5.りんごプロジェクト
渋谷〇〇書店が入っている渋谷ヒカリエ8は、週替わりで展示の変わるギャラリーや催しをするイベントスペースがある。
そこで11月4日までやっているのが、超福祉の学校。なんと毎年ハロウィンの時期からこの3連休にかけて開催されるらしい。
そのため渋谷〇〇書店でも、入ってすぐの選書コーナーに、りんごプロジェクトの本が置かれた。
りんごプロジェクトとは……ひらたく言えば『本のバリアフリー』。図書館で大活字本や点字の本を見かけた人はいるだろう。
それだけでなく、やわらかいフェルトでできた、仕掛けがたっぷりの布絵本。
指でなぞって出口を探す、見えない迷路の本。
背景や文字の色を自分の好みに変えられる、ディスレクシア(読み書き障害)がある人にも読みやすいのが、デイジー図書。
白い紙に黒字だと読むのが辛く、学校の教科書を読むのにも苦労してしまう。
多数ではない。今の大量生産、大量消費の社会では見過ごされがちな需要だけれど、その需要に応えていくことで、救われる人たちがいる。
『すべての人に読書の楽しみを』
「自分に合った方法で本が読める世界、読書をあきらめなくてもいい世界。そんな世界を、私たちと一緒につくっていきませんか?……そういうプロジェクトなんです」
コーディネーターの古市様に、色々お話をうかがった。
「残念ながら数はでない本なので、一般の書店さんに置かれることはほぼないんです。各地の図書館に『りんごコーナー』を作って頂いたり……でもゆくゆくは、コーナーで仕切るのではなく、当たり前にこれらの本が置かれて、必要な人に手に取ってもらえる社会を目指しています」
確かに所狭しと本が積まれた書店は、隅で開梱作業をしていることも多く、バリアフリーで本が買えるかというとそうでもない。
一歩一歩……といったところだろうか。
私の知り合いにも、ボランティアで点字の本を作っておられる方がいる。
ひとつひとつ本を見ながら、専用の道具で点字を打っていくのだ。量産はできないし、仕事をしながら片手間にやる作業だ。すべての本を読めるようにするには、とほうもない時間がかかる。
それでも本が持つ力を信じているから、コツコツと地道な作業を続けている。
本は人々の生活や人生に寄り添う。
だれだって心の中に、大好きな本を集めた本棚を持っている。









