体育の授業 2
慎吾、五郎、宗久は、適当に前後しながら、かたまって、学校の運動場の隅を、最後尾で走っていた。
先頭は、運動の得意な奴らがかたまり、かなり先を走っている。
「先頭、速えーな。」
「絶対無理。」
「まっ、とりあえず、止まらなければ、歩いてもいいらしいから、のんびりいこうぜ。」
「いきなり歩いたら不味いかな。」
「それは駄目だな。」
「走れるだけは、走ろうぜ。」
「「そうだな。」」
三人は、のんびりと喋りながら、運動場の中で、走る準備をしている女子たちを見ていた。
「神威ちゃん、まだ走らないのかな。」
「準備運動、長いな。」
「お前ら、ちゃんと前見ろよ、ぶつかるぞ。」
運動場の隅に寄せられている鉄棒を避けながら、少し後ろになった二人を見ると、五郎が、額に手を当てた。
「よく見たら、神威ちゃん、男子のジャージ着てるな。」
聞いた宗久も、額に手を当てる。
「あっ。本当だ。」
そして、二人の目が、こちらを向く。
「あー。そうだよ。俺が貸したんだよ。」
隠すようなことでもない為、素直に認める。
と。
「こいつ。もぅやりやがった。」
五郎が、歯軋りし。
「は?」
「は、じゃねーよ。男が、女の子に服を貸すなんて、どんな物語でも重要シーンだろーが!」
宗久が叫び。
「ジャージだぞ。」
「「ジャージでもだ!」」
飛びかかるように、二人が加速した。
「ちっ。」
慎吾も、加速して、三人は、前を走っていたクラスメイトを次々と追い抜き始めた。
で。
あっ、と、言う間に、息を荒げて立ち止まることになる。
「駄目だ。走れねぇ。」
「慎吾のせいだ。」
「間違いない。」
「お前らが追いかけてくるからだろーが!」
「「慎吾が、ジャージを貸すからだ。」」
「アホか!」
立ち止まっている為、横を、クラスメイト達が走っていく。
三人が、息を整えるために黙ると、むこうで、歓声が上がった。
「何だ?」
「神威ちゃんが転んだのか?」
「そんでもって、いたーい。とか言ったとか?」
「ドジっ子を加えて、トリプルかっ。」
はぁ。
ー俺も、静奈の中身を知らなければ、あっち側なんだよなぁ、、、。ー
多少、息が落ち着いたため、顔を上げて女子の方を見るが、離れているのと、向きが悪いのと、で、様子がわからない。
「とりあえず、歩いていって、様子を見てみようぜ。」
「そうだな。」
「おー。」
歩いていくと、ジャージから、どうやら静奈が囲まれているようだった。
ー静奈の奴、完璧に、何かやりやがったな。ー
その後も歓声が聞こえるが、疲労でフラフラになっいていた三人は、その時を見ることはなかった。
教室。
中は、前の体育の授業の興奮が収まらず、かなりざわついている。
「偶々、調子が良かっただけよ。私も初めてだから。」
「えぇー、それでも凄いよ。」
静奈と、クラスメイトの女子が話している。
慎吾は、近くにいた、女子に話しかけた。
「なぁ。体育の授業の時、なんかあったのか?」
きょとんと、彼女が慎吾を見た。
「えぇ!知らないの?」
「ごめん。」
「あのね、神威が物凄く速く走ったの!」
ーげっ。ー
「マジで?」
「そっ、それも、100メートル高校女子のトップタイムに近いって、先生が言ってた。」
「うわぁ。」
「しかも、三回走ったけど、三回ともだよ。」
「そっ、そうか、ありがと。」
「うん。」
別れて、慎吾は、いつもの後ろの隅に行くと事情を話し、三人で集まって、その騒ぐ様子を眺めた。
「流石は、神威ちゃん。」
「すげーな。」
「まさか、高校女子のトップタイムに近いタイムで走るとはね。」
「しかも、三回連続。」
ー大騒ぎにならなきゃいいけどな。ー
関係ない、と、言いたいところだが、それは、確実に無理な話。
はぁ。
ーため息増えるな。確実に。ー
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