何やってんだ 2
裏口から家に入ると、何もなかったらしく、祖母が、いつものように台所に立っていた。
「ただいま。」
「帰りました。」
「お帰り。早いわね。それに、どうして裏から?」
不思議そうにしている祖母に、なんでもない、と、軽く肩を窄めて
「一本早いバスに乗れてさ、時間ができたから、少し遠回りしてみたんだ。」
「ふうん。畑、行くでしょう。お爺さん、いつものところに行ってるわ。」
「わかった。静奈は?」
「行くわ。」
「ん。」
着替えた二人は、予想通りの畑で、作業を手伝った。
晩飯中、いつものように、ニュースが流れている。
祖母が、静奈に向かって、顔を上げた。
「そう言えば、学校から電話があって、陸上競技連盟からの話、よく考えて欲しい、って、何かあったの?」
「それなんですけど、、、。」
「俺が説明するよ。」
話そうとした静奈を遮って、慎吾は、割って入った。
ー静奈に説明させたら、何を言うかわからないからな。ー
横で、静奈は、諦めたように肩を竦めている。
「慎吾が?どう言うこと?」
「今日、静奈が、学校で校長室に呼ばれてさ、嫌な予感がしたから、一緒について行ったんだよ。」
慎吾は、校長室でのことを、簡単に話した。
「つまり、指導するから来ないか、って言う話だったわけね。」
「生活とかも言ってたから、全寮制の学校で、面倒をみる、ってことだと思うけどな。」
「そぅ。」
祖母の目線が、慎吾から静奈に移る。
「静奈ちゃんは?」
「えっと。私の方は、全く。」
「静奈。」
珍しく、祖父だ。
「まず、こちらのことは考えなくていい。静奈のことだからな。それから、急いで答えを出さない方がいいと思う、もしかしたら、もの凄いチャンスかもしれないからな。」
真っ直ぐ見て話す祖父に、ちょこんと、静奈が、頭を下げた。
「ありがとうございます。そうですね。もう一度、よく考えてみます。」
頷き、食事を続ける祖父。
祖母は、
「らしいから、よく考えてね。」
「はい。」
「先日、現れた、短距離走期待の女生徒が、素晴らしく可憐な少女だと、インターネットで話題になっていて、その姿が、動画などで共有され、当局が、象徴権の侵害に当たるとして、独自に調査を始めた模様です。」
「これ。静奈のことじゃないか!」
偶々聞こえた慎吾が、目を丸くした。
「えっ。私?」
全員が、ニュースに注目する。
「共有されている動画は、AIを使ってつくられた架空ものが大量にあると見られるだけでなく、本人の許可をとった、と、言う、悪質なものも含まれ、時間とともに、悪質なものが増えている状況です。」
「かなり酷くなってるみたいね。何でかしら?」
食事が終わり、部屋に行くために二階に上がったところだった。
慎吾は、後ろで、他人事のように言っている静奈の方へ振り向いた。
「そりゃぁ。静奈しかいないからだろ。」
驚いた様子になる静奈。
「私だけ?」
慎吾は、盛大にため息をついた。
「あのなぁ。陸上競技連盟の奴らが、生活も含めて面倒見ます、なんて奴、何人いると思う?しかも、間違いなく、世界一になれる奴だ。一人、静奈しかいない。当たり前だろ。」
不満顔になる静奈。
ーそんな顔されてもなぁ。ー
端正な顔を、少し膨らませ、可愛い角度で、口を尖らせている。
確かに、素晴らしく可憐。
思わず見惚れていると。
「あっ。」
気のせいか、瞬間、悪魔の微笑みを経て、視線がこちらに固定された。
「私、疲れたから、もう休むね。どいて。」
狭い廊下で、いきなり慎吾を押し退けようとする。
「おっ、おい。」
急いで背中を壁に押し付けると、その前を、体を横にして抜けていく静奈。
その時、少しだけ、柔らかい香りがした。
ー、、、。ー
「ちょっと。」
止まっていると、自分の部屋の扉を開けたところで、静奈がこちらを見ていた。
「開けない。聞かない。いいわね。」
バタン。
「開けねーし。そもそも、結界で聞こえねーだろ。」
慎吾も、自分の部屋の扉を開けた。
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