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渋谷〇〇書店日誌  作者: 粉雪@11月1日コミカライズ開始!


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8.試行錯誤

6月の棚。説明文やポストカードサイズのイラストも置き、SSを入れたファイルも用意したけれど、まだあっさり。

挿絵(By みてみん)


 いざ本を売る立場になってみると、書店にはさまざまな工夫があることに気づかされる。


 本がよく売れる棚主さんは、こまめに棚をチェックして、売れた分を補充するだけでなく、売れない本はサッと引き下げる。


 情報や知識の塊である本にも、野菜のように鮮度があり、見せ方にも工夫が必要なのだと知る。


 本を売りたい人間からすれば、目立つ場所に置きたくなるけど。お客さんが「買いたい」と思わなければ本は売れない。


 店内の目立つ場所、そこにいつまでも売れないで残っていたら、逆に悪目立ちする。


 だからサッと下げて、読者さんの目から隠すのもひとつの技術で、意識して探さなければならないような棚の奥、ちょっと隠すように置く場合もあるのだ。


 見つける人は宝探しでもするように、棚の奥からでもほしい本を探しだす。


 私は店番をするとき、開店前に掃除機をかけたら、あとはホコリを払いながら、ほかの棚主さんの棚にある本も、すべてチェックするようになった。


 書店で掃除や整理整頓はすごく大切だという。


 棚に置かれた本が乱雑だったり、カバーがめくれていたり、帯がゆがんでいたりすると、それだけで古本屋感が漂う。


 だからホコリを払い、棚の本をピシッとそろえるだけでも雰囲気がぐっと良くなる。破れた帯には裏からテープを貼り、見た目だけでも整えた。


 ブックスタンドやディスプレイ用の台を使って棚を整え、ついでに見つけた本を目立つ場所に置く。


 ただそれだけで動きがでる。売れた本のあとに、つぎはどんな本を置くか考えるのも楽しい。


 エプロン書店さんがやってきて、変化に気づくと感心してくれた。


「あ、ここ綺麗になってる……と思った場所は、どこも粉雪さんが手を入れているのね」


「古本の価値まではわからないけど、パッと見てイイ感じにしときました!」


 ヒマな時間には同じフロアでやっている、ギャラリーの展示を見て回り、それも参考にした。


 というのも展示会を見に来たついでに、書店を訪れるお客さんが多かったからだ。散歩がてらギャラリーに立ち寄り、数万もするアート作品でも気に入れば購入されるお金持ちが多い。


 趣味人というか目は肥えていて、「画力が凄い」「描きこみが繊細だ」と、よろづ先生のイラストにも感心される。


「私が書いた本です」


 そういうと「この絵をあなたが描いたんですか」といわれることが多かった。それぐらい絵の吸引力は凄まじく、ろくに読まずにジャケ買いされる方もいらした。


 もちろん中身の文章だってしっかりしていて、読みごたえがあるけどね!買って損はさせないよ!


 よろづ先生が描かれた美麗な表紙をきちんと見てもらうため、自宅のプリンターでA4サイズにプリントしてファイルにまとめた。


 自分も絵を描くというお客さんが、「このクリアファイルじゃダメだよ」と教えてくれた。


「絵を綺麗に見せたかったら、デザイナーがポートフォリオを作るときに使う、高透明度のファイルを用意しないと」


 高透明度のファイルを買いに、宇田川町の東急ハンズに走った。ダイソーやCan☆Doといった100円ショップでも、使えそうなグッズを探した。


 お客さんたちは、ギャラリーの壁に書かれた説明文もしっかり読まれていたから、作品紹介だけでなく著者やイラストレーター紹介といった文章も用意した。


 店に入ってきたお客さんの目線がまずどこに行くか、その動線も観察して、本を置く場所を考えていった。


 9月の棚は面陳も取り入れ、『薬の魔物の解雇理由』4巻を置いた状態。

「このライトノベルがすごい!」への投票も呼びかけている。


 実はこのPOPの文字も注意された。

挿絵(By みてみん)

「その字体、プロのデザイナーだったら使わないよ。視認性がいいからスーパーでよく使われるけど、そのぶん安っぽく見える」


 ひえええ(汗


 まぁ、一生懸命さは伝わったということで。


「とくに『魔』の字は画数が多いから、明朝体がいちばん読みやすいよ。青字にする意味がわからない。色はそんなに使わないほうがいい。そうすればスッと目に飛びこんでくる」


「変えてみます」

挿絵(By みてみん)

「せっかく素晴らしい絵なんだから、どんどん見せるようにしていったほうがいい」


 もらったアドバイスは、どんどん取り入れていった。


 ふと目を留めたときに、本を意識してもらう工夫は、試行錯誤の連続だけれど、そのトライ&エラーも楽しい。


 書店の片隅でわたしが購入者特典のSSを準備をしていると、店番をしていたボンジュール書店さんが目を留めて、「凄いね」と言って下さった。


 ボンジュールイシイさんも、自作の絵本を棚に並べるクリエイターさんだ。


 そうやって認められるだけでもうれしかった。

共同書店に棚を置くことは、イラストレーターのよろづ先生にも伝えた。するとよろづ先生から、お祝いイラストを頂いた。

「持ち寄りとはいえ、書店展開なのは変わりませんから。書店に来てくれる読者さんのために描きました」

挿絵(By みてみん)

ありがたすぎる。お客さんにプレゼントできるよう、ハガキサイズにプリントアウトし、A4サイズのものにはひとつひとつサインを書いた。

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