何やってんだ 6
小悪魔な笑みを浮かべて、手を出している静奈が、本気で言っているのか、からかっているのか、は、わからない。
だが。
ー神威の勇者。ー
五郎と宗久が言っていた。
慎吾は、静奈の前に出る。
「あら。楽しみね。」
こちらの本気がわかったのか、静奈のからかい気分が消えている。
慎吾は。
膝が汚れるのを無視して、片膝を地面につく。
そして。
騎士の礼を真似て、恭しく、静奈の手をとった。
「えーっと、そこまでしなくても、、、。とっ。ご、合格ね。じゃあ。」
景色が変わる。
「その、いいよ。」
「わかった。」
静奈の声に、立ち上がって、膝を掃う。
「ごめん。そこまでするとは、思わなかったから、、、。」
顔を上げると、困ったように、静奈が頬をかいている。
「あ、いゃ。気にしなくていいぞ。こっちも、どうしていいか、わからなかったからさ。」
「うん。、、、。でも、その、ちょっと、嬉しかった。」
横を向いている静奈の頬が、赤くなっているように見えた。
「、、、。そっ、そうか、、、。」
こちらも、頭に血が上っていく。
二人は、黙ってしまった。
時間が流れて。
「ん。」
「行くか。」
「うん。」
家に向かって、二人は歩き出した。
畑を出て、細い通りを行く。
「待った。」
家が近くなったところで、慎吾が静奈を止めた。
「家の前に、車が止まってる。」
自分達がいるところから、家を挟んで、反対側になる通りに、知らない車のテールが、家の影から見えていた。
「家がバレた、ってこと?」
「多分ね。一応、慎重に入ろう。」
「そうね。」
慎吾が前に出て、ゆっくり、裏口の扉を開ける。
中から、話し声が聞こえてきた。
玄関口で、話をしているようだ。
頷きあって、玄関へ。
「とにかく、私が決めれることではないですから、今回は、お引き取りください。」
「そこをなんとか。彼女は、十年、いえ、百年に一人の逸材なんです。間違いなく成功します。なので、、、。」
「婆ちゃん。誰?」
慎吾の一言に、祖母と、そして、サラリーマンとは思えない、少し光沢のあるスーツをしっかりと着込んだ、中年の男が振り向く。
「あっ。君が神威静奈さんだね。私は、芸能事務所をやっている、、、。」
中年の男は、慎吾の後ろに静奈を見つけるなり、勝手に玄関を上がって、祖母の横を抜け、静奈の前にいこうとして、慎吾の前で止まった。
「君は?」
邪魔だ、と、言う、中年の男の目線。
慎吾は、下っ腹に力を入れると、中年の男を睨み返し、
「どうでもいいでしょう。それより、僕の言葉では説得力はないかもしれませんが、静奈は、芸能界には興味がありませんので。」
中年の男は、多少、下がるが。
「君ねぇ。彼女、神威さんは、、、。」
慎吾は、中年の男の話を聞かずに、ポケットからスマホを出した。
「悪いですが、あなたは不法侵入をしてますよ。今、出ていかなければ、警察に電話します。捕まったら、あなたの芸能事務所、潰れますよ。いいですか?」
中年の男は、一瞬、殺気立つが、舌打ちをすると、引き返して、玄関を出ていく。
車の扉が閉まる音。
エンジンがスタートして、その音が遠くなっいいき、聞こえなくなる。
慎吾、静奈、祖母の三人は、息を吐いた。
「助かったわ。静奈ちゃん、大丈夫?」
「はい。大丈夫です。」
祖母に、後ろで肩を落としていた静奈が答え、慎吾が。
「婆ちゃん。何で、開けちゃったの?」
「近所の人かと思ったの。ノックだけだったから、鍵もかけてなかったしね。」
「次からは、気を付けた方がいいかもね。」
「そのようね。気を付けるわ。それにしても、説得力?凄かったわね、私も捕まっちゃうかと思ったわ。」
ちょっとお道化た表情で、肩を竦める祖母。
「そんな心配はないから。」
こちらは、呆れ顔。
「そうね。畑に行くでしょう。お爺さん、いつものところにいるって。」
「わかった。静奈。」
「うん。」
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