あなたは、神がいると思う? 1
真っ直ぐ自分を見ている女の子。
「えーっと。」
慎吾が自分を指さすと、女の子は頷いた。
肩ほどで切りそろえた黒い髪、明るい輝きを含む大きい黒の瞳が、驚くほど整った顔に収まった女の子は、むこうで募金を叫んでいる女の子達と同じ制服を着ていた。
「俺、募金できるような、、、、。」
「大丈夫よ、期待してないから。それより、時間あるでしょ、アンケートを頼みたいんだけど。」
明らかに引き寄せれれる、彼女の笑顔。
「いや。俺、忙しいから。」
彼女の胸元に光る十字架気に気が付き、笑顔に惹かれるのを振り切って答えるも、慎吾が胸元から目をそらす前に、彼女がその十字架を指した。
「これも大丈夫よ。勧誘じゃないから。サボるのに付き合ってほしいだけ。いいでしょ。」
「ありがとうございます。」
誰かが募金をしたのか、お礼の声が聞こえる。
慎吾が目を向けると、小太りの男が、片手をあげながら駅に向かって歩き出していた。
田舎とは言え、それなり町の駅前、人通りはそれなりにあり、距離もあるため、少なくとも、こちらの声が向こうの彼女達に聞こえる心配はないだろう。
だが。
「いや、ダメだろ、それ。」
ーしまった。ー
思いつつも、慎吾は、足を止めてしまった。
「え?何言ってるの、あなたは時間が潰せるし、私はサボれるし、一石二鳥じゃない。」
本気で思っているらしく、彼女は、不思議そうに首を傾げた。
「いやいや。むこうのお仲間さん達、真面目にやってるじゃない、よくないだろ。」
彼女は、一瞬だけ、慎吾から目を逸らした。
「じゃぁさっ、真面目にやるから、アンケート、付き合ってよ。」
「だから俺は、、、。」
「残念ながら、次のバスまで時間があるのは知ってるの。」
「、、、だからと言って、時間があるとは言ってないぞ。」
ふふんと、胸を張る彼女。
「後ろで、どーすっかなー、って、言ってるの聞いてた。」
詰まった慎吾が口を開くより早く、彼女。
「それにしても、あなたねぇ、こんな可愛い子に話しかけられてるのに、喋りたいと思はないの?」
「俺は、サボるのがよくないんじゃないか、って。」
「だから、真面目にアンケートする、って。」
またもや、慎吾が口を開くより早く、彼女。
「そのかわり、あなたも真面目に答えてよ、一問、十分ぐらいかけて考えてね。」
「サボりじゃないか!」
思わず声を上げて、はっ、と、むこうの彼女達を見る。
幸い、聞こえてはいないようだった。
相変わらず、声を張り上げている。
「ちょっとー。」
「悪い。」
思わず、口を尖らせる彼女に謝ってしまう。
ー何で俺が謝らないといかんのだよ。ー
「まぁいいわ、それより。」
「だから、俺は。」
「あそこの学校の子?」
区切ろうとした慎吾の声を無視して、彼女が指さしたのは、むこうに見える学校らしき建物。
「そうだけど、俺は別に。」
ー何、真面目に答えてるんだよ。ー
「一年生?」
「あぁ。」
「ふぅーん。難しいの?」
「ランクなら普通だ。おい、話を聞く気がないだろ。」
突然、彼女が、上半身を少し傾けた。
同じぐらいの高さにあった彼女の目線が下がり、慎吾を見上げるかたちになる。
上目遣いの探るような眼差しに、多少の危険を感じるも、目が離せない。
「帰宅部?」
「悪いか?」
「いいよ。むしろ、サボりのお仲間?」
「言っておくが、真面目に帰宅部をやっているんであって、サボっているわけじゃないぞ、仲間にするな。」
「ふふっ。」
彼女の表情が、微小に緩んだ。
ーあ。不味い笑みだ。ー
猫に睨まれた鼠とは、こんな気分なのかと、頭の中に鳴り響く警鐘。
「家、遠いの?」
「何でそう思うんだ?」
「だって、バスで行くんでしょ。」
「答える必要はないな。」
ーどういうつもりだ、こいつ。ー
明らかにおかしい。
アンケートをする手前、ある程度の事情を聴くのは仕方がないと言えるが、それ以上の意味を持って聴かれている気がするのだ。
ちらりと、むこうで声を張り上げている彼女達を確認する。
全く、こちらを気にしていない。
「私と違って、彼女達は真面目だから大丈夫よ。」
彼女が、慎吾の目線に気が付いて答える。
「自分が不真面目な自覚はあるんだな。」
「ふふっ。」
微笑が、満面の笑みになる。
「もちろんあるわ。あなたと同じで。」
「仲間にするな。」
逃げないと不味いと思いつつも、足が踏み出せない。
「ねぇ。名前は?」
笑みを崩さず、気楽に問いかける彼女。
「明らかに、アンケートの質問から逸脱しているから答えない。」
慎吾は、思いっきり顔をしかめて返した。
「あら、残念ね、こんな可愛い女の子と友達になれるチャンスなのに。」
本当に、残念そうにため息をつく彼女。
「おい。さっきから言ってるけど俺は。」
「仕方がないから、ちゃんと真面目にアンケートの質問をするわ。」
「だから。」
「あなたは、神がいると思う?」
慎吾は、さらに表情を険しくした。
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