何やってんだ 7
晩飯の為にテーブルに着いた慎吾が、急いでテレビをつけ、ニュースを選んだ。
画面の向こうにいるニュースキャスターは、名前は知らないが、よく見る誰かで、慣れた様子で、ニュースを読んでいた。
読まれていくニュースを聞きながら、食事を続ける。
そして、食事が終わりそうになった時。
「速報です。今日の昼より、何度かお伝えしている、短距離走高校女子の有力候補が次々と見つかりだした件で、新たに、十四人の報告が確認されました。これにより、今日だけで見つかった有力候補は、百八十二名となり、二百に迫る人数となってます。見つかった、有力候補の声をお届けします。、、、、、、。」
慎吾は、首が痛くなりそうな速度で、静奈に顔を向けた。
テレビに顔を向けたまま、目だけ慎吾を見ると、ニヤリと、静奈が笑う。
ーこいつ!ー
「凄いことになってるな。」
祖父の顔が、珍しく驚いている。
「そんなことって、あるのねー。」
祖母も、目を丸くしている。
そのまま、話を続けている祖父母を横に、慎吾は、急いで食事を終わらせる。
「静奈。早く食べろ。」
「何よ。私は勝手に食べたいの。」
「いいから!」
「もぅ。」
多少、頬を膨らませながらも、少し、食べるのが早くなった静奈が食べ終わるのを待ち、終わると同時に席を立った。
「行くぞ。」
「はいはい。」
静奈も立ち上がる。
「「ごちそうさま。」」
そろって言うと、二階に向かった。
静奈を自分の部屋に引っ張ると、扉を閉めさせた。
「あれ、間違いなく静奈だろ。」
答える前に、静奈が、軽く手を振った。
何かが、静奈を中心に放たれる。
遮音の結界だろう。
確認するように、一旦、目を閉じた静奈は、目を見開くと同時に、肩を竦めた。
「当たり前でしょう。他に誰がするのよ。」
「そーだけど、何で、あんなことしたんだよ!」
「何で、って。」
こちらが怒っているのは無視して、静奈は、ニヤリ。
「知りたい?」
「だから、聞いてるんだ!」
余裕の笑みとともに、静奈は腕を組み、胸を張った。
「そうねぇ。仕方がないから、教えてあげる。あのね。慎吾が言ったでしょう。タイムを出したのが、私しかいない、って。」
人差し指を立てる静奈。
その指を振るのに合わせて、
「だ、か、ら。」
間を置き。
「タイムを出す女子高生が増えるように、この国で頑張ってる、短距離走女子高生さんに、ちょっと身体強化をプレゼントしたのでしたーー!」
「木を隠すために、森を作ってんじゃねーー!やり過ぎだーーー!」
息が切れたところで静奈を見ると、思いっ切り、心外、と、書かれた顔をしていた。
ため息を一つする静奈。
「あのねぇ。」
「あのねぇ、じゃねぇ。」
「他になんて言うのよ。おかげで、こっちに陸上競技連盟だったかしら?が、来ることはなくなるし、短距離走女子高生さんは、タイムが出て、うれしいし、この国は、速い子が増えてうれしいし。文句がないじゃない。」
「どう見たって、不自然で、おかしいだろーが!」
「そうだけど、それが?」
「、、、。はぁ?」
顎が外れるかと思うほど、口が空いてしまった慎吾。
静奈は、呆れ顔で、
「もう一度、言うけど。こっちに陸上競技連盟が来ることはなくなるし、短距離走女子高生さんは、タイムが出て、うれしいし、この国は、速い子が増えてうれしいで。文句がないじゃない。ちょっとばかしの不自然なんて、どうでもいいじゃない。」
「お前、、、。」
「第一、次郎さんや恵理子さんだって、そこまで気にしてなかったでしょう。」
「それは、、、。」
二人の様子を思い出して、黙ってしまう慎吾。
「それに、私や慎吾も、勧誘や取材に巻き込まれなくなって、のんびりできるのよ。多少の不自然なんて、無視よ。」
「多少じゃないし、明日から、国が、大騒ぎになるぞ。」
「そんなもの、私のおサボり生活を邪魔しようとしたんだから、当然よ。第一、歓喜の大騒ぎよ、ほっとけばいいの。」
ー根本的な考え方が、違い過ぎる、、、。ー
「まぁ、でも、芸能事務所と、配信者達が残ってるから、それは、何とかしないと駄目だけどね。」
こめかみに指を当てる静奈に、慎吾も、肩を竦めた。
「あいつらか。ある意味、あいつらの方が厄介かもな。」
「どうして?」
「あいつら、多分、出回ってる動画を見て来てるんだぜ。取材できれば、受けるだろう、とか、スカウトできれば、スターになって、もうかるだろう、とか。動画を何とかしないと駄目だから、大変だぞ。」
「動画?あぁ。そんなのがあったわね。それなら簡単ね。ちょっと待って。」
静奈は、自分のスマホを出すと、画面に指をあてて止まった。
指を動かす様子すらなく、止まっている。
「何やってんだ?使い方がわからないのか?」
聞くと、静奈は、思いっ切り、馬鹿にした顔になった。
「あのねぇ。私、天使よ、この程度の物なんて、触っていれば使えるの。」
「あっ、あぁ、そうか、そりぁ、凄いな。」
ふん、と、鼻息で答えると、静奈は、また、画面に目を向ける。
「とっ、これがいいわね。見て。」
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