ない。これは……偶然にしては出来すぎている。
もし、俺の夢が〝正夢〟だったのだとしたらあそこで殺されるのは俺だった。
そして、俺を殺すのがフードを被った男……。
わからない。一度にいろいろ置きすぎている。
……もし、あの殺人が俺への何かしらのメッセージだとしたらフードの男は俺を殺す気なのか……?
だとしたら何故だ?俺はあのフードの男を知り合いに持った覚えはない。
なので恨みを買ったとかはない筈。それに、何故俺は一度殺されたんだ?
それ以前にあれは夢のはずだ。俺は現にこうして生きているし、殺された後俺は自分の部屋のベットで起きた。
そして起きた時の日付が、殺された日と一緒………。
これはどう考えても夢だ。夢だったとしたらつじつまが合う。
━━━いや、あのフードの男に関しては偶然ではとても済ませれない。
…………わからない。すべてが謎だ。
「…………」
考えても何もわからない。
俺は気分転換に外に出ることにした。
外出用の私服に着替え、財布をポケットに突っ込み、俺は玄関を出た。
さて、気分転換に出かけるといっても何も行くあてがない。
どうしたものか……。
俺は普段平日は宿題を済ませた後はすぐ寝ていることがほとんどなので特に気に入っている場所とかはない。
なので俺は適当に商店街を歩きまわることにした。
俺は頭の中で目的地を決定すると、その目的地に向かって足を動かした。
10分ほど歩き、俺は商店街に着いた。
商店街に来たものの買いたいものもない。
せいぜい昼までゲームセンターに出かけてそのあと昼飯を済ませることしかできない。
だが今の俺は別に遊びに来たわけではないのでそれで十分だった。
俺はすぐそばにあったゲームセンターの中に入った。
自動ドアが開き、その中からさっきまでは少ししか聞こえなかった店の中のゲーム音が俺の耳に入ってくる。
俺はそのうるさい音を聞き流しながら店の中に入る。
さて、何のゲームをするか……。
対戦物をしても相手がいないしな。
特にやるあてもないのでそこらへんのゲームをして回る。
ゲームをしている時もときどきあの事件が頭をちらついたが、ゲームに集中することでその事から逃れた。
いろいろゲームをしているといつの間にか十分ほどが経過した。結構集中してたのか時間を忘れてしまった。
俺は振り向き、そろそろ帰ろうと出口に向かう道を歩く。
「━━━ッ!?」
だが、俺は少し前ににある裏口への道あたりの所を通り過ぎた人物を見て脚が止まった。
俺はその通り過ぎた人物を追って走った。
ゲームセンターの一番奥まで行き、裏口の扉を行きよい良く開け放つ。
裏口を出るとそこはゲームセンターの裏側だった。
薄暗い隣の建物とゲームセンターを挟む隙間。
……だが、誰もいない。
通り過ぎた人物は確かにここを通り過ぎた。
俺は急いで商店街の方へ走った。
商店街は当たり前だが、人が多い。
……そんな、〝アイツ〟は今ここにいる筈がない。
あり得ない。……だが、もし本当に〝アイツ〟だったとしたら……。
俺は周りを見渡す。
……いたっ!!
俺は目標の人物を少し先に発見し、走る。
人にぶつかったりもしたが、今の俺はそれを気にしていられない。
目標の人物は、少し先の角を曲がった。
俺はすぐにその角を曲がり、追いかけた。
だが、俺がその角を曲がった後には誰もいなかった。
「はぁ……はぁ……くそっ……どこ、だ……?」
息切れを起こしながらあたりを見渡す。
ここは、路地裏だった。
そう、俺が殺された夢を見た現場の近く。
そして吉川亮……俺がさっき見かけたかも知れない人物が殺された場所のすぐそばだった。
俺はとりあえずこの奥を探索することにする。
………もし、俺が見かけたのが吉川だったとしたら。
昨日のニュースがウソだったのだろうか?
それとも、あの日俺は帰ってからすぐに寝ていてあのニュースは夢だったのだろうか?
俺は先に進み、あの吉川と俺が夢で殺された場所にたどりついた。
「………なっ!?」
俺は、その場所に広がっていた光景を見て、一歩後ずさる。
━━そこには、体中を八つ裂きにされた中年男性の死体があった。
あたりはその男性の血で赤に染まっている。
「………うっ……」
俺は、あまりに残酷すぎる光景に吐き気を覚えた。
誰だ……こんな、残酷な事をしたのは……。
………もしかして、あのフードの男か……?
俺は、吐き気を堪えながらもう一度死体を見る。
腕や足、首がちぎれ、あたりに転がっていた。
胴体を見る。着用している服は警官の物だった。
その事から察するにこの人は昨日吉川が殺された現場に誰も入らないように警備をしていた警官なのだろう。
この場には、他に誰もいない。
やはり、あれは気のせいなのだろうか?
「怖いか?」
「なっ!?」
後ろから声がして振り向く。
「━━━ッ!?」
そこにいた人物を見て、鼓動が速くなる。
全身は鳥肌塗れだ。
そう、そこにいたのは━━━
フードを被った、誰か。
みる限り、あの〝夢〟に出てきた人物と同じだ。
つまり━━━
「……てめぇ、何者だ?」
俺は、人違いという可能性を考えずにその男に言った。
今の俺にそんな事を構っている暇はない。死にそうなぐらいに鼓動が速くなっているからな。
「ん?無愛想だな、何者でもないさ」
フードの中からわずかに見える口元は笑っていた。
どうやら、まともに答える気はないらしい。
「吉川を殺したのもお前か?」
「……吉川?」
すると、男が不思議そうな声を上げる。
「何か関係があるんじゃないか?ここで昨日殺された高校生だ。それに、ここで死んでいる警官も……」
「昨日……?あぁ!!ハハハ!!アレの事か」
俺がそこまで言うと、男が高笑いをしながら言う。
「ち、違うのか……?」
「……ん?あぁ、そうだなぁ……。想像に任せるさ」
また意味の分からない事を言い始めた。何なんだ、こいつは……。
「………俺の夢に出てきたのも、アンタなのか?」
「夢?」
また疑問を浮かべるような声色になった。
「……さぁ?どうだろうな?」
だが、どうでもよさそうに答える。
「……お前は、誰だ」
俺は最初の疑問を男にぶつける。
「俺か……?誰だろうなぁ━━」
男が喋っているのを見ていると、いつの間にか男が俺の目の前まで来ていた。
「なっ!?」
一瞬で距離を詰められた。反射的に後ろに引く。
すると、今度は一瞬で俺の後ろに回られた。
「いい動きだ。ただの高校生にしてはな」
男が言う。だがおかしな事があった。
━━男の声が、女性の物になっていた。
「くっ!」
俺はとりあえず地面をけり、前へ走った。
どういうことだ!? 何故声が!?
振りかえる。
今度は追いつかれていない。俺の目の前にたたずんでいる。
「反射神経も悪くはない」
━━今度は、声が男性の物に戻っていた。
なんだ……?耳でもいかれたか……?
それに、これはどう考えても人間の動きじゃない。
「ははは、不思議そうな顔をしているなぁ」
「当り前だ!何なんだよアンタ!本当に人間かよ!?」
俺は叫ぶ。
「人間か?ハハ、面白い質問だな。人間だよ。お前と同じな」
「ありえねぇ!今のはどう考えても人間の動きじゃない!!」
「あぁ、〝普通の人間には〟無理だな」
「何言って……」
俺が言い終わるより前に、後ろから声がした。
━━どうやらまた後ろに回られたらしい。それも、俺のすぐ後ろだ。
「お前にも出来るさ。ただ、やり方を知らないだけだ」
声が、女性の物になっている。
「なんなんだよっ!?」
俺は振り返りながら拳を男……いや、もはや男かどうかも分からない。
仮に、〝殺人鬼〟と呼ぶ。その殺人鬼にぶつかるように横に薙いだ。
だが、俺の拳は空回りする。少しその空回りした力に振り回されそうになるが踏ん張る。
俺は殺人鬼を目で探す。
だが〝探す〟と言うほどの時間をかけずにその人物は見つかった。俺の後ろにいた。
「何者なんだよっ!!あんたはぁ!!」
もう何度目かも分からないセリフにうんざりする。
だが、それを知らないと俺は一生この問題に悩まされる可能性がある。
「だから、何度も言っているだろ?」
歩きながら殺人鬼が近づいてくる。
「俺は俺だよ。他の誰でもない」
同時に、男性の声と女性の声が聞こえた。
どうやら、こいつは俺に自分の正体を明かす気がないらしい。
だけど、その声の主はただ一人━━━俺の、目の前のフードを被った人物だ。
クソッ!!ここまで非現実的だと夢でも見てる気分だ!!
「……俺にも、似たようなことができるってのはどういうことだ?」
俺は、さっきコイツが言っていたことに疑問をぶつけた。
「簡単だよ。これは〝ゲーム〟と同じなんだ。だから、超能力まがいな事も出来る」
その声はまだ男性と女性が混じっていた。
「何言ってんだ、ここは現実だろうが!」
俺はコイツの意味が分からない返答に叫んだ。
「━━じゃあ、お前もやってみればいい」
殺人鬼は、懐から何かを取り出し、俺の目の前に投げた。
それは、イヤリング型のシルバーアクセサリーだった。
「………これは何だ?」
「それをつけてみればわかるさ」
……信じられない。この人物が、俺を罠にはめようとしている可能性は否めない。
「信じられるかよ。俺を罠にはめるための道具じゃないのか?」
「まぁ、お前の意見も分からなくはない。だが安心しろ。殺すなら、もう殺しているさ」
殺人鬼は俺に言い放つ。確かに、そうだろう。
あの超人のような身体能力を使えば、俺を殺すなんて造作もないだろう。
「……殺すこと以外が目的かも知れないだろ」
「納得しないか。まぁいいさ。もし気が変わったならそれを着けてみるといいさ。面白いことになるだろうから」
………?何を言ってるんだ?面白い事?
「もしかしたら俺の正体が分かるかも知れないぞ?なんてな、ハハハ」
少し笑いながら言い放つ。
一体何だってんだ。意味が分からない。
「━━━そろそろ時間だな」
「え?」
何かを聞いたと思うと、目の前に詰められた。
「なっ━━━━」
ドン、という音が腹部から聞こえて激痛が走った。
すごい激痛だ。
こんな痛みを味わったのは初めてかもしれない。
「い、てぇ……な、にを……?」
立ってられなくなり座り込みながらかすれるような声で言う。
「君、面白いね。気に入ったよ。近いうちに会うかもしれないね」
足元しか見えないが殺人鬼の声が頭上から聞こえる。
クソ━━視界がかすれる。
ここで気絶してしまうとまずい。
う……ク、ソ……。
視界が……━━
…………
「……うぅ……?」
俺は、商店街の一角で目を覚ました。
どうやら俺は眠っていたらしい。
空はもう暗かった。商店街は街の光に照らされ、街中はサラリーマンや学生であふれていた。
何十、何百と人が俺の前を素通りする。
俺一人が街中で倒れていようが、それは他人ごとなのだ。
目にとめる事すらせず、まるで視界に映らないかのようだった。
「いてて……。どこで寝ちまったんだ?」
起き上がると腹部に痛みがあった。
……腹部?
━━そうだ!あの男……いや、殺人鬼に遭遇したんだ!!
それで、確か俺は何かを渡されて……。
………その後の記憶が曖昧だ。
そうだ、日付を確認しなければ。
ポケットを探り、俺は自分のケータイを探りだした。
ケータイを開く。
そこに映った日付はちゃんとした、俺が記憶にある限り正しい日付を映していた。
あれはまた夢だったのだろうか。だとしたら俺は夢見が悪い体質なのだろうか。
考えても仕方ない。俺はとりあえず家に帰ることにする。
あ~、服汚れちまったな。洗わないとな。
俺は立ち上がる。
そこで、俺の足元で何かが落ちるような音がした。
「ん?」
俺は足元を見る。
「……また、か」
━━そこには、俺が夢で見たシルバーアクセサリーがあった。
「…………」
どうやらあれは夢じゃなかったらしい。
これを、どうする?持って帰るか?置いていくか?
『もし気が変わったならそれを着けてみるといいさ。面白いことになるだろうから』
殺人鬼が言っていた事を思い出す。
あの殺人鬼は俺にこれをつけろと言っていた。
何故だ?
考えられる可能性は二つ。
一つは、俺を罠にはめようとしている可能性。
もう一つは、あの殺人鬼は俺を殺す気はなく、何か理由があってこれを俺に渡した。
……普通に考えると、一つ目が正解だろう。
だが、あの殺人鬼は俺をあの場で殺さなかった。
それにアクセサリーをもしかしたら俺に何かをさせようとしているのかも知れない。
殺人鬼は俺を殺す気はないと言っていた。
やはり、俺に何かをさせる気なのだろうか?
……考えても仕方ない。
俺は、とりあえずこのアクセサリーを持って帰ることにする。
ここまで読んでくれた方、ありがとうございます。
今回は中途半端な所で終わってしまいました。
そしてまた今回も書くことがない……!!
とりあえず次回予告見たいな事をするとヒロインやっと登場です。
男だらけの空間から解放される……!!
他は……特にないですw
ではまた、次回見てくれる人がいらしたら是非どうぞ。