行きは、ギリギリ、帰りは、、、? 2
押されながら、苦笑する静奈。
「あっ、と、ありがとうございます。」
頷き、少し、体を伸ばすようにして、初老の男は両手を上げた。
「だが、、、。正直、今の状況では、できないとは言えないが、難しいと思う。」
「はぁ。」
独白。
初老の男は、静奈の反応には目もくれず、話を続けた。
「そう。はっきり言ってしまえば、教育環境だ。この学校が悪いと言っているわけではない。しかし、この学校は、そのための専門の学校ではない。神威君、君が、全くの専門の指導を受けることなく、100メートル高校女子のトップタイムに近いタイムを出したのは素晴らしいが、それ以上には、間違いなく、専門の指導が必要だ。わかるかね。」
区切って、静奈を見る。
「あっ、はぁ。」
苦笑を固定して押されている静奈が、適当に頷くと、初老の男は、続けた。
「そう、専門の指導だ。私達は、それを用意できる。神威君、君とためだけにね。」
また区切って静奈を見るも、初老の男は、答えを待たずに、両手を広げる。
「専門の指導。それだけじゃない。神威君、我々は、君の生活の全てをサポートできる。君が最高のパフォーマンス発揮でき、最高のタイムを叩き出せる全てをサポートできる。どうかな?」
「えっと、私としては、、、。」
手を前に出して、静奈の答えを区切る初老の男。
「待ってくれ。確かに不安はわかる。しかし、そこは信用してほしい。我々が、神威君、君がタイムを出すことを望んでいることを。いや、我々だけじゃない、この国が望んでいることを。我々が来たということは、そう言う意味でもある。どうかな?」
「その、、、。」
「ごめんなさい。」
答えにくそうにする静奈に、初老の男が口を開くより先に、慎吾が、声を出した。
校長室にいる全員の視線が、慎吾に集まった。
ーおっ。落ち着け!ー
慎吾は、自分に言い聞かせる。
「君は、、、。」
邪魔をするな、目を丸くしていた初老の男の目が切り替わり、そう言った。
が。
耐えた。
体の震えが、声にのらないように注意しながら、慎吾は話し出した。
「ごめんなさい。その、俺、とっ、僕の言葉では説得力がないかもしれませんが、聞いてもらえませんか?」
同時に、足で、静奈を小突く。
と。
静奈の足で、小突かれる。
落ち着いた。
ゆっくりと、口を開く。
「まず。彼女に、考える時間をください。」
注目を集めながら、慎吾は話を続けた。
「どのくらい彼女の話を聞いているかわかりませんが、彼女は、この学校、えーっと、僕の家ですね。に、居候として来て、まだ、一週間もたっていません。彼女は、僕の遠縁になるんですが、その彼女が、僕の家に来た理由は知りませんが、簡単な理由でないことはわかります。そのーー。何が言いたいかというとでね。簡単な理由ではない理由で来た彼女が落ち着くまで、待ってほしい、と、言うことです。駄目でしょうか。陸上競技連盟さん達の言いたいことはわかりますが、今、ここで押しても、彼女の不安が増えるだけだと思うんです。ぜひ、彼女に落ち着く時間をください。お願いします。」
押し黙った校長室で、慎吾は、三人の陸上競技連盟さん達に向かって、頭を下げた。
校長室を出て、その扉を閉めると、三人は、肩を落とした。
「それにしても藤原、凄い説得力だったな、驚いたぞ。まさか、簡単にあの三人を黙らせるとはな。」
担任の佐原が感想を言ってくる。
「あはは。その、偶然だと思いますよ。」
「とてもじゃないが、そうは思えん、が、まぁ、いいだろ。神威も、よく考えといてくれ。」
「はい。そうします。」
「ん。じゃあ、急いでくれ、休み時間が終わる。まぁ、知っているから遅れても大丈夫だが、授業を聞かないのはよくないからな。」
「はい。」
「わかりました。」
担任の佐原は職員室に、慎吾と静奈は、教室に向かった。
「えーっと。その。ありがと。」
疲れれて、時間がないのを知りつつ、歩くだけで教室に向かっていると、静奈の声。
「いや、どちらにしろ、静奈の補助がなければ失敗してるからな。」
静奈は、少し後ろを歩いていたため、止まって、横に来るのを待った。
「そうかもしれないけど、一応。朝の時も、お礼は言ってない気がするし。」
礼を言うのに慣れてないのか、うつむき加減の静奈の耳が、赤くなっているのがわかる。
「気にするな。」
ーやらないと、こっちの被害が大きくなりそうだし。ー
本音は言わずに、肩を竦めて見せる。
「と、とにかく礼は言ったからね。」
「あぁ。」
横で、むこうを向いたままの静奈に答えると、授業開始のチャイムがなった。
「と。急ぐか!」
「ん!」
小走りで、教室に向かった。
読んでいただき、ありがとうございます。
よければ評価をお願いします。




