勇者?
まばらにいる他の生徒の注目を浴びながら、裏門を通り抜け、校舎に向かう。
慎吾は、校舎が目の前に来たところで、壁に片手をついて項垂れた。
「はぁ、、、。滅茶苦茶緊張したぞ。」
横で、珍しく、静奈も安どのため息をついている。
「何とかなったわね。」
「あぁ。」
揃って裏門を見る。
流石に追ってくることはないが、まだ、門のところに立っている。
なんとなく、誰も帰ってないように見えた。
ーまさか。ー
嫌な予感に、顔が歪むのがわかった。
「帰りまで待つつもりか。」
静奈が、肩を落とす。
「ありえそうね。ほんと、面倒ね。」
「全くだ。とにかく、今は教室に行こうぜ。まだ、十分に間に合う。」
「そうね。」
教室に入ると、いつものように視線が集まるが、それにのる色が違った。
「静奈!見てたよ、凄かったね!」
「えっ?何を?凄いって?」
「集団が割れるとこ!」
「えっ。あれ、見てたの?」
「そっ。」
静奈が、真ん中の集団に向かい、慎吾は、いつもの二人に向かった。
「はよ。」
「あぁ。」
「オッス。」
「おぅ。」
適当に、二人を眺める。
「もしかして、お前らも見てたのか?」
「当たり前だ。あれだけ騒いだんだぞ。」
「多分、学校中の奴らが見てるぞ。」
「うへぇ。」
何だか、膝の力が抜けて、椅子に座り込んでしまう。
「にしても。」
机の上で、頭を抱えたところに、五郎の声が聞こえた。
「どうやったんだ?」
「はぁ?」
続く言葉に意味がわからない。
宗久が続ける。
「集団を割った方法だ。俺らまで、道を開けたくなったんだぜ。」
ーそこまで影響があったのか。ー
確かに、ほかの生徒も壁際によってた気がする。
「どうやった、も、何も。普通に、道を開けてくれ、って、言っただけだぞ。」
「おいおい。どんな説得力だよ。」
「マジかよ。それであれか。」
驚くを通り越して、呆れた顔の二人。
「何でもいいが。今回は偶然だ、忘れてくれ。」
ー絶対、忘れろ!ー
と、顔を上げて両手を上げる。
と。
五郎と宗久は、慎吾を挟んで立ち、彼の肩に手を置いた。
「いいぜ。俺は忘れてやる。」
「俺もだ。けどな。」
「「他の奴らはどうだろうな。」」
「それは、、、。」
ーどうしろ、ってんだ!ー
再び、頭を抱えようとして、拳に息を吐く二人が見えた。
「何やってんだ?」
「とりあえず、十発は殴ろうと思って。」
「もちろん、一人ずつ十発な。」
「ばっ。馬鹿。なんでそうなるんだ。」
二人は、冗談とは思えない迫力で、じりじりと迫りくる。
急いで席を立って、二人から距離をとった。
「なんで?当たり前だ。勇者さん。」
丁寧な言い方でも、目に炎が見える五郎。
「そう。神威ちゃんを助けた、勇気ある者、勇者。」
宗久も。同じく、目に炎。
二人は、ゆっくり拳を上げていく。
「おい。尚更わからねぇぞ。勇者の俺が、何で殴られないといかんのだ!」
「決まってる」
宗久が、冷たく答えた。
「決まってる?」
わからない。
五郎と宗久は、目を合わせ。
「「おいしいところ、持っていきやがって!!」」
「お前らやってみろ!!」
「いや。流石に、あれは無理だ。」
「あれじゃなくても無理だけどな。」
勢いが急激に小さくなり、上げる途中の拳を下げる二人。
「言っておくが、腹が痛くなるぐらい緊張したんだぞ。」
勢いよく、二人を睨んでやるも、当然、と、頷いてしまう。
「そりゃぁ、そうだろうな。」
「正直、よくやった。と、思ってる。」
「だったらなんで、殴ろうとするんだ。」
「ん?言っただろ、おいしいところ持ってかれて、なんか悔しいから。」
「俺、もう十発増やしてもいいような気がする。」
「お。いいな、俺もそんな気がする。」
「絶対、許さん!!」
「ちっ。つまらん。」
「全く。一瞬でも、神威ちゃんを助けた勇者になったんだぞ、そのくらい耐えろ。」
「賛成だ。」
「耐えるか!嫌だし、許さんからな!」
始業のチャイムがなった。
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