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恋愛小説

私学最難関の女子大付属にも意外な弱点がある

掲載日:2026/02/21

1.

斉田晴子は胸踊らせながら、憧れの花籠女子大学付属高校の門をくぐった。


花籠女子大は私学最難関の女子大であり、自分もその付属の一員だと思うと、嬉しい気持ちもあるが、小さな不安もあった。


進級が厳しいし、2年連続で落第したら退学になるというルールがある。


木造の校舎に足を踏み入れたとき、独特の木の香りが鼻をくすぐった。


食堂は出来たばかりで、パン屋がやってきて菓子パンを売っている程度で、大抵はお弁当を窓際のスチーム暖房で温めて食べる。


だがまあ積み重ねの数学と英語さえやっておけば、他の科目は一夜漬けでも赤点を取ることはまずないとわかり、進級に問題はなかった。


2.

晴子は2年生になり、大講堂で行われた始業式を終えて教室に戻った。


隣の席の陽子と笑いながら話していると、突然、見慣れない女の子が後ろの扉から教室に入ってきた。


肩までの茶髪、淡いピンクのブラウスに紺色のプリーツスカートのどこか華奢で控えめな印象があった。


「私の席、あるかしら?」


少しぎこちない声だが、勇気を振り絞った感じが伝わってきた。


後ろでは、冷やかすような連中がちらほらと見ている。


彼女の名は久保清子という。


1年上のクラスから落ちてきた落第生だった。


彼女は友だちができずに、遅刻・欠席を繰り返した。


3.

晴子は3年になったとき、清子が退学になったかどうか少し興味があった。


3年になって初めての数学の時間に50代の男性教諭、藤田先生が突然清子を叱った。


「久保だめだよ!金田先生、大変だったんだ」


「はい・・・」


清子は俯いて、か細い声で返事をした。


落第の基準に引っかかっても判定会議というものがある。


2年連続で落第の基準を満たしていた清子を担任の金田先生が必死で庇った。


気弱な金田先生の奮闘を見て、元担任の藤田先生が怒りをつのらせていたのである。


ボーリングに行くことになったとき、晴子はひとり寂しそうな清子を誘った。


「久保さん。これからボーリングに行くんだけど一緒に行く?」


清子は黙ってついてきた。


晴子はよくても130点どまり。


清子が投げるとストライク。


だが一回ならまぐれということもある。


だが11回連続ストライクを出したので、みんなが驚愕していた。


最後の一投は、ピンが一本揺れて止まった。


299点である。


「久保さん。どうしてそんなに上手なの?」


晴子は思わず聞いた。


「母がプロボーラーなの。今はレッスンプロだけど」


清子は照れくさそうに答えた。


それから、晴子はだんだん清子と過ごす時間が楽しみになった。


晴子も彼女に教えてもらい、少しずつ上達していった。


気づけば、晴子は清子とすっかり親友になっていた。


あんなに孤立していた清子が、今や誰もが認める存在になっていた。


清子は出席するようになり、成績面でも問題なく、晴子と同じ花籠大学文学部に進むことが決まった。


4.

花籠女子大は、私学最難関の大日大学との合同サークルが多い。


晴子は英語研究会で大日大学の男子学生と合同活動をした。


四年の六月、付属のクラス会が開かれた。


そこは古い建物の2階を改造したもので、襖で敷居などしていない。


金田先生の顔を見たとき、晴子は胸が少し熱くなった。


2年連続落第で退学になりかけた清子を守ってくれた人だ。


清子は以前より落ち着いていた。


白いブラウスに淡い水色のカーディガン。


姿勢も、言葉も、もう怯えていない。


5.

安藤春夫は私学最難関の大日大学に滑り、少しレベルの落ちる朝潮大学に入学した。


4年になったある日のこと。


彼はゼミ仲間の吉川英二と黒江馬場の2階で飲んでいた。


すると隣の空いたスペースに女子学生が集まってきた。


「花籠女子大か?」


「どうやらクラス会のようだぞ」


安藤はクラス会が終わったのを見定めると、女子学生に声をかけた。


「あのー。僕は朝潮大学の安藤と申します。これから2次会に行くなら、僕達も入れてくれませんか」


「わたしは彼がいるから行きません」


「私は行ってもいいですよ」


「でも場所を予約してないから、マクドしかないんですけど、

それでもいいですか?」


「一緒に行きましょう」


こうして臨時の合コンが始まった。


一人が斉田晴子と名乗り、もう一人は久保清子と名乗った。


安藤は花籠女子大に引け目を持っていた。


朝潮大学の方が格下なのである。


「やっぱり花籠女子大学の人は、僕らよりできるんでしょうね」と安藤は聞いた。


「私たち、付属をぎりぎりで卒業したんで、そうでもないんです。この久保さんは元々1年先輩なんですよ」


「1年先輩ということは落第したんですか?失礼ですが」


「そうです」


「1年浪人なんて普通ですが、落第は嫌なものでしょう」


「そうなんです。3年になるときも金田先生が頑張ってくれて。それにこの斉田さんがボーリングに誘ってくれなかったら、どうなったことやら」


「あなたたちはボーリングが好きなんですか」


「そうです」


「アベレージは」


「前は130点だったんですけど、今は160点です」


斉田と名乗る女子学生が答えた。


160点と聞いて安藤は驚いた。


「久保さんはパーフェクトを何度も出してるんですよ」


「それならプロテスト楽勝じゃないですか」


「そうですけど、あまり生活費にならないのが現状で」


久保と名乗る女子学生が答えた。


その夜は、10時になったので、互いの手帳に連絡先を書いてから別れた。


7.

安藤は花籠大学の久保清子と付き合い出した。


彼は一浪なので、清子と同い年である。


清子はプロテストに合格して、女子大生プロボーラーとして活躍していた。


安藤はゼミ活動を中心に馬力に馬力をかけ、総合商社源商事に内定した。


それは奇しくも清子は2試合連続パーフェクトを出して優勝したのと同じ日であった。


安藤は高級レストランに清子を誘った。


「大丈夫なの。こんな高いお店で」


「今日は特別さ」


「特別って」


「結婚してください」


清子はしばらく間を置き、だがはっきりした声で、

「ふつつかものですが、よろしくお願いします」と答えた。


安藤はボーイに頼んで、カメラで記念撮影をしてもらった。


その写真は二人の幸せを祈るかのように、二人の部屋のテーブルに飾られた。

































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