帰宅して 2
女性は、慎吾の真正面で、腕を組んで仁王立ち。
「ったく。何で私が、悪役みたいなことを言わないといけないのよ。」
ーどう見ても、悪役。ー
「とにかく、あなたに悪い話じゃない、、って、どこに行くのよ。」
何でもいいから、逃げるべきだ、と、判断した慎吾は、いきなり横を向いて歩き出していた。
「あのねぇ。無駄だ、って、言ってるでしょ。」
また、目の前に女性があらわれる。
慎吾は、すぐさま横に向きを変えて、歩き続ける。
「ちょっと、、、。」
今度は、声が離れないことから、後ろからついてきているようだった。
くっ。
思わず、慎吾は走り出すが、後ろで、ため息をつくような気配を感じると、今度は、横に女性があらわれていた。
さらに加速するために、力を入れる。
しかし。
腰に手を当て、動く様子もなく立っている女性が、離れていく様子が全くない。
「悪いけど、あなたの足元を、あなたの走る速さにあわせて動かしているから、動けないわよ。」
少しして、結局、慎吾は、息が上がって足を止めることになった。
「さてと。やっと、聞く気になったみたいね。」
にしし、と、笑う女性に、慎吾の背が凍りつく。
「安心して、悪い話じゃないわ。むしろ、飛び上がって喜ぶ話よ、聞きたいでしょ。」
「必要を感じないので、聞きたくありません。」
圧倒的な悪寒が走っているものの、女性からは、威圧などは発せられていないため、抵抗はできる。
「まぁ、まぁ。私はね、あなたを推薦しに来たの。」
「推薦?」
思いもよらない内容に、慎吾は反応してしまう。
慎吾の興味を引くのに成功した女性は、さらに胸を逸らした。
「そっ。何だと思う。」
息が上がって動けない慎吾は、それでも、警戒の眼差しを女性に向けた。
「私はね、あなたを、神の選抜会に出る、神の候補者として推薦しに来たの。」
「、、、、、、。」
ー悪魔?ー
よくある、悪魔の誘いにしか聞こえない。
「どぅ?嬉しいでしょ。神になれるかもしれないのよ?どぅ?」
女性は、完璧に、悪魔の微笑を浮かべて覗き込んでくる。
「、、、、、、。」
慎吾は、無言で睨み返すも、女性は、それを無視。
腕を組むと、尊大にふんぞり返った。
「ちなみに私は、この後、その準備に追われて大忙しになるのよ。あなたに早く寝てほしかった理由、わかった?と、言うわけで、、、。」
「推薦は断りますので、この後の準備もないですよ。」
何とか、意識を整え、一息に返す。
「、、、。あなたねぇ。神になれるかもしれないのよ。第一、こんな美人の女性に推薦されて、うれしくないの?」
あきれたような態度をしているも、意味の違うニヤニヤを漂わせている女性。
どう見ても。
「生憎と、悪魔の誘いにのるほど馬鹿ではありませんので。」
「は?」
余程、心外な答えだったのか、女性は、口を開けて、ポカンと、間抜け顔に。
「じゃっ。」
慎吾は、この隙に、と、もう一度、背を向けた。
「ちょっと、待ちなさい、私のどこが悪魔よ。あぁ、もぅ。」
目の前に、女性の影が浮かび、
「これなら、文句ないでしょ。」
その背に、純白の羽、頭の上に、金色に輝く輪。
背に、神々しい輝きを背負って、女性が、目の前に立っていた。
「てっ、天使?」
「そうよ。」
慎吾が、何も言えずに見つめていると、女性、天使が、ゆっくりと口を開いた。
「どぅ。私のこと、信じる気になったでしょ。何しろ、美人な上に天使様。ね!」
見た目と、雰囲気が変わったものの、女性の口調は変わっていない。
すっ、と、慎吾は、冷静さを取り戻した。
「天使のふりをした悪魔か。」
頭が冷えれば、多少、神々しさが出て、羽と、輪っかが増えただけ。
慎吾は、改めて、警戒の目を、女性、天使に向けた。
「あなたねぇ。」
ため息をついているも、どこか嬉しそう。
「まっ、いいわ。めんどくさくなっちゃった。とにかく、神の選抜会に出る、神の候補者として、あなたを推薦するから、いいわね。」
「お断りします。」
ー何でだ?ー
断っているのに、女性、天使の嬉しそうな雰囲気が増えた。
「ふふっ。どうして?神になれるかもしれないのよ。具体的に言えば、神の力らが手に入るかもしれないのよ。」
「悪魔と、取引するつもりはありませんので。」
女性、天使は、何とか抑えているものの、そわそわと、嬉しそう。
ー何で、断るごとに嬉しく?ー
「まだ言ってるの。神でも悪魔でもいいじゃない、神の力が手に入るのよ。」
「身の程を知ってますので。」
ニヤリ。
既に、嬉しさが隠しきれないのか、笑っている。
「身の程って?」
ーわからんが、悪魔に負けるか!ー
「そんな強力な力を使って失敗したら、責任とれません。なので、そんな力はいりません。」
途端に、女性、天使は、全身で喜んだ。
「よーし!流石はお仲間ね。決定!!」
「どこ聞いてんだ!!!」
「じゃあ、私は忙しくなるから。またね。慎吾くん。」
読んでいただき、ありがとうございます。
よければ評価をお願いします。




