どうやって、知ったんだ?
よくあるように、千切れる前より元気になった感じのする苗木に、静奈がよしよししている。
ーまっ、元気になったなら、大丈夫だろ。ー
とりあえず、そっちは放置して、ビニール紐を手に取った。
「なぁ。これ、強化も何にもしないで、普通に縛れるか?」
こちらを見た、静奈の目が、少し、細くなっている。
「当たり前でしょ。貸して。」
静奈は、あっさりと、紐を千切ることなく、しっかりと縛って見せた。
「普通に出来るじゃないか。」
「当然よ、そのために義体を馴染ませてるんだから。」
「じゃあ、何で、魔法で強化なんかしたんだ?」
「慎吾が、しっかり、って、いったからでしょう!」
「おぉぉ。」
ーわかった。ー
「基準が違うんだな、しっかり、とかって言うと、魔法を使って、て、言う意味になるんだ。」
「ふん。」
同じように気が付いたのか、静奈は、バツが悪そうにしている。
「気にするな。もう一回やるから、普通に真似してくれ。」
言いながら、静奈が一度千切った苗木を縛り、次の苗木の前に立つ。
何度もやってきた手順を、ゆっくりと、やって見せる。
「どうだ?大丈夫か?」
「そうね。やってみるわ。」
頷いた静奈は、思ったより素早く支柱を手にして戻ってくると、その手を、勢いよく振り上げた。
「あーーっ。待て待て。」
思わず声を上げて、静奈を止めた。
静奈は、腕を降ろして、不思議そうにこちらを見る。
「なによ?」
「いやいや。えーっと。急いでやろうとするな。そうだな。静奈なら、思いっ切りゆっくりやるつもりでやってくれ。その方がいいと思うぞ。」
「ん?」
止まって、考えるように顎に手を当てた静奈は、
「そう言うことね。わかったわ。」
ちょっと、ゆっくりと動き出した。
今度は、失敗なくやりきる。
余程、嬉しいらしく、ご満悦の笑顔だ。
ーそこまで喜ぶほど難しいとは思わないけど、、、。まぁ、基準の違いかね。ー
「上手くできたな。」
「えへへ。ねぇ、これ、実がなるんでしょ。いつなるの?」
「こいつは、苗木だからな、すぐにはならない。焦らず待ってくれ。」
「そっか。美味しくなってね。」
機嫌よく、苗木を撫でる静奈に予感がする。
「おぃ。何にもするなよ。」
「はいはい。何にもしてないわ。」
「頼むぞ。その調子で、ゆっくりと、そっちをやってくれ。俺は、この列をやるから。」
「了解。」
元気に育ってねー、と、言いながら作業している静奈に、不安を覚えるも、黙って、祖父が来るまで作業を続けた。
日が暮れて暗くなるころに、三人は、家に着いた。
待っていた祖母と、四人で、晩飯を始める。
なんとなくつけているテレビから、ニュースが流れていた。
「畑の方はどうなの?」
祖母の恵理子に、祖父の次郎が頷く。
「そうだな。新しく広げた分が、思ったより広くて、ちょっと、かかってるな。」
「大丈夫?何なら、私も手伝うけど。」
祖母が、心配そうな顔をすると、
「大丈夫だ。一応、終わると見ている。が、もしもの時は、頼みたいな。」
少し、祖母の方へ顔を向けた。
「わかったわ。その時は任せて。」
「あぁ。頼んだ。」
「ん。」
と、話している祖父母の前で、慎吾は、小声で、静奈に声をかけていた。
「本当に、何にもしてないな。」
静奈も、小声で。
「大丈夫だってば。何にも魔法は使ってないわ。」
「でも、何か言ってただろ。」
「あのくらいなら、そんなに影響はないわよ。」
「ある。って、言ってるじゃねーか。」
「そっ。それは、、、。多分、大丈夫よ。」
「それなら、いいけど、、、。」
話をしている間も、ニュースは読み上げられ、四人は、なんとなく聞き流していた。
が。
「次のニュースになります。某県の某高校で、陸上、短距離女子の期待の新人が現れました。」
四人の手が止まった。
「あら、これ、慎吾と、静奈ちゃんがいってる高校じゃない、凄い子が見つかったのね。」
祖母が、驚いて、口に手を当てている傍らで、慎吾と静奈は、固まっていた。
「公式の記録として測定されたタイムではありませんが、複数回の測定において、つねに、100メートル高校女子のトップタイムに近いタイムを出していたと伝えられており、かなりの期待が持てると思われます。」
ー何で、バレたんだ?ー
静奈を見ると、肩を竦めている。
彼女ではないらしい。
「このことから、陸上競技連盟では、早急に、この女生徒と連絡を取って、話をしたいと発表しています。」
「二人は、このことを知ってるのか?」
祖父の声に、慎吾は、こめかみに指を当てながら、チラ見してくる静奈に頷く。
「あっ。そのー。ごめんなさい。これ、私なんです。」
二人の目が、これでもか、と、丸くなった。
「あらあら。本当に?」
「はい。その、まさか、こんな騒ぎになるとは思わなかったので、、、。」
「凄いな。」
「偶々。偶然に、出たタイムなんですよ。」
「ごめん。静奈は、全く、その気はないから、俺が、黙ってよう、って。」
三人から、注目を浴びることになった。
「騒ぎになるとは思ってないだろうし、本人の気がないのを話す必要はないが、、、。」
「ちょっと、気がないのは勿体ないわね。」
二人は、それ以上、追及することはなく、四人は、のんびり食事を続けた。
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