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最強兄妹と決闘

「おーっほっほっほ! 決闘ですわ、メリディ・リムスさん!」


《ま、まさかこの時代に存在していたなんて……高飛車エリート金髪ツインテ縦ロール! そんな、お前は旧時代の遺物の筈だろう!?》


 ──────話は、数時間前から始まった。

 入学式を終え、それぞれの教室へと向かった私たち新入生。席につくと、教員が入って来て説明を始めた。


「……これから一年間、君たちを指導する。担任のハスタだ」


 あ、入学試験でお兄ちゃんがボコボコにした試験官だ。担任なんだね。


「まず、今年一年間に渡っての授業予定(カリキュラム)について説明する」


 九月、一年生限定学院内トーナメント。

 十月、実地職業体験。

 十一月、学期末試験。

 十二月、冬季休暇。

 一月・二月、学園祭『魔剣祭(カーニバル)』。

 三月、外征実地訓練。

 四月、中間試験。

 五月、学院対抗戦『魔剣争典(ブレイズ・フェスタ)』。

 六月、学年末試験。

 七月・八月、夏季休暇。


「これが、今年一年間で君たちが行う主な行事だ。覚えておくように」


 ……多いなあ。お兄ちゃん、こんなにあるのは何でだと思う?


《うーん……所見になるけどいい?》


 うん。


《まず、普通に学問を習う教育機関ならいざ知らず。俺たちは魔法や武術を習う教育機関にいる以上、必要なのは理論の学習とその実践による体験だ。ここまではいいね?》


 そうだね。自主勉強でやって来た経験から考えても、書物での学習に意味がないとは言わないけど実体験の方がずっと学べる。そこは間違いない。


《だからこその実地職業体験と外征実地訓練なんだろうね。言わばインターンシップのようなものなんだ。実際にその職業に就いているプロの監修で安全を確保しながら、同時にある程度レベルの高い実戦経験を積ませるのが目的なんだろう》


 ……一年生にはまだ早いと思うけどね。


《そこはまあ仕方ないよ。幾らこの世界にもちゃんと大学(ユニバーシティ)に相当する機関があるとはいえ、家庭の財政状況などからそちらに進まず学院卒業と共に就職する生徒も多い。経済格差(そういうとこ)は中世ファンタジーの弊害だよなぁ……まあとにかく。そうでなくてもモンスターが存在するからね、場合によっては学徒動員も有り得る。それを想定すると『庇い守るべき対象』であるよりも『最低限自分の身くらいは守れる人間』、『可能なら自分以外も二、三人守れる人間』が多いに越したことはないんだ》


 なるほど。生々しい話ではあるけど、理にはかなってるんだ。じゃあ、トーナメントと学院対抗戦は?


《そっちは……外部向けのイベントだろうね。この学院の卒業生の進路は大きく分けて二つある。進学と就職だね》


 ……まあ、基本的にはその二つしかないと思う。どの学校も。


《だけど、その就職にも更に二つのパターンがある。と言っても雇われるか雇ってもらうかの違いさ》


 どう違うの。


《この国の職業の一つとして、モンスターの討伐などを行う『軍』に所属する軍人がある。雇われるのはこっちだね、入隊試験などの規定された手続きを踏んで雇用関係になるものだ》


 ……就職組の七割か八割はこっち、って聞いたことがある。お兄ちゃんは前に《国家公務員に相当するから福利厚生良いしなぁ。まあ中世だから有給休暇とかの制度はないけど、それでも安定した収入は魅力的だ》とか言ってたっけ。


《で、もう一つが『護衛』だ。爵位を持つ貴族が存在するこの国では、馬車などでの長距離移動の際に身を守る護衛を雇うことが多い。勿論護衛任務が得手な人を集めて依頼に応じて派遣する商会(ギルド)もないわけではないけどね。当たり外れが大きいし、ハズレを引いた時の損失は下手したら雇い主の命だ。割に合わない》


 当たりと大当たりが等価である以上、その籤を引くかはハズレの損失の規模に目が向くってことね。


《だから実力が高い人間は、いっそ専属で雇ってしまうんだ。貴族なら余程家が傾いてない限りは給料を出せるからね、命と家督を金で買えるなら安いものさ》


 ってことは……トーナメントと学院対抗戦って、競りの会場みたいなもの?


《身も蓋もない言い方をするとね。要は『将来有望そうなのを探す』場所だ。競走馬のセレクトセール、魚市場の早朝の競り……まあ言い方はどうでもいいんだ。要はトーナメントは『カードゲームの汎用パワカを初日のうちに買う店』で、学院対抗戦は『初動では安かったけど新規カードや環境の変化で化けたカードを買う場所』なわけだ》


 余計わからなくなった。何、カードゲーム?


《まあ即買いするか様子見して買うかの違いさ》


 ……こういう誤魔化し方をしたお兄ちゃんは絶対詳細を言わない。仕方ない、置いておくとしよう。


《後は……まあ事例(ケース)は少ないだろうけど、出資先の品定めとかかな。例えば『学院の修士課程でも強いしこれで上の学府に行けばとてつもないだろうけど金銭的な問題で行く余裕がない生徒』が居たとする。そういう時、金銭の面倒を見ることを条件として卒業後はその貴族が保有している私兵部隊に入るとか研究施設に入るとか。そういう契約を交わす相手を探すこともあるだろうね》


 ああ、そういうのもあるのか。でも私たちには関係ないだろうね。


《そうだな。俺たちのチートならそういうの抜きに在学中に戦果を以て金を稼いで学費を都合出来る》


 積極的にやるつもりはないけど、それでも有事の際の安堵を買える程度にはやっとこうか。……一応なんだけど、契約を反故にしたりとかは有り得るの?


《余り考慮する必要はないんじゃないかな。まず生徒側だが、何せ相手はお貴族様だ。裏切った時のペナルティが怖いし、そもそも別の貴族に鞍替えしようにもその相手が見つからないだろう。金で作った首輪で飼い慣らせない野犬なんて命を握るしかないし、そんな凶暴な野良犬はどこの家だって御免だ。貴族側からしても理由がない。『出資して見返りが出なかった』ならまだしも、『出資したけどリターンが出る前に切り捨てる』ってのは金をドブに捨てるようなものだ》


 そっか、なら安心だ。


《っつーかこういう場を作るってことは学院側も一枚噛んでるだろうからね、それで取引反故とか冗談抜きで国中から追い回されるよ。亡命確定してまで裏切らなきゃいけない取引なんてそうそうあると思う?》


 ごめんそれは聞きたくなかった。幾ら何でも怖いよ。

 そんなことを話していると、気付けば今日の授業は終わり。確か食事は寮だったよね?


《そうだね。まあ学院の外で食べてもいいけど、外出手続きも必要だしお金もかかる》


 ん。そうして席を立ち、寮へと向かおうとしたその時。


「……貴女は?」


 私の目の前に、クラスメイトである一人の少女が立ちはだかった。金髪を巻いて左右で結んだ髪型、翡翠のような色味の鮮やかで明るい瞳。自信満々な表情で、彼女は云う。


「初めまして、(わたくし)はルクス・ヴルヌス。よろしくお願いしますわ」


「……メリディ・リムス。よろしく」


《で、俺はノクス・リムス。よろしくぅ》


 互いに挨拶を交わす。ところでお兄ちゃん、声届かないから意味ないと思うよ。まあそれはそうとして……彼女は、勢いよく私を指差して叫んだ。


「私は、貴女に決闘を挑みますっ!」


 ふうん、決闘。……え、何で?




 というわけで今に至る。お兄ちゃんは……何か興奮して役に立たない。さて、どうしたものか。顔に出さずに困っていると、何処からか声が聞こえてきた。


「──────バ、カ、や」


《あっ、なるほど。メリディ、ちょっと下がった方がいいよ?》


 えっ。……とりあえず何も分からないままに一歩下がってみる。すると、次の瞬間。


「ろォォォォォォォォォッッッッッ!!!」


「ぎゃーすっ!?!?」


 教室の扉から飛び込んできた影が、そのままルクス・ヴルヌスに飛び蹴りをぶちかました。


「えぇ……」


《ほう、あの飛び蹴り。迷いない踏み込みに容赦のない側頭部ぶち当て……出来るっ!》


 戯言(いつもの)を垂れ流す愚兄を他所に困惑する私。……これは、どうすれば?


「お前入学初日から何してんの!? なあ何してんのお前!?」


 そう叫んだ後、その影……蹴り飛ばされたクラスメイトと同じ髪色の青年は、こちらへと向き直った。


「うちのバカに何かされなかったか? されてたら言ってくれ、爪剥いで詫び入れさせる」


「わあ野蛮」


 そんな血腥い……いやでもうちのお兄ちゃんも《お前は俺の可愛い妹だけど道理に背く真似したら締めるからな》とか言ってたからこんなものなのかな。


「……特に何も。決闘挑まれたくらい」


「爪二枚」


 爪二枚? 今爪二枚って言ったこの人?


「とりあえず愚妹は後で一回殺すとして……うちのバカが済まなかった」


「いや……本当に決闘挑まれただけだから。特に気にしてない」


 というか思考が追いつく前に蹴り飛ばされててもっと追いつかなくなった。……お兄ちゃん、どうしよう?


《ひーっ、ひーっ……! やっべ、魂だけなのに笑い過ぎで死ぬかと思った……で、何? この状況の収め方?》


 うん。収拾つかないからどうにか出来ないかなって。


《その収拾つかないモンをお兄ちゃんに収拾つかせようとする面の皮の厚さは好きだよ俺。『面白い、殺すのは最後にしてやる』的な面白さだけど》


 まあいいや、と言って肉体がお兄ちゃんへと渡る。……渡してから言うのもなんだけど凄く嫌な予感してきた。


「ほんと、気にしてないから大丈夫。……でも、悪いと思ってるんならお願いがある」


「マジ? 言ってくれ、腕の三、四本へし折ってでも遂行させる」


 ムカデか何か? 人間ってそんなに腕ないよ。


「じゃあ遠慮なく──────改めて、決闘しようか。私と貴女、どっちが強いか証明しよう」


 おい何してくれてんだクソ兄貴。

メリディ・リムス

殺すぞ兄貴。


ノクス・リムス

腹抱えて笑ってる。


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