たぶん、戻ったスローライフ
早朝の手伝いを終えた慎吾が、裏口の扉を開けテーブルの方を見る。
眠そうに、静奈が食事をしていた。
「眠そうだけど、大丈夫?」
「はい。大丈夫です。」
「そう。ならいいけど、夜更かしは美容によくないからね。」
「はーーい。」
着替えた慎吾は、テーブルにつき、テレビをつけ、ニュースを選択して、朝食をかきこみだす。
「珍しいわね。どうしたの?」
祖母が、テレビをつけた慎吾に、首をかしげている。
「ん、と、天気予報でも見ようと。」
「あら。雨でも降りそうなの?」
窓の外は、青い空、晴天だ。
「えーっと。いつ降るかなって。」
「そうね。逆に、ちょっと心配よね。」
祖母と話しながら、斜めに聞くニュースは、普段と変わらないようで、違う内容が流れていたが、異常なものはない。
なんとなく、息を吐く。
「ごちそうさまです。」
横にいた静奈が、鞄を取りに行く。
慎吾も、急いで食べ終わり、鞄を手にした。
「いってらっしゃい。」
「「いってきます。」」
玄関を出る。
当たり前のように、静奈と並んで、細い道を歩き出す。
静かで、雲一つない青い空の下に、ポツンと、通りのわきに立っているバス停。
その周囲には、誰も待つ者はなく、寂しさを強調していた。
「結局、どうなったんだ?」
玄関の扉を閉める、と、同時に、機嫌の悪い顔になった静奈が、その目線をこちらに向けた。
「全部なし。に、なったわ。」
言って、すぐにそっぽを向く。
「そりゃぁ、助かったなぁ。」
のんびり答えると、さらに機嫌が悪くなって、静奈がこちらを見る。
「あのねぇ。慎吾はそれでいいかもしれないけど、私は、朝まで説教されたのよ!ムカつくわ。」
ー当たり前だろ。ー
流石に、言えない。
諦め気分で、バス停に目を移す。
「ちょっと。何、のんびりしてるのよ。慎吾だって不利になるのよ!」
ちょっと、驚く。
「俺が?何で。」
「あのねぇ。」
静奈が、腹に据えかねた声で、唸った。
「慎吾。あなたは、私が神の候補として推薦してるのよ、こんなくだらないことで減点されるなんて、腹立たくないの!」
「おぉぉ。なんか、そんな話だったなぁ。」
「あのねぇ。」
「でも俺、神になる気ないから、構わん。」
「それは、、、。」
何を言うべきか迷う静奈を、慎吾は、真っ直ぐ見つめた。
「静奈。」
「何よ。」
「静奈こそ、ちょっと、考えたほうがいいぞ。」
「はぁーー!?なにを言って!!」
「いいから、聞いてくれ。」
叫びだそうとした静奈を、手を出して、何とか大人しくさせ、
「静奈は、サボりたいんだろ。」
「そうよ。で?」
かなりの不満顔をしているが、聞く気にはなっているらしい。
「その、サボりの為には、今回の失態は、チャンスだ。」
ニヤッと言ってやる。
と!!
静奈は、目と口を丸くして、
「大丈夫?頭、ぶつけたんじゃない?」
いきなり、こちらの頭を両手で挟んで引き寄せた。
当然、力で敵うわけがなく、静奈のふくらみが目の前。
「待て待て!」
「頭に怪我はないようね。たんこぶもないし、見た目は正常。念のために治癒をかけて。」
柔らかな暖かさが流れ込んだと感じると、次に、頭を引き上げられ、鼻がぶつかりそうなところに、静奈の顔。
「安心して、慎吾。私が必ず治してあげるからね。選抜会の奴ら、間違いなく、慎吾になんかしたわね。許さないんだから。」
「待て待て待て!」
こちらの頭を放すなり、消えようとした静奈の手を握ることができたのは、奇跡だった。
驚きで移転を止めた静奈が、哀れむ目を向ける。
「慎吾、あなたは、選抜会の奴らのせいで、正常な判断ができないのよ。私が行って、交渉してくるから、待っているのは慎吾。いい?」
「話を聞けーーーー!!!!!!」
思いっきり以上で、怒鳴ってみた。
「、、、。」
止まる静奈。
ーやっぱり、静奈は勢いで押されるのに弱いな。ー
「あのね。慎吾、あなたは、、、。」
「いいから、話を聞け。」
勢いを止めれた静奈は、これでもか、と、口を突き出しながらも黙った。
一息入れ。
もう一度、ニヤリと笑ってやる。
「静奈は、この選抜会が終わったら、どうするんだ?」
いろいろ混じった、何とも言えない表情をしている静奈だったが、口を閉ざす気はないようで、答えてくれた。
「慎吾が神になれば、、、。」
「ならない。」
「じゃぁ。天使業務にもどると思うわ。」
「サボりたくなった天使業務な。」
「ええ。」
「じゃぁ。この選抜会の期間中、失態しまくったら、選抜会が終わったあと、どうなると思う?」
「それは、、、。天使業務が減ると思うわ。」
「つまり?」
慎吾の問いに、静奈の目の色が変わっていく。
「サボりたい放題。」
静奈の目に表れていた哀れみが消えて、代わりに驚嘆の輝きが灯った。
「さっ、、、。流石は、お仲間、、、。」
一歩、二歩、と、微妙に離れて、慎吾を仰ぎ見る静奈。
「いえ、違うわ。流石は私が選んだ、サボりの神、格が違うわ。」
「おいっ。何だ。その、サボりの神、って。」
静奈は、既に聞いていない。
ニヤリ、と、悪魔笑みを浮かべ。
「そうよ。失態、と、言うか、失敗よね。いいじゃない、やってやるわ。そうすれば、わけのわからない天使業務を押し付けてくる神どもに、おべっかやらで気をつかう必要もなくなり。」
カッ、と、静奈の目が見開き、
「私は、解放されるのよーーーーーー!!」
叫んだ。
その叫びは、誰もいない、のんびり静かな田舎の景色に溶けていった。
慎吾のスローライフは、、、、、、、、。
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