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第2話

これは1話を二等分した分の後半です。

長かったので二等分したのですが、もし丸ごと1話を掲示した時に見た人がいらしたら紛らわしいことをしてすいません。

━━暗い。


とても━━暗い空間。


気がつくと俺はそこに倒れていた。


体が重い。



ここは、どこだろう?


俺は、なぜここにいるのだろう?


━━そうだ。 俺は殺されたんだ。


あっけなく。 無残に。 殺された。


━━嘘だ。


あんなあっけなく、突然俺の人生が終わるなんて、お断りだ。


俺はまだ生きてる。


俺は、生きてる。


俺は━━!!







「━━━っは!!」



俺は自分のベットで飛び起きた。

急いで周りを見渡した。

そこは見慣れた自分の部屋だった。

体中に汗をかいている。

俺は急いで自分の腹を触り、〝ちゃんと存在するか〟確認する。



━━無事だった。

何もない。

健全、だった。

━━いやそんなはずはない。俺は確かに……。



だがよく思いだすと、殺された時俺は痛みがなかった事を思い出す。

俺は自分の枕元に置いてあるケータイを手に取り、開く。

━━画面上に映された日付は、〝殺された〟日だった。



時刻は朝の六時十四分。

俺があそこで奇跡的に生きていて、何者かが俺を俺の家に送り届けた━━という可能性がゼロに近い事になる。

考えられる可能性は………。



「………最悪な夢だな」

俺はあれが夢だったと確信する。



ただ、夢と起きた時の日時が同じなのが気になるところだった。

もしかしたらケータイの電波がいかれたとかで日日が変わっている可能性もある。

それに17年間も生きていればこういう偶然も一回ぐらいあるかもしれない。



これまで17年間こんな最悪な夢を見たのは圭吾に彼女ができた夢以来だ。

だけどわざわざ予言みたいに今日の事を夢で見るとは、なんというかリアルすぎる夢だな。

……予言。

もし、そうなったら俺は━━。

いや、あんな事現実で起こるわけがない。

変な男に出会って、いきなり腹がえぐり取られたみたいになって死んだ━━なんて、いかにも夢らしい非現実的な体験だ。



……だけど、本当にあんなリアルな夢が存在するのか?

……考えても仕方ないので俺は一階で顔でも洗うことにした。

夢の事がまだ気になって顔を洗うのに集中できない。

「……気分わりぃ……」

俺は顔を洗い終わると呟いた。

たとえ夢でも、殺される夢なんて見たら恐らくほとんどの人間は気分が悪くなると思う。

………学校で圭吾に天罰でも下すか。夢で俺を騙した罰もあるしな。

俺は朝食をさっさと済ませてから登校準備をする。





登校して、下駄箱で圭吾を見かける。俺と同じクラスだから下駄箱もすぐ近くなのだ。

よし、さっそく天罰を下すか。

「オイ、けい……━━ッ!!」



俺は、自分の目を疑った。

見たくなかったものを見てしまったような、存在しないものを見たかのような感覚。

━━なんで、『それ』がここにあるんだ……!!

あれは『夢』なんだ、だからここに〝存在〟している筈がない……!!

俺は見間違いだと信じ、もう一度目を閉じ、再度目の前を確認した。



━━━圭吾の手には、さっきと同じように夢で見た嫌がらせのラブレターがあった。

「うおわっ!!か、駆じゃないか!!いや、あの、これは、そう!!俺あてのラブレターだよ、うん!!」

全身のありとあらゆる穴から汗を垂れ流しながら圭吾は分かりやすい嘘をついた。



「………いや、三崎駆さまへって書いてあるじゃねぇか」

文字の書き方、便せんの色などありとあらゆる要素が夢と合致する。

とりあえず落ち着こう。これは━━偶然だ。

リアルすぎる、そう正夢ってやつだ。



「………なぁ圭吾。それで俺に嫌がらせしようとしてないか?」

「なッッ!?!?なななななな、なぜ分かったァァァァ~!!いや、いやいやいや

わかったとかじゃなくて、うん、ソンナワケナイダロー、オレタチシンユウジャナイカー。イヤガラセナンテシナイサー」

恐ろしく分かりやすい回答をしてくれる圭吾。



………くそっ、ここまでリアルな夢を見てしまうとは……。

圭吾の彼女ができる夢以上に悪夢かもしれない。

もしかして夢じゃない……いや、それはあり得ない。じゃあ何故俺が同じ体験を2回も繰り返して、しかも同じ日を2度体験しているんだ。

「お、おい、どうしたよ?元気ないじゃん駆ー?」

圭吾が声をかけてきたがとりあえず俺は教室に行くことにした。





          …………






昼休み。俺は圭吾と食堂に向かいながら考えていた。

午前の授業中考えた末、『あれは最悪な夢だった』………で解決したいところだが、あまりに偶然が重なりすぎている。

今は考えても仕方ないので気分を切り替える事にした。



俺は食堂で昼飯を済ませようとしていたのだ。そこで俺は夢で嫌がらせをされたことに関して罰を下すことにする。

この学園の食堂の飯はうまいと生徒から評価がよく、かなりの行列……というか争奪戦が開始される。

だが、俺には圭吾という強い馬鹿がいた。



「なぁ圭吾。俺たちに掛かれば食堂の昼休み開始15分で完売がざらな豪華三千円のランチだって楽勝だよな」

「えっ?あれ買うの?無理……いやいやいやいや、うん、そうだな!!お、俺たちに掛かれば大楽勝だな!!は、ははははは!!」

全身から汗を出しながら目が泳ぎまくってる。わかりやすい奴だな。



「そこでだ」

「ん?なんだい駆君?」

まだ汗をかきながら圭吾は答えた。

暑苦しいな。3歩ほど距離を空けるか。



「金を出す役と取ってくる役に分けないか?」

俺の少し無茶な意見に少しきょとんとする圭吾。

「……え?マジ?いや、2人で六千円っすよ?貧乏人学生の高校生には致命的……」

「いや、よく考えろ。あのランチだぜ?乱闘だって起こることもある。それを考えればこの配分は妥当じゃないか?」

弱音を吐きかけた圭吾の声を制止し、俺が言う。

圭吾はまったく似合わない真剣な顔で考え込む。



「………た、確かに……そうかもしれない」

さすが圭吾。馬鹿だ。

「じゃあ俺が取ってくる役だ。お前が金出せ」

「え?ちょ……マジっすか駆さん。俺今七千円しかもってないよ?六千円使うと来月までほとんど金ないじゃないですか……」

「安心しろ。あのランチだ、きっと食べるとこの値段の倍はあっていいと思えるうまさに違いない。

大丈夫だ。俺が死んでも必ずお前の分まで取ってきてやる。俺を信じろ」

ちなみに俺は四千円しか持ってないし、金を出す気など微塵もないがな。



「………駆。お前……」

圭吾が何やら深刻な顔をし始めた。

「わかった……!任せたぞ、相棒!!席は俺に任せろ!!」

圭吾はそう言いながら勢いよく財布から六千円を取りだし、俺の前に突き出した。

「ああ!!」

俺は圭吾から六千円受け取る。あと誰が相棒だ。

さて、じゃあ作戦決行だな。



「じゃあ俺向こうで席取っとくから……」

そのまま席取りに向かおうとする圭吾。

だが俺の復習がそんな簡単に終わるわけがない。

「オイ圭吾。ちょっと来い」

俺は圭吾を呼び止めた。

「ん?何だ?ってうおぉぉおぉおおっ!!?」

俺は圭吾につかみかかり、そのまま行列、もとい半ば乱闘が開始されてあるカウンターまでの人ごみを圭吾を盾にしながら進んだ。



「ちょ、か、駆さぶおっ!な、何してるんですガハァッ!!お、俺待ってる役でしょ?ぐほっ!!」

器用にも誰かにぶつかるたびにリアクションを取りながら俺に言ってくる圭吾。



「バカヤロウ。誰が『待ってる役の方は取りに行ってはダメ』なんて言ったんだ?」

俺は当然のように言ってやる。

「え?それありなんですか?ぶはぁっ!!」

「あぁ、アリだ。安心しろ。俺たち2人に掛かれば楽勝だ。そうだろ?それに俺はお前と取りに行きたいんだ」

俺が圭吾に言う。うわぁ……自分で言ってて気持ち悪くなってきた。



「駆………お前……。あぁ、わかった!!2人で取りに行こう!!ってごふっ!!な、何をするだー!!」

とりあえず気持ち悪かったので圭吾が喋ってる途中に背中を一発殴っておいた。

「いや……すまん。お前が同意してくれたのがうれしくて、つい……」

泣いたふりをしながら語りかける俺。

ある意味泣きそうだから間違ってはいない構えだろう。



「そ、そうか………ぐふっ!!」

圭吾の頭がたまたま腕を上げていた男子の肘にクリーンヒットしたが気にしないでおこう。

お、もうすぐカウンターだな、よし。



「圭吾」

「こ、今度は何でしょう駆さん?」

すごい不安そうな顔で俺に聞いてくる圭吾。

それに俺は出来るだけ優しく、言ってやった。

「御苦労」

「へっ?」

意味が分からず聞き返してくる圭吾を無視し、俺は圭吾を背中から上って踏み台にし、一気に人の波を飛び越える。



「ぎゃあああああ!!!目がああああああ!!目があああああああ!!ってごふ!!ちょ、蹴らないで、いやあああああ!!

俺の息子がああああああ!!誰だいま踏んだ奴ーーー!!!」

圭吾が奇声を上げながら倒れて人ごみに流されていくのが足元から見えた。目を踏んでしまったか。まぁいいや。



ドンッ、と音を立てて俺はカウンターの上に着地成功。

突然空中から降ってきた俺にカウンター付近の生徒が唖然としている隙に俺は食堂のおばちゃんに金を差し出しながら言った。

「特製ランチ1人前ください」



「おぉ、遅かったな。圭吾」

俺は昼飯の特製ランチを堪能しながら人ごみから帰ってきた圭吾に言った。なんだ、死んでなかったのか。

「……え?もっと言うことないの?ねぇこれみてよ!体中アザまみれじゃん!!どうしてくれんの!!」

確かに、圭吾は体中アザまみれで宇宙人みたいになっていた。



「バカヤロウ圭吾。その傷をつけたのは誰だ?俺か?違うだろう?そう、醜く他人を足蹴にしながら我が飯を取らんとする他の生徒たちだろう?」

俺は遠慮なく特製ランチを喰いながら圭吾を見ずに言う。

「……た、確かに。そうだな……俺が悪かったよ、駆……」

どうやら俺が踏み台にした事は忘れてくれているらしい。ありがたいありがたい。



「………ってあれ?俺のランチは?」

圭吾が目を輝かせながら俺に聞いてくる。

俺はその言葉を聞いた瞬間、料理を食べる手を止め、表情を意図的に曇らし、全くそう思っていないが申し訳なさそうな顔をしておいてから言った。


「……あぁ、売り切れだったんだ……。すまん……俺も悪いと思ったんだが、売り切れなんだ……!!クソォ……現実はなんて厳しんだ……!!」

まぁ普通にあと2人前ぐらい残ってたけどな。夢の嫌がらせの仕返しだ。

「なん……だと……!?っていうかお前食ってんじゃん!!それ!!それ俺に食わせろよ、金も出したし取りに行くのも手伝っただろ!?」

声を荒げながら俺に訴える圭吾。

唾が跳ぶだろうが、まったく……。



「バカヤロウ圭吾。これは俺とお前の努力の結晶だ。お前に分けないわけないだろ?当たり前じゃんか。俺がそんなに非情に見えるか?」

俺は圭吾に笑いかけながら言う。

「そ……そうだな。そうだよな……。すまん駆。お前を疑ったりして……」

少し泣きそうな顔で答える圭吾。きめぇ……。



「で、俺の分は!!?」

目を輝かせながら俺に聞いてくる。

切り替えの早い奴だ……。

そんな圭吾に俺は食糧を一つ手に取り、差し出した。

「あぁ、これだ」

「………え?駆さん、これだけですか?これってどっからどう見てもただのバナナじゃないですか駆さん?」

そう、俺は圭吾にバナナを一本差し出していた。このランチのデザートだ。



「バカヤロウ圭吾。よく見ろ。このバナナはなぁ、五千円もする超高級バナナなんだよ。あの有名なドン○ーコングも泣いてほしがるほどのな」

「な、なんだってー!?……それは確かにうまそうだ……!!だ、だけどそれだけってひどくないですか駆さん?」

さすがにこれだけじゃ満足しないか。だがこれ以外はもう全部食べたしな。



「バカヤロウ圭吾。よく考えろ。このランチの他のメニュー、つまり焼き肉・野菜・白米・チキン・味噌汁だな?これはすべて合計して

たったの千五百円程度だ。それとこの超高級バナナ五千円を比べてみろ。明らかにバナナが高いだろ?それに、俺は今まで話してなかったが

超がつくほどバナナが好きなんだ。それを、頑張ってくれたお前に残しておいたんだぞ。むしろ感謝してくれ」

少し誇らしげに俺は圭吾に説教をしてやった。

そして圭吾はやはり感動したような顔で俺を見る。こっちみんな。



「駆………お前……俺のためにそこまで……わかった。ありがとう駆!!このバナナ、ありがたく頂戴するぜ!!」

圭吾はそう言いながらバナナに豪快に被りついた。

「何、分かってくれたならいいんだ、圭吾」

まぁ五千円どころか恐らく5本で五百円程度のバナナだろうがな。



「うめえええええ!!これ超うめぇよ、駆!!ありがとうな!!あ、そういえば余った三千円返してくれよ!!」

五本百円のバナナ(仮)を絶賛しながら圭吾は一番口にしてほしくなかった事を言った。

チッ……覚えてやがったか……。



「バカヤロウ圭吾。この金はな、俺たちの未熟が残した呪縛だ。そう、お前と言う犠牲を残してしまったという未熟だ。こんな忌まわしき金は

今すぐにでも捨てるべきなんだ。そうだろ?お前はこの金を見るたびにその傷を思い出し、苦しむことになる。だからこれは俺が使ってやる」

俺がまたも当然のように言ってやる。

だが今回は納得しなかったようだ。

「た、確かにそうかもしれない……だけど、それ俺が使ってもよくない?」

チッ……同意しとけよそこ。



「バカヤロウ圭吾。お前は俺が『お前が苦しまないように俺が代わりに使ってやる』という誠意がわからないのか?よく考えろ。俺は他人の金を

使って喜ぶほど非常な男ではない。その俺がお前の金を代わりに使ってやるって言っているんだ。俺もあの金を見るたびにお前のその傷を思

い出し罪悪感が沸いてくるんだ……!!こんな思いをお前には味あわせたくないんだよ!!」

今度は少し感情的になったふりをしてみる。

「か、駆……。お前、そこまで俺の事を思って……。すまん!そんな金、もう使ってくれ!!いいんだ、もう!そんな忌まわしき金!!」

「あぁ……分かってくれればいいんだ……」

三千円手に入れたぜ。ラッキー。今度十円チョコ奢ってやってもいいぞ圭吾。

というかこの馬鹿さでよくこの高校入れたな。






          …………






放課後、俺はさっさと帰宅準備をする。

俺は帰宅部なので特に放課後の学校に用はなかった。

「おーい駆。一緒に帰ろうぜ」

「だが断る」

俺は帰宅をともにすることを誘ってきた圭吾に1秒も待たず言い放った。



「え……!?まじかよ、俺たち親友だろ?なぁ、一緒に帰ろうぜ?」

うるさいな……。

「バカヤロウ圭吾。俺はな、お前が遊ばずにさっさと帰って勉強できるように、と一緒に帰りたい気持ちをグッと抑えて言っているのが

わからんのか。最近お前成績悪いだろう?お前が退学なんかになったら、俺は……」

あぁ、クソ。圭吾に言い聞かせるときの俺のセリフはいつも気持ち悪くて自分で反吐が出るぜ。



「か、駆……!!お前そこまで俺の事を……!!わかった!今日はもう早く帰って勉強することにするぜ!!」

「わかってくれたか……わかってくれたならいいんだ……」

俺は涙をぬぐうふりをしながら言った。

「うおおおおお!!今日は徹夜で勉強だぜえええええ!!」

圭吾は奇声を上げながら教室を出て行った。

さて俺も帰るか……。



「………」

だけど俺は脚を止めた。そして近くにあった圭吾の机の中を探る。

━━そこには、数学のノートがあった。



俺は、帰宅しながら考えていた。

あの後俺は下駄箱に行き、中身を確認した。すると今朝見られたというのに馬鹿正直に偽ラブレターがあった。

そして、ケータイには圭吾からの着信履歴。



………これは圭吾が馬鹿だ、ということで解決できなくもない。だがあまりに状況が合いすぎている。

あぁ、クソッ。わかんねぇな。

考えていると、俺はあの夢で近道に使った路地裏が見えてきた。

時刻はまだ午後6時前。近道するほどの時間でもない。



━━━だが、俺はそこに恐怖を感じた。一種のトラウマだろうか。

誰だって夢とはいえ殺された場所になんか行きたくないだろ?

…………。

だけど………



確かめよう。

そう思った。

俺はやはりあれを夢と明確に判断できる何かがほしくて路地裏に来てしまっていた。

そこまで俺は好奇心旺盛というわけではないと思うんだがな………。

あの時とは時刻も状況も違う。

同じ事にはならない……はずだ。



「………ん?」

俺は殺された現場に着いた。

確かにそこには誰かがいた。

………だがその人物は俺の知ってる人間だった。つまり、あの俺を殺したフードの男ではない。



「よぉ、何してんだ?吉川」

俺はその男に話しかける。

「え?」

名前は吉川亮(よしかわりょう)。俺の中学までの後輩だ。制服が俺の学校とは違うのでどこか別の学校に通っているのだろう。



こいつは今も俺を悩ませている不良グループに絡まれていた事があって、その時たまたま通りかかった俺が助けた事がある。

それが原因で俺は今不良グループに狙われているわけだ。

それ以降たまに中学で合った時話す事があった。

ぶっちゃけると、今まで存在を忘れていた。


「あぁ、三崎先輩じゃないですか!ハハハ、奇遇ですね!」

少し大げさな口調で俺に話してくる吉川。

「あぁ。俺もたまたま通りかかったんだ。お前もか?」

他愛もない会話だったが、俺は一応ここで何していたのか聞くことにする。

「えぇ。ここって僕の学校から家までの近道なんですよ。で、今その近道を利用してい所です。

それより、これからどこかに遊びに行きません?」



近道か。ここの路地裏は商店街の横にあって、確かに商店街をほとんどショートカット出来る。

どうやら吉川の言っている事は本当らしい。

「そうだったのか。遊びに行くのは構わないが、お前近道してたんだろ?家に用事とかないのか?」

「それなら大丈夫です。暇だったから早く家に帰って遊びたかっただけですから」

かなり遊びたいらしく、少し声をでかくして俺に言ってくる吉川。

まぁ、暇つぶしにはいいかもな。

俺はそう思い、吉川と商店街に行く事を決めた。

「そうか。ならどっか行くか」

「はい!」




「あ~!!また負けたあぁー!!」

吉川が叫んだ。

今俺たちはゲームセンターに来ていた。

「また俺の勝ちだな」

「先輩強いっすねー」



俺たちはレースゲームで勝負をしていた。

このゲームセンターのゲームで先に五勝した方がこのあと行くファーストフード店で奢るっていう勝負だ。

俺は今四勝したところだ。あと一勝で吉川の奢りとなる。



「先輩、もう一回しません?」

「ん?おう、いいぞ」

吉川がもう一回レースゲームで勝負しよう、と言い出したので俺はそれに応じた。

俺はレースカーの椅子に見立てたゲームの椅子に座る。



「念のためもう一回言っとくが、俺は手加減はしないぞ」

「望むところですよ。こっちこそ本気で行きますよ」

「おう。掛かってこい」

俺達がそんな掛け合いをし終わると同時に、ゲーム画面にレース開始を意味する『GO!!』の文字が表示される。



俺はそれと同時にアクセルを全力で踏む。

目の前に三機、NPCのレースカーが走っている。それもかなり密着していて、追い越す事は難しい。

だが、俺には特技があった。



俺は目を凝らす。

レース場を図形に見立てる。視界に映るすべてを目に焼き付ける。

そして俺のレースカーと前のNPCのレースカーの大きさとレース場を目で測る。

そのすべてを把握し『俺だけが通れる通路』を見つけ出す。


━━━見つけた。

俺はアクセルを全開にする。そのままゲームはそれを読み込み全力で前進する。

「な、ちょ、先輩!?」

隣で同じように走っている吉川が驚く。

が、俺はこのマップの構図をすでに覚えた。

前を通る三機のレースカーの間をわずか数ミリ程度目掛けて走る。



1.4秒後に前のレースカーが左に0.6秒だけ寄る。

そこで右にハンドルを0.9秒回し、準備する。

俺は頭ですべてを計算しながら進める。

そして、ギリギリ俺のレースカーが入るわずかな隙間が一瞬だけできる。

俺はそこにめがけて思いっきりアクセルを踏みなおす。


予想通り通り抜けることに成功。

後は何かアクシデントがない限り楽勝だ。

「先に行くぜ吉川」

「ちょ、えぇー!?」



そう、これが俺の特技。

こういう視界に映るものを計算することは結構得意だ。

例えば人ごみで人にぶつからずに進む道を探すとか、目で見た建物の構造を理解する、とかそういう計算。

それを一瞬で計算することが俺は得意だった。



すごい特技みたいに聞こえるかもしれないが普通の生活ではまったく役に立たない。

……俺の役に立たない特技の事はどうでもいいんだ、話を戻そう。

俺はそのままこの特技を生かし、結構楽に一位を獲得した。



「俺の勝ちだぜ。まだやるか?」

俺はちょっとだけ得意げに吉川に言った。

「また負けた……?三崎先輩強いっすねぇ。俺、結構レースゲーム自信あったんだけどなぁ」

吉川は台詞とは反対にあまり悔しそうじゃい。

「じゃあ早く約束の場所へ行こうか」

俺はそれだけ言って近くにあるファーストフード店へ向かった。





          …………






俺は吉川とファーストフード店に来ていた。

今は吉川の奢りでコーラとハンバーガーを食べていた。



「そういば先輩はどこの学校に行ってるんですか?」

「あぁ、俺は櫻川学園って所だ」

俺はコーラを飲みながら答える。



「あぁ、そこなら知ってますよ。ここの近くっすよね。結構生徒から評判のいい学校だって聞いてます」

「あぁ。食堂の飯とかが結構うまくてさ、俺も圭吾に奢らせたりしてる」

「ハハハハ、先輩まだ松田先輩パシリとかに使ってるんですか」

「あぁ。あいつはパシリとしては優秀だからな」



………他愛もない会話だった。

だけど俺はあそこで吉川に合ったことに安心していた。

理由は分かるだろうがあのフードの男に出くわさなかったからだ。

これであの出来事が夢だった、という可能性が高まった。

少なくとも今日、俺を殺した男には遭遇しなかった。

そもそもあれが夢じゃないなら何だというんだ。

迷っていた自分が馬鹿らしい。



と、その時誰かのケータイがなった。

「あ、僕ですね。失礼します」

吉川の物らしい。

吉川はそのまま鞄から自分の着信を知らせるメロディが鳴り続けているケータイを取り出し、電話にでた。



「はい吉川です。……あぁ、姉さん。………うん」

どうやら吉川の家族が電話の相手らしい。

「……今三崎先輩にあって話をしてたんだよ。うん、そうそう、あの三崎先輩」

おいおい、なんか有名人にあったみたいな感じで言うなよ……。

どうやら俺の存在は吉川の家族にも知らされているらしい。

まぁちょっとした有名人だからな。街中で不良グループに追われている迷惑少年として。



「………あぁ、そうなんだ。……うん、わかった。今から帰るよ」

吉川はそう言い、電話を切った。

「ごめん先輩!用事が出来たんだ!先に帰ります!」

吉川が自分の目の前に両手を合わせ、すまなさそうに言った。



「ん?そうのか?」

どうやら家族から何か用事を知らされて今から帰らなければ行けないらしい。

「代金は置いときますね。それじゃ、また」

「あぁ。またな」

吉川は机の上に俺と自分の分の代金を置き、店から出て行った。

………俺も帰るか。

俺は飲んでいたコーラを一気に飲み干し、帰る事にした。






         …………






「ただいま………っと。結構濡れちまったな」

誰からも返事がないとわかってはいるがそういいながら俺は家に入った。

俺は吉川と別れた後すぐに家に帰っていた。

途中で雨が降り、ちょっと服がぬれてしまった。

とりあえず二階で服を着替えることにした。


俺の家は二階建ての、自分で言うのもなんだが結構広い家だ。

この家は部屋の数が無駄に多い。

俺の親が「どうせ家建てるならでかい方がいいだろう」という馬鹿な考えの元部屋の数は余っている。

誰が掃除すると思ってんだ、全く……。

俺の部屋は二階の、階段を上がってすぐの部屋だ。

一階にはリビングや洗面所、風呂にキッチンなどがある。

つまり二階は部屋ばかり。といってもやはり俺以外の家族は海外なので実質俺の部屋だけだが。



俺の親は遠く離れた海外で仕事をしながら過ごしている。

俺も本来ついていくべきなのだが海外に行く気がなかったのでやめた。

そして今は実家であるこの家に一人で住んでいる。



「………」

俺は服を着替え終わり、一階に向かった。

晩飯でも食うか。

俺はとりあえず晩飯を作ることを決めた。

吉川と少し食事を取ったのだがまだ腹が減っていた。



とりあえず冷蔵庫で食材を確認することにする。

俺は親が外に出かけているということが多かったためかちょっとぐらいなら料理もできる。

作る時は自分の分だけなのでほとんど適当に済ませている。

料理をできないかできるかと聞かれたら普通ぐらいだと思う。うまくもないし下手でもないと答える。

「さて、と」

俺は冷蔵庫から食材を取り出し、それを調理する作業に取り掛かる。



料理を作り終わり、それを食す作業に取り掛かっていた。

ちょっと前に食材を買いだめしていたので冷蔵庫には結構食材が残っていた。

だけど作るのがめんどくさかったので俺は焼き飯をだけをさっさと作ってテレビを見ながら食べている。



今はサスペンスドラマがやっていた。

「………」

俺はこのドラマを見たことがなかった。

だけど殺人の犯人と思われる人物がフードをかぶっていて、嫌な記憶が蘇ってしまった。

………さっさと忘れるに限るな。それにあれは夢だしな。

そう思いチャンネルを変え、食器を片づけようと立ち上がる。



「……ん?」

適当にチャンネルを変えたのだがどうやらニュース番組がやっていたチャンネルになったようだ。

………なぜかわからなかったが、嫌な予感がした。

テレビに映るニュースキャスターが無表情のままニュースを言っていく。

『……今夜、殺人事件が起こりました。場所は……』

ニュースキャスターはそのまま続ける。



ドクン━━━

心臓の鼓動が速くなる。

場所は……この街だった。



「………」

嫌な予感が止まらない。



『………被害者は━━』

テレビ画面に被害者の顔写真が映る。



「━━ッ!!?」

鼓動がさらに早くなり、体中から汗が出た。



俺は、その画面上に映った事が信じられなかった。

見間違いかと思った。

いや、見間違いであってほしかった。

だけど、違った。

間違いなく画面には認めたくない映像が映っている。

そこに映っていた、被害者の写真と名前。それは━━

        

       










           〝吉川 亮〟





前書きにも書きましたが1話を二等分してみました。

ちょっとは見やすくなっていると幸いです。


今回は前回掲示した1話と内容が一緒なので特に書くこともないんです……。

何かコーナーも作りたいのですがネタもないw


今回何もない分なるべく早く3話目を掲示する予定です。

もし読んでくれる気がある寛大な心の持ち主がいましたらどうぞ。


それでは。

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