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雨ととける月と鼈

作者: アデビィ
掲載日:2025/12/09

指先が冷えるほどの寒さの日、追い打ちをかけるように雨が淡々と降り続ける。

ふと下を見れば、自然がつくる鏡が、景色を映す。

その景色には、生気を失いかけた植物と、自分と似ている、冷え切った表情の人間がそこにいる。

私が冷え切った指を動かすと、そいつも動かす。

改めて、これはお前なのだと、雨は私に伝えてくる。



雨はただ冷静に降り続ける。



私は何をしているんだろう。なぜ勇気が出ないのだろう。

いつも通り傘を差し出し、あの人と共に歩むだけなのに。

あんなことしなければよかった。

そうすれば、いつもの勇気が出ていた。


寒い。どんどん冷えてきた。

指先から凍てついてくるのを感じる。

雨が少しはやく走る。


あの人はどうなんだろう。私と同じ想いなのだろうか。

もしそうなら、どれほど温まり、どれほど幸せだろうか。

どちらがより早くより冷たい指先か、比べ合えるだろうか。

何一つ釣り合わない私があの人と、ただただ純粋に楽しく、比べ合いっこできるのだろうか。


しかし、いまはただ待つことしかできない。

雨宿りしかできない。隣にいるのになにもできない。

私はこの寒い感覚から耐え抜くことはできるのだろうか。



気がつくと私はまた水たまりを見ていた。

そのうちの一つにはゆっくりと、ただゆっくりととけこむ、月と(すっぽん)がいた。

あの人と私との距離が少し縮まった気がした。

雨は蕭々と降りつつも、時々歓声する。

この時期、数少ない葉や、寂しそうな幹と枝たちも、この雨と共に私たちを包む。



手が冷たい。

おそらくこの人も私と同じことを想い、同じこと考え、同じように私の手を握っているのだろう。


冷たい。でも同時に別の場所が温かい。


この寒暖差が実に心地良い。

この時間がずっと続いてほしい。


雨は降り続ける。厳かに、しかしとても優しく。


私たちは雨宿りしている。

あと少しすれば、私たちは濡れつつも歩き出す。

もういまはお互い温まりあえるから。


通り過ぎた水たまりには、雨ととける月と(すっぽん)があった。

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