最強兄妹首席入学
「メリディ、ノクス、学院から手紙が来たぞー」
「はーい」
自室で寛いでいると、お父さんの声。それに返事をして、手紙を取りに向かう。
《ん……何、合格発表かな?》
あ、お兄ちゃんも起きてきた。お兄ちゃん、変なところでお寝坊さんだよね。
《肉体がないと眠気はないけど起きてる自覚もないからね。最悪寝なくてもいいが、人として睡眠という形でオンオフを持たせないと何時か崩壊してしまう。だから寝るようにしてるんだけど……常に寝てて常に起きてるようなものだから、寝始めると中々起きられないんだよね》
何言ってるかわかんないけど、まあそういう訳でうちのお兄ちゃんは一度寝ると中々起きない。厳密には『起きるには起きるけど結構手間がかかる』が正確かな。好奇心旺盛だから面白そうなことで釣ったらすぐ起きるんだけど、毎度そういうことになる訳でもないし。
そんなことを考えながらお父さんから手紙を受け取り、封を開ける。
「……アウローラ魔法剣術学院、首席合格だってさ」
私がそう言うと、手紙を渡したお父さん……そして、いつの間にか家事を一時中断して寄ってきていたお母さんが歓声を上げた。
「本当か! さすがはメリディとノクス、父さんと母さんの子だ!」
「今夜はご馳走ね、二人とも何が食べたい?」
だってさ。お兄ちゃんは何か食べたいものある?
《メリディが食べたいものでいいよ? 飲食には頓着しない気質だからね》
ふうん。……で、食べたいものは?
《答えなきゃ話が進まないタイプのNPCかあ。……うん、そうだね。お肉とか食べたいかな、ステーキ……でっかい肉を焼いたガッツリしたの》
了解、伝えておくね。
その日の晩。お母さんが用意したご馳走に舌鼓を打ちながら、食卓の話題は必然的に首席合格のことになった。
「にしても、まさかメリディとノクスが首席とはなあ。未だにちょっと信じられないよ」
「お兄ちゃんはずっと『余裕』って言ってたけど、私はほんとに大丈夫かなって心配だった」
いやまあ、自分の力もお兄ちゃんの力も疑ったことはないけども。合格自体はそこまで不安じゃなかったし、不安だったのはお兄ちゃんがずっと言ってた『首席合格』についてだけだった。
「そこのところ、ノクスはどうだったんだ?」
だってさ。お兄ちゃん、答えて。
《あいよ》
その言葉と共に身体をお兄ちゃんに譲り渡すと、私の表情が希薄な様子からは一転。コロコロと表情を変えながら、お兄ちゃんが話し始めた。
「首席合格に関しても、まあ『俺たちなら余裕』としか思ってなかったよ。何せ単純にリソースが倍だからね」
《普通の人たちは魔法か武術か、どちらにどれ程注力するかを考えなきゃいけない。だけど俺たちは悠々自適に『自分が片方極めてもう一人にもう片方を極めてもらう』という最短の回答を叩き出せるわけだからね。 ステータスポイントを分配出来るゲームシステムで、レベリングにかかる時間を同一と仮定すれば……一番早くレベルをカンストさせられるのは、極振りビルドというわけさ》
……ゲームシステム?
《気にしなくていいよ。何時ものお兄ちゃんの戯言さ》
そう。
「……まあそういう訳で、せっかく首席合格したんだしアウローラに入学するつもり。特待生制度とかもあるし、そういうの使って」
お兄ちゃんに身体を返してもらい、そう告げる。同封された書類によると、特待生なら入学金減額に授業料の免除。更に寮も個室が割り当てられる。別に相部屋でも構わないけど、お兄ちゃんと気兼ねなく話せる一人部屋になるに越したことはない。
《別にお兄ちゃんのことは気にしないでくれても良いけどね。話しかけるタイミングくらいちゃんと見計らうさ》
……お兄ちゃんと話してる時に話しかけられたら対応が面倒でしょ。それだけ。
《聖徳太子の真似は常人には厳しいからね》
誰? まあお兄ちゃんが変な思念を受信するのはいつものことだから良いか。
「……そうか。だがお金のことは心配しなくていい、私たちにも蓄えくらいはあるさ」
うん、同様にこっちが勝手にお金のかからない進路の走り方をしてるだけだからね。
《まあ背負って貰えるところは背負われた方がいいさ。特待生制度から外されるレベルの成績を取るつもりは毛頭ないが、それでも『いざという時に頼れる先がある』という命綱が齎す安堵は相当なものだからね。最悪の場合の救済措置ほど有難いものは、残念ながらこの世にはそうそうないものだ》
そうだね。何時も私がお兄ちゃんを頼るように、お母さんやお父さんに頼るべきところは頼ろう。
《そういうこと。人は万能になれても全能にはなれないんだ。出来ないこと、大変なことは遠慮なく周囲に頼るべきだよ。その代わりに、頼った人にとって大変なことを代わってあげればいいんだ》
……ん、頑張る。
そうして、楽しい夕飯も終えて。時は流れ──────遂に、入学式を迎えた。そして。
「おーっほっほっほ! 決闘ですわ、メリディ・リムスさん!」
──────速攻で喧嘩売られた。
《ま、まさかこの時代に存在していたなんて……高飛車エリート金髪ツインテ縦ロール! そんな、お前は旧時代の遺物の筈だろう!?》
そしてお兄ちゃんは相も変わらずうるさかった。
メリディ・リムス
主人公。表情が動かないタイプ。
ノクス・リムス
主人公。表情がコロコロ変わるので煽り性能が高い。
高飛車エリート金髪ツインテ縦ロールちゃん
入学初日に喧嘩を売った。
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